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がんを明るく生きる-前立腺癌の末期から生還した伊藤勇のサイトのホーム

末期癌より生還した伊藤勇の闘病と生き方の物語

(3) 身辺整理は会社売却から…経営者の決断、公的整理を優先

私は25歳でアパレル事業を起こし、40年間多くの社員を抱えた社長の立場にありました。社員やその家族、下請けの人達約500人の生活が私の肩に掛かっている訳で、「がんになったから」とか「余命がないから」と勝手に投げ出すことはできません。 告知された日はちょうど幹部会がある日でした。公園のペンチで頭を冷やして、自分のこれからを考えました。決断したら行動は早かったです。急いで帰社し、みんなを集めまして、「どや、自分が生きられるのはあと3ヶ月か1年と先生がいうから、この会社をだれか継ぐことができるか」と訊きました。しかし、こんな不景気な時にやれないという返事です。3つの事業所を分割してでもどうかとも言いましたが、自信がないと。娘婿たちも呼び寄せて同じことを言いましたが、景気の悪いときに怖い、という返事でした。

社会的責任を感じ、最後の締めくくりとして、社員に動揺を与えずにこの事業を終わらせる方法を真剣に考えました。私は、生死の瀬戸際に立たされた時一番大事なことは、私利私欲を外し正確かつ公平な決断をすることと考えましたので、社員つきでそのまま売却するのが最善と決断し、全力をあげて奔走しはじめました。 そしたら、わずか二週間くらいのうちに、譲ってもらってもいいです、という買い手が現れたのです。この社長さんなら間違いない、と思い、その人に買ってもらう決断を下しました。そして、余命告知の日からわずか2ヵ月後、経営者として40年間育ててきた会社のすべてを引き渡しました。

現在、更に成長し発展している会社の状態を拝見する時、私の決断が間違っていなかったことを確認すると共に、地域の発展に寄与してみえる社長に対しては、私を信頼し、私の心情を即座に汲み取り、よくぞ従業員もろとも買い取ってくれました、と感謝の気持で一杯になります。

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