遺言について


「遺言」とは、亡くなる前に、 『自分が死亡したときに、誰にどれだけ相続させる・もしくは遺贈(相続人以外の人へ)する』
というような内容を書面にしておくものです。

15歳以上の者は、遺言することができます

遺産を分けるにあたり、遺言がある場合は、遺言にしたがって遺産を分割します。
遺言は、相続人間で協議する分割協議より優先されます。

では、「どのような場合に遺言を作成しておいた方が良いのでしょうか?」
当事務所にては、
「相続人の一部の協力が得られずに、不動産の名義変更や預貯金の引出しができない。」
「相続人の1人が行方不明で、失踪宣告の手続を取らざるを得ない。」
「折角遺言を残してもらったのに、不動産の一部の記載が抜けていて、分割協議をせざるを得ない。」
等のご相談を多々受けております。
書式・内容を整えた遺言を残されることにより、このような問題を避けることができます。

次に当てはまる方は、遺言書作成を是非ご検討下さい。
相続人ではない人に遺贈したい場合
法定相続分とは異なる割合で相続させたい場合
・法定相続人間での争いが懸念される場合 ・連絡のつかない相続人がいる場合

遺言の方式         

遺言の作成方法は、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」等があります。

自筆証書遺言
自ら全てを手書きで作成し、署名押印後、自身で管理するものです。

※H30.7の法改正(H31.1.13施行となります)により、自筆証書遺言に添付する財産目録については 自書でなくてもよい事となりました。 施行日以降に作成したものに限ります。
例えば パソコンで目録を作成、通著のコピー・登記事項証明書を添付 等
ただし、財産目録の各頁に署名押印することを要します。

《メリット》
・自分1人で作成できます
・他の人に知られることも無く作成できます。
・費用もかからずに作成できます。

《デメリット》
・要件が厳格なため無効となってしまう可能性があります。
・一部相続人により隠蔽されたり、 内容が改ざんされたりする 等 の恐れがあります。
・内容があやふやで後のトラブルとなる可能性があります。
・被相続人が亡くなった後、必ず家庭裁判所に出向いて検認してもらわなければなりません。
 封印のある遺言書は、検認前に勝手に開封することはできません。

公正証書遺言
遺言者が公証人に遺言の内容を伝えて、公証人が書面を作成し、その書面に、公証役場にて、証人2人立会いのもと署名押印の上、 公証人に作成してもらうものです。原本は、公証役場に保管されます。

《メリット》
・公証人が作成するので、書式や内容に法律的不備等の心配はありません。  
・家庭裁判所の検認は不要です。
・原本は公証役場に保管もされるので、改ざん・偽造の恐れはありません。
・自書の能力が無くても作成できます。
・遺言者の死後、相続人等が公証役場において、公正証書遺言があるかどうかを調べる事ができます。

《デメリット》
・公証人への費用がかかります。
・証人2名の立会いを要します。

秘密証書遺言
自ら遺言書を作成し(全文手書きの必要は無い)、署名・押印の上、 封筒等に入れ封印して、公証役場にて公証人と証人2人の前で封書を提出して、公証人が封紙に記載し公正証書となります。 公証されるのは、遺言の存在であり、遺言書自体に公証力があるというわけではありません。

《メリット》
・自書の能力が無くても作成できます。
・遺言の存在が明らかになるため、遺言書が見つからない、破棄されるという危険性は少ないと言えます。
・遺言内容は、他の人に知られずに作成できます。

《デメリット》
・公証人への費用がかかります。
・証人2名の立会いを要します。
・公証人は遺言の内容を確認するわけではないため、内容があやふやで後のトラブルとなる可能性があります。
・被相続人が亡くなった後、必ず家庭裁判所に出向いて検認してもらわなければなりません。
検認前に勝手に開封することはできません。



 遺言の作成

自筆証書遺言の作成方法
1.必ず 【自筆】で書かなければなりません。
H31.1.13施行の法改正により、財産目録については、パソコンで作成したり、通帳のコピー・登記事項証明書等を付けることができるようになりました。

2.紙に遺言の内容を書き(縦書き・横書きどちらでもOK)
 ○作成した年月日(はっきり分かる書き方で)を記入
 ○氏名を記入
 ○押印(印鑑の種類は問いません) します。

自筆証書遺言は、内容により、無効となってしまう等の可能性がありますので、専門家にご相談されることをお奨めします。自筆証書遺言は、費用もかからず簡便ではありますが、要件が厳格なため、無効となってしまう、等 の恐れがあります。

公正証書遺言の場合は、公証人が作成するので、法律的に不備等の心配はなく、原本は公証役場に保管もされるので、自筆証書遺言より安全・確実な方法と言えます。
特に、遺産に不動産がある場合には、相続人・遺贈を受ける人 が、検認の手続きを経ることなく、相続続登記手続きをする事ができる「公正証書遺言」をお勧めします。

公正証書遺言の作成方法
1.公正証書遺言を作成するに当たり、必要となる書類を準備して最寄の公証役場へ出向きます。

2.遺言の内容を口述して、遺言の内容を打ち合わせます。

3.公証人役場で、公正証書遺言の文面を作成してくれます。

4.遺言者・証人2名(※)が立会いの上、公証人が遺言の内容を読み聞かせて、遺言者と証人がこれを確認した上で、署名・押印し、公証人が署名・押印します。

※ 証人-配偶者・親族・未成年者等は、証人となる事はできません。証人になってもらえる人が見当たらないという場合は、 公証役場で証人を紹介してもらう事もできます。
この場合は、別途、証人への手数料が必要となります。

公証役場へ出向く事が難しい場合は、公証人に出張してもらうことができます。
手が不自由で、署名ができない場合は、公証人に代筆してもらうこともできます。
耳の聞こえない方、口のきけない方も、公証人が適宜対応してくれますので、公正証書遺言する事ができます。


「公証役場との事前の打ち合わせ・必要書類の準備等は、よく分からないし、心配」
「平日昼間は時間が無い」 というような場合は、当事務所でもお手伝いさせていただきますので、どうぞお気軽にお申し付け下さい。  詳しくはこちらからどうぞ。

 

遺言の内容

遺言でできることは、法律に定められています。
主たる項目を挙げてみます。

1.相続人(全員または一部の)の相続分を指定

2.遺産分割方法の指定もしくは、5年を超えない期間を定めて分割の禁止

3.相続人の廃除

4.相続人以外の個人・法人等への遺贈(自分が死んだ際に無償でその遺産を与えること)

5.遺言執行者(遺言の内容の手続きを行う人)の指定

但し、『法律で定められていること以外を遺言に書くことができない』 というわけではありません。
法律に定められていること以外については、遺言による「法的効力が無い」 ということです。

付言事項として、死後の葬儀・埋葬の方法、相続人の相続分を指定した理由等 を書くことができます。




 遺 留 分

兄弟姉妹以外の相続人は、遺言によっても侵すことのできない相続分が法律に定められています。
これを「遺留分」と呼びます。

被相続人の死亡時の財産に、死亡前の1年間に贈与した財産を加えたものに次の各割合をかけて算定します。

【遺留分の割合】

法定相続人の形態 相続人全体の遺留分 各相続人の遺留分
配偶者のみ 1/2 配偶者      1/2
子のみ 1/2 子       1/2
親のみ 1/3 親       1/3
兄弟姉妹のみ なし 兄弟姉妹    なし
配偶者と子 1/2 配偶者 1/2×1/2で 1/4
子   1/2×1/2で 1/4
配偶者と親 1/2 配偶者 2/3×1/2で 1/3
親   1/3×1/2で 1/6
配偶者と兄弟姉妹 1/2 配偶者     1/2
兄弟姉妹    なし





 遺留分侵害額請求

遺言等により遺留分が侵害された場合、その不足分を取り戻すことができます。
これを 「遺留分侵害額請求」 と呼び、金銭で請求します。

ただし、相続の開始及び減殺すべき遺贈等があったことを知った時から1年以内に請求しなければなりません。