スチュアート・ケリー著作のページ


Stuart Kelly オックスフォード大学で英文学を学ぶ。エジンバラ在住。
Scotland on Sundayで活躍する書評家。

 


 

●「ロストブックス−未刊の世界文学案内−」● ★★
 
原題:THE BOOK OF LOST BOOKS”     訳:金原瑞人・野沢佳織・築地誠子




2005年発表

2009年08月
晶文社刊
(2200円+税)

 

2009/10/06

 

amazon.co.jp

古今東西の有名作家の「失われた本」あるいは未完となった作品を以って、その作家を語る、という趣向の一冊。
原題を直訳すると「失われた本についての本」、そして副題は「決して読むことのできない偉大な本すべてについての不完全な歴史」だそうです。
なお、原書は79人(井原西鶴の章もあり)+無名作家=80人を取り上げているとのことですが、訳書である本書ではその中から25人を選抜。

なかなか面白いです。
失われる、あるいは未完となるにしても、それはそれでそれなりの理由がある訳ですから。
最初は「失われた本」がどんなものかという興味に始まりましたが、次第に知っている作家の章になると、その作家の知らなかった面を知ることの面白さ、というように興味の観点が移ってきます。
有名作家をその代表作を以って語ることがその作家を正面から見るということであれば、その「失われた本」について語られるということは、即ちその作家を裏面から見ることに他なりません。
つまり、普通とは正反対。本来隠されるべき部分が書き出されていると言って過言ではありません。だからこその面白さ、というのが本書の魅力です。

私はファンである故に、シェイクスピアと「ドン・キホーテ」の関わり?、スターンの作品そのもの、推理小説仕立てのディケンズ「エドウィン・ドルードの謎の謎解きに挑んでみる辺りが、ことに面白かったです。
一方、ドストエフスキー「カラマゾフの兄弟」の書かれなかった第2部、カフカが全ての原稿を焼却するよう友人に遺言していたこと、ヘミングウェイの原稿入りスーツケースが盗難にあったことは余りに有名なので、何をかいわんや。
私としては、ドストエフスキーのもうひとつの未完作「ネートチカ・ネズヴァーノヴァ」にも触れて欲しかったのですが、残念ながら叶わず。

ホメロス/アイスキュロス/メナンドロス/オウィディウス/ダンテ・アリギエーリ/ジェフリー・チョーサー/ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラウィリアム・シェイクスピアジョン・ミルトン/アレグザンダー・ポープ/ロレンス・スターン/ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ/ウォルター・スコット卿/ジョージ・ゴードン・バイロン(バイロン卿)/チャールズ・ディケンズ/ハーマン・メルヴィル/ギュスターヴ・フローベール/フョードル・ドストエフスキー/リチャード・バートン卿/エミール・ゾラ/アルチュール・ランボー/フランツ・カフカ/ブルーノ・シュルツ/アーネスト・ヘミングウェイ/シルヴィア・プラス

     


 

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