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1.博士の愛した数式 2.ブラフマンの埋葬 3.ミーナの行進 4.海 5.博士の本棚 8.原稿零枚日記 9.妄想気分 10.人質の朗読会 |
最果てアーケード、ことり、いつも彼らはどこかに、琥珀のまたたき、不時着する流星たち、口笛の上手な白雪姫、あとは切手を一枚貼るだけ、小箱、掌に眠る舞台 |
●「博士の愛した数式」● ★★★ 読売文学賞・本屋大賞 |
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2005年12月 2003/10/22 |
何と言っても、本作品の中で醸し出される雰囲気の良さが魅力。端正な雰囲気の快さ、美しさ、と表現したら良いでしょうか。
主な登場人物は3人。交通事故の後遺症により80分しか記憶がもたない老「博士」と、通い家政婦である「私」、そして博士から「ルート(√)」と名付けられた私の10歳の息子です。 最後は、心の奥底から静かに感動が込み上げてくるのを感じました。是非お薦めしたい一冊。 |
※映画化 → 「博士の愛した数式」
●「ブラフマンの埋葬」● ★★☆ 泉鏡花文学賞 |
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2007年04月
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夏の初めのある日、気付くと身体中引っかき傷だらけの小さな彼が勝手口の扉に鼻先をこすりつけていた、という出だしから始まるストーリィ。 主人公は、出版社の社長が別荘として使っていた農家を遺言で芸術家たちに提供した<創作者の家>で、住み込みの管理人をしている「僕」。そして彼は、主人公によって“ブラフマン”と名付けられますが、最後までどんな動物かはっきり示されることはありません。 とはいうものの、小さくて毛もひげもあって水かきもあるというのですから、おおよそ推測はつくというもの。 本書は、そのブラフマンと主人公の短く終わった同棲生活を描いた小説です。
このブラフマンと主人公の関係がなんとも快い。 |
●「ミーナの行進」● ★★ 谷崎潤一郎賞 |
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時代は1972年。技術を身につけようと母親が東京の専門学校に通うことになったため、芦屋に住む母方の伯母の家に預けられた朋子、12歳と従妹ミーナの1年間を描いた物語です。
飲料水会社を代々営んでいる伯父の家は、要はお金持ち。家も大きなお屋敷で、その庭は一時期近所の子供たちに動物園として開放していたというのですから、庶民にはとても想像つきません。 ※なお、本書中ミーナと朋子が男子バレーに夢中になる様子が描かれていますが、ミュンヘンオリンピックの男子バレー・ブルガリア戦、懐かしかった。私はあの実況放送を、2人と同様にTVにかじりついて応援していましたから。 |
●「海」● ★☆ |
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2009年03月
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自分がこれまで知っていたのとはちょっと異なる、時間、場所、空間に身を置いてみた、というような軽やかな気分を味わえる短篇集。 楽しいというより、いささか不気味な、苛立たしい思いを味わっても不思議ないストーリィもあるのですが、何となくふんわりとした気分に浸ってしまう。 どの篇もとくにどうこう言う程のストーリィがある訳ではないのですが、そんな雰囲気に触れる居心地の良さがある、というのが本短篇集の楽しさです。 総じて静かな印象を受けます。余計な音がこれらのストーリィに無い所為でしょうか。 夜の寝床に横たわりながら、遠く“鳴鱗琴”の奏でるであろう海の音に思いを馳せる表題作「海」は、ちょっと幻想的な気分に浸れる好篇。 海/風薫るウィーンの旅六日間/バタフライ和文タイプ事務所/銀色のかぎ針/缶入りドロップ/ひよこトラック/ガイド |
●「博士の本棚」● ★★ |
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2010年01月
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好きな作家だったら、そのエッセイ、1冊は読んでおきたい、というのが私の考えです。 作品からでは判らない、作家のひととなり、創作に対する心の内等を知ることができる(たいていは)から。 本書は、そんなことを改めて思い出させられる一冊でした。 ただし小川さんとしては、本書から「本を読む生活の魅力」を感じ取ってもらえれば、というのが願いのようです。 バーネット作品をはじめ子供の頃親しんだ作品、ポール・オースター等の外国文学、数学に関する本、愛犬のこと、日々の生活のこと、いろいろなことが語られています。 ※なお、小川さんが読んで印象に残っているという本の数々、私が読んだことのない本ばかり、なんですよねぇ。 図書室の本棚(子供の本と外国文学)/博士の本棚(数式と数学の魅力)/ちょっと散歩へ(犬と野球と古い家)/書斎の本棚(物語と小説) |
●「科学の扉をノックする」● ★★ |
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2011年03月
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「子供の頃から、新聞で一番好きなのは科学の記事でした」という小川洋子さんによる楽しい科学への案内書。 小説家である小川さんが好奇心のままに7分野にわたる研究者を訪ね歩き、科学の面白さ、奥行きの深さについて判り易く教えを請う、という趣向のエッセイ集。 小説家が書いているから素人にも判り易く、面白い、というだけではありません。 科学が苦手という方でも、きっと興味深く読める筈の一冊。 宇宙を知ることは自分を知ること/鉱物は大地の芸術家/命の源“サムシング・グレート”/微小な世界を映し出す巨大な目/人間味あふれる愛すべき生物、粘菌/平等に生命をいとおしむ学問“遺体科学”/肉体と感覚、この矛盾に挑む |
●「猫を抱いて象と泳ぐ」● ★★★ |
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2011年07月
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伝説のチェスプレーヤー=リトル・アリョーヒンを描いた、詩のように美しい物語。 ちょうどそれは「博士の愛した数式」の世界に似ています。 深く広いチェスの海にたゆたい、美しい棋譜を奏でた彼の人生はまるで詩のようです。 |
●「原稿零枚日記」● ★ |
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2013年08月
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原稿書きがまるで進まない女性作家が、9月のある日から翌年8月のある日まで、時折書き綴った日記という形式の小説。 温泉での苔料理から、知り合いがいるでもない運動会への参加、あらすじ係の経験を活かしてのあらすじ教室の講師、子泣き相撲から現代アート祭典観光と、現実と非現実が入り混じったような奇妙な雰囲気で綴られるストーリィ。 時に原稿が数枚進むことはあっても、上手くいかないようで再び原稿枚数は0に戻る、ということがしばしば。 出版社の紹介文には、「ある作家の奇想天外な日々を通じ、人間の営みの美しさと面白さが浮かび上がる新境地長編」とありますが、奇妙な面白さは感じるものの、人間の営みの美しさは、感じることなかったなぁ・・・。 |
●「妄想気分」● ★★ |
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作家であると同時に、ごく平凡な日常生活を送る普通人であり、妻、母親であるという印象のエッセイ集。 冒頭「思い出の地から」の各篇には青春の息吹が感じられ、冒頭の章としては格好です。なお、ザルツブルクへの想いについては同感だなぁ。 なお、「書かれたもの、書かれなかったもの」は、小川さんの各作品にまつわるエピソードが書き綴られています。ファンとしては見逃せない章です。 思い出の地から/創作の小部屋/出会いの人、出会いの先に/日々のなかで/(自著へのつぶやき)書かれたもの、書かれなかったもの |
●「人質の朗読会」● ★☆ |
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2014年02月
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遺跡観光の帰路、マイクロバスが反政府ゲリラの襲撃を受け、添乗員とツアー参加者の計8人が人質になる。身代金が払われ人質は解放される筈と誰もが信じていたにもかかわらず、百日経過後軍と警察の特殊部隊が強行突入、人質8名は全員死亡という結末に至ります。 一つ一つ、何ということもない物語が、何の繋がりも共通性もないまま、しみじみと綴られていきます。 さて、もし自分が人質だったら、果たしてどんな物語を朗読したことか。 1.杖/2.やまびこビスケット/3.B談話室/4.冬眠中のヤマネ/5.コンソメスープ名人/6.槍投げの青年/7.死んだおばあさん/8.花束/9.ハキリアリ |