
1967年
新潮選書
1978年12月
東山魁夷
画文集 3
(1800円+税)
1999/02/20
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私が東山画伯と初めて出会った本で、この20年間繰り返し読んできた愛読書のひとつです。
「いままで、なんと多くの旅をして来たことだろう」
この冒頭の一文が、これまでいつも私の胸の内にすっと入り込んできました。
戦後画檀に認められた「残照」から始まり、作品を主体に置きながら、制作時の思い、画伯自身の意識の流れを丹念に綴った随筆です。
画伯の絵をじっと眺めていると、いつも胸打たれるものがあります。それは、いろいろな葛藤(世に認められたい、友人たちに遅れをとった等々)を自身の内に凝縮し、凝縮し尽くしたところで心を透明にし、静かに自然と対峙する、そんな画伯の心の在り方です。絵、随筆に触れる都度、私自身の心も洗われるような気がします。だからこそ、繰り返しこの本を読んできました。
画伯自身、順調であることに慣れること恐れ、自身の芸術の立脚点を「謙虚と誠実と清純」にあるべきだと自戒しています。そうした心を自分の中に保つこと、それはどんなに難しいことでしょうか。
本書では、風景開眼、自然との対峙、北欧への旅、日本の風景への回帰、と語られていきます。絵を描くことと旅は、画伯にとっては切り離せないひとつのものであるようです。松尾芭蕉に在らずとも、人生を思うとき、それを「旅」と重ね合わさずにいられません。
できれば、画集を傍らに開きながら読んで頂きたい一冊です。
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