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『ダークスタイル・ダークエレメンタラー 〜ヴァーダークラルアンティー =闇線糸(やみせんし)〜』
第六旋承壁陣(だいろくせんしょうへきじん)
たかさき はやと
闇の森はどこまでもつづいていた。エルフィールとジョルディーは早足でその場を行く。森と名はついていても、ここは闇の精霊の密集地であり、障害物はなにもない。光りがないいがいは…
「景色がないのは残念だな」
ジョルディーがぐちる。
「フン、わたしはこれほど気持ちのいいところもないくらいだがな…暗いのはだめかい?」
「いんや…でも、真っ暗闇というのは…な、味がないな」
「旅はその場の空気で感じるものだ。視覚など一感覚にすぎない」
「まあ、な…」
風が吹いた。
ーーーなにもにおいがない…
「くるな」
「ああ…」
それは一瞬。閃光がひらめいた。軽々とかわすジョルディーとエルフィール。敵がいる感じはしない。ただ、黙々と閃光がひらめき、それをかわすふたり。
「やるな、エルフィール、きみの仲間も」
「こういったことが得意なヤツがいた…でも、攻撃が単調で…な、いつも注意したのに…コイツは!」
エルフィールは何者かの腕をつかみ、後ろ手にして動けなくする。
「クッ!」
それはまだ幼い女の子の声だった。
「他のヤツは?」
四方からの攻撃をかわしながらジョルディーが聞く。
「いない、マリュウサ…彼女ひとりの糸の技だ」
「すごいな」
感嘆するジョルディー。
「もう帰れ」とエルフィールがマリュウサに言った。
「使命を果たさない者に帰る場所などありません!」
それはエルフィールが身にしみて知っていることであった。
「そう…だな…故郷にでも帰れマリュウサ…」
「はいそうですかと言うとでも思えますか、エルフィールさん」
沈黙がその場を支配した。ただひとりをのぞいて…
「じゃあ、一緒にいくか」
ジョルディーはなに気なく言う。
「う〜ん…」うなるエルフィール。結局三人は歩きだした。
「この闇の森が終わったところがあなた達の最後です」
マリュウサがいきがりながら言う。それだけの技量がないのはわかりきっている。また、その意志もないようにふたりは感じた。
「元気にやってたか?」とエルフィール。
「…ええ…まあ…」
「ダ…ダリル様は…」
「お元気です…でも、あまり声を聞くことが少なくなりました…」
「そうか…」
風が変わる。光りがはしった。光りの風が三人を包みこむ。
「いよいよおふたりには死んでいただきます」
「封印の魔則(まそく)を知らないのかマリュウサ!…オマエが封印されるぞ」
「エルフィールさん…バリュウス様も封印されました…戦ったわけでもないのに…なぜですか?」
「わからない…でも、戦争をとめたのは…」
「封印の魔則(まそく)…わたしはなにがなんだかわからなくなりました…わたしが未熟だからでしょうか…?」
「そんなことはない、マリュウサは立派な大人さ」
エルフィールが太鼓判を押す。
「封印の魔則(まそく)…その元であるダリルに聞いてみるしかない…な」
ジョルディーをにらむふたり。とぼけた感じで横を向くジョルディー。
キキィ…ン
四方八方から光りの糸が高速でジョルディーをねらう。
それを剣のひとふりですべてなぎはらうジョルディー。糸に殺意はない。
その技はマリュウサ最大のものだった。肩をおとすマリュウサ。
「そんな…」糸をはなしてしまうマリュウサ。
「またな」ジョルディーは光りにあふれた草原をさっさと歩いていく。
「また逢うこともあるだろう」エルフィールも歩きだす。
「わたしは…わたしはこれでよかったのでしょうか…?」
「さあな、ダリル様をよろしく」エルフィールは立ち去った。
「きっと…おいついてみせます…エルフィールさん…」
マリュウサはふたりの姿をいつまでもみていた………
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