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42.風神雷神 43.<あの絵>のまえで 44.リボルバー 45.丘の上の賢人−旅屋おかえり− 46.板上に咲く |
【作家歴】、カフーを待ちわびて、普通じゃない、ごめん、さいはての彼女、おいしい水、キネマの神様、花々、翼をください、インディペンデンス・デイ、星がひとつほしいとの祈り |
本日はお日柄もよく、ランウェイ・ビート、風のマジム、まぐだら屋のマリア、でーれーガールズ、永遠をさがしに、楽園のカンヴァス、旅屋おかえり、生きるぼくら、ジヴェルニーの食卓 |
総理の夫、ユニコーン、翔ぶ少女、太陽の棘、奇跡の人、あなたは誰かの大切な人、異邦人、モダン、ロマンシエ、暗幕のゲルニカ |
デトロイト美術館の奇跡、リーチ先生、サロメ、アノニム、たゆたえども沈まず、スイート・ホーム、やっぱり食べに行こう、フーテンのマハ、常設展示室、美しき愚かものたちのタブロー |
「原田マハの印象派物語 7 histoires d'impressionnistes」 ★★ | |
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印象派の主だった画家たち7人の生涯を簡単に紹介する一方、モネと関わりある土地を訪ねる紀行、オルセー美術館や展覧会のことについての対談を含めた“とんぼの本”。 私も“印象派”、好きです。 光や色が踊っているように感じられて、観ているとワクワクして気持ちが湧きたつようです。そこが魅力。 中でも好きな作家というと、本書に取り上げられた中ではエドゥアール・マネやクロード・モネが筆頭。 それと、本書を含めあまり取り上げられないようですが、アルフレッド・シスレーも好きです。 ただ、シスレー、洪水等の画が多いということで、水害を連想させるため日本では人気がない、と何処かで読んだ気がします。 三菱一号館美術館の館長である高橋明也さんと原田マハさんの対談も楽しい。 それぞれの展覧会ごと、学芸員やキューレーターの方たちが綿密な演出をもって絵画の展示を行っていると聞き、単に並べているだけくらいにしか考えていなかったことが申し訳なく、反省するばかりです。 次に展示会を観に行くときは、どんな演出が企図されているのだろうかと考えながら観てみようと思います。 印象派に出会える場所/美しき愚かものたち/愚かものたちのセブン・ストーリーズ /1.モネの物語/2.ベルト・モリゾとマネの物語/3.メアリー・カサットとドガの物語/4.ルノワールの物語/5.カイユボットの物語/6.セザンヌの物語/7.ゴッホの物語/ ノルマンディー紀行/公開対談:人生でただ一度しかない展覧会(高橋明也X原田マハ) |
「風神雷神 Juppiter, Aeolus」 ★★ | |
2022年11月
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建仁寺所蔵「風神雷神図」等で有名、尾形光琳と並び琳派の祖と言われる俵屋宗達を主人公にした、壮大な冒険行。 しかし、宗達、その生涯には不明な点が多いのだそうです。だからこそ自由に想像力を膨らませて、この壮大な冒険行を書くことが出来たのだろうと思います。 プロローグとエピローグは現代。俵屋宗達を研究している望月彩は、マカオ博物館の研究員であるレイモンド・ウォンから是非見てもらいたいものがあると言われマカオへ。 それは古文書と一枚の板絵。筆者は天正遣欧少年使節の原マルティノか、そしてその中に「俵・・屋・・宗・・達」という文字。 野々村伊三郎は京の扇屋の息子。画才に秀で信長に呼び出され、見事と褒められ「宗達」の名を与えられる。 そして狩野永徳を手伝って「洛中洛外図」を描くよう命じられ、「見事」という称賛を受ける。 信長の密命は、その「洛中洛外図」をローマ教皇に贈呈するとともに、ローマの洛中洛外図を描け、ということ。 その結果、宗達は絵師として天正遣欧少年使節(1582〜1590)に加わり、4人の少年使節、宣教師らと共にローマを目指します。 全篇に溢れているのは、何でも絵にしようという宗達の意気込み、初めて見るレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ等々の名画を目にしての感動ですが、何よりも絵に対する愛情が満ち溢れています。 また、ローマまで3年にもわたる船旅、陸路旅も興味尽きないものがあります。 そしてミケランジェロ・メリージ・カラヴァッジョとの出会い。 当時のことですから、これはもう俵屋宗達の壮大な冒険行といって間違いではないと思います。 エンディングは、このうえもなく爽快です。 プロローグ/第一章/第二章/第三章/第四章/エピローグ |
「<あの絵>のまえで A Piece of Your Life」 ★★ | |
2022年12月
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日常生活におけるちょっとした一コマ、でもそれは人生の岐路となる出来事かもしれない。そしてそこには、一枚の絵との出会いがあった・・・。 あっさりとしたごく日常的なストーリィですけれど、主人公にとってはとても大きな出来事。 一枚の絵との出会いが、主人公たちを勇気づけ、また新たな道へと誘ってくれます。 心が洗われるような、清らかな思いのする短篇ばかり。 良いなぁ・・・こうした短篇集、大好きです。登場人物たちと一緒に、自分もまた救われるような気持ちになるので。しかも一枚の絵との出会いにより・・・という処が素敵です。 ・「ハッピー・バースデー」:広島で母・娘と3人で暮らすシングルマザーの女性が主人公。思い出すのは、母と一緒にひろしま美術館のヴィンセント・ゴッホ<ドビニーの庭>。 ・「窓辺の小鳥たち」:高校2年以来の恋人だった彼が今日、米国留学へとこの部屋を出ていく。2人の思い出は大原美術館で一緒に見たピカソ<鳥籠>。 ・「檸檬」:一度絵を捨てた主人公、もう一度描いてみようと思わせたのは、ポーラ美術館のセザンヌ展で見た<砂糖壺、梨とテーブルクロス>。 ・「豊饒」:大切な祖母を喪い、たった一人小説家を目指す主人公を励ましてくれたのは、豊田市美術館のクリムト<オイゲニア・プリマフェージの肖像>。 ・「聖夜」:一人息子の死を今も悲しむ老夫婦の心を癒してくれたのは、誕生日である聖夜に一緒に見ようと約束していた、信濃美術館東山魁夷館にある<白馬の森>。 ・「さざなみ」:傷つき行き場所を喪った主人公に、再び前へ踏み出す気持ちを与えてくれたのは、瀬戸内海直島にある地中美術館のクロード・モネ<睡蓮>。 ハッピー・バースデー/窓辺の小鳥たち/檸檬/豊饒/聖夜/さざなみ |
「リボルバー Le Revolver」 ★★ | |
2023年07月
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パリ大学に留学して美術史の修士号を取得し、今は小さなオークション会社「キャビネ・ド・キュリオジテ」(CDC)に勤務する高遠冴の研究テーマは、フォン・ゴッホとゴーギャン。 そのCDCに、自分も画家だという年配女性が持ち込んできたのは、錆ついた一丁の拳銃。そのリボルバーは何と「フィンセント・フォン・ゴッホを打ち抜いたもの」だという。 その言葉に冴たちは凍りつく。それは真実なのか? そこから、女性の言葉が真実かどうかを、冴ら3人が調べていくというストーリィ。 あたかも美術ミステリのような展開ですが、真にはフィンセント・フォン・ゴッホとポール・ゴーギャンの2人、その関係を問うていくストーリィと言って間違いありません。 南仏アルルでの僅か2ヶ月という短さではありましたが、ゴッホとゴーギャンの2人の画家が共同生活を送ったという関係には、美術好きなら誰しも興味尽きないものがあります。 ゴッホといえば、「たゆたえども沈まず」を思い出さずにはいられませんが、もう一つ、映画「永遠の門−ゴッホの見た未来」が思い出されます。 ゴッホとゴーギャン、ともに極めて独創的な画風故に、生存中は全く評価されなかったという共通点をもつ天才画家。 そうした2人の出会いは、幸せなものだったのか、そうではなかったのか、それは本人たちしか分からないものなのでしょう。 ゴッホが抱えた苦悩。一方、対照的な人生を送ったゴーギャンの苦悩。そのうえでの2人の関係。 フィクションではありますけれど、そうしたことがあっても少しも不思議ない、と感じさせられました。 ゴッホ、ゴーギャンに興味ある方には、お薦めの一冊です。 ※ゴッホが自殺に使ったとされるリボルバーは、2019年06月にパリの競売会社オークション・アートによって競売にかけられ、約2千万円で落札されたそうです。 0.プロローグ:いちまいの絵/1.ふたつのリボルバー/2.サラの追想/3.エレナの告白/4.ゴーギャンの独白/5.オルセーの再会/6.エピローグ:タブローの帰還 |
「丘の上の賢人−旅屋おかえり−」 ★☆ | |
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「丘の上の賢人」は、「旅屋おかえり」の特別編。 「旅屋おかえり」に収録されなかった幻の<札幌・小樽編>だそうです。 札幌、モエレ公園の丘にずっと座っている中年男性、若者たちから繰り返し暴行を受けているようでSNSに「フール・オン・ザヒル」という題名でアップされている。 その動画を見た女性=古澤めぐみ・40歳からの代理旅の依頼。彼がかつての恋人かどうか確かめてほしい、と。 故郷の利尻島に帰れないままとなっている「おかえり」こと丘えりか、北海道には旅したくないと断り続けてきましたが、古澤めぐみの思いに決意して、札幌・小樽へと旅します。 その結果は・・・・読んでのお楽しみです。 どうしたら本人の代わりに旅できるのか、成果物は・・・という責任は重いですが、依頼人の気持ちに入り込んでしまう、そんなところが代理旅人に相応しいのでしょうね。 「フーテンのマハSP−旅すれば乳濃いし」は、北海道への紀行エッセイ。 「おかえりの島〜旅屋おかえり〜」は、漫画。 芸能界入りする前の岡林恵理子、修学旅行で東京へ行ったときのお話。素朴な高校生だった頃のおかえりの姿を目にできる、という貴重な篇。 丘の上の賢人/エッセイ:フーテンのマハSP 旅すれば 乳濃いし/おかえりの島〜旅屋おかえり〜漫画:勝田文 |
「板上に咲く(ばんじょう) MUNAKATA: Beyond Van Gogh」 ★★ 泉鏡花文学賞 | |
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世界的な「板画」家=棟方志功の苦闘、そして成功するまでの人生を、妻チヤの視点から描き出した作品。 といって主人公は棟方志功だけではなく、志功にしたがい、志功を支え続けた妻=チヤもまた主人公、いつか世間に認められる日を夢みて奮闘し続けた、この夫婦の姿を描いたストーリーと言えます。 愛嬌があり、純粋で、一途に板画の世界を突き進んだ棟方志功という人物も中々に魅力ある人物ですが、そんな夫をひたすらに信じて付き従ったチヤという女性も、魅力ある人物です。 年別の目次とは別に、本ストーリーには節目節目に 1.から13.までの番号が振られています。 そして、その 2.〜12.に冒頭で常に「チヤは・・・している」と書かれています。その冒頭文を追うだけで、その時々の夫婦の状況が立体的に浮かび上がるようです。 つまり、その時のチヤの行動が、その時の棟方志功の状況を象徴的に表している、という些か心憎い趣向です。 圧巻は、敗色濃厚となった太平洋戦争中、志功が創った板画を守らなくてはと、志功の反対を押し切って疎開先から東京に戻ろうとするチヤの言動、チヤの熱い胸の内が迸る、その場面です。 世界に認められた芸術家、という以前に、二人の夫婦関係が愛おしくてたまらない、そんな思いを受ける力作です。 序章 1987年(昭和62年) 10月 東京 杉並 1928年(昭和 3年) 10月 青森−1929年(昭和 4年) 9月 弘前 1930年(昭和 5年) 5月 青森−1932年(昭和 7年) 6月 東京 中野 1932年(昭和 7年) 9月 東京 中野−1933年(昭和 8年) 12月 青森 1934年(昭和 9年) 3月 東京 中野 1936年(昭和11年) 4月 東京 中野 1937年(昭和12年) 4月 東京 中野 −1939年(昭和14年) 5月 東京 中野 1944年(昭和19年) 5月 東京 代々木−1945年(昭和20年) 5月 富山 福光 終章 1987年(昭和62年) 10月 東京 杉並 |
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