原田マハ作品のページ
No.4



31.デトロイト美術館の奇跡

32.リーチ先生

33.サロメ

34.アノニム

35.たゆたえども沈まず

36.スイート・ホーム

37.やっぱり食べに行こう。

38.常設展示室


【作家歴】、カフーを待ちわびて、普通じゃない、ごめん、さいはての彼女、おいしい水、キネマの神様、花々、翼をください、インディペンデンス・デイ、星がひとつほしいとの祈り

 → 原田マハ作品のページ No.1


本日はお日柄もよく、ランウェイ・ビート、風のマジム、まぐだら屋のマリア、でーれーガールズ、永遠をさがしに、楽園のカンヴァス、旅屋おかえり、生きるぼくら、ジヴェルニーの食卓

 → 原田マハ作品のページ No.2


総理の夫、ユニコーン、翔ぶ少女、太陽の棘、奇跡の人、あなたは誰かの大切な人、異邦人、モダン、ロマンシエ、暗幕のゲルニカ

 → 原田マハ作品のページ No.3

  


                            

31.

「デトロイト美術館の奇跡 DIA:A Portrait of LIfe ★★


デトロイト美術館の奇跡

2016年09月
新潮社刊

(1200円+税)



2016/10/25



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モダンアートの逸品コレクションを誇ったデトロイト市立美術館(通称:DIA)
2013年、デトロイト市の財政破綻に際して、DIAコレクションの売却話が突如として持ち上がります。
その時、ある一人の平凡な市民の行動によって、奇跡への道筋が開けていく。本書は実話を元にした、奇跡の物語とのこと。

僅か 100頁余りの短い物語。
しかし、実話を元にした奇跡の物語であるのなら、かえって余計な頁は不要なのかもしれません。

フレッド・ウィルは、長年にわたり自動車工場で働いた元労働者。働き者だった妻のジェシカを、半年ほど前に末期癌で喪ったばかり。そのジェシカが心から愛し“友”と呼んでいたのが、DIAのアートたち。
ロバート・タナヒルは、財政支援と美術品蒐集の両面でDIAに多大な貢献をした有資産家。
ジェフリー・マクノイドは、DIAのチーフキュレーター。DIAコレクションの売却話に呆然とし、かつ自らのこれからに焦燥感を抱きます。
・危機に瀕したDIAの起きた<奇跡>の顛末。

DIAに訪れた奇跡に対しても胸は熱くなりますが、それとは別に、DIAのアートを“友”と呼んだフレッド・ウィルと亡き妻ジェシカの存在に、心温まる思いがします。

※表紙絵は、セザンヌが妻を描いた絵《マダム・セザンヌ》。

1.フレッド・ウィル《妻の思い出》2013年/2.ロバート・タナヒル《マダム・セザンヌ》1969年/3.ジェフリー・マクノイド《予期せぬ訪問者》2013年/4.デトロイト美術館《奇跡》2013-2015年

        

32.

「リーチ先生 ★★          新田次郎文学賞


リーチ先生

2016年10月
集英社刊

(1800円+税)



2016/11/24



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文化芸術における日本とイギリスの架け橋になろうと志し、陶芸を芸術の域に高めた英国人陶芸家=バーナード・リーチ(1887〜1979)の軌跡を描いた長編。

本作は、バーナード・リーチを2代に亘って
「リーチ先生」と呼んで深く敬慕し、リーチを師として自らも陶芸の道を究めようとした陶芸家父子の視点から描くという構成です。
プロローグは、日本を再訪し全国の窯元を訪ね歩いている中で大分県小鹿田(おんた)にやって来たリーチ先生と、窯元に弟子入りした少年=
高市(こういち)との出会いを描く篇。
そして本篇は、英国留学中の高村光太郎と知り合い日本の魅力に惹きつけられたバーナード・リーチ22歳が、言葉も何もわからない日本へ単身渡航してきたところから始まります。
光太郎の父親で彫刻家の高村光雲邸で書生となっていた
沖亀乃介がリーチの世話役を命じられたことがきっかけとなり、リーチと亀乃介がお互いに助け合いながら陶芸の道を邁進していく長い物語が幕を開けます。
本篇での主人公はその沖亀乃介。その亀乃介の視点をもって陶芸の道を一歩一歩極めていくバーナード・リーチの姿が描かれていきます。

バーナード・リーチと亀乃介の相互信頼に繋がれた深い関係と、真摯に陶芸へ邁進する姿は感動ものですが、本作はリーチ、そして亀乃介だけに留まらない物語であると思います。
本作における真の主人公は、リーチや亀乃介と一緒に手を携えて陶芸の道に邁進した幾人もの仲間たちである、と言うべきでしょう。それはちょうど
翼をくださいに似ています。その意味で両作は、相似形の関係にある作品と言えます。

読み応えたっぷり、感動に満ちた力作長編。史実をもとにしたフィクション、原田さんはこうした作品の扱いが実に上手い。


プロローグ.春が来た(1954年)/1.僕の先生(1909年)/2.白樺の梢、炎の土(1910年)/3.太陽と月のはざまで(1911年)/4.どこかに、どこにでも(1920年)/5.大きな手(1920年)/エピローグ.名もなき花(1979年)

             

33.

「サロメ SALOME ★★


サロメ

2017年01月
文芸春秋刊

(1400円+税)



2017/02/06



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オスカー・ワイルドの傑作「サロメ」と、その挿し絵を描いて一躍有名になった若き画家オーブリー・ビアズリーを題材にした、絵画をめぐる長編ストーリィ。
冒頭の舞台は現代、パリにある劇場の床下から、別の「サロメ」の物語が発見される、というところから始まります。

肺結核という持病を抱える青年オーブリー・ビアズリーと、献身的に彼を支える1歳上の
姉メイベルという姉弟の運命を変えたのは、作家オスカー・ワイルドとの出会い。
オスカー・ワイルドによって絵の才能を見出されたオーブリーは、やがて旧約聖書に材を取ったワイルドの新作戯曲「サロメ」の挿し絵により一躍脚光を浴びます。
しかしそれは、オーブリーに触手を伸ばすワイルドと、ワイルドに弟を奪われまいとするメイベル、ワイルドと男色関係にある
アルフレッド・ダグラスという4人の間に複雑でねじ曲がった愛憎劇を呼び起こしていきます。

宙に浮かぶ女が預言者の生首を捧げ持って笑みを浮かべているという衝撃的なオーブリーの挿し絵、それだけでも本作の虜になるのには十分なのですが、弟の成功を喜ぶと同時に女優としての成功を弟と競い、かつまたワイルドとオーブリーを巡って張り合うかのような姉メイベルの、妖しくも屈折した愛情の吐露が本ストーリィの見どころと言って差支えないと思います。
その果ての、まさに鬼気迫るような終盤の展開は圧巻という他ありません。

※私の既読ワイルド作品は
「幸福の王子」「ドリアン・グレイの肖像」だけで「サロメ」は未読でしたので、本書により「サロメ」の内容ならびに画家オーブリー・ビアズリー(25歳で早逝)のことまで知ることができました。

                        

34.

「アノニム anonyme ★☆


アノニム

2017年06月
角川書店刊

(1500円+税)



2017/06/25



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盗まれたアートを元の場所に戻すという謎の集団“アノニム”
世界各国でアートに絡む仕事をしている8人がそんな危険な仕事に手を染めているのは、アートには世界を変える力があるから、世界を変える力を持ったアートを救うため、という信念から。

今回彼らが注目しているのは、香港で行われるオークション。その目玉となるのが、
ジャックソン・ポラックの初期作品“ナンバー・ゼロ”
数多くのアートを窃盗という形でコレクションする謎の富豪<
ゼウス>が今回はオークションに参加する筈。そのゼウスから落札した“ナンバー・ゼロ”を奪い取ろうとアノニムの面々が活動を開始します。

一見、アートに絡むサスペンスと思うところですが、本作の本質は全く異なります。
ひとつは、大戦後アートの中心が西欧から米国へ移り、その中でジャクソン・ポラックの
“アクション・ペインティング”を始め新たなアートの流れが生まれたというアートの歴史・変遷を語るストーリィであること。
そしてもうひとつ、アートに独特な天分をもつ香港の高校生=張天才を登場させ、アートの可能性を語らせること。

アートは世界を変えることができるのか。いや、アートで世界を変えられるかもしれない、そう信じることが大切であるというメッセージを伝えるところに本作の真価があります。


サスペンス小説としての面白味は薄いですが、本作に篭められた上記メッセージは高く評価したい。

               

35.
「たゆたえども沈まず FLUCTUAT NEC MERGITUR ★★


たゆたえども沈まず

2017年10月
幻冬舎刊

(1600円+税)



2017/11/15



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芸術好きのパリ人たちに浮世絵等の日本美術を売りまくり、ジャポニスムという名の嵐を巻き起こしている風雲児の如き日本人美術商=林忠正。その林に招かれ、その元で働くため憧れのパリに初めてやってきた加納重吉
一方、有名画家たちの古典的絵画を金持ち相手に商っている画廊「グービル商会」パリ支店の若き支配人=
テオドルス・ファン・ゴッホ。そのテオの兄こそ、後の天才画家であるフィンセント・ファン・ゴッホ

時代は、モネやルノワールら
印象派の画家たちが登場し、新しい渦をフランス絵画界に巻き起こそうとしていた黎明期。
重吉の目を通して描かれるその時代のうねり、それは躍動感と実感を備えて読み手の心に伝わってくるようです。
一方、新興の画家たちの絵に惹きつけられながらも古典的絵画を売るのを仕事とし、その収入で先の見通のつかない画家である兄フィンセントを懸命に支えようとしているテオ。
誰にも評価されないまま衝動に駆られるまま絵を描き続ける画家の苦しさ、孤独がテオの目を通して描かれると同時に、そんな兄を支え続ける肉親の喜びと慟哭が、テオをもう一人の主人公として描き出されます。

テオとフィンセントというゴッホ兄弟の激烈なドラマも勿論読み応えたっぷりなのですが、それを超えて圧倒させられのは、個々の人間を呑み込んでも蠢いていく、新しい時代の鼓動、大きな時代のうねりです。

芸術小説の力作長編、と言って過言ではありません。


1962年 7月29日 オーヴェール=シュル=オワーズ/1886年 1月10日 パリ 十区 オートヴィル通り/1891年 2月3日 パリ 二区 ヴィクトワール通り

              

36.
「スイート・ホーム SWEET HOME ★★


スイート・ホーム

2018年03月
ポプラ社刊

(1500円+税)



2018/04/06



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高台の町にある、家族で営む洋菓子店<スイート・ホーム>
その店主である
香田夫婦と2人の娘、またその店を愛する常連客たちを主役にした、愛おしい家族の物語。

お気に入りの洋菓子店がある、素敵な街で愛しい家族らと共に暮らしていくという喜び、幸せが、ふんだんに盛り込まれた連作風ストーリィ。
幾らなんでも理想的に過ぎて、夢想的なレベル、と言われても仕方ない内容ですが、でも読んでいてとても幸せな気分になれるストーリィ。
決して夢の中にしかない訳ではない、「青い鳥」のように足元を見つめてみれば、すぐ近くになる幸せな光景、とも思うのです。

「スイート・ホーム」:香田家長女の陽皆(ひな)が主人公。
契約店員として働く梅田地下の雑貨店で気になる男性客と出会います。
「あしたのレシピ」:冒頭篇から6年後、近隣のクッキングスクールで講師をしている未来(みく)、35歳が主人公。<スイート・ホーム>で気になるスイーツ男子と出会います。
「希望のギフト」:冒頭篇から10年後、次女の春日(はるひ)が主人公。母=秋子の妹で未亡人となったいっこおばさん(郁子)が香田一家に同居するのですが・・・。
「めぐりゆく季節」5篇:常連客の家族たちが主人公。家族の幸せが広がるストーリィに<スイート・ホーム>が絡みます。

たまにこうしたストーリィを読むと、心が洗われる気がして好いですよねー。


スイート・ホーム/あしたのレシピ/希望のギフト/めぐりゆく季節(秋の桜/ふたりの聖夜/冬のひだまり/幸福の木/いちばんめの季節)

                

37.
やっぱり食べに行こう。 ★★


やっぱり食べに行こう。

2018年05月
毎日新聞出版

(1400円+税)



2018/06/21



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毎日新聞「日曜くらぶ」に 2015.07.05〜17.07.30 の間掲載されたエッセイの単行本化。

原田さん、蓼科在住ながら、蓼科にいるのは一年の内 1/3、東京等国内の各地に 1/3、パリ等海外に滞在しているのが 1/3という生活パターンなのだそうです。
美味しいもの大好きな原田さん、各地で美味しいもの探しに目がないとか。
本書は、そんな美味しいものを食べて嬉しい、楽しいという、探訪的エッセイ集。

美味しいものといっても、高級料理、珍しい料理専門という訳ではありません。庶民的なもの、誰でも食べることができるものも多々あり。
だから一緒になって楽しめる、という内容になっています。
また、各篇とも2〜3頁という短さ。そのため、小気味良さもあって楽しい、という次第。

朝食は、熱々のコーヒーに熱々のバタートースト、それにヨーグルトというのが恒例とのこと。コーヒーと紅茶という違いこそあれ、長い間私も似たパターンの朝食を取っていましたので、冒頭から親近感を抱くことしきり。

食べ物自体の美味しさだけでなく、時とシチュエーションを得ればさらに美味しさが増す、ということがよくありますよね。
そんな美味しさも、本書からは感じ取れます。

小説執筆のための取材ということもあって海外各地を飛び回る。パリ・ロンドン等のヨーロッパ、ロシア、トルコ、中国と、行き先はとんどん広がり、海外だけでなく国内でも。
そしてその都度、原田さんの小説執筆にからむエピソードもちらりと。


とにかく、楽しさをたっぷり堪能できる、食べ歩きエッセイ集。
時に「孤独のグルメ」の主人公である井頭五郎を彷彿させる口調もありましたよ。


朝ごはん/麺/シーフード・肉/デザート/アートとグルメ/何度でも通いたい店/欠かせない一品

                  

38.
「常設展示室 Permanent Collection ★★


常設展示室

2018年11月
新潮社刊

(1400円+税)



2018/12/08



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美術館に常設展示されている絵をモチーフにした絵画ストーリィ、6篇。

美術館に行こうかと思うのは、特別展示に惹かれてのことが多いのかもしれません。
でも特別展示といつと、人がわっと押し寄せ、ただ見た、というだけで終わってしまうイメージがあります。
その一方、常設展示されている絵となると、行けばいつもそこにある、そこで出会える、という安心感があるように思います。

本書に収録されている6篇は、いずれも心が弱った主人公が美術館に常設展示されている絵を観て、心癒されるというもの。

「群青」:NYのメトロポリタン美術館にアシスタント・プログラマーとして勤める小野美青(びさお)・35歳が主人公。
目の病気を宣告された美青が、強度の近眼である少女と一緒に見入った絵は・・・。
「デルフトの眺望」:大手画廊の営業部長の職にある相田七月生(なづき)・40代後半が主人公。介護施設に入所していた父親が死去した後、想い出に残る絵を彼女は観に行く・・・。
「薔薇色の人生」:パスポート発行事務所に派遣社員として勤める45歳独身・バツイチの柏原多恵子が出会った60代男性のおかげで観た絵は・・・。
「豪奢」:六本木のアートギャラリーに入社したものの、IT起業で成金となった男性の愛人となった紗季が自分を取り戻すに至った絵は・・・。
「道」:イタリア育ちで美貌の美術評論家として一躍世間の寵児となった貴田翠が、審査員を勤める芸術賞の審査会で見出した絵は、何故か懐かしく・・・。

たまたま入った美術館でふと目に留まった絵、強く惹きつけられるままその絵の前に立ち続け没入する・・・そうした絵との出会いこそ幸せかもしれません。
自分の気持ちが弱っている時、迷っている時、そんな時こそ名画は力強くメッセージを伝えてくれる、そう感じます。

最後の篇に出てくるのは、
東山魁夷画伯の<道>
主人公たちと同様、私も若い頃に近代美術館で夜間の時間帯に、<東山魁夷展>を観たことがあります。
人が少なく、静かに、じっくり絵を観れて嬉しかったという記憶が残っています。
ふと懐かしい気持ちになりました。


群青 The Color of Life/デルフトの眺望 A View of Delft/マドンナ Madonna/薔薇色の人生 La Vie en Rose/豪奢 Luxe/道 La Strada

       

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