三島市箱根路西坂・平安鎌倉古道その6 地図はこちら

説明版には次のように書かれています。
鎌倉時代『十六夜日記』の作者は、「二十八日に三島の国府を出発。足柄越えは、遠道になるので、箱根路をとおることにして、山道にかかった」とあります。当時はこの道が盛んに利用されていたことを窺わせます。更に江戸時代に箱根旧街道がつくられると、この道を利用する人はほとんどいなくなり、地元の人がとおるだけとなったとあります。

平成2年7月、ゴルフ場建設にあたり元山中の山ノ神神社南側を発掘したところ、中世の古銭や、銅製品、漆器、陶器などが出土し、平安・鎌倉古道が確認されたといいます。
説明版にはこの古道を歩きながら、平安・鎌倉時代の旅を偲んでくださいと書かれていますが、もしこの説明版や石碑がなかったたら一般の人はこの道が古道であるとはわからないのではないかと思われます。

道路の遺構のみが、ものすごいものとして残っている以外に、果たして古道を感じさせてくれる石仏や道標、旧街道のような石畳や並木道といった類のものはここまで何一つ見ありませんでした。「平安鎌倉古道」の石碑がなかったら、一般の人はただの山道としか感じられないかも知れません。

林道を横断して道を更に進みますが、依然として掘割状遺構は続いています。右の写真の辺りを私が確認したところ4本の並行した掘割状の廃道が確認できました。4本とも同じ時代に造られたとは思われませんが、何故4本もあるのでしょうか、不思議です。現在的に言えば4車線道路です。こんな山の中に4本も並行して掘割道が存在するのは、ただものではありません。

その後笹藪状の道を通り抜けた後に左写真のような視界の効く明るいところに出ます。ここは「扇平」と呼ばれるところです。ここは桜の木が植えられていて桜の名所となっているところなのです。ここにも掘割状遺構は続いています。この辺りの掘割の土塁状間の幅は10メートル位はありそうです。

扇平からは富士山が眺められます。上の富士山の写真は3月に訪れた時に撮影したものです。手前の桜の木にはつぼみが確認できました。今年は桜の開花が早いと予想されています。あと2週間もしたら花見ができるのではないかと思われます。桜が咲けばここも花見客で賑わうのではないでしょうか。実は今回も取材で2度訪れています。年明けの1月と3月始めです。2度とも芦ノ湖高原別荘から扇平までの間は誰一人と出会っていないのです。よほど人気の無いところなのか、訪れる人は全くいないのかと思ってしまいます。ただ季節柄のこともあるかも知れません。

写真右は扇平に建つ記念碑です。雲峰富士を仰ぎ、眼下に駿河湾を見下ろす景勝の地という書き出しで始まり、この扇平を桜の園にすべく、箱根山組合より借地して川原ヶ谷の全戸が奉仕により桜の苗木を植えたという内容が書かれています。

上と右の写真は扇平の下部で、1月に訪れた時には草藪でしたが、3月に訪れて時には花見に合わせたものか、草藪が綺麗に刈られていて道路遺構が歴然と姿を現していました。この道路遺構の南面一段下と北側尾根の一番高いところにも側道跡と思われる掘割が確認できます。
扇平の南西一帯は現在ではグランフィールズカントリークラブのゴルフ場ですが、かっては五輪と呼ばれる部落あったそうです。ちなみに五輪の地名はオリンピックとは関係ありません。

五輪という地名は扇平を含めたこの辺り一帯をいい、以前には街道端に破損した五輪塔が立っていたといいます。現在ではその五輪塔らしき石はどこにも見あたりませんでしたが、もし五輪塔などがあれば古道の雰囲気が一段と感じられるとは思うのですが残念です。これだけの遺構が残っているにも拘わらず石造物が何も無いうのも変なもので、もしかしたら何処かに五輪塔片でもないかと注意深く歩いてしまいました。

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