受け入れ側(発注主)と雇用主に都合が良い偽装請負

 不景気の影響で、製造業において突然の契約解除で偽装請負という言葉が有名になりました。
  その偽装請負は、IT業界ではまだまだ蔓延しているので、IT業界の人またはIT業界を目指している人は知っておくべき内容です。
いずれは、製造業と同様にIT業界にも不景気の影響があると思われます。

偽装請負とは

 「偽装請負」は職業安定法第44条および労働基準法第6条に違反になります。
「偽装請負」(=「労働者供給」)とは、いわゆる「人貸し」です。
  労働力を必要とする会社(発注主)から依頼を受けて、請負会社が雇用する労働者を貸し出して事実上発注主の指揮命令下におくことを言います。
 労働者派遣制度によることなく、会社同士が「請負契約」や「業務委託契約」を締結し、自己の雇用する労働者を他人の指揮命令下に置き、労働者派遣と同じ形で働かせている現状があります。
  実際に働く職場の使用者でない第三者(請負会社)が職場と労働者の間に介在して、いわゆる「ピンハネ」(中間搾取)が行なわれています。
「ピンハネ」は、職業安定法44条では「労働者供給事業」として禁止され、また、労働基準法6条では「中間搾取」として禁止されています。
「労働者派遣法」の法の目を掻い潜り、「請負」と称して労働者を他者の指揮命令下に置きピンハネ ができ、労働環境の整備がされていないいわゆる「偽装請負」は許されないのです。

本来の業務請負・業務委託

 雇用の原則は直接雇用です。雇用主以外の者が指揮命令を行なうことはできないというのが原則です。
しかし、1986年に労働者派遣法が施行され、労働者派遣制度による場合のみ、例外的に自己が雇用する労働者を他人の指揮命令下に置くことが認められ、直接雇用の原則の例外である「間接雇用」が合法化されました。
 本来の「請負」や「業務委託」は、会社として請け負った仕事を自社の労働者に行わせるわけですから、そこで働く労働者に指揮命令するのは請負会社の管理者ということになります。

偽装請負の代表的なパターン

・代表型
 請負と言いながら、発注者が業務の細かい指示を労働者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行ったりしています。偽装請負によく見られるパターンです。


・形式だけ責任者型
 現場には形式的に責任者を置いていますが、その責任者は、発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、発注者が指示をしているのと実態は同じです。単純な業務に多いパターンです。


・使用者不明型
 業者Aが業者Bに仕事を発注し、Bは別の業者Cに請けた仕事をそのまま出します。Cに雇用されている労働者がAの現場に行って、AやBの指示によって仕事をします。一体誰に雇われているのかよく分からないというパターンです。


・一人請負型
 実態として、業者Aから業者Bで働くように労働者を斡旋します。ところが、Bはその労働者と労働契約は結ばず、個人事業主として請負契約を結び業務の指示、命令をして働かせるというパターンです。

偽装請負のメリット

 契約は請負で実態は派遣で受け入れ側と雇用主双方で都合の良く作られた契約方法です。


・受け入れ側のメリット
 労働者は受け入れ側から直接命令を受けることで、契約にない過重な仕事や残業を強いられる。
 (労働者側は立場が弱いため「契約にないことはできません」と言えず、コキ使える)。
 その一方で、受け入れ側は労働環境を保護する義務は回避したままである。
 派遣契約ではないので一定期間を経過しても直接雇用する必要が無い。


・雇用主側のメリット
 業務上の指揮命令を行わず、労働者だけ確保し現場に放り込んで入れば、後はほったらかしでピンハネできる。


・労働者のメリット
 ポイントは労働者には何のメリットが無いことです。 ハイ。

偽装請負のデメリット

・受け入れ側と雇用主のデメリット
 偽装請負は違法なので当然リスクがあります。
 取締り強化 → 偽装請負発覚 → 処罰・報道 → 信用失墜 → 契約解除・倒産? → 失業


・労働者のデメリット
 使用者側のメリットは、そのまま労働者側のデメリットである。
 派遣契約では、一定期間(3年間?)経過後に直接雇用される道があるが、請負契約ではその見込みがない。
 偽装請負によって受け入れ側企業で働く人たちは、労働基準法の適用による保護が受けられない。
 偽装請負のリスクもそのまま負うことになります。会社が倒産すれば失業に追い込まれます。

偽装請負の対策

 IT業界の労働者から告発が無いため、お役人は動かずIT業界では偽装請負が蔓延しています。
 理由として、製造業に比べIT業界では労働者の手元に入る金額が多い(満足してしまっている?)為です。


・入社前の場合
 偽装請負を行っている会社とは関わらないことが一番です。


・すでに入社してしまっている場合
  ①一定期間経過している場合は、実態が派遣であることから直接雇用を申し立てる。
    直接雇用の話しをする際には、労使紛争に発展するケースが想定されます。
    労働法を参考リンクなどで勉強する知恵と雇用主(社長・弁護士)と闘える度胸が必要です。
  ②派遣契約に切り替える。
  ③法律違反状況の改善を行って、適正な請負・準委任に変更。
  ④収入ある生活をおくれることが幸せ、と自分に言い聞かせて現状のまま働く。

参考リンク

法改正が予想されるため最新情報は以下のページで確認してください。
厚生労働省法令等データベースシステム
労働法とは?|知って得する労働法|職場の法律、身近な労働法をやさしく解説

最後に

 すべての企業において偽装請負を行っているわけではありません。
 本サイトの情報による損害については一切責任を負いません。自己責任で判断してください。