古地磁気方向:グループ・レベルの解析; pstat と psvar
プログラム "pstat" と "psvar" は複数のサイト平均古地磁気方向とその極からなるグループ・レベルのデータについてフィッシャー統計を解析します.入力ファイルは "pdirec" からの出力ファイルである必要があります.下図はニュージーランド,第四紀タウポ火山からの古地磁気データを "pstat" で解析した例です(Tanaka et al., 1996).

平均の VGP とその 95% 信頼限界円 \(A_{95}\) は,個々のサイト平均古地磁気方向に対応する VGP のグループ平均及びその誤差として計算しています(即ち,古地磁気方向のグループ平均から極への変換ではない).プロット図には,個々の VGP の信頼限界楕円は描かれません. \(S\) は磁場または VGP の角度標準偏差で,次の公式で計算されます. \[ S^2 = S_T^2 - S_W^2/N_W, \] ここに, \(S_T\), \(S_W\), \(N_W\) はそれぞれ,サイト間角度標準偏差,それぞれのサイトで観測されたサイト内角度標準偏差の二乗平均平方根,それぞれのサイトで使用された試料数の平均です.コマンド S は \(S\) を計算する中心を地球上の任意の位置に指定できます(デフォルトは平均です).コマンド V はフィッシャー統計をノーマル方向とリバース方向で別々に表示します.コマンド D は平均から最も遠いデータ1つを統計から除外し,コマンド R はそれを戻します.

上図は "psvar" によるプロット図の例で,アイスランドの鮮新世溶岩層序からの古地磁気データを解析したものです(Tanaka and Yamamoto, 2016).プログラム "psvar" の "pstat" との違いは,前者が VGP パスを描くことです.個々の VGP の信頼限界楕円を描くことも "pstat" と異なる点です.個々の VGP の信頼限界楕円は個々の古地磁気方向の \(\alpha_{95}\) を極へ変換して描かれるのに対して,平均 VGP の信頼限界円 \(A_{95}\) は真円として描かれます(上の例では示されてません).他の異なる点としては, "psvar" には最も遠いデータを除外するコマンドはありません.コマンド W は連続した VGP に対して Watson and Beran (1967) の系列相関(serial correlation)テストを実行します.系列相関テストにおけるイテレーションの回数はコマンド N で指定できます(デフォルトは 2500).
プログラム "pstat" ("psvar") によるフィッシャー統計は,プロット図が新しくなるたびに, "group_name.PST" ("group_name.PSV") という名のファイルに自動的に上書きモードで書き出されます.ワトソン・ベランの系列相関テストの結果は, "group_name" という名で拡張子が ".WB", ".WB0", ".WB1" の3つのファイルに出力されます.
プログラムのダウンロード
参考文献:
- Tanaka, H., G.M. Turner, B.F. Houghton, T. Tachibana, M. Kono, and M.O. McWilliams, Palaeomagnetism and chronology of the central Taupo Volcanic Zone, New Zealand, Geophys. J. Int., 124, 919-934, 1996. (→ doi:10.1111/j.1365-246X.1996.tb05645.x)
- Tanaka, H., and Y. Yamamoto, Palaeointensities from Pliocene lava sequences in Iceland: emphasis on the problem of Arai plot with two linear segments, Geophys. J. Int., 205, 694-714, 2016. (→ doi:10.1093/gji/ggw031)
- Watson, G.S., and R.J. Beran, Testing a sequence of unit vectors for serial correlation, J. Geophys. Res., 72, 5655-5659, 1967.