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『ダークスタイル・ダークエレメンタラー 〜ヴァーダークラルアンティー =螺旋闇(らせんむ)〜』


                 第四旋承壁陣(だいよんせんしょうへきじん)


                               たかさき はやと






「あなたは螺旋民(らせんみん)でありそれいがいの何者(なにもの)でもないのです」
 螺旋者(らせんしゃ)たるその女(もの<者>)エルフはいうのです。
「わたしが闇(やみ)ではないというのでしょうか」
 エルフィールの問(と)いは螺旋者(らせんしゃ)のことばにきえて浸透(しんとう)してすっかりとしていてつく。
「しごく、それは当然」
 その肯定(こうてい)さえ、エルフィールのおどろきを包(つつ)み隠(かく)すものではなかった。
「わたしが螺旋龍(らせんりゅう)につらなる螺旋一族(らせんいちぞく)の末裔(まつえい)にありし時(とき)のかけらだというのですか・それだけだと」
「エルヒ(フ)ィール・あなたは螺旋竜(らせんりゅう)ともあらゆる螺旋的人間(らせんてきにんげん)または人間的螺旋(にんげんてきらせん)とはことなる意味(いみ<反螺旋〈はんらせん〉>)と何者(なにもの)でもならないということをみいださなければその闇(やみ)・苧寥(おりょう)・スタイル・意味(いみ)の外(そと)からはのがれられません。あなただけが螺旋(らせん)であり心(こころ)であり答(こた)えだけなのです」
−−−つまり、それは当然の帰結…
「よく考えてください…」
 中年のそのエルフはエルフィールにそう言うのです。
「はい…」
 田舎の質素なペンション風の家からエルフィールがひとりで出て来る。
「もう…いいのか」
 ジョルディーの質問にうなずくエルフィール。それ以上どちらも話そうとしなかった。


 その田舎の村にはエルフもいれば、人間もハーフエルフもいた。その村についてから七日がたった。あきらかに休息でもなく、食料などの補給などは村にいる理由ではなかった。さらにエルフィールはいっこうに村から動こうとはしなかった。また、ジョルディーもそれをとがめるようなことは一言も言わなかった。
「オマエがエルフィールかい?」
 腰まである髪を緑に染めあげた十代くらい若く見える女性のエルフが立っていた。
「アタシはデラルーシ…アンタ…死ぬね…きっと今日…いま…」
 風が舞った。デラルーシの放った風の精霊がなぜかふたつの火球となりエルフィールに迫る。
バシュシュ…
 エルフィールの直前で炎がきえる。エルフィールはよんでいたその攻撃を。外見と違(たが)わず、デラルーシは親衛隊の中でも新入りであり、その技量もたいしたことはないように感じられた。また、デラルーシがくり出す技があっさりとさけられるところにエルフィールのカンのただしさがあった。一時間がたった。肩で息をするデラルーシ、それを他人ごとのようにエルフィールとジョルディーが立っている。勝敗はあきらかだった。
「あら、また来たの?…何度追い返しても来るんだから…」
 いつのまにか中年のエルフがいた。どうやらデラルーシに言ったらしい。
「…るさい…うるさいっ!」
ヴォヒュゥウ!
 花火のように火の花がエルフィール達のあいだを舞う。火の舞いが終わっても、誰ひとりキズついていなかった。どうみてもデラルーシの力量はあきらかだった。しかし、デラルーシはさらにみずからの身体(からだ)に炎の精霊をまとい、エルフィールに体当たりしてきた。
ババシュ…
 デラルーシの身体(からだ)の炎を中年のエルフが一息ですべて消し、エルフィールがデラルーシに足ばらいをかけ、バランスをくずしたデラルーシをジョルディーがだきかかえた。すでにデラルーシに意識はない。デラルーシの外傷はどうやらだいじょうぶのようだった…。
「あなたはここにいるとき、その内(うち)はめぐりめいてあなたはまだ螺旋(らせん)に闇(やみ)だけを干(ほ)すのです。わたしとともに螺旋世界(らせんせかい)へはいかがでしょうか」
 中年のエルフはエルフィールにそう言うと、木の日陰に入る。
 螺旋樹(らせんじゅ)はゆっくりと葉(は)をゆらす。それが螺旋世界(らせんせかい)でありつづけるまで。
 エルフィールはエルフに答えた。
「わたしは……まだ・こころがやみだとしてもここに螺旋(らせん)せし昨日に生きます」
「つまり精神(そこ)にいるのからのなかに・かれと…」
「いえ・それはまだわかりつたないから」
「…そう・それはいいことだから」
 ジョルディーはデラルーシを中年のエルフにわたす。エルフィールは歩きだす。エルフィールは道を決めた。その眼に迷いはひとかけらもない…。
 ゆっくりと巨体をスコルピオがふたりを乗せ動きだす。
「ア…タ…シは…ダメ…だ…」
 中年のエルフにだきかかえられたデラルーシがやっとやっと口からそうもらす。
「よかったらどうだい、ここでわたしと暮らしてみないかい?」
 デラルーシはなにも答えない。ただ、エルフにさらに身をあずけるのだった。
 ゆっくりとエルフィール達は村を離れていく…。まるで、なにもなかったかのように………









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