小倉百人一首 秋の歌 歌題別分類 16首



【秋来る】
(注:拾遺集によれば、下の歌の題は「荒れたる宿に秋来る」。「秋来る」は、必ずしも立秋を意味するわけではない。)

恵慶法師
047 八重葎しけれる宿のさひしきに 人社見えね秋は来にけり

【秋の田】

天智天皇
001 秋の田のかりほの盧のとまをあらみ 我ころも手は露にぬれつゝ

【秋の月】

大江千里
023 月みれは千々にものこそかなしけれ 我身ひとつの秋にはあらねと

左京大夫顕輔
079 秋風に棚引雲のたえまより もれいつる月のかけのさやけさ

【秋風】

大納言経信
071 夕されは門田のいなは音つれて 芦のまろやにあき風そふく

文屋康秀
022 吹からに秋の草木のしほるれは むへ山風をあらしといふらん

【露】

文屋朝康
037 しら露に風のふきしく秋のゝは つらぬきとめぬたまそ散ける

【擣衣】

参議雅経
094 みよし野ゝ山の秋風さよ更て 故郷さむくころもうつ也

【秋の夕暮】

良暹法師
070 さひしさに宿をたち出てなかむれは いつくもおなし秋の夕暮

寂蓮法師
087 村雨の露もまたひぬ槇のはに 霧たちのほるあきのゆふ暮

【霜夜】下の歌は、秋の寒ざむとした独り寝が主題。

後京極摂政前太政大臣
091 きりゝゝす鳴やしもよのさむしろに ころもかたしきひとりかもねん

【菊】

凡河内躬恒
029 心あてに折はやおらむ初しもの をきまとはせるしら菊の花

【紅葉】
(注:猿丸大夫の歌は「鹿鳴」が主題とすべきか。)

猿丸大夫
005 おく山に紅葉ふみわけ鳴しかの 聲きくときそ秋はかなしき

在原業平朝臣
017 千早振神代もきかす立田川 からくれなゐに水くゝるとは

春道列樹
032 山川に風の懸たるしからみは なかれもあへぬ紅葉なりけり

能因法師
069 あらしふく三室の山のもみちはゝ たつ田の川のにしき成けり

[メモ] 紅葉の歌は、他にも
024 この度はぬさも取あへす手向山 もみちのにしき神のまにゝゝ(菅家)
026 をくら山嶺のもみち葉心あらは 今一度のみゆきまたなん(貞信公)
の二首があり(いずれも勅撰集に従い、ここでは雑歌に分類した)、計六首の多さである。
秋の風物はおおかた尽しているが、七夕の歌だけは一首もない。家持の「かささぎの橋…」は七夕伝説に関係のある歌ではあるものの、主題は冬の霜夜である。


百人一首目次