News >「仕事日記」2007年2月


2月1日(木) 私塾発表会
千葉ヤマハのお教室が終わってから、生徒の有志を集めて僕の思うところのスタイルで一年間に3回のレッスンをしてみた。それはバンド(ベースとドラム)をつけてセッション形式で指導して、生徒に各時代のスタイルを振り分け、一人のレッスン30分ほどを残りの生徒も見学することで互いが皆の参考にもなる、というもの。
これは結構有意義で有効な方法ではないかと思う。だが、付き合うリズムセクションの方はかなりつらい。一人30分でも12人いれば6時間弾きっぱなしになるのだから。この度は石井と繁泉に無理を聞いてもらった。塾頭が予め曲目の振り分けをしておいたのをもとに第一回セッションとアレンジ固め、そしてそれぞれの曲にまつわるスタイル的意義や時代背景を解説。二回目は演奏内容を深め、三回目が今日の発表会。ちとペースは速いがひとつのレッスン形式の実験としてはうまくいったと思う。
教師の研究や体験の発表と伝授を通じて学者的表現を世の中に残す、という意義はクラッシックのピアノ教授の意味合いの重要な部分だが、現時点でのジャズ教授においてはより比重が高いだろう。それとは別に発表会を前提にすることで動機が高まるようで、こちらの方が生徒にとっては重要だったかも知れぬ。
2月3日(土) 六台 横須賀芸術劇場
ついに始まった2シーズン目。2年ぶりではあるが同面子・同演目というのはアンサンブルが深まるものらしく、すべての曲において互いの音が聴きあえて良。特にボレロはソルトの薫陶よろしく秀逸(<ダンスステップを意識して小節線をまたぐ)
2月5日(月) 木野雅之セッション 六本木スイートベイジル
木野雅之(Vln)
伊太地山伝兵衛(Vo、Gi)
佐藤桃子(2nd Vln)
成谷仁志(Vla)
蒲谷克典(Vc)

フランク:バイオリンソナタ 第2楽章
テイクファイブ
七つの子
ジョージア・オン・マイ・マインド
Tears Of Nature
言葉のない夜
イパネマの娘
おいしい水
コーヒールンバ
Wes が聴こえる
夢はいつも
またしてもHi-Way
窓の景色
チゴイネルワイゼン
Hymn For Nobody

フランクもうまくいったし、伊太地山弦楽団も品格があって良。事前打ち合わせなど面倒でもあったので、PAなしの地明かり、ということにしておいたのだが、現場スタッフがすばらしい環境を演出してくださって嬉。ただ、リハの間中氷を削るのはやめてほしい。
2月7日(水) M’s 調布たづくりホール
3曲目までリズムがカラダから湧き起こらず、ピアノも少々手につきがたい。どうしたことだ。仲間の助けで1部後半には何とか盛り返したが、考察の要有之。
2月8日(木) 鑑賞 尾崎亜美 東京文化会館小ホール
ストリングセクション(弦一徹クァルテット)が素晴らしくよかった。ストリングアレンジも優れていた。盛り上がる曲で緻密な弦アレンジを聞きたいところで観客の半数弱がずっと手拍子したのが惜しかったが、お約束の曲なのだろう。何千何万と集客のある人ほど固定ファンも多く、それは当然なのだが身内に語りかけるようなMCについては色々と思うところがあった。ほかにも考えさせられるところが多かったが気付いたことには、それらはステージに立つときの自分についての考察であることだ。どういうスタンス、誰に向かっていい演奏を目指すのか。あるいは、それを決めるべきなのかどうか。

平行してM’sの今後の方向も通奏低音のように意識の下部を流れていて、ジャズマン。オリジナルにチャレンジしようかと思った。
2月9日(金) M’s 大野城まどかぴあ
瀬木で世話になり福本さんに応援してもらい、と何度来させてもらったろうか。ホールスタッフ相変わらずの親切で丁寧な受け入れ態勢に胸が熱い。
2月10日(土) M’s 岡垣サンリーアイ 講座&ライブ
All The Things You Are
 佐山:音楽の6要素>ハーモニー
My Shining Hour
 小井:メロディ>フェイク・スケール・ブルーノート
But Beautiful
 大坂:リズム
All Blues
Falling In Love With Love ミディアム
On A Clear Day

Up Jumped Spring
I’m Old Fashioned

Yesterdays
Ladies In Mercedez
A Night In Tunisia

こちらも瀬木Duoで懐かしい空間。客席を横広にとったその正面に一尺程度の高さの舞台は親密感にあふれ、ジャズ講座という演目にマッチしていた。
2月11日(日) M’s 富田林 講座&ライブ
Tricrotism
 佐山:音楽の6要素>ハーモニー
My Shining Hour
 小井:メロディ>フェイク・スケール・ブルーノート
But Beautiful
 大坂:リズム
All Blues
Blue Keys
On A Clear Day

Up Jumped Spring
I’m Old Fashioned

Yesterdays
Ladies In Mercedez
A Night In Tunisia
2月12日(月) M’s 箕面
箕面を何度目だろうを思っていたのは勘違いで、初めて訪れる立派なホールだった。音響(生音空間)も素晴らしく、短いながらも今ツアーで仕込んだM’sの次なるステップ“Jazzman Original”にも磨きがかかる。

街なかが随分瀟洒である。僕の小さい時分“そんなに勉強が嫌いなら箕面へ行って猿と暮らせ!”などといわれたような面影はなく(<それにしても昔は随分と差別的な発言を大人たちが平気でしていたものです)芦屋的ハイソ感。
2月13日(火) M’s 姫路ライラ
小津昌彦さんとの思い出深い店。伝兵衛と姫路に来るとき(これが結構多いんですね)にはいつも飲みに来てはいたのだが、今行程がちょうど都合いいので各主催者やメンバーにお願いしてM’s久々のライブハウスギグを組み込ませてもらった。超満員のお客様方が高さの違わぬ、どころか楽器のすぐ横に群がっている様子は懐かしくもあり沸騰(演奏モチベーションが)しやすくもなる。

Up Jumped Spring,A Night In Tunigia など新曲は勿論、All Blues など手馴れてきたレパートリィもチャレンジャブルな演奏ができて嬉。
2月17日(土) ジャズピアノ6連弾 サントリーホール
去年のオケもそうだったがサントリーの包み込む音響空間はピアノ6台というこの特殊な設定においても(あるいは、だからこそ)特別なものを感じる。

リハが終わっても皆気持ちよさそうにピアノを弾き、それぞれのマネージャーがいい機会だとばかりにシャッターを押す。“すみません。映り込みますので”と、スタッフが右往左往。それが5人分。音大の練習棟のような有様が微笑ましい。僕は楽屋のひとつを使ったリハーサルルームでゆっくりと、、、これがアレンジ締め切りに追われていてピアノそのものの練習(今はサンサーンス)になかなかたどり着けないところが辛い。捗りはしたが。
2月21日(水) 前のり
スピーク・ロウへははじめて伺ったがとても歓待してくれて嬉。ピアノの足留がなんだか特殊で面白かった。ステージラボの聴講生を相手のジャズ絵本は大人方面への逸脱満載で楽しめた。“月夜の晩に”という詩と絵が素晴らしい。歌の大森さん、パーカッションの宮本さんの飛び入りも盛り上がったが、中村透先生という、オペラなどを書く偉い人がピアニカで参加してくれたのが大ニュース。
2月22日(木) ステージ・ラボ 高松サンポート
午前中は“青い鳥”ワンコーナー20分の間、ひとつの曲を延々弾いて、それが5コーナー。ワークショップとはこんなにキツイのかと問うと、能祖氏の場合だけだとのこと。がしかし彼自身の熱気に引き込まれ、ほかの人々も頑張っているのを見ると“おなかが空いたよ〜”などとはとても言えず根性出しきってから遅〜い昼食を迎えた。と思ったら午後は“銀河鉄道の夜”郡読。こちらは夕方に一般向け発表もあって尚キツイ。一日に二回、おなかが背中にくっつきそうな空腹というのも中々貴重な経験だが“モノを作る”ということを体験できたのが収穫。

それだけに打ち上げは皆さんはじけてて良かった。ジャズの流れる店にデジタルピアノが置いてある。“なんだかピアノの弾ける人が来る、とは聞いていたけど、佐山君だったとはねぇ”と、マスターに会ってみると古い知り合い。憂歌団の木村君に声の似た渋いギタリスト。のびのびとわがままにピアノ弾き放題。リクエストとりまくり、歌まで歌って久々に(いつも?)スカ〜ッとした。
2月23日(金) ドゥ・マルシェ オペラシティリサイタルホール
208人満席。フランクもリラックスしてできた。牧さんオリジナルの2曲ともいい曲。“Kenji”は宮沢賢治にちなんだもの。“ペンタジーニャの風”は最近ボランティア活動をしているペルーの子供達への思い。どちらもさほどのインテリジェンスが乗っかっているわけではないのだが、それだけに書かずにいられなかった思いのようなものがストレートに伝わってくる。
2月24日(土) ジャズピアノ6連弾 浜松アクトシティ メインホール
当初は終演後帰京の予定をお泊りにしてもらって国府・島健、それにスタッフ大勢でスキヤキ&焼酎。その日回したビデオを見ながら話も酒も尽きない。ここの主催者・小山さんは島田さんと同年輩で、若い時分から仲良かったらしく、しきりに“ゆうちゃん、ゆうちゃん”といってゴキゲンさん。東京音響・島田さんはゴールドベルクの初演のとき以来お世話になりっぱなしで常温の日本酒が大好きという大酒のみでありつつも、ホノルルマラソンにも何度も参加しているという変り種。

アンコール中に演奏を中断して山下さんにハッピーバースデイ。最初のうちは訳が判らず山下さんも唱和していたのが面白かったが、そのあと客席も歌ってくれて、二千人の大合唱はさすがに感動的。同い年のワイン(シャトー・オ・ブリヨン!)をみんなでプレゼント。終演後洋輔さんが“さぁ開けよう”と言ってくれたのに対して国府が“いえいえ是非奥様と”と返す。実はここでもう一度か二度のやりとりがあったら“そうですかぁ?”といってご相伴に、などと皆で話していたのだが“そうですか、、、わかりました”と、それはそれで山下さん感動してくださってる様子でお帰りになった。“もうちょっと言い方があったんじゃないかよゥ”などと国府に非難が集まったのは勿論ご愛嬌と仲良しの証拠なのだが、どんな香りや味がするのだろう。

さてアンコールの演奏で山下さん、2本の弦をお切りになったのはその興奮のせいではない。中断後はエンディングしかなかったのだから。一方小原孝さんは10本の弦をお切りになっていた。双方相手が切った時のことは認識しつつ(僕は気付かなかった)自分のピアノの切れたことにはあとから気付く、という事態も興味深い。自分の出す音以上に仲間の音に対しての耳の働きに比重をかける、というのは中々できないことである。
2月27日(火) 名古屋音大ジャズコンサート
驚いた。去年の第一回に次ぐ二回目の今年。一年間で恐ろしく進歩している。小浜・黒田両先生の生徒への対応に深い愛情(に基づいた叱咤も含めて)に感激。松田昌と二人で“ワシらにゃぁ出来ンなぁ”。コンサート打ち上げは遠慮して佐山商事慰労会。
2月28日(水)〜3月2日(金) 名古屋音大集中講義
3日間を“プリバップ・バップ・ポストバップ”に振り分け、一日の4コマを“講義・実演・生徒参加・バンドクリニック”に区切って見た所、収穫は多かった。が、ここの生徒たちはとにかく演奏したく、知りたいことは学術的なことよりも実践に向けてのあれこれであるのが今回良くわかった(<欠席者の多い項目などから)ので新年度は実践>特訓で責めてやろうと思う。

やる気はマンマンで力もそこそこあるが、好みでないものには見向きもしなくて出席のギリギリの生徒(達)に如何なる点数をつければよいのだろう?

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2007年