TRAVELL DIARY / AFRICA 5-7

SENEGAL / MALI [7]


■■■ RAIL BAND を求めて ■■■

5月14日(金)

恐らく今晩あたりからライブがあるはず。そう考えたがダカール以上に情報収集に苦労した。こちらの会話能力の問題もあるのだろうが、ガイドやカセット売りたちも商売に熱心さを持たず、ましてや金にならない旅行者の手伝いなど関心がないようだった。

それでも、自分の知っている範囲でいろいろ教えてくれ、いくつかのことがわかった。

まず、LOBI TRAOREが出演することで有名だったBAR BOZOは数年前から休業しており、LOBI TRAORE本人も現在バマコではライブを行っていないらしい。

TOUMANI DIABATEが毎週金・土曜日にライブを行っているというクラブを教えられたが、実際にその場所へ行ってみるとそのようなクラブは見あたらず、情報の確認ができなかった。

この時期ライブを行う大物はいないらしい。

RAIL BANDはすでに6年ほど前からBUFFET DE LA GAREではライブを行っていないと言われた。

 

マリのミュージシャンたちには、SALIF KEITAのようにパリを拠点に活動している例も多いため、有名どころのライブを簡単には見られないかも知れないと覚悟していた。しかしRAIL BANDのライブは見られるものと期待していた。RAIL BANDを目的にバマコに来た理由は、SALIF KEITAがかつて在籍していたことよりも、近作の内容がよいことからである。特に最新作の"MANSA"はすばらしい仕上がりで大好きなアルバムだ。

RAIL BANDが6年間、全くライブを行っていないことはないにしても、ライブを期待するには時期が悪かったようだ。そう考えていたところ、見覚えのある男2人が現れた。先ほどBUFFET DE LA GAREでのライブはないと教えてくれた男だ。
「今晩、川の向こう岸でRAIL BANDの大きなコンサートがある。とても大きなコンサートだ。もし見たいのであれば今すぐ席を予約する必要がある。あんたの代わりに席を押さえてくるから5000フラン貸してくれ。あんたはここで待っていればいいヨ。」
よくできた話だな〜。もし本当なら俺はよっぽど幸運な奴だ。
「本当か!!それなら念のためBUFFET DE LA GAREに電話してRAIL BANDのスケジュールを確認しよう。」
目の前の男たちの顔が青ざめた。思わず吹き出しそうになった。

バマコのガイドたちは、どの男もこのような調子。どうにかして小銭を稼ぎたくて、見え透いたウソを平気でつくところが、可愛いと思う。ただし、ダカールと同様まともに話していると疲れてくる。これ以上一緒にいても時間の無駄なだけなため、一つ種まきをして追い返すことにした。
「レコードを探してきてくれ。欲しいのは、RAIL BAND、AMBASSADERS、FANTA DAMBA、RAMBLERS、FELAKUTI、、、。」
「わかった、必ず明日までに探してくる。」
「よろしく。(ウソつけ!)」

バマコにはこれといって観光スポットもなく市場を散策するくらいしかすることはない。趣味で集めている布や仮面、楽器なども見て歩いたが欲しいものはなかった。そこで時間つぶしに、レコードを探してみたが、さすがに今度こそは甘かった。

気温40度の炎天下、カセット・ショップ、電気店、古道具屋らしきところを一軒一軒シラミ潰しに覗いったがレコードが置いてあったのはわずかに一軒のみ。

全くどうしようもないので、ある程度事情を知っていそうな感じの男と話をしてみた。
「ここでレコードを見つけることは相当に難しいゾ。持っていても皆手放したがらないしナ。」
「ナイジェリアへ行ってみれよ。時々ナイジェリアに行っているけれど、大きいのも小さいのも(12インチと7インチのこと)いっぱいいっぱいあるゾ。日本人もたくさん買っていたゾ。ここからなら一日あればいけるだろう。」
確かにそうだろうな。商売で度々ナイジェリアに行くというこの男の話を聞いてギブ・アップ。

GRAND HOTELに戻って夕食。ガイドブックに紹介されているレストランもいくつか試してみたが市街地の店はどこも美味くはなかった。そのため滞在中の食事はほとんどGRAND HOTELで済ませた。
ここのレストランでは日替わりで地元のグループが演奏していた。マリにも音楽センスのないミュージシャンと音痴な歌手がいるという大発見をした。

何か違うような気がするけれど、とりあえずCASTEL BEERは美味い。まあいいか。

バマコ駅(右手がBUFFET DE LA GARE)

5月15日(土)

朝涼しいうちに博物館を訪ねる。私は海外では、市場、書店、レコード店、美術館、それに博物館には必ず立ち寄ることにしている。今回も収穫があった。展示品も良かったけれど、ここの売店にレコードが売っていたことが嬉しかった。

例えば、"L'ENSEMBLE INSTRUMENTAL NATIONAL DU MALI"。1975年録音のこのアルバムは、COUMBA SIDIBEのファースト・レコーディングであったはず。このようなLPを数枚入手した(すべて新品!)。

レコードを抱えてホテルに戻ると例の男たちがいた。レコードを集めて来て、朝からもう3時間もここで待っていたと言うのだ。まさか本気でレコードを探してくるとは考えていなかった。こいつらただの不良だけど、やっぱり可愛い奴らだ。おかげで、探していた何枚かと、存在すら知らなかったFELA KUTIのフランス盤が安く手に入った。これらを除いたひと山を返すと、もっと買ってくれという。
「これもいいレコードだから、買わないか?」
「傷んでいるレコードは欲しくないヨ。」
「この古さが価値のある証拠なんだ。」
「だけど全く同じレコード、新品で持っているんだけど。」
そう言ってたった今買ってきたばかりのレコードを袋から取り出して見せると、男たち肩を落としてしまった。

GRAND HOTELのフロントでもRAIL BANDのライブのスケジュールはわからないと言う。確認のためBUFFET DE LA GAREに行きステージの横で佇んでいた男に尋ねてみた。
「今夜はRAIL BANDのライブはないよ。いつあるか聞かれても、それはDIRECTOR次第でわからないけれど、とにかく今夜はやらないよ。」
つれない返事である。

いよいよバマコ最後の夜である。広場では女たちが車座になり、その中央で男たちが打ち鳴らす太鼓に合わせて踊っていた。若い娘たちもTシャツから豊かな乳が飛び出すことすら気にしていない。どこでも女性は元気だな。
6年前、アフリカ南部のカラハリ砂漠、ブッシュマンの集落でキャンプ中、私たちのカーステレオに合わせて、元気に踊っていた女性たちを懐かしく思い出す。

最近は駅から南西の方向に出たあたりが賑やかなようで、この夜もあちらこちらでイベントが行われていた。しかしその内容は、ディスコ・パーティー、レゲェ・パーティー、それにミス・コンテストなど、余り面白そうではない。ローカルに混じって楽しめる自信がなく、再度BUFFET DE LA GAREへと戻った。

BUFFET DE LA GAREと接するバマコ駅は、西方KAYEからの列車がちょうど到着したところで、降車客、近くで営業する店の人間、それにタクシーの客引きで大賑わいとなっていた。仕事を忘れてこうした光景を眺めるのは久しぶりかもしれない。中国、メキシコ、タイ、インドネシア、ずいぶんとあちこちで月明かりの下、人間たちが蠢くのを見てきた。こうしていると何故か落ち着くのが不思議だ。茶店の主人に一杯200フランのコーヒーを勧められる。とりとめのない会話がまた楽しい。

目を横にやるとホテルのゲートの先にBUFFET DE LA GAREのステージが見える。こちらの賑わいとは対称的に人気はなく、ひとつのスポット・ライトが点っている訳でもなかった。周囲の喧噪に包まれながら、少々寂しい気持ちも混じる。

やって来るのが10年遅かったのだろうか?

BUFFET DE LA GAREの入り口(昼)


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