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51.さすらい猫ノアの伝説2 52.空より高く 53.また次の春へ 54.ゼツメツ少年 55.赤ヘル1975 56.一人っ子同盟 57.どんまい 58.はるかブレーメン |
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かっぱん屋、小さき者へ、きよしこ、トワイライト、哀愁的東京、お父さんはエラい!、きみの友だち、小学五年生、カシオペアの丘で、なぎさの媚薬4 |
くちぶえ番長、青い鳥、永遠を旅する者、オヤジの細道、ブランケット・キャッツ、ブルーリバー、ツバメ記念日、ブルーベリー、僕たちのミシシッピ・リバー、少しだけ欠けた月、サンタ・エクスプレス |
とんび、気をつけ、礼。、希望ヶ丘の人びと、ステップ、再会、十字架、きみ去りしのち、さすらい猫ノアの伝説、ポニーテール、峠うどん物語
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51. | |
●「さすらい猫ノアの伝説2−転校生は黒猫がお好きの巻)」● ★☆ |
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「さすらい猫ノアの伝説」第2巻。 宏美、度々の父親の転勤で転校はもうベテラン。しかし今度は様子がちと違い父親は左遷でパート一人の営業所長。それでもすぐにクラスに馴染み、美和や春香らとも仲良くなれたと思っていたのですが・・・・。 クラスに馴染んだつもりでも、ずっと一緒だった生徒たちと転校生とではすっかり同じという訳にはいかない。そんな難しさ、厳しさが本書では描かれています。子供の頃転校が多かったという重松さんの気持ちが篭められた一作でしょう。 |
52. | |
●「空より高く」● ★☆ |
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2015年09月
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東玉川高校、通称:トンタマの廃校が決定してから入学した最後の生徒たち。繰り返し言われてきたのは、「終わり」あるいは「最後」という言葉ばかり。 主人公は松田練太郎、通称:ネタロー。その通称どおりこれまでの高校生活をのんべんだらりと過ごして来た高校生。その主人公に対し、ジン先生の言葉に影響されたのか、大人しく無口である故にムクちゃんと呼ばれている小島史恵が、皆のいる教室の真っ只中で思わぬ行動に出ます。 ジン先生のセリフではないけれど、かつて人気のあった青春学園ドラマを彷彿させるところがあります。重松さんも当時の熱さを共に経験した世代だろうと思います。 |
53. | |
「また次の春へ」 ★☆ |
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2016年03月
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3.11東日本大震災以降、小説ストーリィの中で震災に触れざるを得なかったという作品がいろいろありましたが、本書は震災そのものを題材にしてその側面から語った作品集。 主人公は様々。震災で大事な人を喪った家族の姿、その心の痛みを描いています。 時間は経っても、震災から受けた心の痛み、喪失の痛みは、いつまでも残る、ということを強く感じます。 トン汁/おまじない/しおり/記念日/帰郷/五百羅漢/また次の春へ |
54. | |
「ゼツメツ少年」 ★★ 毎日出版文化賞 |
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2016年07月
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小説家である「センセイ」の元に一人の少年から手紙が届きます。 3人の物語と、センセイが書いた小説の中での3人の物語が輻輳して進むストーリィ。それ故、時に3人はセンセイに対し、これから後どのように展開させるのか問いかけたりもします。 本ストーリィの構図が判るのはやっと最終章に至ってから。 プロローグ/テーチス海の岸辺/イエデクジラ/エミさんとツカモトさん/捨て子サウルス/ナイフとレモン/テーチス海の水平線/エピローグ |
55. | |
「赤ヘル1975」 ★☆ |
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2016年08月
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1975年、毎年最下位を争う弱小球団だった広島カープが初優勝した年。 |
56. | |
「一人っ子同盟」 ★☆ |
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2017年07月
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昔一人っ子は少なかった、兄弟・姉妹がいるのが当たり前だった、というコンセプトからなる、一人っ子の小学生3人を描いた長編ストーリィ。 |
57. | |
「どんまい」 ★★ |
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久々に読む重松作品。 流石にもう新味を感じる処はありませんが、一方で懐かしく、安心感がもてる作品でもあります。 草野球チーム“ちぐさ台カープ”を舞台に、そのナインたち、ごくフツーの人たちの様々な人生模様を描くストーリィ。 当然ながらナインの年齢や境遇は様々であり、本来知り合うこともなかっただろう人たち。それが、同じ草野球チームの仲間だからということで繋がり、そのことによって救われているところがある、というのが本ストーリィのミソでしょう。 中でも異色なのが、夫の不倫により離婚して2人だけの家族となった三上洋子と、中学生の娘=香織。 子供の頃に夢中になった野球に再度挑戦したいと強引に“ちぐさ台カープ”に入団した洋子、ひょんなことでバットを振らされ、ヒットの快感が忘れられずに母親と共に入団した香織というデコボコ母娘。 そしてもう一人、元甲子園高校球児で、バッテリーを組んだ相手はプロ野球で天才と呼ばれ活躍するピッチャーになったのに、自分は大学野球部でも落ちこぼれ、現在は教員試験合格を目指して勉強中という加藤将大。 その3人以外にも、草野球は楽しむことが一番大事、草野球には草野球のルールがあると語る謎めいた老人「カントク」、故郷に住む両親の介護問題を抱えて広島への日帰り帰郷を繰り返しているキャプテンの田村康二を始め、他のメンバーも個性的、それぞれにいろいろな悩み、屈託を抱えているという次第。 彼らが抱えている問題は決して他人事ではありません。何といっても彼らはどこにでもいる、ごくフツーの人たちなのですから。 会社とか学校とか、親戚とかいったしがらみから遠いところにある仲間の存在によってどれだけ救われることか、判るなぁ。 最後は、ナイン全員にエールを送りたい気持ちです。読後感は実に気持ち良い。 読了後は、よし、もう一度がんばろうと、元気が出るストーリィです。 イニング1/イニング2/イニング3/イニング4/イニング5/イニング6/イニング7/イニング8/イニング9/イニング10/イニング11/イニング12 |
58. | |
「はるか、ブレーメン」 ★★ |
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主人公は県立周防高校2年の小川遥香。 3歳の時に母親から捨てられ、祖父母の元で育てられたが、祖母もなくなり遥香は一人ぼっちになります。 そんな時に遥香が出会ったのは、葛城圭一郎という礼儀正しいが陰気な男性。その葛城、人が最後に見る“走馬灯”を描く仕事を請け負う<ブレーメン・ツアーズ>の社員なのだという。 その葛城の依頼で遥香の家を訪ねてきたのは、昔ここで暮らしていたという老女の村松光子と息子の達也という母子。 その出会いから、遥香は幼なじみで同級生のナンユウくんとともに、村松光子のために走馬灯を描くという葛城の手伝いをすることになります。 葛城曰く、遥香もナンユウくんも、他人の思い出を見る力を持っているのだという。 久しぶりに読んだ重松作品。所々、これまでの重松作品から繋がっているものを感じます。 その意味で、本作は重松作品の集大成、と言って良いのではないかと思います。 そして終盤、社長の葛城晃太郎が遥香に言った2つの言葉が、深く胸に残ります。 ファンタジーな連作風物語、あるいは村松母子にかかる物語かと思いきや、後半になってストーリィはナンユウくん、そして遥香それぞれが抱えた問題へと収斂していきます。その筆さばきが実に上手い。 そして最後、3歳で別れて以来顔も覚えていない母親と遥香がようやく出会う、その場面が圧巻です。 懐かしむことのできる思い出があるかどうかが、その人の人生を支える・・・得心できるストーリィです。 久々に重松作品をたっぷり堪能した気分、満足です。 |
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