痔と薬

痔に用いられる薬剤は、特別に”痔用”の薬があるわけでなく、以下に示すように局所の炎症を止める、抗炎症薬、痛み止め、止血剤などからなっています。したがって、根本治療というわけではないので、薬によって症状が軽くなっても、日頃の生活態度によってはまたすぐに痔が復活することになります。薬としては、肛門に挿入する”坐薬”、肛門に挿入する”注入式軟膏”、肛門に塗布する”軟膏”、普通にのむ”内服薬”があります。きれ痔などでは、軟膏でもよいですが、ちょっと奥に入る場合はもちろん坐薬や内服薬との併用などをおすすめします。内服薬は消炎酵素剤、ビタミンEなどの末梢血液循環改善剤、漢方生薬などが用いられています。漢方薬では乙字湯や、鬱血を取り去る桂枝茯苓丸などを併用する場合もあります。

薬効分類
薬剤
作用・特徴
副腎皮質ステロイド
ヒドロコルチゾン
プレドニゾロンなど
抗炎症作用の副腎皮質ホルモンが強力に炎症を抑えます。坐薬、軟膏に用いられています。しかし、痔ろうなどの場合には使用してはいけません。細菌を増殖させ、悪化させることがあります。
非ステロイド性抗炎症薬
グリチルレチン酸
セイヨウトチノミエキスなど
セイヨウトチノミエキスはセイヨウトチノキの種子から抽出して得たエキスで、注入式軟膏などに配合されていますが、内服薬としても用いられています。
消炎酵素剤
塩化リゾチーム
ブロメライン
炎症や、浮腫、疼痛を緩解する。
痛み止め(局所麻酔剤)
リドカイン
リドカイン
アミノ安息香酸エチル
強い痛みを、一時的に抑える作用。リドカインは局所麻酔剤。
抗菌剤、殺菌剤
硫酸コリスチン
スルフイソミジン
スルフイソミジンナトリウム
クロルヘキシジンなど
硫酸コリスチンはペプチド性抗生物質で、緑膿菌、大腸菌、肺炎桿菌などに抗菌作用を示す。
スルフイソミジンはブドウ球菌、レンサ球菌、大腸菌、クレブシエラなどに対して抗菌作用を示す。
抗ヒスタミン剤
塩酸ジフェンヒドラミンなど肛門周囲のかゆみを抑える。
血管収縮剤
塩酸ナファゾリン
ロートエキス
末梢血管を収縮させて、止血する。
胃痛などに用いられるロートエキスは鎮痛作用よりロートエキス中のアトロピンなどの作用による血管収縮作用が期待されている。
血管強化・末梢循環改善剤
トコフェロール(ビタミンE)
カルバゾクロム
カルバゾクロム
粘膜毛細血管の抵抗性を高めたり、末梢血液循環を改善して、止血作用を発揮します。
収斂剤
酸化亜鉛 ZnO
次没食子酸ビスマス
直腸、肛門粘膜を収れんさせ、皮膜を作り止血する。

直腸痔モデル 歯状線より上にできた痔核を内痔核、下にできた痔を外痔核と言います。痔は、痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、痔ろう(あな痔)などに分類されます。内痔核は痛みをほとんど感じないのですが、歯状線から下には知覚神経があるので、痛みが激しくなります。
痔核は、生活習慣の乱れ、便秘、妊娠、深酒、排便時のいきみなどによって、肛門部の静脈にうっ血がおこり、痔核ができます。それが、急激に炎症を起こすと痛み、腫れ、出血などを起こします。



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