「草野球の窓」

第38章
「力と技」

 西武の渡辺(久)投手がヤクルトに移籍することになった。渡辺投手は頑なまでに直球勝負にこだわり、そのための努力を積み重ねてきた。しかし、昨シーズンは勝ち星に恵まれず、直球の威力に陰りが見えてきた。ヤクルトではどのようなピッチングを見せてくれるか楽しみである。

 若いうちは基礎体力がある。したがって、基礎体力をベースにした力のプレーを目指すべきである。投手なら直球の球速を高める努力を、打者ならバットを鋭く、力強く振ることを心掛ける。しかし、ただ力任せに投げる、打つということではない。若い人のプレーを見ていると、その力が投球や打球に伝わっていない場合が多い。

 これは第一に、正しい投げ方や打ち方をしていないためだ。このことについては既に色々書いているので読み返していただきたい。 (第3章, 第20章, 第28章
 第二には、無駄な力が入り、逆にパワーを阻害しているためだ。例えばバットを構えた時、バットを振りはじめる時(テイクバック)などで肩に無駄な力が入り、バットの始動を遅らせてしまったり、頭が動いてミートポイントがずれてしまう。ど真ん中の球がきて、「いい球だ。ヨーシ、ホームランだ」と思って力一杯振ったのに、ボテボテの内野ゴロに終わってしまうのは典型的な例だ。

 よく「八分の力で打て/投げろ」と言われる。これは本当にパワーを集中すべきインパクトの瞬間における力を8割に減じるという意味ではない。8割の力で打ったり、投げたりするように心掛けることによって無駄な力を省き、インパクトの瞬間に100%の力を集中させるという意味だ。

 パワー溢れるプレーをすることは楽しいし、何といっても野球の醍醐味でもある。しかし、30歳を過ぎる頃から今までとは様子が異なってくる。打てる球が打てなくなり、捕れる球が捕れなくなり、打ち取れるはずの球が打ち込まれるようになる。基礎体力の低下に伴って力も低下するためだ。

 では、野球を諦めなければならないのか。実際、この年齢に達すると引退する草野球人が多い。仕事が忙しい、家庭サービスしなければならないなどの理由で引退する人も多いが、力の衰えを感じてつまらない、若い人にかなわないといった理由で草野球から身を引く場合も多いのである。

 力を補うものが「技」である。投手なら「配球の妙」を覚えるし、打者ならば配球を読んだり、局面に応じた打ち方を覚える。あるいは「間」の使い方を覚える。草野球であれば、「技」があれば十分に「力」を補えるし、40歳になっても野球を楽しむことができる。

 だが、「技」は一朝一夕にはマスターできない。それまでの練習や試合で徐々に覚えていくものだ。それ故に、継続は力なのだ。

 これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。



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