税務トピックス一覧

【令和2年分年末調整】基礎控除申告書について

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令和2年分の年末調整から、配偶者控除等申告書の様式が新しくなります。
その名も「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」。どうしてこうなったのかというと、令和2年分から始まる「基礎控除額の見直し」と「給与所得控除額の引き下げ」という2つの改正によって、新たに「基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」が誕生し、さらにそれが「配偶者控除等申告書」と兼用様式になったからです。
今回は、新様式のうち、「基礎控除申告書」の合計所得金額の見積額の計算欄と控除額の計算欄について解説します。
なお新様式は、国税庁のホームページからダウンロードできます。
国税庁:給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_73.htm

■基礎控除申告書:「合計所得金額の見積額の計算」

合計所得金額の見積額の計算欄には、年末調整を受ける従業員本人の合計所得金額の見積額(年末までの見込額)を記載します。

合計所得金額とは

「合計所得金額」とは、給与所得やそれ以外の所得も含めた1年間の全ての所得の合計です。
源泉分離課税が適用されるものは対象になりません。
また、事業所得、不動産所得、山林所得、総合課税の譲渡所得にマイナスがあれば、一定のルールで他の所得と損益通算した後の金額となります。

「給与所得」か「給与所得以外の所得」の2区分に

合計所得金額については、シンプルに「給与所得」と「給与所得以外の所得」の2つに所得を区分して記載すればよいことになりました。
「給与所得以外の所得」は所得金額の合計のみで構いません。
記憶にある方もいらっしゃると思いますが、旧様式の「配偶者控除等申告書」にあった合計所得金額の記載欄は、所得の種類ごとに収入金額や必要経費の欄があり、会社にオープンにする情報量が非常に多かったですよね。確定申告に不慣れな方にとっては所得の区分なども難しく感じられたのではないでしょうか。
よって、前年より書きやすくなったのではないかと思います。
基礎控除申告書では、合計所得金額から、基礎控除の額の判定と配偶者控除等の控除額区分の判定を行います。

■基礎控除申告書:「控除額の計算」

「基礎控除の額」の欄には基礎控除の適用額を、「区分1」と書かれた欄には配偶者控除等を申告する場合、A~Cの区分を記載します。

基礎控除の額

基礎控除は、年末調整や確定申告で全員が受けられるおなじみの所得控除です。
これまでは一律38万円でしたが、令和2年分からはその人の「合計所得金額」によって金額が変わります。

【令和2年分以降の基礎控除】


合計所得金額

基礎控除

2,400万円以下 ---48万円
2,400万円超2,450万円以下 ---32万円
2,450万円超2,500万円以下 ---16万円
2,500万円超 ---なし

上記のとおり、基礎控除が適用できるのは、合計所得金額が2,500万円以下の人です。
2,400万円を超えると、基礎控除の額は下がります。
なお、給与収入が2,000万円を超える人は、そもそも年末調整はできず確定申告をしてもらうことになるので注意してください。

配偶者控除等の控除額区分

合計所得金額が1,000万円以下であれば、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるための本人の所得要件を満たします。
控除額は、900万円以下(A)、950万円以下(B)、1,000万円以下(C)の3段階で変わるので、AからCのうち該当する区分を「区分1」の欄に記載します。
続いて右隣の配偶者控除等申告書に移り、配偶者本人の所得等から「区分Ⅱ」を判定し、配偶者控除・配偶者特別控除の額を算定します。


2020年10月26日

新型コロナ税特法による高額特定資産の免税制限の解除

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課税事業者が高額特定資産を購入すると、翌年から一定の間、消費税の免税事業者になることが制限されます。
新型コロナ税特法ではこの制限を解除することが可能です。
たとえば、コロナ禍に入る前に課税事業者になることを選択して大型の設備投資を実行した事業者の方は、要件に該当しないか一度確認してください。

■高額特定資産の取得による免税制限とは

まずは新型コロナ税特法の前提となる、高額特定資産の取得による免税制限を確認しておきましょう。

翌期から2年間免税に戻れない

課税事業者が高額特定資産を購入すると、その課税仕入れのあった課税期間の初日から3年が経過する日の属する各課税期間は、免税事業者になることが制限されます。(消費税法第12条の4第1項)

【例】12月決算法人の会社(簡易課税を選択していない※)がX1年5月1日(課税期間:X1.1.1~X1.12.31)に高額特定資産を取得した場合
→免税事業者になれない課税期間
 ・X2.1.1~X2.12.31
 ・X3.1.1~X3.12.31
※簡易課税を選択している課税期間中に取得したときは、この制限は受けません。

高額特定資産とは

税抜き1,000万円以上の棚卸資産や調整対象固定資産のことです。(消費税法施行令第25条の5)
調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の一定の固定資産のうち、税抜き100万円以上のものをいいます。(同令第5条)
1,000万円・100万円の判定は、一の取引単位で計算した価格で行います。
一の取引単位とは、通常一組、一式で取引をするようなものは一組、一式とするというものです。

■新型コロナ税特法で免税制限がなくなる

新型コロナ税特法では、一定の収入減少要件を満たす事業者が、税務署長の承認を受けることで、高額特定資産の取得による免税制限を解除できるとしています。(新型コロナ税特法第10条第5項)

収入減少要件とは

令和2年2月1日~令和3年1月31日までの間のうち、任意の連続した1ヶ月以上の期間の事業による収入が、前年同期比で概ね 50%以上減少していることが要件です。
この収入が減少している期間を含む課税期間のことを「特定課税期間」といいます。
「特定課税期間」がいつになるかで、この特例を申請できる期限が大きく変わります。

いつまでに購入した高額特定資産が対象になるか

「特定課税期間」の初日以後、2年を経過する日の属する課税期間まで(通常、特定課税期間とその翌期)に仕入れた高額特定資産です。

法定の要件で免税になれない事業者は対象外

基準期間や特定期間の課税売上高等が1,000万円を超えるなど、税法上の要件で納税義務が生じる課税期間は、この特例の対象になりません。
このことからこの特例を使いやすいのは、コロナ禍が始まる前に、消費税の還付を受けるため課税事業者を選択し、設備投資を実行した事業者と考えられます。(もちろんこれ以外にも使えるケースはあります)

■新型コロナ税特法を受けるための手続き

免税制限を解除するには、税務署長の承認を受けることが必要です。

必要書類

承認を受けるには、次の申請書類を期限内に提出します。
・新型コロナ税特法第 10 条第4項から第6項の規定に基づく納税義務の免除の特例不適用承認申請書
・収入減少が確認できる書類(例:損益計算書、月次試算表、売上帳、現金出納帳、預金通帳の写しなど)

申請期限

次の期日のいずれか遅い日となります。
ア:特定課税期間の確定申告書の提出期限
イ:高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の末日

アは、国税通則法第11条による災害その他やむを得ない理由があるとして申告期限の個別延長を受けている場合、その延長された後の期限となります。

申請期限の事例

【例】
・10月決算法人
・令和元年12月に高額特定資産を取得
・新型コロナウイルスの影響で令和2年5月中の売上高が前年同期比で60%減少
・国税通則法による申告期限の延長は受けていない

<申請期限>
この例の「特定課税期間」は令和2年10月期(R1.11.1~R2.10.31)です。
したがって申請期限は「令和2年12月末」になります。

<解説>
ア:特定課税期間の確定申告書の提出期限
 →令和2年12月末
イ:高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の末日
 →令和元年10月31日
いずれか遅い日なので、アとなります。
この事例で無事に承認を受けることができれば、本来、課税事業者となるはずの令和3年10月期~令和4年10月期は免税事業者になることができます。(法定の要件で免税事業者になれない場合を除く)


参考資料
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/keizaitaisaku/shohi/pdf/syouhizei3.pdf


2020年10月26日

「新型コロナによる消費税の課税事業者の選択にかかる特例」

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今回は、新型コロナ税特法による消費税の課税事業者の選択にかかる特例の一部について解説します。
(参考)国税庁「新型コロナ税特法に係る消費税の特例に関するQ&A」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/keizaitaisaku/shohi/index.htm

■新型コロナによる消費税の課税選択の特例って何?

現在、消費税の課税事業者の選択には、以下の規制があります。

・「課税事業者⇔免税事業者」の選択は、課税期間が開始する「前」に届け出なければならない

これに対し、新型コロナによって一定の売上減少のある事業者は、

・「課税事業者⇔免税事業者」の選択の手続き期限がいつもより長くなる

といったメリットのある特例が使えるようになりました。
この特例を使えば、通常時では絶対にできない「課税事業者→免税事業者」に1年でシフトすることも可能となります。
なお、基準期間等の課税売上高によって強制的に課税事業者になった事業者を免税にする特例ではないので注意してください。

特例の対象となる事業者

令和2年2月1日~令和3年1月31日までの間のうち、任意の連続した1ヶ月以上の期間の事業による収入が、前年同期比で概ね 50%以上減少していると認められる事業者です。
1ヶ月以上の期間であればよいため、比較可能であれば40日間などでも構いません。
事業開始から1年未満の事業者には、別途比較方法があります。

特例を使うメリットのある事業者

この特例を使うメリットのある事業者は、たとえば
・新型コロナの影響で設備投資を行い、課税事業者を選択したい事業者
・新型コロナの影響で売上が減少したため課税事業者の選択を一旦やめたい事業者
などであると考えられます。
他にも新設法人で一定の固定資産を購入した事業者や、1,000万円以上の一定の資産を購入したことで免税に戻れない事業者にもメリットのある特例なのですが、今回の記事ではその部分は省略しています。

■課税事業者を選択する(やめる)手続きの期限が長くなる

それでは特例のメリットである、課税事業者を選択する(やめる)ための手続き期限がいつもより長くなることについて解説します。

通常は、課税期間の開始「前」に届け出なければならない

課税事業者となることをあえて選択する(やめる)とき、通常は選択したい(やめたい)期の始まる「前」に税務署に届出書を提出しなければなりません。

特例では開始「後」でも申請によって選択可能に

特例では、選択したい(やめたい)期が始まった「後」でも「課税事業者⇔免税事業者」を申請によって選択することが可能です。
申請の期限は、50%以上の収入減があった期間を含む課税期間(以下、「特定課税期間」)を基準とし、下記のとおり決められています。

【課税事業者を選択する場合】(※)
特定課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内(個人事業主は、その年の12月31日の属する課税期間の場合は3ヶ月以内)

【課税事業者の選択をやめる場合】
A~Cの3パターンに分かれます。
A:特定課税期間からやめる場合(※)
特定課税期間にかかる確定申告書の提出期限
B:特定課税期間の翌期からやめる場合(※)
特定課税期間の末日が、課税事業者の選択によって課税事業者となった課税期間の初日以後2年を経過する日以後に到来する場合は、特定課税期間にかかる確定申告書の提出期限
C:上記以外でやめる場合
 「2年経過日の属する課税期間の末日」と「課税期間の選択をやめようとする課税期間の末日」とのいずれか早い日 (※)国税通則法第11条の規定によって確定申告期限の延長を受けられる場合があります。

わかりづらいのは、【課税事業者の選択をやめる場合】のA~Cの違いだと思います。
これについては、後に10月決算法人の事例で使い分けの方法を解説します。
ただし、ご自身の企業で適用される際は必ず税理士や税務署に期限の確認をとりながら慎重にすすめてください。

特例の申請方法

専用の「特例承認申請書」を作成し、上記の期限内に税務署に提出する必要があります。
このとき、
・収入の減少がわかる書類(損益計算書や試算表、現金出納帳など)
・「消費税課税事業者選択届出書」(「消費税課税事業者選択不適用届出書」)
も一緒に提出します。

■免税事業者に戻るための届け出ができない期間がなくなる

続いて特例のもう1つのメリットである、免税事業者に戻るための届け出ができない期間がなくなることについて解説します。

通常は数年間、免税事業者に戻れない

課税事業者を選択すると、通常は、少なくとも2期、免税事業者に戻ることができません。
免税事業者に戻るには、戻りたい期の開始「前」に「課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があるのですが、その提出が可能となるのは、翌課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後とされているからです。(消費税法第9条第6項)
つまり課税期間が1年であれば、提出が可能となるのは課税事業者を選択した翌期からになります。
すると最短でも免税事業者に戻れるのは、翌々期になるということです。
さらにこの期間中に、調整対象固定資産(税抜き100万円以上の固定資産など)を購入すると、その期を含めて3期は免税事業者に戻れません。
これは最短で届出書を提出できるのが、購入した期の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後とされているためです。(同法第9第7項)

特例では提出の制限がない

特例では上記の「課税事業者選択不適用届出書」を提出できない期間のルールが適用されません。
これにより、翌期から課税選択をやめることができます。

■特例を使った具体的事例

最後に、10月決算法人が
・特例によって課税事業者になる場合
・翌期からすぐに免税事業者に戻る場合
の各申請期限について解説します。

【事例1】課税事業者を選択するとき

<事例> ・10月決算法人(課税期間1年)
・特定課税期間 令和2年10月期(R1.11.1~R2.10.31)
・(状況)令和2年5月1日~同月31日の売上高が前年同期比で60%減少。このことから、令和2年7月に業態の変更や感染防止対策に伴う設備投資を実施。令和2年10月期から課税事業者を選択し、消費税の還付を受けたい。

<申請期限>
・令和2年12月末
上記の期限までに手続きをすることで、通常の期限どおりに届け出を行ったものとみなされます。

【事例2】事例1ですぐに免税事業者に戻りたい場合

<事例>
・事例1により令和2年10月期に課税事業者になった
・翌期(令和3年10月期)からすぐに免税事業者に戻りたい

<申請期限>
・令和3年10月末
この場合、「特定課税期間の末日」を基準に、前述の【課税事業者の選択をやめる場合】のBとCのどちらを適用するかを検討します。(Aは特定課税期間から選択をやめる場合の期限ですので、この事例には関係ありません。)
まず、「特定課税期間の末日」は令和2年10月31日です。
したがってBは使えません。
なぜなら特定課税期間の末日(R2.10.31)が、課税事業者になった課税期間(R1.11.1~R2.10.31)の初日以後2年を経過する日(R3.10.31)よりも前だからです。
よって、この場合はCの
・2年経過日の属する課税期間の末日
・課税期間の選択をやめようとする課税期間の末日
とのいずれか早い日が手続きの期限になります。
この事例ではどちらも令和3年10月31日ですので、この日までに申請を行うことになります。


参考資料
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/keizaitaisaku/shohi/pdf/syouhizei3.pdf
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/keizaitaisaku/shohi/pdf/syouhizei1-2.pdf


2020年09月30日

「社会保険の適用対象が拡大します(令和4年10月)」

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「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が、令和2年6月5日に公布されました。
改正の趣旨は、より多様な形で働く人が増える社会情勢の変化に伴い、高齢期の財政基盤の充実を図ることです。
改正内容のうち、従業員を雇用する会社にとって重要となるのは、社会保険の適用拡大です。
施行日は令和4年10月1日ですが、段階的に改正される部分もあります。

■被用者保険の適用拡大とは

現在、パートタイマーやアルバイトといった短期労働者のうち、社会保険に加入する人は限られています。
1週間の所定労働時間・1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上であれば社会保険が適用されますが、それ以外は、以下の5つの要件(現行)をすべて満たしている場合でない限り、適用の対象になりません。
・事業所の被保険者が常時500人超(※)
・雇用期間が1年以上見込まれる
・週の所定労働時間が20時間以上
・賃金月額が8.8万円以上
・学生でない
改正後は、太字の要件が下記のとおり緩和されます。
(※)常時500人以下の事業所であっても労使の合意があれば、現行ルールでも社会保険に加入できます。


現行
・事業所の被保険者が常時500人超
・雇用期間が1年以上見込まれる
・週の所定労働時間が20時間以上
・賃金月額が8.8万円以上
・学生でない 【令和4年10月~】

 

改正後
・事業所の被保険者が常時100人超
・雇用期間の要件は撤廃。(フルタイム等と同様の2ヶ月超の要件が適用される)
【令和6年10月~】
・事業所の被保険者が常時50人超
他の3要件はそのままとなります。

事業所の被保険者数とは
現行は、「事業所の被保険者が常時500人超」ですが、これが段階的に「100人超」(令和4年10月~)→「50人超」(令和6年10月~)に引き下げられます。
事業所の被保険者数は、適用拡大前の被保険者の人数をカウントします。

<カウント対象>
・フルタイムの労働者
・週の労働時間等が4分の3以上のパートやアルバイト等

被保険者数は、月ごとにカウントし、直近12ヶ月のうち6ヶ月で基準を上回ると適用対象になります。

雇用期間の要件は撤廃
現行では、雇用期間が1年未満の契約であれば、社会保険対象外の要件の1つを満たしますが、改正後はこれが撤廃されます。(令和4年10月~)
撤廃された後は、フルタイム等の加入条件と同様の「2ヶ月超」が適用要件の1つになります。

■従業員への説明を

改正後、新たに対象となりそうな従業員には、社会保険適用後のことをよく説明する必要があります。
社会保険に加入すれば当然、事業所と折半で保険料を負担することになりますので、それまで国民健康保険・国民年金に加入していた人は、給与の手取りが減ります。
社会保険のしくみをよく理解していなければ、不安に感じるでしょう。
説明のポイントとしては、現在加入している国民健康保険や国民年金との違いです。
まず、国民健康保険と会社の健康保険の大きな違いの1つに、傷病手当金の支給があります。
被保険者がケガや病気で働けなくなって仕事を休み、給与が支給されない場合の保障ですが、国民健康保険にはありません。(現在は新型コロナウイルス感染症の関係で支給される場合があります)
また、厚生年金に一定期間加入すれば、将来、老齢厚生年金が受け取れます。
さらに国民年金は一律で月額1万6,000円ほどの負担となりますが、厚生年金保険料は標準報酬月額に合わせて労使折半となります。
標準報酬月額によりますが、負担額が下がるケースの方が多いでしょう。
このあたりを伝えれば、理解してもらいやすいのではないでしょうか。

 

2020年08月26日

「中堅企業も対象に!最大600万円が支給される家賃支援給付金とは」

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新型コロナウイルス感染症による企業の売上減少などをカバーするため、さまざまな支援金や補助金が打ち出されています。
今回ご紹介する「家賃支援給付金」は、持続化給付金と同様に、中小企業者や個人はもちろん、資本金10億円未満の中堅企業や、会社以外の法人(医療法人、一般社団法人、NPO法人など)も対象になります。
要件を満たせば、持続化給付金よりも多い給付金(最大600万円)が一括支給で受けられますので、忘れずにチェックしましょう。

■家賃支援給付金の趣旨

家賃支援給付金は、5月の緊急事態宣言の延長等によって、売上が減少した企業の財政を家賃の補助で下支えするというものです。
したがって建物や土地の「賃料」を毎月支払っている企業が対象になります。
テナント事業者などが典型ですが、それ以外にも、駐車場や資材置き場などとして事業に使用する土地の賃料がある事業者も対象です。


【申請期限】
2020年7月14日~2021年1月15日までとなります。
申請は、家賃支援給付金ポータルサイトから行います。
(参照)経済産業省ホームページ
https://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/index.html

■家賃支援給付金の対象者

【主な要件】
家賃支援給付金を受けるには、原則として次の要件を満たす必要があります。
○2019年12月31日以前から事業収入を得ており、今後も事業を継続する意思があること
○2020年5月から2020年12月までの間で、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、以下のいずれかにあてはまること
・いずれか1か月の売上が前年の同じ月と比較して50%以上減っている
・連続する3か月の売上の合計が前年の同じ期間の売上の合計と比較して30%以上減っている
○他人の土地・建物をご自身で営む事業のために直接占有し、使用・収益(物を直接に利活用して利益・利便を得ること)をしていることの対価として、賃料の支払いをおこなっていること
(以下、法人のみ)
○4月1日時点で、次のいずれかにあてはまる法人であること
ただし、組合もしくはその連合会または一般社団法人については、その直接または間接の構成員たる事業者の3分の2以上が個人または次のいずれかにあてはまることが必要です。
・資本金の額または出資の総額が、10億円未満であること
・資本金の額または出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下

【いずれか1か月の売上が前年同月比50%以上減の計算】
<計算方法>
2020年の任意の月の売上 ≦ 2019年の同じ月の売上×0.5

【例】
・2019年5月の売上高 196万円
・2020年5月の売上高 94万円

94万円(2020年)≦ 98万円(2019年:196万円×0.5)

よってこの場合は、要件に該当します。

【連続する3か月の売上合計が前年同期30%以上減の計算】
<計算方法>
2020年の連続3か月の売上合計 ≦ 2019年の同期間の売上合計×0.7
【例】
・2019年5・6・7月の売上高 80万円・90万円・100万円(合計270万円)
・2020年5・6・7月の売上高 50万円・60万円・70万円(合計180万円)

180万円(2020年)≦ 189万円(2019年:270万円×0.7)

よってこの場合は、要件に該当します。

【2019 年5月~12月に設立した場合】
新規設立・新規開業によって、2020年の5月~12月の売上と前年同月の売上を比較することができない場合は、設立日から2019年12月31日までの平均売上とすることができます。

■家賃支援給付金の受給額

【受給額の計算方法】
家賃支援給付金は、毎月の賃料から算定した給付額(月額)の6倍です。
給付額(月額)の算定方法は、法人と個人で異なります。
<法人>
・月額75万円以下 支払賃料の3分の2
・月額75万円超  50万円+75万円の超過分×3分の1
・上限は100万円・・・(6倍なので)最大600万円

【例】
月額賃料120万円を支払っている場合
50万円+(120万円-75万円)×3分の1=65万円
65万円×6=390万円

<個人事業主>
月額37.5万円以下 支払賃料の3分の2
月額37.5万円超  25万円+37.5万円の超過分×3分の1
・上限は50万円・・・(6倍なので)最大300万円

【例】
月額賃料120万円を支払っている場合
25万円+(120万円-37.5万円)×3分の1=52.5万円
52.5万円×6=315万円

2020年08月26日

【新型コロナ対策】国税の納税が猶予される「特例制度」

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■納税を猶予する「特例制度」

新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する国税について、一定の要件を満たせば納税の猶予を受けられる「特例制度」が新設されています。
通常時でも、納税を猶予する制度には、「納税猶予」や「換価の猶予」といったものがありますが、新設された「特例制度」では、より有利な条件で猶予を受けることができます。
具体的には、税額に「延滞税」(納税が遅れることによって税額に上乗せされる"利息"のような税金)がかからない上、担保の提供が不要といったメリットがあります。

■「特例制度」の具体的な内容

対象となる税目

所得税、法人税、消費税等、ほぼすべての税目が対象になります。
たとえば、令和元年分の所得税や個人事業主の消費税、令和3年1月31日までに納期限が到来する法人の法人税や消費税などが対象となります。
なお、法人事業税や法人住民税など、自治体の税金についても同様の対応が行われていますので、それぞれのホームページ等でご確認ください。

猶予される期間

原則1年間の納税が猶予されます。
その間の任意の時期に一括納付をすることもできますし、分割納付も可能です。

「特例制度」を利用できる事業者の要件

「特例制度」を利用できるのは、次の要件を満たす事業者になります。
・令和2年2月1日以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期と比べておおむね 20%以上減少していること
・一時に納税することが困難であること
・納期限までに申請すること

「一時に納税することが困難」とは、納付すべき国税の全額を一時に納付する資金がないこと、又は納付すべき国税の全額を一時に納付することにより納税者の事業の継続若しくは生活の維持を困難にすると認められることをいいます。
出典:「国税の納税の猶予制度FAQ」(問16)
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/pdf/0020004-96.pdf

■通常の「納税猶予」「換価の猶予」との違い

もともと国税には、新型コロナウイルス感染症とは関係なく、納税が難しい場合に利用できる、「納税猶予」や「換価の猶予」という制度を利用することができます。
いずれも原則として1年間の猶予が認められます。
延滞税がかかる点や、原則、担保の提供が必要な点で、「特例制度」ほどのメリットはありません。
しかし延滞税の税率は、通常より低く設定されていますので、何もしないよりは、現行の制度を利用した方が得です。
「特例制度」には収入の減少要件等がありますので、要件にあてはまらず利用できないときも、現行の制度の適用を検討しましょう。 詳しくは、税務署や顧問税理士などにご相談ください。


2020年07月28日

【新型コロナ対策】ものづくり・持続化・IT導入補助金の「特別枠」について

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■補助金の「特別枠」と「事業再開支援パッケージ」

「ものづくり・商業・サービス補助金」、「持続化補助金」、「IT導入補助金」とは、中小企業(法人・個人事業主)の生産性向上のための設備投資などを支援する、国からの代表的な補助金です。
現在、この3つの補助金に、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮した「特別枠」が設けられています。
「特別枠」は、通常枠よりも高い補助率が設定され、優先的に支援が受けられるほか、通常枠よりも補助対象が広がっているものもあります。
また、緊急事態宣言の解除を踏まえた「事業再開支援パッケージ」が策定されたことにより、特別枠の一部の補助率がさらに高まるとともに、一部の補助金の上乗せとなる「事業再開枠」が創設されました。
「事業再開支援パッケージ」の内容が反映された各補助金の公募は、5月22日からスタートしています。

■特別枠の申請要件

特別枠の申請要件は、補助対象経費の6分の1以上が、次項の類型A・B・Cのいずれか1つにあてはまることが必要です。
「ものづくり・商業・サービス補助金」、「持続化補助金」、「IT導入補助金」のいずれも共通の要件となります。

特別枠の類型

・類型A:サプライチェーンの毀損への対応
顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行うこと
(例:部品調達困難による部品内製化、出荷先営業停止に伴う新規顧客開拓)
・類型B:非対面型ビジネスモデルへの転換
非対面・遠隔でサービス提供するためのビジネスモデルへ転換するための設備・システム投資を行うこと
(例:店舗販売からEC販売へのシフト、VR・オンラインによるサービス提供)
・類型C:テレワーク環境の整備
従業員がテレワークを実践できるような環境を整備すること
(例:WEB会議システム、シンクライアントシステム等の導入)

出典:経済産業省支援策パンフレット「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」(令和2年6月5日19:00時点版)より
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

特別枠の補助率の引き上げ

もともとの「特別枠」の補助率は、類型A・B・Cともに「3分の2」でした。
これが「事業再開支援パッケージ」が策定されたことにより、類型B・Cのみ、「4分の3」に引き上げられています。
次項で、3つの補助金の種類ごとに、補助率や補助金額等を、通常枠と比較しながらまとめます。

■特別枠の補助金額・補助率等のまとめ

ものづくり・商業・サービス補助金

<通常枠>
・補助上限額 1,000万円
・補助率 中小企業2分の1、小規模事業者3分の2
<特別枠>
・補助上限額 1,000万円
・補助率(類型A):3分の2、(類型B・C):4分の3
<備考>
新製品・サービス・生産プロセスの改善に必要な設備投資の補助事業。
中小企業・小規模事業者が対象。
特別枠は、広告宣伝・販売促進費も補助対象となる。

持続化補助金

<通常枠>
・補助上限額 50万円
・補助率 3分の2
<特別枠>
・補助上限額 100万円
・補助率(類型A):3分の2、(類型B・C):4分の3
<備考>
販路開拓などの取り組みを支援する補助事業。
小規模事業者が対象。
一般型とコロナ特別対応型がある。

IT導入補助金

<通常枠>
・補助上限額 30~450万円
・補助率 2分の1
<特別枠>
・補助上限額 通常枠と同じ
・補助率(類型A):3分の2、(類型B・C):4分の3
<備考>
ITツール導入による業務プロセスの改善と効率化を支援する補助事業。
中小企業・小規模事業者が対象。
特別枠は、PC・タブレット等のハードウェアにかかるレンタル費用も補助対象となる。

■「事業再開枠」による補助金の上乗せ

「事業再開支援パッケージ」の策定により、「事業再開枠」が創設されました。
「事業再開枠」とは、「持続化補助金(特別枠・通常枠)」と「ものづくり補助金(特別枠)」の採択者のうち、一定の経費の支出がある場合に、補助金額を最大50万円上乗せするものです。
一定の経費には、消毒、マスク、清掃、間仕切り、換気設備等の費用など、業種別ガイドラインに沿った経費が該当します。
補助率は、定額補助(10分の10、上限は50万円)です。
39県で緊急事態宣言が解除された5月14日以降に発生した経費が対象になります。

■補助金を検討するときの注意点

資金繰りにゆとりがないときは後回し

補助金は、あくまで今後の事業展開のための投資を支援する「後払い」の補助です。
したがって、売上の著しい減少によって、今まさに資金繰りにゆとりがないときは、まずは「持続化給付金」や自治体の給付、日本政策金融公庫等の融資などを検討しましょう。

必ず最新情報を

今回の記事は、経済産業省のホームページ「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」(令和2年6月5日19:00時点版)などを参考に作成しています。
最新の情報は、申請前に各補助金の事務局が公開する公募要領などをご確認ください。

2020年07月28日

新型コロナウイルス感染症関連の公的融資まとめ

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今回は、新型コロナウイルス感染症関連で、事業者が受けられる公的融資をまとめます。
なおこの記事は、経済産業省の支援策パンフレット「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆さまへ」(令和2年5月22日20:00時点版)を参考に作成しています。
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf


主な融資の一覧



融資機関等

融資名

日本政策金融公庫 セーフティネット貸付
新型コロナウイルス感染症特別貸付
新型コロナウイルス対策マル経融資
商工組合中央金庫
(商工中金) 危機対応融資
信用保証制度 セーフティネット4号・5号
危機関連保証

■セーフティネット貸付

融資対象者

新型コロナウイルス感染症による売上減少などの影響が見込まれる事業者が対象になります。
セーフティネット貸付とは既存の融資で、通常は売上高5%減少などの数値要件がありますが、新型コロナウイルス感染症の影響が見込まれる場合は、これに関わらず融資対象になります。

融資限度額

・国民生活事業 4,800万円
・中小企業事業 7.2億円

貸付期間(据置期間)

・設備資金15年以内(3年以内)
・運転資金8年以内(3年以内)
据置期間とは、元金の返済を不要とする期間のことです。

利率

基準利率(引き下げなし)

■新型コロナウイルス感染症特別貸付

融資対象者

新型コロナウイルス感染症の影響で、次のA、Bのいずれか一方にあてはまる事業者が対象になります。





A
最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している事業者

B
業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合は、最近1ヵ月の売上高が下記のいずれかの売上高と比較して5%減少している事業者
・過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高
・令和元年12月の売上高
・令和元年10月~12月の平均売上高

なお、Aの期間で適切な比較ができない事業者も、Bの要件で申請できる場合があります。

【Bの要件で申請できる事業者の例】
・最近店舗が増えた事業者
・合併や業種の転換を行った事業者
・ベンチャー・スタートアップ企業のように、短期間に売上増加に直結する設備投資や雇用拡大を行った事業者

参照:日本政策金融公庫HP「新型コロナウイルス感染症特別貸付に関するQ&A」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/pdf/covid_19_faq.pdf

融資限度額

・国民生活事業 6,000万円
・中小企業事業 3億円

貸付期間(据置期間)

・設備資金20年以内(5年以内)
・運転資金15年以内(5年以内)

利率

・国民生活事業
 基準利率(3,000万円を限度に、当初3年間0.9%引き下げ)
・中小企業事業
 基準利率(1億円を限度に、当初3年間0.9%引き下げ)
引き下げられた利子はさらに「特別利子補給制度」の対象となり、別途要件を満たせば、実質無利子化となる見通しです。

■新型コロナウイルス対策マル経融資

融資対象者

マル系融資とは、小規模事業者を対象とする担保・保証人を不要とする融資です。
申請するには、商工会議所や商工会等の推薦を受ける必要があります。
今回、新型コロナウイルス感染症の影響によって最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している事業者であれば、通常のマル系融資に別枠で1,000万円が加わった「新型コロナウイルス対策マル経融資」を申し込むことができます。

融資限度額

通常枠2,000万円+別枠1,000万円

「別枠」の貸付期間(据置期間)
・設備資金10年以内(4年以内)
・運転資金7年以内(3年以内)
別枠の据置期間は、通常枠よりも2年長く設定されています。
利率

年1.21%(※)
(別枠1,000万円を限度に、当初3年間0.9%引き下げ)
引き下げられた利子はさらに「特別利子補給制度」の対象となり、別途要件を満たせば、実質無利子化となる見通しです。
(※)利率は令和2年5月1日時点のもの

■危機対応融資

融資対象者

新型コロナウイルス感染症の関係で、次のA、Bのいずれか一方にあてはまる事業者が対象になります。





A
最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している事業者

B
業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合は、最近1ヵ月の売上高が下記のいずれかの売上高と比較して5%減少している事業者
・過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高
・令和元年12月の売上高
・令和元年10月~12月の平均売上高

新型コロナウイルス感染症特別貸付と同様に、Aの期間で適切な比較ができない事業者は、Bの要件で申請できる場合があります。

【Bの要件で申請できる事業者の例】
・最近店舗が増えた事業者
・合併や業種の転換を行った事業者
・ベンチャー・スタートアップ企業のように、短期間に売上増加に直結する設備投資や雇用拡大を行った事業者

融資限度額

3億円

貸付期間(据置期間)

・設備資金20年以内(5年以内)
・運転資金15年以内(5年以内)

利率

基準利率 1.11%(※)
(1億円を限度に、当初3年間0.9%引き下げ)
引き下げられた利子はさらに「特別利子補給制度」の対象となり、別途要件を満たせば、実質無利子化となる見通しです。
(※)利率は和2年5月1日時点のもの(貸付期間5年の場合)

■特別利子補給制度

日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」・「新型コロナウイルス対策マル経融資」、商工中金等の「危機対応融資」では、一定額までの融資について、当初3年間の利子が引き下げられます。
さらに上記の融資のうち一定の要件を満たすものは、「特別利子補給制度」によって、当初3年間に支払った利子を後から金銭で補給してもらうことができます。
これを受ければ、上記の融資は、当初3年間は実質無利子で受けることができます。
なお申請方法などは、現時点では未定です。

適用対象

個人、法人のいずれも受けることができます。

適用要件

・小規模事業者(※)のうち法人
→売上高15%減少
・中小企業者
 →売上高20%減少
(※)従業員20人以下(卸売、小売、サービス業は5名以下)
上記にあてはまらない個人事業主は、特に要件はありません。

利子補給の期間

・借入後3年間
なお、令和2年1月29日以降の借入であれば、遡及適用が可能です。

補給対象の上限

日本政策金融公庫の融資:国民生活事業3,000万円、中小企業事業1億円
危機対応融資:1億円
これらは新規に受ける融資と既往債務を借り換えた額との合計になります。

■セーフティネット保証4号・5号

ここからは信用保証制度による融資となります。
信用保証制度とは、中小企業などが民間の金融機関から融資を受けやすいように、信用保証協会が保証人になって実行される融資制度のことです。
セーフティネット保証とは、経営が悪化した企業が自治体の認定を受けることにより、一般枠(最大2億8,000万円)の別枠として、最大2億8,000万円の融資を受けられるというものです。
新型コロナウイルス感染症の関係で利用できるセーフティネット保証は、4号と5号になります。
なお、4号・5号の両方を申請できるとしても、上限は最大2億8,000万円となりますので、融資の上限は、一般枠(最大2億8,000万円)+セーフティネット保証枠(最大2億8,000万円)となります。

セーフティネット4号

突発的な災害などを受けた地域で、前年同月比の売上高が20%以上減少している中小企業者を対象とする融資です。
3月2日に全都道府県が上記の地域に指定されていますので、現在は、売上要件等を満たすことで申請することができます。

セーフティネット保証5号

指定業種を営んでおり、前年同月比の売上高が5%以上減少している等の中小企業者を対象とする融資です。
5月1日に、全ての業種が対象業種に指定されています。
なお信用保証協会の保証率は80%です。(4号は100%)

■危機関連保証

危機関連保証は、セーフティネット保証のさらに別枠(最大2億8,000万円)の融資になります。
つまり、信用保証制度による融資は、「一般枠」+「セーフティネット保証枠」+「危機関連保証枠」の3枠があるというイメージになります。
危機関連保証の対象は、前年同月比の売上高が15%以上減少している等の要件を満たす中小企業者です。
利用相談は、信用保証協会等に行いましょう。


2020年07月02日

令和2年分から青色申告特別控除65万円の要件が変わります

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令和2年分から青色申告特別控除65万円を受けるための要件が増えます。

■青色申告特別控除額とは

青色申告特別控除額とは、事業所得や不動産所得、山林所得のある個人事業主が受けられる控除のことです。
65万円と10万円の2種類があり、65万円の控除の対象になるのは、事業所得と不動産所得のみとなります。
65万円の控除を受けるには、下記の要件すべてを満たさなければなりません。

【青色申告特別控除65万円を受けるための要件】
・正規の簿記の原則(※)にしたがって記帳すること
・上記の方法により作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付すること
・上記の確定申告書を法定期限内に提出すること
・現金主義でないこと
・不動産所得については、事業的規模であること

(※)一般的には複式簿記によって取引を記録することを指します。

ちなみに、事業所得と不動産所得の両方がある個人事業主が、どちらも65万円を控除できる要件を満たしている場合は、不動産所得→事業所得の順番で65万円の控除を適用します。
(租税特別措置法第25条の2第4項)
つまり、1人につき65万円を超える青色申告特別控除を受けることはできません。

令和2年分から青色申告特別控除が55万円に

平成30年度税制改正により、令和2年分の確定申告から青色申告特別控除額が65万円から55万円に引き下げとなります。
(10万円の控除について改正はありません。)
ただし、次のいずれか一方の要件を満たせば、令和2年分からも65万円の控除を適用することができます。
・電子帳簿保存
・e-Taxによる電子申告

■電子帳簿保存とは

電子帳簿保存とは、データで作成している仕訳帳や総勘定元帳といった帳簿を、データのままで備え付け、保存することを認める制度です。
データを使って記帳をしている方が対象になります。
電子帳簿保存を行うには、税務署長の事前の承認が必要です。
通常は、電子帳簿保存を事業年度の途中から行うことはできず、適用を受けるには、事業年度の開始3か月前までに申請を行わなければなりません。
しかし令和2年分については、令和2年9月30日までに申請して、12月31日までの間に電子帳簿保存を行えばよいとされています。

■電子申告とは

電子申告とはe-Taxという国税庁のシステムを使って、確定申告をデータ送信で行うことをいいます。
確定申告のデータは国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成するか、電子申告に対応する市販の会計ソフトで作成したものを利用することが一般的です。

電子申告を行うための準備

電子申告を行うには、e-Taxを使うための事前準備が必要です。
準備の方法には「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」があります。
マイナンバーカード方式を利用する場合、マイナンバーカードをお持ちでない方は、まずは役所に交付申請を行う必要があります。
交付までには通常、約1か月かかるとされていますので、計画的に準備しましょう。
またマイナンバーカードを読み込むための市販のカードリーダー等の準備も必要です。
ID・パスワード方式の場合は、お近くの税務署に行き、職員と対面して本人確認を受けることで、電子申告に必要なIDとパスワードを発行してもらいます。お手軽ですが、マイナンバーカードが普及するまでの暫定措置とされています。

■65万円の控除で前年より控除額がアップ?

青色申告特別控除額の改正とは別に、令和2年からは、所得税の基礎控除が下記のように改正されています。

個人の合計所得金額 基礎控除 基礎控除
  令和2年分から 令和元年
2,400万円以下 48万円 一律38万円
2,400万円超
2,450万円以下
32万円 一律38万円
2,450万円超
2,500万円以下
16万円 一律38万円
2,500万円超 0円 一律38万円

つまり個人の合計所得金額が2,400万円以下であれば、前年よりも控除額が10万円プラスになるということです。

よって、48万円の基礎控除を受けられる個人事業主が、青色申告特別控除を令和2年分からも65万円で受けることができれば、青色申告特別控除(65万円)と基礎控除(48万円)を合わせた控除額は、前年より10万円アップします。

電子申告か電子帳簿保存、このどちらかを行うだけで前年よりも大きい控除が受けられますので、65万円控除をこれまで受けている方は取り逃しのないようにしましょう。ちなみに基礎控除の引き上げと同時に、給与所得控除や公的年金等控除の引き下げが行われています。

そもそも基礎控除引き上げの背景には、働き方の多様化に対応するため、特定の収入にのみ適用される控除を、全員に適用できる基礎控除に振り替えるという目的があります。

しかし個人事業主の場合は、電子申告等へのインセンティブとして働くよう前述の条件のもと、控除額アップのルートが設けられているのです。

初めて電子申告を行う方で手続きなどに不安のある方は、税理士にご相談ください。

2020年05月15日

大法人等の電子申告の義務化がスタートします

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■電子申告の義務化がいよいよスタート

平成30年度税制改正により、一部の法人は、令和2年4月以降に開始する事業年度から以下の税目を電子申告しなければなりません。
・法人税及び地方法人税
・消費税及び地方消費税
・法人事業税及び特別法人事業税
・法人住民税(県民税・市民税)
確定申告のほか、中間(予定)申告、修正申告も、電子申告の義務化の対象になります。
もし電子申告の義務化の対象となる法人が書面で申告をした場合、その申告は無効とされます。
ただし、災害その他の理由で電子申告ができないときは、事前承認を受けることで書面申告をすることが認められます。

■電子申告義務化の対象法人

対象となる法人は、以下のとおりです。
・内国法人のうち、事業年度開始時の資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
・相互会社、投資法人及び特定目的会社

■電子申告に不可欠な2つのシステム

電子申告のシステムには国税用の「e-Tax(イータックス)」と地方税用の「eLTAX(エルタックス)」があります。
会計ソフトなどで作成した申告データを、e-Taxソフトや市販の税務申告ソフトを使ってそれぞれのシステムで送信します。
それぞれに利用開始のための準備が必要ですので、注意が必要です。

申告できる税目

電子申告義務化の対象となる税目のうち、e-TaxとeLTAXで申告できる税目は、次のようになります。

【e-Tax】
・法人税及び地方法人税
・消費税及び地方消費税

【eLTAX】
・法人事業税及び特別法人事業税
・法人住民税(県民税・市民税)

特別法人事業税とは、令和元年10月以後の事業年度から適用される新しい税目です。
地方法人特別税が廃止され、代わりに新設されました。
国税ですが、徴収は都道府県が行います。

■届出書の提出が必要に

電子申告の義務化の対象法人は、「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を、令和2年4月1日以後最初に開始する事業年度の開始から1ヶ月以内に提出しなければならないとされています。
国税庁によると、すでに電子申告をしている法人であっても、この書類の提出は必要としているため注意してください。 なお、令和2年4月1日以後、増資によって電子申告の義務化対象となった法人(※)や、新規設立によって対象となった法人には、異なる提出期限が定められています。
詳細は国税庁のホームページからご確認いただけます。

国税庁「電子申告の義務化の対象法人となった場合、届出書の提出を行う必要はありますか」
https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/gimuka/09.htm

(※)義務化の対象になるかどうかは、事業年度「開始時」の資本金等で判定します。

■電子申告は税理士にご相談を

電子申告は、税理士による代理申告が可能です。
お困りの際は、お早めにご相談ください。


2020年05月15日

国外財産調書の4つの改正点について

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国外財産調書とは、個人が国外に保有する財産を自ら税務署に報告するために作成する書類のことです。
この国外財産調書の内容が、令和2年度税制改正によって見直されています。
今回は、そもそも国外財産調書とは何か、そして具体的に何が変わったのかを解説していきます。

■国外財産調書とは

国外財産調書は、平成24年度税制改正で創設され、平成26年1月から施行された制度になります。
個人が国外に保有する財産、たとえば外国の預金や不動産などを、税務署に報告するために作成し提出する書類です。
提出義務があるのは、所得税法上の「居住者(非永住者以外)」のうち、国外財産の合計額が5,000万円を超える人になります。
正当な理由なく提出しなかったときには罰則もあるため、注意が必要です。
しかし、そもそもなぜ外国にある財産を税務署に知らせなければならないのでしょうか?

国外財産調書の目的

国外財産調書は、適正な課税・徴収を図る観点から施行された制度です。
主に所得税や相続税の徴収に役立てることがねらいとなります。
しかし、なぜ外国の財産が日本の税金に関係するのか、と疑問に思われる方もいらっしゃるかも知れません。
所得税は個人の「所得」に、相続税は個人の「相続財産」にかかる税金ですが、実は、その対象となる所得と相続財産は、国外のものにも及びます。
ほとんどの方が、国外で生じた所得や国外にある相続財産にも日本の税金がかかってしまうしくみになっているため、注意が必要です。

国外の所得に所得税がかかる方

所得税の課税対象は、その個人が「非永住者以外の居住者」に該当する場合、日本国内だけでなく、国外で生じた所得も課税の対象になります。
まず「居住者」とは、日本国内に住所があるか、現在まで引き続いて1年以上日本に居所がある人のことです。
「非永住者」とは、過去10年以内の間に日本国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である人を指します。
もし「非永住者以外の居住者」にあたる方が、たとえば国外にあるマンションから賃貸収入を得ている場合、それには日本の所得税がかかってしまいます。
余談ですが、居住者のうち「非永住者」にあたる方(例:外国から一時的に日本に移住して働いている人など)には、国外財産調書の提出義務はありません。
しかし、国外で生じた所得にまったく日本の税金がかからないかというとそうではなく、国外で生じた所得のうち
・日本国内において支払われたもの
・日本国内に送金されたもの
があれば、日本の所得税の課税対象となります。
なお日本国内で生じた所得については、その方が「非永住者」であっても、そもそも日本に住んでいない「非居住者」であったとしても、課税対象となります。

国外の相続財産に相続税がかかる方

相続税の場合は、相続人が「無制限納税義務者」にあてはまる場合、日本国内だけでなく国外に所在する相続財産も、日本の相続税の対象になります。
「無制限納税義務者」は、その方が日本に住んでいるかどうかによって
・居住無制限納税義務者
・非居住無制限納税義務者
の2種類に分かれますが、どちらも国内・国外の相続財産のすべてが課税対象です。
両者の定義は、正確に分類しようとするとかなり細かくなってしまうのですが、目安となるのは、相続人・被相続人のどちらか一方が過去10年以内に日本に住んでいたことがあれば、国内・国外の相続財産に相続税が課されるケースがほとんどです。
たとえば、日本にずっと暮らしている父が亡くなり、国外で暮らしているお子さんが父の所有する国外のマンションを相続した場合、相続人は日本にいませんが、そのマンションは、基本的には日本の相続税の対象になってしまうということです。
ただし、相続人・被相続人のいずれかに日本国籍がない場合、在留資格によって日本に住んでいる場合などは、組み合わせによっては国外の財産について日本の相続税の対象にならないケースが存在するため、こうした方の相続では、個別に検討が必要です。

■国外財産調書の4つの改正点

それではいよいよ、具体的に何が改正されたかを解説します。
改正点は、次の4つです。
・相続直後の国外財産調書等への記載の柔軟化
・過少申告加算税等の加重措置の見直し
・軽減、加重措置の判定基礎となる国外財産調書等の見直し
・書類の提示又は提出がない場合の軽減、加重措置の特例の創設

相続直後の国外財産調書等への記載の柔軟化

まずは緩やかになった改正点からです。
国外財産調書は、その年の12月31日時点での国外財産の合計額が5,000万円を超えるかどうかで提出義務を判定し、必要であれば翌年の3月15日までに提出しなければなりません。
改正では、もし相続によって国外財産を取得したとき、相続の開始した年の12月31日時点での国外財産には、その相続財産を含めなくてよいとされました。
含めないことによって、5,000万円以下となった場合は、提出も不要です。

過少申告加算税等の加重措置の見直し

国外財産調書は、提出しないこと自体に罰則もあるのですが、それ以外にも、国外財産調書に記載しておかなければならない財産から生じた所得について、所得税の申告漏れがあることがわかった場合、別途ペナルティがあります。
たとえば国外にある2億円のマンションから賃貸収入を得ていたのに、それを申告せず、後にその申告漏れが発覚して過少申告加算税が課されるケースがあったとします。
この場合、このマンションは国外財産調書に記載しなければならないもののはずですが、もし国外財産調書を提出していなかったり、マンションについて記載がなかったりした場合は、加算税が、通常よりも5%多くかかってしまいます。
改正前は、加重される加算税は「所得税」のみでしたが、改正後ではこれに、相続国外財産にかかる「相続税」が加わります。

軽減・加重措置の判定基礎となる国外財産調書等の見直し

5%の加重ペナルティがある一方で、逆にきちんと国外財産調書に記載されている財産について生じた加算税については、本来より5%軽減されます。
改正では、相続国外財産にかかる相続税の加算税について、5%の軽減や加重の措置をどの国外財産調書から判定するか、下記のとおり見直されました。

【軽減措置の対象となる国外財産調書】
次の国外財産調書のいずれかに記載があれば適用。
1 被相続人の相続開始年の前年分の国外財産調書
2 相続人の相続開始年の年分の国外財産調書
3 相続人の相続開始年の翌年分の国外財産調書

【加重措置の対象となる国外財産調書】
上記1~3のすべてに記載がなければ適用。

ただし相続税の加重措置は、3の提出義務がない相続人には適用されません。

書類の提示又は提出がない場合の軽減・加重措置の特例の創設

もし国税庁の職員等から国外財産に関する書類の提出や提示を求められたとき、その職員等が定めた期限内にそれらをしなかった場合は、軽減・加重の措置が次のように変わります。
・軽減措置
 →その国外財産に係る加算税には適用しない
・加重措置
 →10%(適用前加算割合:5%)とする

■適用開始時期

改正点の適用開始時期は、以下のとおりです。

・相続直後の国外財産調書等への記載の柔軟化
→令和2年分以後の国外財産調書から適用開始。

・過少申告加算税等の加重措置の見直し
・軽減、加重措置の判定基礎となる国外財産調書等の見直し
・書類の提示又は提出がない場合の軽減、加重措置の特例の創設
→令和2年分以後の所得税、令和2年4月1日以後の相続・遺贈によって生じる相続税から適用開始。


2020年04月10日

企業版ふるさと納税による税金の控除がアップします

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令和2年度税制改正大綱によって、企業版ふるさと納税の延長と控除額の増加が行われることがわかりました。
企業版ふるさと納税とは、地方公共団体による地方創生のための事業に対して、民間企業が支出した寄附金の一部に相当する額を、寄附を行った企業の税金から控除できるというものです。
今回は、企業版ふるさと納税とはそもそも何か、どのように利用するのか、改正後はどのくらい税金が控除されるかについて解説します。

■企業版ふるさと納税とは

企業版ふるさと納税とは、民間企業が、地方創生のための事業に対して支出した寄附金によって受けられる、税金の控除の制度です。
「地方創生応援税制」ともいいます。
企業にとって税負担の軽減のほか、寄附を行うことによる企業のイメージアップ、寄附を行った地方公共団体とのパートナーシップの構築といった効用が期待できます。

企業版ふるさと納税の寄附はいくらから?

企業版ふるさと納税の対象となるのは、1回あたり10万円以上の寄附金です。

どこに寄附すればいい?

企業版ふるさと納税による寄附の対象になるのは、地方公共団体による「地方創生のための事業」です。
寄附を行う先を選ぶ際に注意していただきたいのは、以下の点になります。

・国が認定した地方創生のための事業であること
・寄附の代償として経済的な利益を受けるものでないこと
・本社(主たる事務所・事業所)が所在する地方公共団体への寄附でないこと

特に注意していただきたいのは、3点目の本社がある地方公共団体への寄附が対象に「ならない」点です。
個人のふるさと納税と違い、どの地方公共団体への寄附でも対象になるわけではありません。

寄附を行う事業の選び方

企業版ふるさと納税の対象となる事業は、下記の内閣府のホームページから確認できます。
現在、「地域」「事業分野」「キーワード」から、企業版ふるさと納税の対象となる事業を検索できるようになっています。
イメージアップやパートナーシップの構築といった効用を生み出すには、自社と関連する事業を「事業分野」や「キーワード」から選んだり、支店の所在する「地域」から事業を選んだりするとよいでしょう。
「企業版ふるさと納税ポータルサイト」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html

企業版ふるさと納税を適用するには

企業版ふるさと納税を適用できるのは青色申告法人に限られます。
青色申告法人は、寄附金を支払った事業年度の税務申告書に、所定の明細書と寄附金受領書を添付して、確定申告を行う必要があります。

■企業版ふるさと納税の減税効果と上限について

それでは、税制改正によって控除できる税額がどのくらいアップするかを解説します。

税額控除が3割から6割にアップ

企業版ふるさと納税では、寄附金の額の一部に相当する金額を、企業が負担する法人事業税や法人住民税などから控除することができます。
控除額は、改正前は寄附金の額の最大30%でしたが、大綱によると、改正後は最大60%にアップします。


改正前

改正後

【控除額】
寄附金の額×30%
【控除の内訳】
〇法人事業税から控除・・・10%
〇法人住民税から控除・・・20%
 ・法人道府県民税2.9%
 ・法人市町村民税17.1% 【控除額】
寄附金の額×60%
【控除の内訳】
〇法人事業税から控除・・・20%
〇法人住民税から控除・・・40%
 ・法人道府県民税5.7%
 ・法人市町村民税34.3%

なお、法人住民税から控除しきれなかった額が出た場合、その額は法人税から控除されます。

企業の手出しは約10%になることも

法人から地方公共団体に払い込まれた寄附金は、企業版ふるさと納税に該当するかどうかにかわらず、もともとその全額を損金に算入することができます。
仮に法人の所得にかかる法人税など(以下「法人税等」)の税率を約30%とした場合、その減税効果は、寄附金の額の約30%に相当します。
この効果に、企業版ふるさと納税による減税効果が上乗せされます。
改正後の企業版ふるさと納税による減税効果は、寄附金の額の最大60%ですので、損金算入による減税効果と合わせると、最大約90%の減税が見込めることになります。
そうすると実質的な手出しは、寄附金の約10%とみることができます。


寄附金の額 (100%)

法人税等
約30% 法人事業税
20% 法人税+法人住民税
40% 約10%
企業負担
(手出し)
損金算入による減税効果 企業版ふるさと納税による税額控除 企業版ふるさと納税による税額控除

たとえば100万円の企業版ふるさと納税を行った場合、法人税等の税率を30%とすると、最大で90万円分の税金が減ることになります。
これは企業に90万円分の現金が残るのと同じことですので、そうすると企業の手出しは、実質的に10万円とみることができるというわけです。


寄附金の上限額に注意


ここまでは、あくまで減税効果を最大で受けられた場合の話です。
企業版ふるさと納税による税額控除(60%の部分)には、上限額が設けられています。
税額控除の上限額は、次のとおりです。

【企業版ふるさと納税による税額控除の上限額】
・法人事業税の控除額の上限
法人事業税の20%(※)
・法人住民税の控除額の上限

たとえば、法人事業税の額が50万円だった場合、企業版ふるさと納税によって法人事業税から控除できる上限は7万5,000円(50万円×15%(※))になります。
もしこの会社が仮に200万円の寄附を行った場合、法人事業税から控除できる税額は、本来であれば40万円(200万円×20%・改正後)のはずですが、法人事業税から控除できるのは7万5,000円までですので、差額の32万5,000円は手出しになるということです。
このあたりは、個人のふるさと納税をイメージしていただくとわかりやすいかも知れません。
個人のふるさと納税では、個人所得が多い人の方が、たくさん寄附をしても手出しが2,000円で済むというしくみがありましたよね。
ふるさと納税の上限額のシミュレーションをやってみたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
法人もこれと同じように、法人所得の多い企業の方が、法人事業税などの額が大きいため、手出しが10%で済む寄附金の上限額が大きくなるということです。

■企業版ふるさと納税のその他の改正点

企業版ふるさと納税に関する、その他の改正点もご紹介します。

適用期間5年間の延長

税制改正大綱によると、企業版ふるさと納税の適用期間が5年延長されます。(令和7年3月31日まで)
延長は、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定されたことを受けて実施されるものになります。

一定の補助金事業も対象に

地域再生計画に記載される「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」の対象事業に、一定の補助金等による事業が加わることになりました。

事業を行う「前」の寄附金も対象に

企業版ふるさと納税の流れとしては、まず企業から地方公共団体に寄附の申し出を行い、寄附金を払う前に地方公共団体が事業を行って、その年度の事業費が確定した「後」に、企業が寄附金を払い込むというものになります。
このことから、地方公共団体が事業を行う「前」に支払われる寄附金については、制度の対象外とされていました。
税制改正大綱によると、地方公共団体の受け取る寄附金が、関連する事業費を上回った場合の適正化措置が講じられることを前提に、事業を行う「前」に支出する寄附金も、制度の対象になるとしています。





2020年03月10日

令和2年度税制改正大綱の内容(オープンイノベーション税制、エンジェル税制について)

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令和2年度税制改正大綱によると、持続的な経済成長を図るため、ベンチャー企業への投資を促す税制の創設や見直しが行われています。
出資者に税制上の優遇措置を設けることで、若い企業にとって常に課題となる資金調達を税制面から支え、経済成長につなげる目的があります。
投資を行う方はもちろんですが、投資を受ける側の経営者の方にとっても、今後、ご自身の企業への出資を検討している方が現れた時、相手にどのようなメリットがあるのか把握することはとても大切です。
今回は、令和2年度税制改正大綱の中から、
・オープンイノベーション税制の創設
・エンジェル税制の見直し
の内容を見ていきます。

■オープンイノベーション税制の創設

オープンイノベーション税制とは、「会社から会社」の出資に関する税制です。 「特定事業活動を行う」会社から、ベンチャー企業に行った出資のうち、最大25%の金額が、出資側の会社の所得控除になるという制度になります。
「特定事業活動を行う」会社とは、大綱によると"自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業を行う"、あるいは"新たな事業の開拓を行うことを目指す"といった会社になります。
国内事業会社や国内事業会社によるCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が該当します。CVCには、事業会社やその子会社が運営し、持分の過半数以上を所有するファンドなどが該当します。

オープンイノベーション税制は出資額等に要件がある

オープンイノベーション税制を適用するには、出資先から交付される株式が、経済産業大臣の証明のある「特定株式」である必要があります。
そもそもこの税制で所得控除の対象になるものは、出資先から交付される「株式」の取得価額の25%以下の金額なのですが、この「株式」について「特定株式」の要件を満たすことが必要になります。
「特定株式」の主な要件は、次のとおりです。

【出資額の要件】
・1件あたり1億円以上であること
・中小企業者から出資を行う場合は、1,000万円以上であること
・外国法人への出資の場合は、5億円以上であること

【出資先の要件】
・出資先の会社が設立10年未満であること
・産業競争力強化法の新事業開拓事業者のうち同法の特定事業活動に資する事業を行う内国法人の株式であること

【その他】
・資本金の増加に伴う払い込みにより交付される株式であること

細かい要件がいろいろとありますが、オープンイノベーション税制には、出資元、出資先、出資額などに形式的な要件があるということを押さえておきましょう。

オープンイノベーション税制の注意点

ここからは出資をした後の話なのですが、もし出資によって得た株式の全部または一部を取得から5年以内に譲渡したり、5年以内に配当を受け取ったりした場合、それぞれに応じた金額を益金に算入することとしています。
まず、この税制で所得控除を適用するには、出資を行った後に特定株式の25%以下の金額を「特別勘定」で経理することが必要となります。
特別勘定で経理した額が、すべて損金に算入されます。
ところが出資から5年以内に「特別勘定の取り崩し事由」が発生した場合、「特別勘定」として経理していた額のうち、その事由に応じた額を益金としなければなりません。
この「特別勘定の取り崩し事由」にあたる主なものが、特定株式の譲渡や、その配当金の受け取りになります。
「特別勘定の取り崩し事由」は他にもあるので、出資を行う方は必ず確認しておきましょう。
オープンイノベーション税制を活用したい場合は、
・出資元、出資先、出資額等が要件に合致しているか
・出資後はどのような点に注意したらよいか
ということを念頭に、税理士にご相談ください。
適用期間は、令和2年4月1日から令和4年3月31日度末までとなります。

■エンジェル税制の見直し

つづいては「個人から会社」への出資となる「エンジェル税制」の改正です。
優遇を受けるのは個人ですが、手続きは出資を受ける側(会社側)も行わなければならないため、双方が制度の全体像を把握しておかなければなりません。
中小企業庁によると12年ぶりの見直しになるということですから、そもそも制度自体をご存じない方も多いのではないでしょうか。

エンジェル税制とは

エンジェル税制とは、企業して間もないベンチャー企業の資金調達先を、個人投資家に拡大することを目的とした税制です。
通常、創業して間もないベンチャー企業といえば知名度も低く、その資金調達として個人投資家から出資を募ることは難しいのですが、エンジェル税制では出資を行った個人投資家(エンジェル)の税金を優遇することによって、ベンチャー企業への投資を促進する狙いがあります。
個人投資家が受けられる優遇税制は、投資をした年に次の2つのパターン(A、B)を選択することになります。







優遇措置A

優遇措置B







容 「投資額-2,000円」をその年の総所得金額から控除 投資金額の全額をその年の他の株式譲渡益から控除



業 ・設立5年未満の中小企業(改正前:3年未満)
・前事業年度までの営業活動におけるキャッシュフローが赤字
・新しい事業活動を行っている(設立経過年数によって要件が異なる)
・大企業の子会社でないこと ・設立10年未満の中小企業
・新しい事業活動を行っている(設立経過年数によって要件が異なる)
・大企業の子会社でないこと

優遇措置Aは、寄附金控除と同じ節税効果になります。個人投資家の所得(給与や自営業から得た所得、不動産賃貸から得た所得などの合計)から、「投資した金額-2,000円」を差し引いて所得税等を計算することができます。
優遇措置Bは、エンジェル税制を活用した投資をした年に、他の株式売却益がある場合、投資の全額をその売却益から控除して所得税等を計算することができます。
対象企業の「新しい事業活動を行っている」という要件ですが、これは設立経過年数によって満たさなければならない要件が分かれていますので会社ごとに確認が必要です。
試験研究比率、従業者の数、売り上げ成長率、外部株主の数などの要素があります。
なおエンジェル税制では、投資先の株式を売却した年に損失が生じた場合、その損失を3年間繰り越すことができます。
これは通常、非上場株式では認められない措置ですので、エンジェル税制の特典といえます。
(ただし優遇税制AまたはBを受けている場合、損失の金額は調整されます)

エンジェル税制の主な改正点

大綱によるとエンジェル税制の改正点は、要件が緩和された部分とそうでない部分があります。ただし、適用期間が明確でないため、適用の際は、必ずエンジェル税制の都道府県の窓口や専門家にご相談ください。

【エンジェル税制の主な改正点】
・対象企業の拡大
優遇税制Aの対象企業の要件が、設立5年未満(旧:3年未満)に拡大される予定です。
・上限額が800万円に
優遇税制Aの上限額が、1,000万円から800万円に引き下げとなる予定です。ただし、総所得金額の40%という上限はそのままですので、改正後は800万円とのいずれか低い方が控除限度額になります。
・クラウドファンディング事業者への確認も可能に
エンジェル税制を適用するまでの流れとして、これまでは、まず投資を受ける会社側から「都道府県」に対してエンジェル税制の要件の確認申請を行い、税制適格の確認書の交付を受け、それを受け取った個人投資家が確定申告によって優遇税制を受けるという流れが主でした。
しかし、近年クラウドファンディングによる資金調達手段が行われるようになったことを受けて、都道府県の他に、経済産業大臣の認定を受けたクラウドファンディング事業者も確認事務を行うことができるようになる予定です。
なおこの他に、認定を受けたファンドも優遇措置Aの確認事務を行えるようになります。(Bはもともと可能)



2020年02月20日

国税庁による「キャッシュレス・消費者還元の仕入税額控除の考え方」が公開

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2019年11月に、国税庁から軽減税率に関する事業者向けの新たな資料が更新されました。
資料のタイトルは「事業者の皆様へ(~区分経理から消費税申告書の作成まで~)」というもの。
内容は、区分経理や請求書等の保存に関する実務のポイントをまとめた資料ですが、この最終頁に「即時充当によるキャッシュレス・消費者還元に係る消費税の仕入税額控除の考え方」という資料が編集されています。
これは、軽減税率導入と同時にスタートした「キャッシュレス・消費者還元事業」に関する資料です。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この事業ではポイント還元の方法が統一されていません。
そのため、ポイント還元を受けた際の経理の方法をめぐって、現場でやや混乱が生じています。
混乱を招いていた原因の1つが、即時値引きのような扱いを受けた場合です。
その場で支払う金額が減っているわけですが、この還元ポイントをどう処理するかというと意外と難しいのです。
今回は、国税庁の「即時充当によるキャッシュレス・消費者還元に係る消費税の仕入税額控除の考え方」の内容を踏まえ、ポイント還元を受けたときの仕訳について考えてみたいと思います。

参考:国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/index2.htm

■キャッシュレス・消費者還元事業のしくみ

キャッシュレス・消費者還元事業とは、この事業の加盟店で、お客さんがキャッシュレス手段による決済を行った際に、購入した商品の2%か5%を、ポイント還元してもらえるというものです。2020年6月末まで行われます。
増税による消費の落ち込みを防ぐことやキャッシュレス決済の普及を目的とした国の事業で、加盟店には、還元ポイントの原資が補助されています。

■即時充当・ポイント利用(値引き)による仕入税額控除の考え方

今回、国税庁から仕入税額控除の考え方として示されたのは、
・即時充当
・ポイント利用(値引き)
の2形態における「課税仕入の額」についてです。
即時充当とは、1,100円の買い物をした時、(2%還元であれば)22円分のポイント還元を即時に代金に充当することによって、1,078円で決済ができるものです。
コンビニなどで見られる還元方法になります。
これに対し、ポイント利用とは、商品を購入した際のポイント還元が「値引き」とされている場合です。
還元か値引きかは、レシートの表記から判断してよいとされています。
どちらもその場で支払う金額が減るだけで、購入者からすれば感覚的にはまったく同じものになります。
しかし、この2つは課税仕入となる金額の考え方が異なります。
<課税仕入に係る支払対価の額>
・即時充当・・・商品対価の合計額
・ポイント利用・・・値引き後の金額
具体例で確認しましょう。
【例】
ペットボトルのお茶 3本 486円
ボールペン 10本 1,100円
合計 1,586円
(8%対象 486円)
(10%対象 1,100円)

まず、即時充当であれば、仮に31円(1,586円×2%)のポイント還元を受けた場合、実際の支払い額は1,555円(1,586円-31円)になります。
ポイント利用(値引き)も、支払い額は同じです。
しかし、即時充当の課税仕入は1,586円、ポイント利用の課税仕入は1,555円になるということです。
国税庁の資料の内容はここまでとなります。
この情報から、仕訳を考えてみます。

即時充当の仕訳

即時充当では、商品対価の合計額が課税仕入になりますので、仕訳は次のようになると考えられます。
(お茶は会議費、ボールペンは消耗品費とします。)

【即時充当】






借方 金額 貸方 金額
会議費 486 前払金(※1) 1,586
消耗品費 1,100 - -
前払金(※1) 31 雑収入(※2) 31

(※1)は、キャッシュレス決済の手段によります。
コンビニ等でよく使われるプリペイドカードであれば、金銭をチャージした時の勘定科目の取崩しとします。(仮に「前払金」にしています)
もし経営者個人のプリペイドカードで立て替えたのであれば「役員短期借入金」、従業員が立て替えたのであれば「未払金」を使用します。
(※2)の雑収入の課税区分ですが、
・国庫補助金を財源としたポイント付与であること
・資産の譲渡等の対価として支払うものでないこと
から不課税になります。
税抜経理方式にすると、次のようになります。

【即時充当】






借方 金額 貸方 金額
会議費 450 前払金 1,586
仮払消費税等 36 - -
消耗品費 1,000 - -
仮払消費税等 100 - -
前払金 31 雑収入 31

ポイント利用の仕訳

続いて、ポイント利用(値引き)の仕訳ですが、値引き後の金額が課税仕入になりますので、次のようになると考えられます。

【ポイント利用】






借方 金額 貸方 金額
会議費 476(※3) 前払金(※1) 1,555
消耗品費 1,079(※3) - -

(※3)8%取引と10%取引があるので、31円を按分して割り振っています。
<計算式>
476円≒486円-(31円×486円/1,588円)
1,079円≒1,100円-(31円×1,100円/1,588円)

税抜経理方式の場合は、次のようになります。

【ポイント利用】






借方 金額 貸方 金額
会議費 441 預け金 1,555
仮払消費税等 35 - -
消耗品費 981 - -
仮払消費税等 98 - -

ところで、値引き後の金額を課税仕入とする考え方は、通常のポイント利用による支払いにも使われています。
ポイント利用の仕訳に明確なルールはないのですが、消費税でいえば、自社発行のポイント利用時に値引きを受けた時は、差額支払金額の対価が課税仕入になるという扱いが行われていると思います。
これについては、国税庁HPに掲載されている「マイレージサービスに代表されるポイント制に係る税務上の取扱い」が参考になります。
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/58/01/hajimeni.htm

なお今回行った仕訳は、国税庁が示した仕入税額控除の考え方に基づき、消費税のルールで行った仕訳です。
この仕訳だと、たとえばポイント利用で資産購入をしたときに正しい資産額が貸借対照表に表示されないということが起こります。
このあたりは、会計上の重要性の原則で判断が必要です。
しかし期間限定の取り組みですし、ポイントの額は通常少額ですから、この処理が問題になるケースは少ないと考えられます。

■経理が難しいときは税額計算の特例を

最後に、軽減税率と標準税率を分けることが難しい時の救済といえる「税額計算の特例」をご紹介します。
限られた期間ではありますが、2つの税率を区分することが困難な中小事業者(※)は、簡易な計算方法を選択できるようになっています。
(※)前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の事業者

売上税額の計算の特例

軽減税率(8%)と標準税率(10%)の売上げが混在する事業で、1つ1つを区分することが困難な中小事業者は、一定の割合を軽減税率の売上げとみなして税額を計算してもよいという特例です。
割合は、仕入れに占める軽減税率の対象品目の割合や、10営業日の売上げから算定した割合などを使うことができます。
2019年10月から4年間、選択することが可能です。

仕入税額の計算の特例

仕入れの税率を区分することが困難な中小事業者です。
売上げから算定した軽減税率の対象品目の割合を使うことができます。
2019年10月から1年間、選択することが可能です。

簡易課税制度の事後選択の特例

仕入税額の計算の特例の代わりに、簡易課税制度を選択することも可能です。
こちらは業種ごとのみなし仕入率で仕入税額控除を計算する、おなじみの制度になります。
通常、この制度を適用するには課税期間が始まる前に税務署に選択届出書を提出しなければなりませんが、特例では、課税期間の途中でも選択することが認められています。
2019年10月1日から2020年9月30日までの日を含む課税期間中であれば選択可能です。

■まとめ

今回は国税庁の資料を中心に、キャッシュレス・消費者還元の仕訳を考えてみました。
課税事業者の経理の負担をなくす特例も登場していますが、早く慣れてしまいたいですね。
消費税などの経理でお困りの際は、税理士にご相談ください。


2020年01月16日

仮想通貨の確定申告が必要になるラインや計算方法などを解説

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確定申告に関するご質問の中で、仮想通貨に関する税金のお問い合わせをいただくことがあります。
2019年のビットコインの値動きを見ると、年初は40万円台に始まって一時は100万円を超える価格となったようです。
これほどの値動きがあると、たまたま買って利益を得てしまったという方が出てきてもおかしくありません。
仮想通貨は、その利益の額が申告をしなくてもよいラインを超えなければ、税金はかかりません。
しかし、そのラインを「20万円以下」と思っていらっしゃる方がいますが、これは正確ではないので注意が必要です。場合によっては、1万円でも申告しなければならないことがあります。
また、このラインがより複雑になるのは、収入のない方、たとえば専業主婦の方などです。所得税はかからなくとも、住民税だけかかるケースがあります。さらにこうした方がトレードを行う際は、仮想通貨から生じた利益によって、夫が受けられる税金の控除に及ぶ影響も知っておく必要があります。
今回は、仮想通貨の税金について、確定申告をしなくてもよいラインや、仮想通貨の所得の計算方法などを解説します。

■仮想通貨に税金がかかるのはどのような時か

仮想通貨から所得(利益)が生じるのは、
・仮想通貨を売ったとき
・仮想通貨で買い物をしたとき
・他の銘柄と交換したとき
・マイニングによって取得したとき
です。
所得の額が、申告しなくてもよいラインを超えた場合、確定申告を行わなければなりません。確定申告を行うことで、申告した所得に、所得税等や住民税が課されます。
なお、購入した仮想通貨を個人でもっているだけであれば、税金はかかりません。

■確定申告をしなくてもよいラインとは

給与所得者の場合は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば、確定申告は扶養です。
給与所得者とは、会社員、パート従業員、アルバイトの方など、勤め先から給与をもらっている方をいいます。
仮想通貨の所得は、原則「雑所得」(※)に区分されますが、仮想通貨の所得だけが20万円以下であれば良いわけではなく、仮想通貨以外の雑所得や譲渡所得、一時所得といったものも含めて20万円以下でなければ、申告不要とはなりません。
ですので、他の所得によっては、たとえ仮想通貨の利益が20万円以下でも申告が必要になることがあります。
また、年収が2,000万円を超える方、給与を2箇所以上から受け取っている一定の方など、もともと確定申告が必要な方もいます。
こうした方は、仮想通貨の利益がいくらであっても申告しなければなりません。
給与所得者でない方(専業主婦の方など)の場合は、1年間の所得が基礎控除38万円を超えなければ、確定申告は不要です。それを超える場合は個別判断となりますが、所得控除が他にないようでしたら、申告が必要になるものと考えてください。

(※)事業として行う仮想通貨の取引や、事業所得の基因となる行為に付随した仮想通貨の取引である場合は、事業所得にできる場合があります。事業所得としたいときは、税務署や税理士にご相談ください。

住民税の申告に注意!

会社の年末調整を受けたり、確定申告をしたりすれば、住民税の申告は不要です。
しかし、上記のラインにおさまって確定申告をしない場合、住民税の申告のみが必要になるケースがあります。
まず給与所得者で、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下の方で確定申告をしなかった場合、住民税の申告は必要です。
また、給与所得者でない方は、住民税の基礎控除は33万円ですので、これを超えれば38万円以下であっても住民税の申告が必要になります。 住民税の申告方法や様式は、申告先の市区町村に確認しましょう。

■仮想通貨の所得の計算方法

仮想通貨の所得は、次の式で計算します。

・仮想通貨を売ったときの所得

【計算式】
仮想通貨の売却価額-売却した仮想通貨の取得価額など

・仮想通貨で買い物をしたとき

【計算式】
商品の購入価額-支払った仮想通貨の取得価額など

・他の銘柄と交換したとき

【計算式】
交換銘柄の購入価額-支払った仮想通貨の取得価額など

・マイニングによって取得したとき

【計算式】
取得時の仮想通貨の時価-マイニングに要した費用

マイニングとは、仮想通貨のデータを計算し取引を記録する専門的な作業のことです。
この項目は、マイニングの報酬として入手する仮想通貨の課税関係の話ですので、トレードだけ行っている人には関係ありません。

仮想通貨の取得価額

上記の計算式から、仮想通貨の所得は、「仮想通貨の取得価額」がいくらになるかで大きく変わることが見えてくると思います。
取得価額の計算方法は、まず仮想通貨1単位あたりの平均単価を計算し、それに売却した(支払った)仮想通貨の数量をかけて計算します。
たとえば、2ビットコインを100万円で売却した場合、保有するビットコインの平均単価が1ビットコインあたり70万円であれば、取得価額は140万円(70万円×2ビットコイン)となります。
取引所に支払った購入手数料があれば、その額も取得価額に含めます。

平均単価の計算方法

平均単価の計算方法には、総平均法と移動平均法の2つがあります。
どちらが税金上有利というのはありませんが、購入・売却を繰り返しているケースでは、総平均法の方が計算の負担が少なくてすみます。
また法改正によって、現在、法定の評価方法は「総平均法」とされ、変更には届け出が必要になります。(所得税法施行令第119条の4、第119条の5)
総平均法とは、1年間を通じて、同じ銘柄の購入総額から平均単価を計算する方法です。
国税庁の過去のFAQに、年間取引報告書を活用した計算の様式が掲載されているので、計算の参考にされるとよいと思います。

国税庁「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて」問9
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_02.pdf

取得価額以外の必要経費

取得価額以外にも、売却に必要な費用の支払いがあれば、それを「必要経費」として売却価額から差し引くことができます。
たとえば、取引所などに支払った売却手数料のほか、要件を満たせば、パソコンの購入代金やインターネット料金なども差し引くことが可能です。
ただし、個人で購入したパソコンなどは、私的な用途を兼ねることが多いものです。
必要経費とするには、「仮想通貨の売却のために直接必要となる金額」を、私的な利用部分と区分しなければなりません。
判断がむずかしいところですが、必要経費にできれば、税負担もその分下がります。
必要経費の範囲は、税理士にご相談されることをおすすめします。

■仮想通貨と扶養控除・配偶者控除の注意点

仮想通貨の収入によって、扶養控除や配偶者控除といった税金の控除が受けられなくなり、ご家庭の税負担が上がるというケースもあります。
まず扶養控除は、控除の対象になる扶養親族の所得が、38万円以下でなければ受けられません。
配偶者控除・配偶者特別控除については、控除を受ける「本人」と控除の対象となる「配偶者」のそれぞれの所得で、控除が受けられるかどうかが決まります。
配偶者控除・配偶者特別控除の控除額は、最大38万円(※)ですが、
・「本人」の所得が900万円を超える
または
・「配偶者」の所得が85万円を超える
のいずれかに該当すると、控除額は段階的に減少します。
最終的に、
・「本人」の所得が1,000万円を超える
または
・「配偶者」の所得が123万円を超える
のいずれかで、控除額は0円となります。
たとえば、年収103万円ちょうどのパート主婦の場合、その所得は38万円(103万円-給与所得控除額65万円)ですから、仮想通貨で85万円(123万円-38万円)を超える所得が発生すると、その年に夫が受けられる配偶者控除・配偶者特別控除の額は0円になるということです。

(※)配偶者の年齢が70歳以上であれば48万円になるケースがあります。

■まとめ

仮想通貨の所得は、なかなかコントロールできるものではありません。
年末が近づいて、控除の対象になれないと知り「こんなはずじゃなかった・・・」ということが起こりえます。
もし仮想通貨で所得が多くなってしまった方は、必要経費にできるものを見落としていないか、年末までにできそうな節税策がないかなど、税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

こちらの文章は、2019年分の確定申告のために執筆しています。
2020年から基礎控除、給与所得控除額の変更にともない、文中の金額が変わる部分がありますのでご注意ください。


2019年12月26日

「教育資金の一括贈与」の2019年度改正のポイント

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■教育資金の一括贈与とは

教育資金の一括贈与とは、直系尊属から贈与された教育資金のうち1,500万円まで、贈与税が非課税になる制度です。
高年齢の世代から若年齢の世1代への財産の移転を促し、消費の活性化を図るという経済的施策としての側面があります。
直系尊属とは、実の親や祖父母などを指しますが、通常、親が子に支払う教育費のうち、「必要な都度」支払われるものであれば、贈与税の対象になりません。
そのため、教育資金の一括贈与は、祖父母から孫への贈与に活用されやすい制度になります。

■教育資金の一括贈与の改正点

2019年度税制改正における教育資金の一括贈与の改正点は、以下の4つです。
<2019年度税制改正における改正点>
・受贈者の所得の制限
・23歳以上の受贈者に対する教育資金の範囲の制限
・死亡前3年の贈与に対する課税措置の追加
・「教育資金管理契約」の終了となる事由の見直し

しかし、そもそもこの制度のしくみがわかりづらいため、具体的に何がどのように私たちに影響するのかが把握しづらいと思います。
そこで、制度の概要について、改正に関係する部分だけ部分的に補足しながら、改正点を具体例で確認していきます。

改正点1:受贈者の所得の制限

教育資金を取得する受贈者(孫など)の所得については、これまで制限がありませんでしたが、改正によって、贈与を受けた受贈者の「前年の所得」が「1,000万円を超える」場合、その教育資金は非課税にならないことになりました。
たとえば社会人になって毎年1,000万円を超える所得のあるお孫さんが、さらなるキャリアアップのために海外に留学することになったとしても、そのお孫さんへの教育資金の贈与は、非課税にならないということです。
なお、この改正は、2019年4月1日以降の贈与に適用されます。

【例】2018年の所得が1,000万円を超える孫への教育資金の贈与
・2019年3月1日:300万円を贈与→非課税の適用あり
・2019年4月1日:200万円を贈与→非課税の適用なし


改正点2:23歳以上の受贈者に対する教育資金の範囲の制限

23歳を迎えた受贈者(孫など)は、非課税となる教育資金の範囲に制限が設けられました。
そもそも、この制度の教育資金は、かなり広義です。
教育資金を大きく区分すると
・学校等に支払われる金銭
・学校等以外に支払われる金銭
に分かれます。

【教育資金の対象となる支払い】


区分

具体例

非課税上限

学校等に支払われる金銭 ・入学金、授業料、入園料・保育料等
・入学や入園の試験にかかる検定料
・在学証明等の手数料
・学用品の購入費や修学旅行費など学校教育に伴う費用
等 1,500万円 (ただし学校等以外に支払われる金銭は500万円まで)
学校等以外に支払われる金銭 ・教育(塾など)に関する費用や施設の利用料
・スポーツや文化芸術など習い事の費用
・上記に使用する物品の購入費用
・「学用品の購入費や修学旅行費など学校教育に伴う費用」のうち、その全部又は大部分を学生等が支払うべきものと学校等が認めたもの
・通学定期券代
・留学渡航費などの交通費

(いずれも社会通念上相当と認められるものに限られます)

非課税限度額は、贈与を受ける者1人につき合計1,500万円です。
学校以外の習い事やそれに使用する物品(例:楽器など)も対象になるため、かなり広い範囲で適用できます。
ただし、学校等以外に支払われる金銭については、1,500万円のうち500万円が非課税適用額の上限です。
そして、今回の改正によって
・教育(塾など)に関する費用や施設の利用料
・スポーツや文化芸術など習い事の費用
・上記に使用する物品の購入費用
(「学校等以外に支払われる金銭」の太字の部分)については、受贈者が23歳になった日の翌日以後に支払われる場合、「教育訓練給付金」の対象となる教育訓練の費用でなければ、教育資金に該当しないことになりました。
「教育訓練給付金」とは、雇用の安定や再就職を促進するための教育訓練の受講費に対する国の給付金です。
たとえば、25歳のお孫さんが2019年11月からピアノ教室に通い始めた費用は、それが教育訓練給付金の対象にならない限り、非課税となる教育資金にはなりません。
2019年7月1日以降に支払われるものが、この改正の対象になります。

改正点3:死亡前3年の贈与に対する課税措置の追加

教育資金の贈与は、一度に1,500万円を贈与してもよいですし、何回かに分けて贈与しても構いません。
ただし、2019年4月1日以降に行われた贈与後の3年以内に、贈与者(祖父母など)が亡くなってしまった場合、一定額が相続税の課税対象になります。

【例】孫に200万円の教育資金を贈与する場合


200万円を贈与した日

贈与者の死亡日

相続税の対象になるか

2019年3月1日 - ならない
2019年4月1日 2022年11月1日 ならない
2019年4月1日 2021年11月1日 なる(※)

(※)受贈者が死亡日において「23歳未満の場合」または「学校等に在学しているか、教育訓練を受けている場合」を除く。

まず、2019年3月31日以前の贈与であれば、贈与者の死亡日にかかわらず相続税の対象にはなりません。
2019年4月1日以後の贈与が、贈与者の死亡前3年以内と重複する場合のみ、相続税の対象になります。
ただしこの場合でも、受贈者が死亡日において「23歳未満の場合」または「学校等に在学しているか、教育訓練を受けている場合」は相続税の対象になりません。
「学校等に在学しているか、教育訓練を受けている場合」であれば、その旨を金融機関に届け出る必要があります。
また、上記のケースの場合、200万円すべてが相続税の対象になるわけではありません。
ごく簡単に表現すると、使いきれず残った贈与額や非課税にならなかった払い出し額のうち、4月1日以降の贈与にあたる額を割合計算した額が相続税の対象になります。

【例】
・2019年3月1日に祖父から孫に300万円贈与
・2019年4月1日に祖父から孫に200万円贈与
・2019年11月1日に孫が教育資金として200万円を使用
・2021年11月1日、祖父が死亡(残額300万円)

この場合、相続税の対象になる額は、120万円(※)です。
(※)300万円×200万円/500万円
なお、受贈者は、贈与者が亡くなった場合、そのことを金融機関に届け出なければなりません。

改正点4:「教育資金管理契約」の終了となる年齢の見直し

教育資金の一括贈与を行う方法には、次の3つがあります、

・受贈者(孫など)と銀行で教育資金管理契約を締結し、贈与された金銭を預け入れる
・受贈者(孫など)と証券会社で教育資金管理契約を締結し、贈与された金銭で有価証券を購入する
・贈与者(祖父母など)が信託銀行と教育資金管理契約による信託を設定し、受贈者に信託受益権を贈与する

少し複雑に見えますが、どれも金融機関が「教育資金管理契約」という契約によってあらかじめ金銭を預かり、その後は受贈者が金融機関で手続きをして、金銭の払い出しが行われるというしくみになっています。
そして、「教育資金管理契約の終了」となる条件に該当した場合、その契約が終わり、もし口座に残額等があれば、それに対して受贈者が贈与税を支払うという流れになっています。
この「教育資金管理契約の終了」の条件の1つに、「受贈者が30歳に達した場合」というものがあります。
したがって、これまで受贈者が30歳になると、教育資金の一括贈与は終了していました。
改正では、この年齢要件に追加で、30歳以上の受贈者でも
・学校等に在学している場合
・教育訓練を受けている場合
のいずれかに該当し、その旨を受贈者から金融機関に毎年届け出た場合、最長で40歳に達する日まで「教育資金管理契約」を継続できるようになりました。

■今後、教育資金の一括贈与をうまく活用するには

今回の改正では、非課税のメリットを受ける必要性が一般的に高くないと考えられるパターンが排除されています。
高収入な受贈者に非課税が適用されなくなったことや、23歳以上の受贈者への制限に注意すれば、多くのケースではこれまでどおりに使うことができます。
教育資金の一括贈与の活用にメリットがあるのは、やはり小さいお孫さんに贈与するケースです。
お孫さんの大学卒業まで費用として活用すれば、本来その学費を負担しなければならない親(贈与者の子)への支援になります。
教育資金の一括贈与は、要件は複雑ですが、相続税対策に非常に大きな効果があります。
相続税対策を始めたい方、生前贈与を行いたい方は、税理士にぜひご相談ください。


2019年11月15日

eLTAXの電子納税が全国対応になりました

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2019年10月から、eLTAXで、全国の都道府県、市区町村に一定の地方税の電子納税ができるようになりました。
今回は、eLTAXとは何か、電子納税できる税金の一覧、利用するメリット、納税方法などをご紹介します。

■eLTAX(エルタックス)ってそもそも何?

eLTAX(エルタックス)とは、地方税ポータルシステムのことで、e-Tax(イータックス)の地方税版のような位置づけになります。
主な機能は、地方税に関する
・電子申告
・電子納税
・電子申請、届出
です。
このeLTAXに、10月から「地方税共通納税システム」という新しいシステムが導入されました。
「地方税共通納税システム」とは、簡単にいうと、納税者・金融機関・地方公共団体の3者をつなぐシステムです。
マルチペイメントネットワークというしくみを利用して、システム上の「共通の口座」に納税者が納めた税金をいったん収納し、それを納税者の申告情報等から作成された「納付情報」と照合して、都道府県や市区町村に振り分けるというものになります。
これによって、eLTAXによる電子納税の納付先が、一部の地方公共団体から全国の都道府県・市区町村に拡大されました。
このほか、
・複数の納税先への一括納税ができる
・申告から納税までを一連の手順で行える
・地方公共団体が指定する金融機関以外からも納税ができる
など、地方税に関する納税者の利便性がアップしています。

■電子納税できる税金の一覧

「地方税共通納税システム」の納税には
・提出済の電子申告データを読み込んで、その納税額を納付する方法
・納税者が、納税先や税額を自分で入力して納付する方法
があり、それぞれ以下の税金に対応しています。


電子申告データと連動させて納付する方法(※1)

納付金額等を自分で入力して納付する方法

・法人都道府県民税
・法人事業税
・地方法人特別税
・法人市町村民税
・事業所税
・個人住民税
(特別徴収で税額通知が電子的に送付されている場合、退職所得に係る納入申告(※2)) ・個人住民税(特別徴収で税額通知が電子的に送付されていない場合)(※1)
・法人都道府県民税の見込納付(※3)及びみなし納付(※4)
・法人事業税の見込納付及びみなし納付
・地方法人特別税の見込納付及びみなし納付
・法人市町村民税の見込納付及びみなし納付
・更正・決定に関する納付

(※1)延滞金等を含みます。
(※2)退職金から住民税を計算して徴収した場合の手続きです。
(※3)申告期限の延長を行ったときに行われる、法定期限内に税額を見込みで納付することです。
(※4)中間申告書を提出しなかった時の予定申告による納税額のことです。

参考資料:eLTAX「共通納税とは」
https://www.eltax.lta.go.jp/kyoutsuunouzei/gaiyou/

将来、利用可能な税金は増える?

「地方税共通納税システムに関するQ&A」によると、将来的には、賦課税目などの追加が検討されるとのことです。
地方税のうち賦課税目とは、たとえば固定資産税や自動車税などを指します。
「地方税共通納税システムに関するQ&A」問4
https://www.eltax.lta.go.jp/news/files/20190802/IHP4-QA.pdf

■ eLTAXで個人住民税の納付が便利に

納税者の利便性アップが特に期待されているのは、特別徴収の個人住民税の納付です。
特別徴収とは、従業員の給与から個人住民税を事業主が天引きして、事業主から市区町村に納税することをいいます。
納付先は、その従業員の1月1日時点の住所地のある市区町村です。
毎年5月ころになると、6月から1年間の特別徴収税額の通知書が、各市区町村から、専用の納付書とともに事業所に送られてきます。
これまで担当者は、各市区町村の納付書を保管し、毎月(納期の特例は年2回)、納付書を金融機関等に持ち込んで、それぞれの特別徴収税額を納める必要がありました。
しかしeLTAXの「地方税共通納税システム」を利用すれば、今後は、金融機関等に出向くことなく会社などのPCから納税できます。さらに、複数の納税先に一括納税する操作も可能です。
複数の地方公共団体に、毎月、個人住民税を納付している事業所は、eLTAXの利用によって納税事務の負担軽減が期待できます。

税額通知の「書面」と「電子データ」

特別徴収の税額通知は、市区町村からの「書面」の郵送や「電子データ」の送付によって行われます。
どちらでも、eLTAXの電子納税は利用できますが、書面であれば「納付金額等を自分で入力して納付する方法」、電子データであれば「電子申告データと連動させて納付する方法」で納税することになります。
電子データの送付を受けたい場合は、納付先の市区町村のHP等で確認しましょう。

■3つの納税方法

eLTAXの「地方税共通納税システム」における納税方法には、
・ダイレクト納付
・ATMからの納付
・インターネットバンキングからの納付
があります。
それぞれに対応する金融機関は、こちらから確認できます。

eLTAX「共通納税対応金融機関」
https://www.eltax.lta.go.jp/kyoutsuunouzei/kinyukikan/

ダイレクト納付

ダイレクト納付とは、事前に「地方税共通納税システム」に登録した口座から、地方税を納付する方法です。
地方税共通納税システムで「納付情報」を発行し、利用前に口座登録を行う必要があります。

ATMからの納付

金融機関に設置される、ペイジーマークの付いたATMから納付する方法です。
事前に地方税共通納税システムで「納付情報」を発行する必要があります。
自宅や会社から納税する方法でないため、利便性の面ではいまひとつかも知れません。

インターネットバンキングからの納付

インターネットバンキングを使って納税する方法です。
インターネットバンキングのHPから納税する方法と、PCdesk(ピーシーデスク)というeLTAXのソフトウェアを使用して納税する方法があります。
事前に地方税共通納税システムで「納付情報」を発行する点は、ダイレクト納付やATMからの納付と同じですが、PCdeskを使用すれば、納付情報が引き継がれるため入力の手間が省けます。

利便性が高いのは「ダイレクト納付」

総合判断ですが利便性が高いのは、ダイレクト納付です。
ダイレクト納付であれば、自宅や会社のPCから納付できるという電子納税のメリットも受けられますし、インターネットバンキングの口座を用意する必要もありません。
ほかにも、ダイレクト納付には以下のようなメリットがあります。

・手数料がかからない
地方税共通納税システムの利用は、どの納付方法でも無料です。
ただしATMやインターネットバンキングの利用手数料は、金融機関の基準によって発生することが考えられます。
この点は、各金融機関に確認するほかありません。
ダイレクト納付であれば、この手数料がかかる心配は無用です。

・税理士の代理納税が可能
ダイレクト納付であれば、代理人の納税も可能です。
これによって、税理士が納税者に代わって納税手続きをすることもできます。
申告代理を依頼している事業者は、税理士に相談してみましょう。
利用するときは、事前に、PCdeskで納税者の承認手続きが必要です。

・納付日を指定できる
ダイレクト納付であれば、納税する日を指定することができます。

クレジットカード納付やコンビニ納付は?

国税ではすでに対応が行われているクレジットカード納付やコンビニ納付ですが、2019年10月において、eLTAXではまだ行われていません。
「地方税共通納税システムに関するQ&A」によると、今後検討するとのことです。

「地方税共通納税システムに関するQ&A」問5
https://www.eltax.lta.go.jp/news/files/20190802/IHP4-QA.pdf

■eLTAXで電子納税を行う手続き

まずeLTAXを初めて利用される方は、eLTAXの利用届出が必要です。
PCdeskから利用届出を行い、利用者IDを取得する必要があります。
その後は、すべての納税方法で「納税情報」を取得する必要があります。
また、ダイレクト納付であれば、口座情報の事前登録が必要です。
納税期限に間に合うよう、なるべく早めに手続きを始めましょう。

手順は下記のリンクをご覧ください
「eLTAXのご利用の流れ」
https://www.eltax.lta.go.jp/eltax/gaiyou/flow/


2019年10月15日

満期保険金・解約返戻金の受け取りにかかる税金と確定申告の基準

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確定申告の時期になると、お問い合わせをいただくことが多いのが、「保険会社から支払われた保険金等に対して確定申告が必要か」というものです。
今回は、生命保険会社から支払われた満期保険金・解約返戻金について、発生する税金や確定申告の基準について解説します。

■満期保険金・解約返戻金にかかる税金

生命保険会社から支払われる満期保険金・解約返戻金は、保険料負担者と受取人によって、所得税、贈与税のいずれかが発生します。


保険料負担者

受取人

税金

A A 所得税
B A 贈与税

確定申告の対象となるのは、所得税の対象となる満期保険金・解約返戻金です。
つまり、保険料負担者と受取人が同一のものになります。

確定申告が必要になる基準

ご質問をいただく機会が多いのは、普段、確定申告を行わない方、たとえば給与所得者の方や、収入のない方などが満期保険金・解約返戻金を受け取った場合です。
まず給与所得者の方の場合、給与所得・退職所得を除いて20万円を超える所得がある場合に、確定申告が必要になります。
したがって、満期保険金・解約返戻金から計算される「所得」が重要になります。
同じく公的年金を受給している方にも、公的年金等以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要になるというルールがあります。
ただし、もともと他の理由で確定申告をしなければならない人(給与収入が2,000万円を超える方、2箇所以上から給与をもらっている方など)は、他の所得の額にかかわらず確定申告が必要です。この場合は、たとえ満期保険金・解約返戻金の所得が20万円以下であっても全額を申告しなければなりません。
なお、20万円以下であるため確定申告をしなかった場合、住民税の申告が別途必要になる場合があります。
収入のない方については、基礎控除などによって最終的に納める税額がなければ、確定申告は不要です。ただし、源泉徴収税額がある場合は、還付が受けられる可能性があるので申告を検討しましょう。

■満期保険金・解約返戻金の所得区分

満期保険金・解約返戻金のうち、所得税の課税対象となるものは、支払い方法が一時金であれば「一時所得」、年金であれば「雑所得(公的年金等以外)」に分類されます。

「一時所得」の計算方法

<計算式>
満期保険金・解約返戻金の受取額 - 支払保険料の総額 - 特別控除額(50万円に満たない場合にはその金額)

たとえば、満期保険金1,000万円を受け取って、それまでの払込保険料の総額が950万円であれば、所得は0円(1,000万円-950万円-特別控除額50万円)ですので、申告は不要です。
ちなみに一時所得のうち、課税の対象となる金額は上記の計算額の2分の1となります。

「雑所得(公的年金等以外)」の計算方法

<計算式>
受け取った年金額 - 受け取った年金額に対応する払込保険料(※)

(※)受け取った年金額×払込保険料の総額/年金の総支給見込額

たとえば、年金額が100万円、総支給見込額が1,500万円(15年)、払込保険料が1,200万円の場合、雑所得は20万円(100万円-100万円×1,200万円/1,500万円)となります。

例外:金融類似商品に該当する保険の場合

次の満期保険金や解約返戻金は、金融資産に類似していることから、源泉分離課税となります。確定申告の必要はありません。

・一時払養老保険や一時払損害保険などで一定の要件を満たすものの差益(保険期間等が5年以下のもの又は保険期間等が5年を超えるもので保険期間等の初日から5年以内に解約されたものの差益に限られる)
・一時払個人年金保険(給付年金総額が定められている確定年金契約に限られる)で、契約開始から5年以内で年金支払開始前に解約されたものの差益
国税庁HP:タックスアンサー№1520より
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1520.htm

源泉分離課税とは、保険会社が、その支払い額から税金を徴収し納税を済ませてくれているもののことです。
したがって、一時所得や雑所得の計算に加える必要はなく、確定申告の必要もありません。

■保険会社が作成する支払調書とは?

満期保険金・解約返戻金のために確定申告をしなければならなくなった方の中には、「確定申告をしなくても問題にならないのでは?」とつい考えてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確定申告は、プロがやっても大変な作業ですので、お気持ちはとてもよくわかります。
しかし保険会社は、満期保険金・解約返戻金など、保険契約に基づく支払いを行った場合、税務署に「支払調書」という様式を提出する決まりがあります。
支払調書とは、「どこの誰にいくら払いました」と報告するための様式です。
したがって、確定申告をしなかった場合、支払調書の情報を基に税務署から連絡が入ることがあります。
場合によっては、税務調査の対象となってしまうかもしれません。
したがって、満期保険金・解約返戻金の確定申告は、必ず行いましょう。

支払調書の主な記載事項

支払調書の主な記載事項は、次のとおりです。
・支払いを受ける者の住所、氏名やマイナンバー
・生命保険金等の金額
・保険料の総額
・過去に契約の変更があった場合は、変更前の契約者名、現在の契約者が払い込んだ保険料の総額、変更回数等
・源泉徴収税額

(所得税法施行規則第86条第1項参照)

支払調書の提出範囲

満期保険金・解約返戻金の場合、一時金払いの金額が100万円を超えるもの、年金払いであれば20万円を超えるものが対象となります。
なお、国税庁の質疑応答に、
・同じ生命保険会社から同じ日に、それぞれ別の保険契約に基づく死亡保険金80万円と満期保険金60万円の支払いがあった場合
・同じ生命保険会社から別の日に、上記の支払いがあった場合
で、それぞれ支払調書の提出の要否を照会しているものがありますが、その回答は、前者は提出しなければならず、後者は省略してよいというものになっています。
国税庁HP:生命保険契約等の一時金の支払調書の提出省略範囲
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hotei/3/01.htm

平成30年から提出範囲が拡大

ところで「平成30年から保険会社の支払調書の提出範囲が拡大された」という話がありますが、少しこの話を整理したいと思います。
平成27年度の税制改正によって、平成30年1月以降から、契約者の死亡によって、契約者が変更となった生命保険契約等についても支払調書の提出が必要となりました。(相続税法第59条第2条)
これは、まだ保険事故が発生していない生命保険契約等のことです。
なぜまだ支払っていない保険に支払調書が必要かというと、死亡によって生命保険等の契約者変更が行われた場合、その解約返戻金相当額に相続税が課税されるルールがあるためです。
この課税漏れを防ぐため、死亡による契約者変更に関しては、解約返戻金相当額が100万円以下でも支払調書が必要となりました。(相続税法施行規則第30条第6項)
したがって、満期保険金・解約返戻金の支払いを受けた場合の支払調書は、引き続き、一時金払いであれば、支払い金額が100万円を超えるもの、年金払いであれば20万円を超えるものが対象となります。

■満期保険金・解約返戻金が贈与税に該当する場合

贈与税は、原則、1月1日から12月31日までの間に受けた贈与の合計が110万円を超える場合に税金が発生します。
この税金の計算方法を、暦年課税といって、翌年の2月から確定申告と同じ期限までに申告が必要です。
ただし、親や祖父母からの贈与であれば、相続時精算課税制度を選択することもできますので、どちらが得かは税理士に相談しましょう。
なお、贈与税の対象は、解約返戻金相当額となり、所得税の計算のように払込保険料を差し引くことはできません。

■まとめ

満期保険金・解約返戻金は、その保険料負担者と受取人によって、所得税か贈与税の課税対象になります。
確定申告のご相談は、税理士にお任せください。


2019年09月11日