八ヶ岳 (真教寺尾根)( 赤 岳:2,899m ) 2000.07.23 登山


  赤岳頂上より真教寺、県界両尾根 ( 2000.07.23 )

【八ヶ岳 (真教寺尾根) 登山記録】

【八ヶ岳 (真教寺尾根) 登山データ】

フォト

初回登山


八ヶ岳 (真教寺尾根) 登山記録

夏の盛り、青い空が拡がるのを横目に見ながら家にいるのは耐え難いものがある。
一昨日の 7月20日 海の日に
鳳凰三山の再登山を行ったばかりだったので、 この週末はおとなしく家にいようと思ったのだが、 鳳凰三山が天候に恵まれなかったこともあって、 窓から見上げる青い空が羨ましく、 急遽予定を変えて 翌日の日曜日に山に行くことにした。

目的地については散々迷ったあげく、最終的に手頃にアルペンムードを満喫できる八ヶ岳と決め、登山ルートは今回初めてとなる野辺山高原、 清里側からの道をとることにした。 美し森山からスタートし、 真教寺尾根を登って赤岳山頂に至り、 どこにも寄らずにそのまま県界尾根を下山してくる というものである。 せっかく 2,899mの赤岳山頂に到達したにも拘わらず、 そのまま下山してしまうのは勿体ない気もするが、 やはりここは翌日の出勤も考え、 自重した次第である。

20日の日と同じく朝 4時過ぎに家を出ると、空には月が輝き、雲一つない快晴であった。空一面を雲が覆っていた 20日とは雲泥の差で、 今日 青木鉱泉から鳳凰三山に登れば、 白砂の輝く縦走路とその先の雲に浮かぶ富士山を見ることができたに違いない。

順調に車を進め、須玉ICで中央高速道を降りて国道141号線に入り、途中から清里駅への道をとって、まだ誰もいない清里駅前を通り過ぎ、 美し森山に着いたのは 6時20分頃であった。

前方を見ると、上空は青空が拡がり雲一つないにもかかわらず、これから登る八ヶ岳だけには雲がかかっている。そして鳳凰山方面は雲がない状況で、 これは またまた組み合わせを間違えてしまったか と自分のツキの無さを嘆いたのだったが、 その雲も登るに連れて消え去り、 途中からは全く雲一つない中での登山となったのであった。

さて、話は戻るが、駐車場をどこにするか迷いながら八ヶ岳方面に進んでいくと、県営美し森たかね荘という看板が道路左脇に見えてきた。 ここなら車を止めさせてもらえるかと思い左折したところ、 たかね荘の建物の横に広い駐車場があったので、 ここに車を止めることにした。

しかし、ここからの登山道が分からない。赤岳登山を示す標識がどこにもないのである。少し戻ってキャンプ場の方にも行ってみたがよく分からない。 それではと、駐車場にあるトイレ裏の森に入ってみると、 少し先に牛首山・赤岳を示す標識があったのでホッとした次第であるが、 もう少し道筋を明確にして欲しいものである (6時34分発)

遊歩道のように丸太の階段が敷かれた道を登っていくと、やがて羽衣池で、道は池を巻くようにして左右に分かれている。この辺は 事前にガイドブックで知識を得ており、 どちらの道をとっても良いことを知っていたので、 迷わず左側の道を進んだ。 羽衣池の方は水もあまりなく、どちらかというと湿原と言う感じで、 ほとんど草に覆われている状態である。

道は所々ササがうるさくて見えにくいところもあるが、迷うほどではない。先日の登山で身体がほぐれているのか、足取りも快調である。
また時々樹林が切れ、 左側に甲府盆地の拡がりと その先に富士山や南アルプスの姿を眺めることができ、 青い空のもと、そよ吹く風に大変気分が良い。

順調に足を進めていくと、やがて不意に右手から機械音が聞こえ出してきたのでビックリしてしまった。右横前方を見ると、何とリフトがあって、 しかも動いているではないか。 これには本当に驚いてしまった。
リフトにはヘルメットをかぶったハデな服を着た人たちが乗っており、 パラグライダーでもやるのかと思ったら、 リフト終点で確認したところでは、 どうやらマウンテンバイクの大会らしい。

しかし、このようなところにリフトがあるとは興ざめである。登山とスキーとは山を楽しむ という意味では同じだが、登山者にとってリフトは やはりご勘弁願いたい存在である。

リフトを過ぎ、暫く登ると樹林帯が切れ、賽ノ河原と呼ばれているらしい広々とした所に出た。そこには公園のようにベンチも置かれていて、 左側の崖のようになっている所には柵もあり、 そこから甲府盆地の町並みが良く見える。
また、富士山も逆光になりつつあるものの、 すそ野近くまでの姿を見せており、 なかなか素晴らしい眺めである。

更に、賽ノ河原手前にある岩に登れば、これから登る牛首山とその右側に赤岳の姿を見ることができ、出発当初山頂を覆っていた雲も 今はすっかりどこかへ消えてしまっていて、 その焼 岳を彷彿とさせる姿が大変魅力的であった。

賽ノ河原からもササの多い道を登り詰めていくと、やがて立派な標識がある牛首山で (8時14分)、その頂上は樹林に囲まれていて展望はあまり利かないものの、 樹林越しに権現岳方面が良く見える (8時24分発)
牛首山から一旦下って再び登り返した所が扇山で (8時34分) こちらも展望は得られず、 標識が無ければそのまま通り過ごしてしまうような場所であった。

ここを過ぎると、道の左右が明確に谷となり、尾根道を登っているという実感が出てくるようになってくる。樹林の中をひたすら登り続けると、 やがて周りの木々も徐々に低くなり、 周囲の景色が良く見えるようになってきた。 前を見れば赤岳がどっしりと構えており、 その壁のような高さに一瞬驚かされるが、 よく見ると頂上に赤岳頂上小屋が見えるので、 小屋の大きさを基準に考えると意外に近いことが分かる。

ただ、頂上に小屋があるのは良いとしても、この赤岳のように小屋が目立つのは少々考えものである。赤岳の美しい景観を壊していることは間違いない。

やがて休憩にもってこいの岩場が現れたので、岩場に座って休憩しながら周囲を見回すと、下方には越えてきたばかりの牛首山の盛り上がりが大きい。 この真教寺尾根の左側 (赤岳に向かって見れば右側) には 下山時に辿る県界尾根が同じように伸びているのが見える。 右手には三ツ頭、権現岳が壁のように連なっており、 そのまま旭岳、ツルネを経て赤岳へと繋がっているのが見える。 またその連なりの途中にある岩峰の形が面白い。 あれが大天狗、小天狗だろうか。

この頃には日も高くなり、富士山などは薄ぼんやりとしか見えなくなってしまったものの、南アルプスの山々はまだハッキリと見えている。

岩場を後にしてさらに登り詰めていくと、遠くに見えていた赤岳も壁を見上げるように近くなっている。やがて登り勾配もきつくなってきたので、 赤岳の壁に取り付いたのかな などと思っていると、 いつのまにか森林限界を過ぎて完全な岩場となり、 そこから鎖場の連続となった。 ただ、この鎖場はそれほど苦労するところはなく、 山に慣れた人ならほとんどの場所で鎖に頼らずに登れる感じである。

この辺に来ると展望も素晴らしく、権現岳に見え隠れしていた甲斐駒ヶ岳北 岳なども完全に見えるようになり、また足下には 真教寺尾根と県界尾根が双子のように伸びているのが良く見えた。
赤茶けた岩礫帯を、 鎖による直登と トラバースを繰り返しながら登っていくと、 やがて行者小屋からの道と合流することとなった。 ここが竜頭峰の基部である。 阿弥陀岳方面から吹く風がとても気持ちよい。

後はお馴染みの岩場の間をよじ登れば良いのだが、今まで数人の下山者に会っただけだったのが急に人が多くなったため些かテンポが鈍る。 何人か追い越させてもらい、 一気に登りきって赤岳頂上に着いたのは 10時35分であった。

赤岳頂上は晴天のために期待に違わぬ絶景で、阿弥陀岳の偉容がまず目に飛び込んでくる。また横岳、硫黄岳と続く稜線とその向こうに見える 蓼科山の姿も素晴らしく、 この晴天の中、 これらの山々を登らずに下山するのは 大変もったいない気がする。
また、富士山の方は最早辛うじて見える程度であるが、 その右の鳳凰三山を初めとした南アルプスの山々は まだどうにか見ることができる。

このように絶景が待っていてくれた頂上であったが、まだ早い時間なのに人が多く、やや混雑している。話を聞くと、縦走してきた人たちが多い。 このまますぐに下山する などとは恥ずかしくて言えない雰囲気であった。

さて、今日は登り始めから 4時間での登頂であったが、 同じ時間がかかった先日の鳳凰三山 (林道脇の登山口から 4時間17分) とは気分が全く違う。 真教寺尾根のコースは、 途中の景色も素晴らしく、 登山道にメリハリがあって、 同じ時間がかかったとは思えない程短く感じたのである。 ダラダラと視界の無い中をひたすら登り続けるのは、 思った以上に精神的苦痛を与えるのかも知れない。

赤岳頂上で 30分ほど絶景を堪能した後は、直ぐさま八ヶ岳頂上小屋横から県界尾根の下山路に入った (11時5分発)
こちらの県界尾根も、 真教寺尾根と同じく頂上直下は鎖場の連続であったが、 そのレベルが全く違うので些か驚いた。 こちらの県界尾根の方はかなりの急勾配で、 真教寺尾根のように鎖は念のための補助具という感じではなく、 鎖に頼らねば登れないほどの急坂なのである。 下りでも、これまた鎖にしっかり掴まらねば下降できない所が多い。

そして、足下が悪くて落石を起こしそうな状況なので気を使いながらの下降であったのと、長い鎖が頂上直下から延々と連続していることから、 些かくたびれてしまった。

真教寺尾根でもこの県界尾根でも、コース全体を 9 ? 区間に分けてそれぞれ一定の距離 (?) 毎に番号を書いた丸い標識が置かれているのだが、 この県界尾根は 10番から始まり、 6番の番号が出るまでキツイ鎖場の連続なのである。 私は下りであったからまだ良かったものの、 登りにこのコースを使ったらと思うとゾッとする。 このコースは登りにはあまりお勧め出来ない気がする。

ただ、6番の標識を過ぎると、赤岳のそそり立つような壁の部分は終わるようで、そこからもう暫く下ると 後はほぼ平らに近い道が続くようになった。 そして樹林の切れ間、切れ間には 小さな広場になったような場所がいくつも見られ、 そこから振り返ると、 今登ったばかりの赤岳のどっしりとした姿が見えて、 大いに楽しませてくれるのであった。

太陽はジリジリと照りつけてきているが、吹く風が心地よく、それほど暑さを感じない。暫く平坦な草地を進み、何回か振り返って赤岳の姿を写真に納めた後は、 再び樹林帯に入ることになり、 やがて野辺山方面と清里方面への分岐点に着いた。
無論、車の置いてある清里方面を目指したが、 ここから道は再び下り斜面となり、 樹林の中をひたすら下ることになった。 展望もあまりない長い下りが続き、 いい加減にイヤになった頃、 ヒョイと林道に飛び出したが、 すぐに堰堤工事のための迂回路を通ることになって ササヤブを切り開いた急造の道を歩くことになり、 再び林道に出た後は 延々と林道歩きが続いたのであった。

やがて、今朝ほどのマウンテンバイクの大会のアナウンスが聞こえ始めると、突然道は舗装道へとぶつかり、右にマウンテンバイク大会の会場となっている公園 ? を見て、 今度は炎天下の中の車道下りであった。

途中、道路脇で写生をしている人たちがいたので振り返ってみると、道路の延長上に赤岳の凛々しい姿が見える。なるほどと思い、 シャッターを押したのであったが、 その場所を過ぎてからは たかね荘付近に至るまで、 赤岳の姿を見ることはできなかった。

喉が乾いたため、ジュースの自動販売機を求めながら歩いたのだが、舗装道の周辺には何もなく、だんだん歩くのにイヤ気がさし始めた頃、 道路脇右手に今朝ほど見た 美し森たかね山荘の看板が見えてきた。 もう少し歩くことを覚悟していただけに大変嬉しい。 道を右折して、緩やかな坂を登りきるとたかね山荘で、 ようやく本日の登山は終了となったのであった (13時14分)

赤岳の下りからは太陽に照り続けられたため、露出していた腕や首筋は真っ赤に焼け、夜にはヒリヒリ痛むようになったが、今まで青白かった腕も これでようやく夏バージョンになれるというものである。

先日の鳳凰三山でのモヤモヤはこの夏空の下の登山で一気に解消といった感じである。久々に余裕のある 楽しい登山であった。

帰りは往路を戻ったが、清里駅前は多くの人で賑わい、朝の静けさが嘘のようであった。


八ヶ岳 (真教寺尾根) 登山データ

上記登山のデータ登山日:2000.07.23 天候:快晴単独行日帰り
登山路:美し森たかね荘−羽衣池−リフト−賽ノ河原−牛首山−扇山−竜頭峰基部−赤 岳−大天狗−野辺山・清里分岐−美し森たかね荘
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央高速道路)−須玉IC−清里−美し森たかね荘 (車にて)
交通復路美し森たかね荘−清里−須玉IC−(中央高速道路)−大月IC−(国道20号線)−相模湖−厚木−(国道246号線)−瀬谷 (車にて)


山のメインページに戻る   ホームページに戻る