|
31.くちぶえ番長 32.青い鳥 33.永遠を旅する者 34.オヤジの細道 35.ブランケット・キャッツ 36.ブルーベリー(文庫改題:鉄のライオン) 37.ツバメ記念日−季節風*春− 38.僕たちのミシシッピ・リバー−季節風*夏− 39.少しだけ欠けた月−季節風*秋− 40.サンタ・エクスプレス−季節風*冬− |
|
|
かっぱん屋、小さき者へ、きよしこ、トワイライト、哀愁的東京、お父さんはエラい!、きみの友だち、小学五年生、カシオペアの丘で、なぎさの媚薬4 |
とんび、気をつけ、礼。、希望ヶ丘の人びと、ステップ、再会、十字架、きみ去りしのち、さすらい猫ノアの伝説、ポニーテール、峠うどん物語 |
さすらい猫ノアの伝説2、空より高く、また次の春へ、ゼツメツ少年、赤ヘル1975、一人っ子同盟、どんまい、はるかブレーメン |
●「くちぶえ番長」● ★★ |
|
2007/07/22
|
主人公ツヨシが今も思い出すのは、小学校四年生の時に転校してきた女の子、マコト(川村真琴)のこと。 私が子供の頃、リーダー役だったのは“ガキ大将”でした。しかし今の時代には、負けん気だけでなく優しさも欠かせないのかもしれない。男の子と女の子に訳隔てなく接し、優しさもきちんと示せるマコトのような子こそリーダーに相応しいのかもしれない、と思ってしまう。 雑誌「小学四年生」に連載されたものに書下ろしを加えた文庫オリジナル作品。 |
●「青い鳥」● ★★★ |
|
2010年07月
2007/08/04
|
いいなぁ、ホントにいいなぁ・・・、凄く良い! 各篇に描かれるのは、しゃべることができなくなったり、イジメの痕に悶々としていたり、同級生たちの中に入れなくなったりと様々に苦しんでいる中学生たち。 村内先生はひどい吃音で、何を言っているのか中々判らない。それじゃあ授業にならない、それで何故国語教師をやっているのかと生徒に思われるくらいです。 村内先生は果たして、担任教師が産休や怪我で休んだときに便利に使われるだけの臨時教師なのか。それとも、一人の生徒を救うために学校がわざわざ招いた特別な教師なのか。もし後者なら、学校もまだまだ捨てたものじゃないと思う。 冒頭の「ハンカチ」に胸熱くなり、それに続く各篇もそれに劣らずじ〜んと胸に届いてくるストーリィばかりでしたが、参ったのは最後の「カッコウの卵」。 なお、本書はストーリィとして「きよしこ」の後に連なる作品と思われますが、それだけでなく、このところ幾つもの作品で子供たちの心の中を描いてきた重松さんの思いが結実した作品と感じられます。 ハンカチ/ひむりーる独唱/おまもり/青い鳥/静かな楽隊/拝啓ねずみ大王さま/進路は北へ/カッコウの卵 |
※映画化 → 「青い鳥」
●「永遠を旅する者−ロストオデッセイ 千年の夢−」● ★ |
|
2010年10月 |
大ヒットしたゲーム“ファイナルファンタジー”の生みの親という坂口氏が製作総指揮をとるゲーム“ロストオデッセイ”のための物語、とのこと。 人の命は永遠に続くものではないが故に、その限りある中で命は輝き、親から子へ命を繋いでいく喜びも、戦争や病気でそれを奪われる悲しみもあります。しかし、老いることも死ぬこともないカイムは、愛する者を常に見送るしかなく、自分の人生をそこに残すこともできない。 どの篇も、時代、場所とも抽象的。そのうえで物語の多くは、歴史の初めから人間が繰り返してきた戦争の歴史に他なりません。そこでカイムは傭兵として登場し、戦争の悲哀の目撃者となります。 |
●「オヤジの細道」● ★ |
|
|
もはや“中年オヤジ”の領域に入り込んだと自覚したシゲマツさんによる、本音語り、ボヤキ、愚痴、苦笑に自嘲等々満載のショート・エッセイ。 しかしなぁ、私が読んでいると微妙なズレがずっと付きまとうのです。 ともかくも、コラム的に気楽に読んで、苦笑いできる一冊。 |
●「ブランケット・キャッツ」● ★★ |
|
2011年02月
2008/02/25
|
猫のレンタル、基本の契約期間は3日間−2泊3日。 わざわざ高い料金を払って僅かの間猫をレンタルするというのですから、客側には猫を求めるそれなりの難局があるというもの。 いかに慣れ親しんだ毛布付きとはいえ、レンタル猫にもそれなりのストレスはある筈。 様々な人生の難局を軽いタッチで描いた短篇集。各々の篇で見せるいろいろな猫の様子に愛嬌があって、楽しめます。 花粉症のブランケット・キャット/助手席に座るブランケット・キャット/尻尾のないブライケット・キャット/身代りのブランケット・キャット/嫌われ者のブランケット・キャット/旅に出たブランケット・キャット/我が家の夢のブランケット・キャット |
●「ブルーベリー」● ★☆ |
|
2011年04月
2008/05/06
|
一人ぼっちで心許ないまま始めた、東京での学生生活。その当時知り合った人たちは今どうしているのか。 時代は1981年。山口県から上京し、入学した先はW大。そして主人公の現在の職業は作家。 学生時代に知り合った人たち(友人も含め)とは、それっきりになってしまっていることが多い。それでも、私の中に今でも彼らの面影は残っています。 東京に門前払いをくらった彼女のために/恋するカレン・みちのく純情篇/マイ・フェア・ボーイ/走れ!東上線ターボ/洗いざらしの幸運/4時間17分目のセカンドサーブ/君の名は、ルイージ/僕と少女とブルーベリー/さらば愛しき牛丼/黄昏のイエロー・サブマリン/人生で大事なものは(けっこう)ホイチョイに教わった/ザイオンの鉄のライオン |
●「ツバメ記念日−季節風*春−」● ★★ |
|
2010年12月
2008/04/04
|
産経新聞(大阪)夕刊に連載中の「季節風」、本書はその第1弾となる「春篇」とのこと。 まず冒頭の「めぐりびな」が絶品。 本書収録の12篇、各々切ない話が多いのですが、それでも湿っぽくならず気持ち良く読めるのは、「春」に相応しく、新たな始まりに繋がるストーリィが多いから。 春に相応しく、気持ち洗われると共に、真っ直ぐ前に向かって踏み出そうという気持ちを呼び起こしてくれる短篇集。 めぐりびな/球春/拝復、ポンカンにて/島小僧/よもぎ苦いか、しょっぱいか/ジーコロ/さくら地蔵/せいくらべ/霧を往け/お兄ちゃんの帰郷/目には青葉/ツバメ記念日 |
●「僕たちのミシシッピ・リバー−季節風*夏−」● ★★ |
|
2011年07月
2008/07/04
|
産経新聞(大阪)夕刊に連載中の「季節風」、本書はその第2弾となる“夏篇”。 母親を亡くすストーリィでは、苦労したとはいえその母親らは年老いて人生を全うしたというパターン。それと対照的に、父親を亡くすストーリィでは、いずれも父親は病気で早くに死んでしまうというパターン。 家族が増え、その増えた筈の家族がこれから家族ではなくなってしまう。そんな切なさを描いた「あじさい、揺れて」は、亡兄の義姉が子供を連れて再婚するという話。 私の好みとしては、父親の死後3年で母親が再婚を決心したその心根を描いた「ささのはさらさら」が、奇麗事過ぎるけれども格別。また、ちょっと捻った幼馴染みの再会を描いた「魔法使いの絵の具」が楽しい。 なお、表題作「僕たちのミシシッピ・リバー」は、片方の引越で別れることになった親友同士の小学生の話。題名がマーク・トウェインの冒険物語2作から来ていると知って、かつてのファンとしては懐かしさ余りあり、嬉しい限り。 親知らず/あじさい、揺れて/その次の雨の日のために/ささのはさらさら/風鈴/僕たちのミシシッピ・リバー/魔法使いの絵の具/終わりの後の始まりの前に/金魚/べっぴんさん/タカシ丸/虹色メガネ |
●「少しだけ欠けた月−季節風*秋−」● ★★ |
|
2011年08月
2008/10/02
|
産経新聞(大阪)夕刊に連載中の「季節風」、本書はその第3弾となる“秋篇”。 秋に相応しく、各篇で描かれるのは、別れだったり、過去への尽きない思いだったりします。ちょっぴり切ないけれど、だからこそ愛おしい。 本書収録12篇の中では、文房具店の無愛想な年配女性と3人の小学生の関わりを描いた「オニババと三人の盗賊」、転校を繰り返していた頃の僅か半年だけれど今でも続く大切な友人を得た思い出を娘に語る「サンマの煙」が私は最も好きです。 「おばあちゃんのギンナン」も味わい深くて良い篇ですが、その感想の中には、私もまたギンナンが大好きだけれどなかなか食べられない、という思いが入り込んでいます。 オニババと三人の盗賊/サンマの煙/風速四十米/ヨコヅナ大ちゃん/少しだけ欠けた月/キンモクセイ/よーい、どん!/ウイニングボール/おばあちゃんのギンナン/秘密基地に午後七時/水飲み鳥、はばたく。/田中さんの休日 |
●「サンタ・エクスプレス−季節風*冬−」● ★★ |
|
2010年11月
2008/12/29
|
産経新聞(大阪)夕刊に連載中の「季節風」、本書はその第4弾かつ最終巻となる“冬篇”。 「あっつあつの、ほっくほく」はその温かいストーリィを代表するように、焼き芋売りのおじさんにまつわる思い出話。私の子供の頃を思い出して懐かしい。あの頃、新聞紙で作った袋に入れられた焼き芋は、素敵なおやつだったのです。 本書中、最も秀逸だったのは、表題作の「サンタ・エクスプレス」。 一方愉快だったのは、バレンタインデー当日、モテない息子の身の上を心配して大騒ぎする父親を描いた「バレンタイン・デビュー」。 この「季節風」シリーズの収められた短篇は、いずれも均整がとれてまとまりの良い、上品であっさりとしているけれど、しっかりと味わい深い作品ばかり。 あっつあつの、ほっくほく/コーヒーもう一杯/冬の散歩道/サンタ・エクスプレス/ネコはコタツで/ごまめ/火の用心/その年の初雪/一陽来復/じゅんちゃんの北斗七星/バレンタイン・デビュー/サクラ、イツカ、サク |
重松清作品のページ No.1 へ 重松清作品のページ No.2 へ
重松清作品のページ No.3 へ 重松清作品のページ No.5 へ