川辺川ダム問題

川辺川ダム「無理強いできず」と年度内着工断念

衆院予算委分科会で小沢議員に国土交通相が答弁

 国土交通省が熊本県相良、五木両村で進める川辺川ダム建設問題について扇千景国土交通相は、三月一日の衆院予算委員会の第八分科会で「地元からの正式な結果を聞いてから」としながらも、「無理強いはできないと思う」とのべ、ダム建設の年度内着工の断念を表明ました。これは日本共産党の小沢和秋議員の質問に答えたものです。
 
 流域の球磨川漁協の総代会は二月二十八日、同省が提示した漁業補償契約の受け入れを否決しています、今後、同省が漁業権の強制収用に踏み切るのかどうかが問題になります。

 小沢氏は「地元漁民の怒りを受けとめ、強制収用はやらないと約束してほしい」と迫ったのにたいして、竹村公太郎河川局長は「漁業補償は地元の同意を得ながら進める」と述べるにとどまり、漁業権の強制収用に踏み切るかどうかについては含みをもたしました。

 さらに、小沢氏は「九五年七月には、六五年の人吉大水害の雨量三百六十五ミリや八十年に一度の計画で示される四百四十ミリを超える雨量四百七十七ミリが降ったが、大した被害はなかった。水害が起きなかった理由の一つとして、山林の成長による保水力の向上緑のダム≠フ役割もある」など、ダム建設の根拠を崩しました。

 扇千景国土交通相は、「緑のダム」は重要という認識を示したものの、ダム計画そのものを中止する考えはないことを答弁で繰り返しました。


「自然だめにするな」日増しに高まる反対の声

熊本・川辺川ダム―今年度本体着工ねらう国土交通省

(25日「しんぶん赤旗」九州面)

 すべての目的を失ったうえ、自然を破壊する熊本県の川辺川ダム計画は、ムダな公共事業の典型といわれています。国土交通省は大型公共事業のムダづかいを追及する世論の盛り上がりに焦り、年度内本体工事着工を強引に進めようとしています。球磨川漁協(木下東也組合長、千八百六十八人)は二十八日にも、わずか百人ほどで構成する総代会で、漁業補償契約の採択を強行しようとしており、県内各階層の反対の声も、日増しに大きくなっています。

地元漁協総代会、直前で激しい動き

組合員の総会開催要求を拒否

 国土交通省は、昨年、ダム反対を訴える理事を排除した理事会を選出した球磨川漁協に対し「漁業権の強制収容」のおどしもちらつかせ、漁業補償交渉を進め、約十六億五千万円の補償額を提示。漁協理事会は、総代会を急ぐ一方、組合員からの総会開催要求を拒否し続けています。

 これらの動きに対し「日本一のアユが取れる川辺川がだめになる」と訴える球磨川の漁民をはじめ、多くの県民らが立ち上がっています。ダム建設に反対する元理事の塚本昭司さんら百十六人の組合員は、一日に「三分の二以上の賛成もなく補償交渉委員会を設置したのは水産業協同組合法違反」として、熊本地裁に提訴しました。

自治体議員も立ち上がり

 球磨川沿岸の自治体議員も立ち上がリ始めました。昨年十二月には、人吉市議会で保守系も含む四人の議員が、ダムに反対する立場を鮮明にしました。一月には、沿岸自治体二市五町の、日本共産党議員を含む超党派の議員らで「川辺川ダム問題を考える議員の会」が結成されています。

 諌早湾閉め切りの影響が強く疑われる、有明海でのノリ被害が起きた後には、八代海沿岸三十七漁協も「川辺川ダム対策委員会」(会長・宮本勝鏡町漁協組合長)を結成。十九日には、千五百人の漁民が総決起集会を開き、@ダムが八代海に与える影響調査を第三者を入れて実施するA調査結果が検討・評価されるまで本体着工を無期限延期する―ことを、国土交通省に求めました。

 日本共産党は、十六日に県委員会が、十九日には、小沢和秋衆院議員(党国会議員団川辺川プロジェクト責任者)が、県知事に、球磨川漁協の違法状態にたいし、漁協の正常な運営を回復するよう、厳正な態度で臨むことを要求。適法的運営が軌道に乗るまで、漁業補償契約の締結を凍結するよう国に申し入れることを、求めました。

 日本共産党の仁比そうへい参院比例候補と懇談した八代海沿岸のある漁民は、「これまで、金で解決させられてきた。でも、このままじゃ、海はだめになる。今度ばかりは、金で解決してほしくない」と語りました。

目的は完全に失われたのに

 川辺川ダムは、一九六六年に、総額三百五十億円の治水ダムとして発表されたもの。その後、利水、発電も含む多目的ダムに変更され、現在では、総額は二千六百五十億円にまで膨れ上がリ、さらに膨張することは確実視されています。

 巨額の税金を投入するものの、その目的はすべて失われています。治水では、水害を受けてきた人吉市の住民は「すでに球磨川上流にある、市房ダムの放流が、水害をひどくした。これ以上ダムができたら、ますますコントロールできなくなる」と訴えます。

 利水では、受益者の約半数が「水は足りている。高い水は農家を破壊するしと裁判に立ち上がリ、県議会では、自民党議員からも疑問の声があがっています。

 発電では、ダム建設で水没する既存の発電所と、発電を中止するダムの総発電量よりも計画発電量の方が、少なくなっています。


八代を死んだ海にさせぬ/川辺川ダムの影響を危ぐ

仁比参院比例候補ら沿岸漁協などと懇談

 日本共産党の仁比そうへい参院比例候補は二十一日、川辺川ダム計画で環境影響調査などを求めている八代海沿岸の漁民らと懇談しました。懇談には、西川えつ子参院熊本選挙区候補、橋本徳雄八代市議、内田次一坂本村議、高浜良春鏡町議らが参加しました。

 八代海沿岸の三十七漁協は、川辺川ダム建設の海への影響を危ぐし「ダム対策委員会」(会長・宮本勝鏡町漁協組合長)を結成しています。十九日には千五百人で総決起集会を開き、川辺川ダム建設にともなう、八代海の環境影響調査の実施、結果の検討評価が済むまでダム本体工事着工の見合わせを求めています。

 八代市の二見漁協(田中義廣組合長)との懇談では、田中組合長が応対しました。田中氏は「ダムでためられた水は腐ってしまう。それを流してもらっては海はたまったものではない。死んだ海にさせちゃならん」と強調。球磨川漁協が、総会ではなく、全組合員の二十分の一ほどしかいない総代会で補償協定を締結しようとしている問題でも「どこの(漁業)組合でも総会をするのがスジ。県の指導はどうなっているのか」と訴えていました。

 鏡町では、三代にわたってノリを養殖している漁民と懇談。「三十年以上前、(鏡町に流れる)氷川の上流にダムができたときは、プランクトンが大発生し、全員出稼ぎに出た。不知火(しらぬい)干拓のときもひどかった。あんときは金で決着させられたが、わずかな金など問題にならん。今度ばかりは金で話はつけてほしくない」と話しました。

 仁比候補は、川辺川ダムが、治水、利水、発電とも目的を失っていることを示し「意味のない公共事業をやめろの声は、国民の流れになっています。政治を、この方向に変えることは可能で、ともにがんばりましょう」と激励しました。


球磨川漁協正常化へ指導を/川辺川ダムめぐり違法状態

小沢衆院議員、西川参院候補が熊本県知事に要請

 日本共産党国会議員団川辺川プロジエクトチーム責任者の小沢和秋衆院議員は二月十九日、潮谷義子熊本県知事に対し、球磨川漁協(木下東也組合長)の正常な運営を回復するため、法にもとづいた厳正な対応をするよう申し入れました。申し入れには、西川えつ子参院熊本選挙区候補、本村令斗人吉市議らも同席しました。(申し入れ全文

 球磨川漁協は、昨年、ダム建設反対派の理事の多くを排除した理事会を選出し、補償交渉委員会を設置。川辺川ダムの年度内本体着工を強引に進めようとしている国土交通省は、漁業権の強制収容もちらつかせ、漁協と補償交渉を進め、補償額などを提示しました。これにたいし、漁協理事会は、組合からの水産業協同組合法にもとづく、臨時総会開催の要求や、県の総会開催の勧告も無視して、二十八日には、総代会で、補償協定締結などを決議しようとねらっています。
 今回の申し入れは、法を無視した異常な運営を許すなら、取り返しのつかない事態が予想される、としておこなわれたもの。

 申し入れでは、理事会による総会開催の拒否が、水産業協同組合法を無視していることや、県は、法令違反があれば「業務の全部もしくは一部の停止、又は役員の改選を命ずる」ことや「解散を命ずる」ことができることを指摘。漁協に対し、総会の決議が、総代会の決定より優位にあることを指導することと、国に対し、漁協の適法的運営が軌道に乗るまでは、漁業権補償協定の締結を凍結するように申し入れるよう求めました。

 応対した、高木勝巳漁政課長は、違法状態にあることは認めたものの、厳正な措置についてはこたえず「漁協には、補償協定問題を議題から外してほしいと伝えた。指導と説得を続ける」とのべるにとどまりました。


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