「社会保険の適用対象が拡大します(令和4年10月)」

「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が、令和2年6月5日に公布されました。
改正の趣旨は、より多様な形で働く人が増える社会情勢の変化に伴い、高齢期の財政基盤の充実を図ることです。
改正内容のうち、従業員を雇用する会社にとって重要となるのは、社会保険の適用拡大です。
施行日は令和4年10月1日ですが、段階的に改正される部分もあります。

■被用者保険の適用拡大とは

現在、パートタイマーやアルバイトといった短期労働者のうち、社会保険に加入する人は限られています。
1週間の所定労働時間・1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上であれば社会保険が適用されますが、それ以外は、以下の5つの要件(現行)をすべて満たしている場合でない限り、適用の対象になりません。
・事業所の被保険者が常時500人超(※)
・雇用期間が1年以上見込まれる
・週の所定労働時間が20時間以上
・賃金月額が8.8万円以上
・学生でない
改正後は、太字の要件が下記のとおり緩和されます。
(※)常時500人以下の事業所であっても労使の合意があれば、現行ルールでも社会保険に加入できます。


現行
・事業所の被保険者が常時500人超
・雇用期間が1年以上見込まれる
・週の所定労働時間が20時間以上
・賃金月額が8.8万円以上
・学生でない 【令和4年10月~】

 

改正後
・事業所の被保険者が常時100人超
・雇用期間の要件は撤廃。(フルタイム等と同様の2ヶ月超の要件が適用される)
【令和6年10月~】
・事業所の被保険者が常時50人超
他の3要件はそのままとなります。

事業所の被保険者数とは
現行は、「事業所の被保険者が常時500人超」ですが、これが段階的に「100人超」(令和4年10月~)→「50人超」(令和6年10月~)に引き下げられます。
事業所の被保険者数は、適用拡大前の被保険者の人数をカウントします。

<カウント対象>
・フルタイムの労働者
・週の労働時間等が4分の3以上のパートやアルバイト等

被保険者数は、月ごとにカウントし、直近12ヶ月のうち6ヶ月で基準を上回ると適用対象になります。

雇用期間の要件は撤廃
現行では、雇用期間が1年未満の契約であれば、社会保険対象外の要件の1つを満たしますが、改正後はこれが撤廃されます。(令和4年10月~)
撤廃された後は、フルタイム等の加入条件と同様の「2ヶ月超」が適用要件の1つになります。

■従業員への説明を

改正後、新たに対象となりそうな従業員には、社会保険適用後のことをよく説明する必要があります。
社会保険に加入すれば当然、事業所と折半で保険料を負担することになりますので、それまで国民健康保険・国民年金に加入していた人は、給与の手取りが減ります。
社会保険のしくみをよく理解していなければ、不安に感じるでしょう。
説明のポイントとしては、現在加入している国民健康保険や国民年金との違いです。
まず、国民健康保険と会社の健康保険の大きな違いの1つに、傷病手当金の支給があります。
被保険者がケガや病気で働けなくなって仕事を休み、給与が支給されない場合の保障ですが、国民健康保険にはありません。(現在は新型コロナウイルス感染症の関係で支給される場合があります)
また、厚生年金に一定期間加入すれば、将来、老齢厚生年金が受け取れます。
さらに国民年金は一律で月額1万6,000円ほどの負担となりますが、厚生年金保険料は標準報酬月額に合わせて労使折半となります。
標準報酬月額によりますが、負担額が下がるケースの方が多いでしょう。
このあたりを伝えれば、理解してもらいやすいのではないでしょうか。

 

2020年08月26日