フランシス・エリザ・ホジスン・バーネット作品のページ


Frances Eliza Hodgson Burnett 1849-1924 英国マンチェスターの富裕な商人の家に生まれるが、幼くして父を失い、家族と共に米国へ移住。家計を助けるために作家活動に入る。次男をモデルにした「小公子」(1886)、「小公女」(1905)にて成功を収める。


1.秘密の花園

2.小公子

3.白い人たち

 


 

1.

●「秘密の花園」● ★★★
 
原題:"The Secret Garden"     訳:瀧口直太郎

  

 
1909年発表

1954年01月
新潮文庫刊

第43刷
1998年03月

第47刷
2004年04月
(590円+税)


2000/02/12
2005/01/02


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私が初めてこの作品を読んだのは、大学卒業を目前に備えた頃、今から23年も前のことです。
その頃のノートには、「最初の文章を読んだ時からこの作品の素晴らしさを感じた。メアリー・レノックスという主人公が、根性まがりの少女であるという意表をついた書き出し、少年少女向けの小説では異例な書き出しが、かえって私の興味を惹きつけた」とあります。
 
メアリーは、インドで両親が病死し、英国ヨークシャーの伯父のもとに引き取られます。わがままいっぱいで、見た目にも不健康そうだったメアリーは、伯父の家で10年間誰も出入りすることが許されていないという“秘密の花園”の存在を知り、密かに出入りする方法を見つけ出します。
 
その“秘密の花園”の中で、メアリーは少女らしい快活さと健康を取り戻していきます。そして、メアリーだけでなく、生まれてからずっと病人扱いされていた伯父の子供・コリンもまた、“秘密の花園”に出入りするようになって、みるみる健康になっていきます。本作品には、上記2人の他にディコンという少年が登場しますが、メアリーとコリンが健康になることに力を貸すという点で、彼は英国の自然と一体化しているような存在です。
 
本作品の主役は、子供たちというより、作者が愛した英国の自然であると言えます。荒地のような英国の自然が、春を迎えるとどんなに美しくなっていくか、作品の中で作者は熱心に語っています。メアリーやコリンの変化は、その英国の自然の賜物であると言って間違いありません。
作者の英国に対する愛情が生み出した作品と言えるでしょう。
(00.02.12)

今回は映画の各場面を脳裏に思い浮かべながら読みました。小説のイメージと映画の画面がぴったり合って、とても楽しいものでした。(05.01.02)

※映画化 → 「秘密の花園」

  

2.

●「小公子」● ★★★
 
原題:"Little Lord Fauntleroy"

 

1886年発表

1953年12月
新潮文庫刊

23刷
1987年12月



2000/02/12

私が本を読み出した、およそ最初である小学生の頃から繰り返し熱読した作品と言えるでしょう。

主人公セドリックが、イギリスの祖父ドリンコート伯爵の下にフォントルロイ卿として引き取られ、その誠実で明るい性格から祖父の気持ちを和らげ、周囲の人々をも幸せに変えていくというストーリィ。

今読めば、セドリックという主人公があまりにでき過ぎで、理想的に過ぎる話と思いますが、それでもなお愛着を感じざるを得ません。誰しもこうありたいと思う姿が、セドリックの中に感じられる所為ではないでしょうか。

この作品の疑問としてあるのが、ひとつ。アメリカで、セドリックとその母親はどうやって女中を雇うような生活を維持する収入を得ていたのか、ということなのですが、あまり詮索せずに楽しむ方が良いようです。

 

3.

●「白い人たち」● ★☆
 
原題:"THE WHITE PEOPLE"     訳:砂田宏一

 

 
1917年発表

2002年
文芸社刊

2005年02月
文芸社刊

新装版
(1400円+税)

 

2005/03/04

本書は、母国アメリカでももう出版されていない作品なのだそうです。
訳者の砂川さんが幸運にも友人を経て入手した原書は、1917年の初版本とのこと。
本書は小公子秘密の花園のような夢のある物語とは異なり、幻想的かつ理念的なストーリィです。

スコットランドの荒れ果てた遠い土地にあるミュールキャリー城館。主人公であるイゾベルは、生まれたとき父母を失っており、アンガスジーンという忠実な召し使いに守られて成長してきた少女です。
そのイゾベルは、他の人にはない不思議な能力を備えています。死んだ人の姿を見ることができる、というのがそれ。
しかし、そのことをイゾベル自身は気づいておらず、彼女は彼らを「白い人たち」と呼んでいました。
人は誰しも死を怖れるもの。そして、愛する者を失った人は限りなく悲しむ。
でも、死は決して恐れる必要のないものなのです。愛する人の心はその人が死んだ後も、その人を深く愛した人のもとにとどまっています。死は、決して愛情を分かつものではない。そんなメッセージを伝える物語です。
ストーリィ云々より、イゾベルという稀有な少女に、そしてそうしたメッセージを伝えようとした作者の心持ちに、強く惹きつけられる作品です。

 


 

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