10月26日 出発の日

朝、8時3分新宿発の成田エクスプレスに乗る。私の見送りという名目で、メンバーの見送りをすべく、友人二人がメンバーよりもはやくホームに到着していた。二人に見送られて、5人は成田空港へ。途中浜松町で信号機故障のために停車。多田さんは前日のライヴ疲れか気が付かずに爆睡。9時40分着予定が10時少し前着。私以外は荷物のほかに楽器があり、がらがら・わさわさとすでにご一行様といった雰囲気。チェックインカウンター付近では風邪気味でちょっとつらそうな新井田さんと、会社から直行してきたという松井さんに合流。

いざ、チェックインカウンターへ!多田さん、梅津さん、新井田さんは去年のKIKIツアーの際に荷物重量オーバーですったもんだしているので、今回は軽量化に励み気合十分で望む。そのかいあってすんなりあっけなく何事もなくスルー。張さん・関島さん・多田さん・私は荷物が小さく、機内持ち込みだったのも幸い。前年は空港から新井田さんのスネアを送り返したり、かなり大変だったらしい。(実は私は同日同時刻に英国出発で、あわただしげな様子を目撃していました。)
 両替を済ませ、最後の日本食を胃に収め、免税店でタバコなどを買い、いざ飛行機へ!とおもったら張さんが「わし、保険はいっとらん。入った方がいいか?」。も、もちろんです。遂行品大事でしょう?その場にあった機械で手続きを済ます。「あぁ、本当にもう行かないと!」と梅津さんが言ったときに松井さんが「あら、保険。私も入ろう」。な、なんてマイペースな方たちだろう、とそれまで気が付かなかったメンバーの姿を目撃し、フライト前にすでに感動する私。



そんなこんなで機内に入るのがおそくなり、すでに荷物の棚は7割方満載。いろいろと都合しながら多田さん・梅津さん・私の荷物をつめるが、なんせ棚の奥が見えない。ナビ係、搬入係に分かれて悪戦苦闘していたところ、関島さんがすすすーっと手伝ってくださった。さすがこまっちゃクレズマの大男であります。











無事に飛行機も飛び立ち、安全装備の説明ビデオが流れ始める。レトロな映像カットのビデオで斜め45度の角度の客室乗務員の映像がなんともいえない。梅津さんと二人で内容よりもその画像に釘付けで見ていると、最後の方が尻切れで終わってしまった。その後もビデオが流れるのだが、巻き戻されたり止まったりが激しい。なんだろな、とおもうと客室乗務員のお兄さんが、ビデオを手動で操作しているのを目撃。流れる映画もトムとジェリータイプだったり「もしかして兄さん、家から自分のお気に入りを持ってきた?」と聞きたくなるようなラインナップ。ほのぼの。そしてもう一つ、機長の日本語挨拶がなんとも言えない。「マモナク キュウショクヲ オクバリイタシマス」。昼食といっているのだろうなぁ。
  

機内食も食べ終わり、メンバーそれぞれ本を読んだり、睡眠をとったり。梅津さんと多田さんはロシア語講座。「MCを少しくらいはロシア語で!」と本とi-podでお勉強。えらい!私も少しずつ眺めさせてはもらいましたが、書き留めた単語はただ一つ。「トイレ」。近いのです、とっても。寒いところとなると余計に切実なのだ。便乗してテキストを眺めてはいましたが、まもなく私もご就寝。

ふと目がさめてお手洗いへ。帰ってくると、梅津さんが外を眺めている。「窓側の席が好きなんだよねー」と言いながら、私に譲ってくださったので、いない間に外を眺めていたのだろう。ちょうどロシアの平原の上空だった。座席に膝を着いて眺めている様子はなんだか愛らしかった。
 

フライトは順調でもう着陸の時。いよいよロシアの旅が始まるんだなぁ、とわくわくどきどき。機長のご挨拶「ゴキゲン サヨナラ アリガトゴザマシター」に見送られ、一行は空港に降り立ちました。客室乗務員のおばちゃんはニコニコとかわいいし、機内食もおいしかったし、ウワサほど悪くないじゃないか、アエロフロート航空!


10月26日 ロシア到着

予定時刻通りに飛行機は空港へ。外は雪がたっぷりと積もり、夕方ということもあり、何か寂しい雰囲気。空港内をてくてく歩くと極端に英語が少ない。外の風景といい、看板の文字といいロシアに来たんだなぁ、と実感する風景が広がる。そしてもう一つ、ロシアらしいものを体験。ロシアはトイレ事情が悪いと聞いていたので、空港でトイレに行っておくことに。が、しかしすでに空港内のトイレにも便座はなく、ロシア式*に用を済ませるしか方法はなかった。(*便座に乗っかり、和式風に利用。)あのモンゴルでさえ、空港のトイレは綺麗だったのになぁ。
 

荷物も楽器も無事に受け取りを済ませ、最後のゲートを出ようとしたところで、松井さんだけストップがかかる。ヴァイオリンが問題らしい。「Go to RED Line」を繰り返す係員。「Where? 」と聞き返すともと来た道を戻れと指差す。どうやらこの楽器を持ち込むには何か手続きが必要らしい事がわかり、二人でそのRED Lineを探して再び場内へ。すぐにその場所はわかり、私は付き添うわけには行かず、松井さんの状況をみんなに説明をするため、私は一人で場外に向かう。
関島さんいわく、ヴァイオリンは古いものに名器も多くあるので、B級品を持ち込んで最高級品をヤミで購入してすり替えて持って帰っている人もいるらしい。また持ち込んだ楽器を売り払って現金化してしまう人もいるとのことで、そのためロシア税関では製造番号など楽器の固有情報を税関で控えて、帰りのトラブルをなくそうとしているのだ、ということ。疑われているのか、守られているのかちょっとわかりにくいシステムなのだが、善人にとってはよい仕組みなのだろう。梅津さんは「私の楽器だって高いのになぁ」とヴァイオリンだけが高級品扱いであることにちょっとご不満なご様子。
松井さんを待つ間に、DOMの運手主おじさんと無事に会うことができた。松井さんの手続き終了を待っているため、運転手おじさんは待ちかねて飽き飽きした顔。状況を説明したらRedLineのゲートを逆流して入っていってしまったが、追い出されたのか、すぐに出てきた。なかなかお茶目だ。かわいい。30分ほど経過し、松井さんの手続きが終了。無事に楽器を手にして外に出てきた。いざ、おじさんの車でDOMへ !


空港のゲートを出たところで梅津さんから一言「しっかりつかまるように。楽器を保護するように」。確かにおじさんの運転は立て揺れ横揺れがはげしく、とても素晴らしい。だが、道行く車は全般的に同じような行動パターンの気がする。 どこをどう走ったのか、車に揺られる事30分以上。思った以上にネオンが明るい街の中。一年前ともかなり違う眺めになっているらしい。マクドナルドなど米国系企業もたくさんある。日々開発が進んでいるのだろう。「物がないロシア」はもうどこかに行ってしまったのかもしれない。
 
そしてDOM到着。市街地を少しだけ外れた教会の裏手にその建物はあった。大きな扉を開けると中にはたくさんの人。入って左がホール、右が事務所。事務所を通り越し右に曲がるとお手洗いの扉があり、その前から階段が2Fへと続いている。
男性トイレ   女性トイレ

わりとこぢんまりとしたスペースかと思ったが、後日わかったのだが、ステージの裏には美術室があったり、いろいろな設備が充実している。この日の演目はトゥバの音楽とチェロの競演。トゥバ人のバンドに白人(英語を話していた)が一人トゥバの楽器(多分トプショール)をもち、民族衣装を着てまじっている。そのほかに白人チェロ奏者が二名。知っている曲も多く、出発まで聴き入る。
そして、出発の時。私たちはこのまま夜行列車でサンクトペテルブルグに向かうので、当面必要のない荷物を事務所で預かってもらう事に。梅津さんのスーツケースにみんなの不用品を納めた。列車は20:10発だが、道路が混む可能性があること、そして列車内での飲食物を購入するため、早めに出発。ここからガイドで付いてくれたのはSveta。28歳のフリーのライターらしい。DOMの仕事を手伝っており、英語が堪能な事、夏に渋サのツアーに同行した事などから、今回もガイドになってくれるらしい。長身美人。そして非常に気持ちの良い女性。おじさんの車に再度荷物を積み込み、駅へ出発した。

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