第1部:資本の生産過程
第5篇:絶対的および相対的剰余価値の生産
機械経営はこれまでにない量の生活物資をその社会にもたらすとはいえ、ある社会のある一時期においては、生活水準は一定程度維持されるから、ある人が、衣食住などにかかわって一般的に必要とする最低限度の生活手段の量は劇的に増加することはない。
労働力の価値は、平均労働者が慣習的に必要とする生活手段の価値によって規定されている。この生活手段の総量は、その形態が変動することはあっても、一定の社会の一定の時代には与えられており、それゆえ不変の大きさとして取り扱われうる。変動するのはこの総量の価値である。[542]
しかし、労働力の価値の大きさを規定するのは「生活手段の価値」だけではない。「労働力の育成費」――教養・教育関係費、「労働者家族の再生産費」などが、価値規定にかかわってくる。ただし、この篇におけるマルクスの研究においては、これらの価値規定要因は除外されている。したがって、考察の前提としては、次のように想定される。
このように想定すると、労働力の価格との相対的な大きさは、次の三つの事情によって制約されていることがわかった。
- 労働日の長さ、すなわち労働の外延的大きさ。
- 労働の標準的強度、すなわち労働の内包的大きさ。したがって一定の時間内に、一定の労働分量が支出されるということ。
- 最後に労働の生産力。したがって生産諸条件の発展の程度によって、同分量の労働が同じ時間内に、より大きいまたはより小さい分量の生産物を提供するということ。
これらの三つの要因の一つが不変で二つが可変であるか、または、二つの要因が不変で一つが可変であるか、または最後に、三つの要因すべてが同時に可変であるかによって、きわめて多様な組み合わせが可能である……以下においてはその主要な組み合わせだけを述べる。[542-3]