ジョン・ミルトン作品のページ


John Milton 1608〜74年 イギリスの詩人。ロンドンで富裕な清教徒的公証人の家に生まれる。その豊かで濃密な詩は、後世のイギリスの詩人たちに多大な影響をあたえた。また、ピューリタン革命による共和政府のために書いた論文は、市民と宗教の自由をまもることを主題とした。ミルトンはしばしば、シェークスピア以降のもっとも偉大なイギリスの詩人とみなされる。
52年頃に完全失明。代表作である叙事詩「失楽園」(10巻、1667)は口述筆記により完成。他に叙事詩「復楽園」(1671)、詩劇「闘志サムソン」(1671)等。

 


 

●「失楽園 PARADISE LOST 」● ★★★




1667年発表

1979年6月
筑摩書房刊
(8800円+税)

 

1981/03/29
1993/03/31

旧約聖書の「創世記」に題材をとった、壮大な叙事詩、世界文学上の名作です。
神に反逆した天使たち。その首謀者である第一天使・サタンにより、“悪”が誕生し、かつまた地獄もそれと共に生じます。そして、サタンの地獄からの脱出、自らの子である“罪”と“死”との邂逅、天国における神と天使たちの語らい、新しい政界・エデンの園におけるアダムイヴの様子。次いで、サタンとイヴ、イヴを経てアダムへと、誘惑と原罪へと、物語は展開していきます。
これ以上のスケールをもった物語は、他に考えられないと思う程の、壮大な叙事詩です。さらに、原罪に対する神の予告、アダムとイヴの悔い改め、神に遣わされた天使ミカエルが、アダムに諭す人間の歴史と、将来の救済。
神と人間の深い関わり、神の与える試練、人間に対する救済の道、神の子による人間の罪の肩代わり。そうした神と人間の間に在るべき信頼の姿からもたらされる感動は、とても大きいものがあります。
天使ミカエルがアダムに伝える、子孫の行く末は、旧約聖書そのものの要約です。アベルとカインの物語、バベルの塔、ノアの箱舟、モーゼの十戒、等々。具体的かつ細かくなってしまうので、それまでの壮大さが消え失せ、多少失望するところ。その反面、簡便に旧約聖書の物語を楽める、とも言えます。
エデンの園を追放されようとするアダムとイヴが神に対してひれ伏すように、私自身も神にひれふしてみたいと思わされる程、本書は迫力と魅力に充ちた作品です。

なお、筑摩書房刊行の本書を注文する時には勇気がいりました。かなり高価な本ですから。でもそれだけの魅力が本書にはあります。それは、ジョン・マーティン(John Martin 1789〜1854)による銅版画の挿絵24枚です。この画は、ジョージ四世に献呈された「失楽園」(1827)に挿入されたものということです。とても素晴らしいもので、「失楽園」の世界を、より格調高く、壮麗なものにしています。

 


  

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