原田マハ作品のページ
No.2



11.本日は、お日柄もよく

12ランウェイ・ビート

13.風のマジム

14.まぐだら屋のマリア

15.でーれーガールズ

16.永遠をさがしに

17.楽園のカンヴァス

18.旅屋おかえり

19.生きるぼくら

20.ジヴェルニーの食卓


【作家歴】、カフーを待ちわびて、普通じゃない、ごめん、さいはての彼女、おいしい水、キネマの神様、花々、翼をください、インディペンデンス・デイ、星がひとつほしいとの祈り

 → 原田マハ作品のページ No.1


総理の夫、ユニコーン、翔ぶ少女、太陽の棘、奇跡の人、あなたは誰かの大切な人、異邦人、モダン、ロマンシエ、暗幕のゲルニカ

 → 原田マハ作品のページ No.3


デトロイト美術館の奇跡、リーチ先生、サロメ、アノニム、たゆたえども沈まず、スイート・ホーム、やっぱり食べに行こう、常設展示室

 → 原田マハ作品のページ No.4

  


          

11.

●「本日は、お日柄もよく」● ★★


本日は、お日柄もよく画像

2010年08月
徳間書店刊

(1600円+税)

2013年06月
徳間文庫化



2010/09/15



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語り、語られることの面白さ、それは小説における魅力にも通じること。
そして、語ることの典型的な形がスピーチ、でしょう。直截的に聴衆に対し語りかける行為なのですから。

数多くあるスピーチの中でも、ひときわ華やかなのが結婚披露宴でのスピーチ。
幼馴染の結婚式に出席した主人公=二ノ宮こと葉は、その席で、退屈な余りつい居眠りしてしまったスピーチと、あまりの見事さに陶然となってしまったスピーチ、その両方を聞くことになります。
見事なスピーチを披露したのは、“伝説のスピーチライター”と言われる久遠久美
言葉を操る素晴らしさに感激したこと葉、あれよあれよという間に久遠の弟子にされたかと思えば、そこから思わぬ世界が開けてきます。
言葉・スピーチのもつ力、可能性を描き出したストーリィ。

とにかく前半、スピーチの素晴らしさに魅せられます。流石にそこは小説家!と言うべきなのかどうか。(苦笑)
ともかくも、変わらないままより良い方へ変わった方が良い、というのが本ストーリィの基調。平凡なOLに過ぎなかったこと葉に思いがけない試練が降って湧いてきます。
スピーチの良し悪しという話が、そっちへ行くのかッ?!と驚きでしたが、ともかくも「言葉」の魅力を、軽快ですこぶる気持ち良く楽しめるストーリィ。 好きだなぁ。

※なお、言葉を操るといっても、言いくるめるということに非ず。自分の思いをいかに印象的に伝えるか、ということ。

          

12.

●「ランウェイ・ビート」● ★★


ランウェイ・ビート画像

2010年11月
宝島社文庫

(457円+税)

2011年01月
新装版



2011/03/06



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ファッションを題材にした、爽快な高校生群像・青春ストーリィ。
読み始めた冒頭から、ワクワクするような面白さ。どんどん乗って行けます。こんな風にストーリィを爽快に仕立てあげていくところ、原田マハさん、本当に上手い。
 
さてストーリィ。
塚本芽衣(メイ)の前に突然姿を現した転校生の溝呂木美糸(びいと)、身長 150cmと小さいけれど、すごくキマっている男の子。
そのビートが現れた時から、全てが変わる。冴えないパソコンオタクでクラスではイジメられっ子だった
ワンダ(犬田悟)は、ビートによって驚きの超イケている男の子に大変身。メイとビートのクラスでは一転、皆のファッションへの関心が高まります。
そして訪れた学校の危機。ビートとワンダが中心となり、学園祭で現役高校生発ファッションショーを開催するという計画を立ち上げます。その結果は・・・。そしてその後、彼らのポテンシャルを最大限に引き出す挑戦が・・・というストーリィ。

中心になるのは、ビートとワンダに加え、メイ、その親友
アンナ(秋川杏奈)、同級生にして超人気モデルのミキティ(立花美姫)という5人。
ストーリィは、メイ、ミキティ、ワンダ、若手女性デザイナー=
南水面(みずも)、最後に再びメイと、語り手を変えつつ一人称で綴られていきます。それだけに、至ってリアル、臨場感いっぱいです。
テーマは、
ポテンシャル(潜在能力)、そして世界を変えてみないか、という誘い。
都合の良過ぎる展開部分もありますが、これだけ気持ち良ければそんなことに拘るのは野暮、というものでしょう。
爽快な青春ストーリィが大好きという方は、是非読み逃しなく。


※「世界を変えてみたくはないか」というセリフ、金城一紀「レヴォリューションNo.3」にも登場しましたが、惹きつけられる一言ですね。

※ 映画化 →ランウェイ・ビート

          

13.

●「風のマジム」● ★★☆


風のマジム画像

2010年12月
講談社刊

(1500円+税)

2014年08月
講談社文庫化



2011/01/12



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日本初、沖縄産のアグリコール・ラム酒を造る!
本書はそんな夢の実現、起業化に成功した実在の女性をモデルにしたストーリィとのこと。いわば元気な女性の奮闘記。

主人公は
伊波まじむ、地元企業に勤める28歳の派遣社員。
元々祖母の手ほどきの下、酒好きになった彼女が大好きになったのは、サトウキビが原料のアグリコール・ラム酒。飲んだ途端、風を感じた、というのがその理由。
折も折、勤務先で「社内ベンチャー・コンクール」の募集が行われることとなり、まじむは
“風の酒”を作りたいとラム酒造りの企画をまとめあげ応募します。
そこから始まる、夢の実現に向けたまじむの奮闘ストーリィ。
  
全編、風を感じるストーリィです。
とにかく気持ちが良い。風が吹き抜ける時の気持ち良さ、と言ったらよいでしょうか。
風の酒、風が吹き抜ける
南大東島、風のように元気な女の子。
ラムが風を感じる酒なら、さしづめ本書は、風を感じる小説、と言えるでしょう。
登場する人物も、皆気持ちの良い人ばかり。すっと胸の中に入り込んでくる感じです。そりゃあ、中には少々意地の悪い登場人物もいない訳ではありませんが、薬味程度のこと。
読んでいてとても気持ちが良い、という作品はそうある訳ではありません。そのうえ、風を感じる作品ともなれば、本当に稀。本書はその稀な作品なのです。
夢の実現、爽快なストーリィがお好きな方に、是非お薦め!

※ラム酒製造の舞台となる絶海の島=南大東島の風景、人々の姿も魅力的。なお、表題および主人公の名前でもある「マジム」とは、沖縄の言葉で「真心」という意味だそうです。

※本書のモデルは、沖縄電力の社内ベンチャー制度を活用して平成16年に設立された株式会社グレイスラムおよび同社代表取締役の金城祐子さんとのこと。

                   

14.

●「まぐだら屋のマリア」● ★★


まぐだら屋のマリア

2011年07月
幻冬舎刊

(1400円+税)

2014年02月
幻冬舎文庫化



2011/08/24



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料理人をめざし、東京の老舗料亭で下働きながらやり甲斐のある日々を送っていた及川紫紋(しもん)、25歳。
ところがその老舗料亭で大不祥事が発覚、好きな女の子を守るために大事な後輩の
悠太を見殺しにしてしまった紫紋、罪の重さから死を選ぼうと当てもなく彷徨っていた末にたどり着いたのは、海辺の町=尽果(つきはて)、そこに一軒ぽつんと立つ定食屋の「まぐだら屋」。
料理を忘れることが出来なかった紫紋、一人で店を切り回す
有馬りあ(マリア)に請い、そのまぐだら屋で働き始めます。

謎のある女性=マリア、毎日のように店へ魚を届けに来る
克夫さん、そしてマリアを「悪魔のような女」と呼ぶ病身の女将等々。
まぐだら屋を舞台に、人と人との触れ合いを軸にした救済、そして再生のストーリィです。
料理を作ることの喜び、行き倒れの青年=
丸弧との関わり、マリアと女将の関係をめぐる謎と、ストーリィはテンポ良く、紫紋という主人公の好ましい人物像を反映して、本作品は読み易く、興味尽きず、かつ喜びがあります。

まぐだら屋のマリア、しもんと、各々キリスト教に縁の深い人物名であることは言うまでもありません。
とくに
マグダラのマリアは、元は罪深い女で悔悛した女性であり、キリストの死と復活を見届ける女性であるという点で、本ストーリィの内容をそのまま象徴していると言えます。
さらに本作品のメッセージを考えるならば、待っていてくれる人がいる限り救いはある、というところでしょう。

                 

15.

●「でーれーガールズ Fantastic Girls, Okayama, 1980」● ★★☆


でーれーガールズ画像

2011年08月
光文社刊

(1400円+税)

2014年10月
祥伝社文庫化



2011/09/23



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人気漫画家である小日向アユこと佐々岡鮎子の元に、高校3年間を過ごした岡山の母校から、創立 120周年の記念事業の一環として記念講演をしてもらいたいという依頼状が届きます。
人前に出るとしどろもどろになる性格、冗談じゃないと断ろうとしたあゆでしたが、気持ちを変えさせたのは
「アユたんのデビュー作「でーれーガールズ」が私の人生最良の作品です」という一文と、同級生の一人から届いた手紙にあった、武美も同窓会に来る予定、という知らせだった。

父親の仕事の事情で東京から岡山へ転校した
あゆ、言葉の問題も障害になって誰も友達ができず、孤独。
そんなあゆの心の支えとなったのは、大学生の彼氏=
ヒデホくんの存在。マンガ少女だったあゆ、2人の恋物語をマンガに書いたのが「ヒデホとあゆの物語」
そのマンガをたまたま読み、ヒデホに恋してしまったのが、きれいでカッコいい同級生だった
秋本武美
でーゆー佐々岡と呼んでいた武美が「あゆ」と呼ぶようになり、それからあゆはすんなりクラスに溶け込んでいった。

1980年代、岡山を舞台に、かけがえのない大切な友情で結ばれた少女2人の物語。
30年ぶりの武美との再会を機に、回想をもって当時の思い出が語られていきます。
高校時代を回想した青春小説はそう珍しいものではありません。しかし、回想を重ねる毎に当時の思い出がどんどん鮮明に、そしてどんなに貴重な時間&友情だったかが、感動をもって蘇ってくる作品はそうあるものではありません。
少女たちの岡山弁での語らいがとても楽しい、高校青春小説好きにはたまらない作品です。
構成といい語りといい、原田マハさんの上手さには、ホント脱帽です。

※なお、
「でーれー」とは強調するときに使う岡山弁らしく、「すげえ」という言葉に置き換えるのが適切のようでした。

                     

16.

●「永遠(とわ)をさがしに The Eternal Consonance」● ★★


永遠をさがしに画像

2011年11月
河出書房新社

(1500円+税)

2016年02月
河出文庫化



2011/12/06



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世界的な指揮者の父親、一流交響楽団で首席チェロリストを務める母親の間に生まれた和音(わおん)
幼い頃からチェロの英才教育を受けていたが、いつしか音楽から心が離れ、その所為か母親は塞ぎ込むようになり、5年前に母親は黙って家を出ていき、和音は家庭から遠い存在の父親と2人だけになった。
そして高校1年の今、父親はボストン交響楽団の音楽監督となるため単身赴任、和音は一人で家に残る筈だった・・・・が、突然和音の前に新しい母親だと名乗る
真弓という女性が登場。和音に何の断りもないまま、父親と3日前に入籍したのだという。
しかし、遠慮ない物言いをする真弓のペースに和音も引きずり込まれ、何となく和気藹々とした2人暮らしが始まった。
しかし、真弓は驚くべき秘密を抱えていた・・・。

一旦チェロを手放した少女が、自らの決意で再びチェロを手にするまでの再生ストーリィ。
そこに至る過程で、真弓とその母親、そして和音と母親の物語の真相が明らかにされていきます。
ストーリィだけ言うならば月並みな物語かもしれませんが、そこは原田マハさんの、物語ることの上手さ。胸熱くなる、感動的で気持ちの良いストーリィに仕上がっています。
本作品の気持ち良さは、登場人物が皆そうであることに依っています。
真弓が格別魅力ある人物であることは勿論、和音の親友2人の存在もとても気持ち良い。
そして感動的な、母、真弓、和音という女性3人の母娘物語。
原田マハ作品らしい、私好みの一冊です。

                    

17.

●「楽園のカンヴァス La toile du paradis」● ★★☆     山本周五郎賞


楽園のカンヴァス画像

2012年01月
新潮社刊

(1600円+税)

2014年07月
新潮文庫化



2012/02/09



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ピカソにも大きな影響を与えたとされる画家、アンリ・ルソー
そのルソーの大作
「夢」そっくりの幻の作品「夢を見た」。果たしてそれは真にルソーの作品か、あるいは見事な贋作なのか。
その幻の作品の真贋をめぐる、絵画ミステリ。

ニューヨーク近代美術館に勤めるアシスタント・キュレーター、
ティム・ブラウンの元に、伝説的なコレクター=コンラート・バイラーから突然に招待の手紙が届きます。喜び勇んでスイスへ向かった彼の前に現れたのは、気鋭のルソー研究者オリエ・ハヤカワと、バイラーが秘蔵していたという幻の大作「夢を見た」。
そしてオリエとティムの2人にバイラーが告げたのは、ある物語を毎日1章ずつ読むことを通じて、この絵の真贋を判定して欲しい、そして2人の内の勝者にこの絵を譲渡する、ということ。

ミステリはミステリなのですが、読んでいて面白いのはむしろ、17年前の出来事の回想としてティムとオリエの物語が進んでいくのと並行して、90年前のアンリ・ルソーと洗濯女ヤドヴィガの物語が作中作として進むという、二重構造の物語になっていること。
また、オリエとティムのみならず、登場人物皆が各々何らかの秘密を抱えているという点も面白いのですが、作中作の中で最後に大きな秘密が生じるという、逆方向の展開を与えているその巧妙さが、まさにお見事。
同時に本書は、物語の面白さだけでなく、2重の物語を通じていつの間にかアンリ・ルソーやパブロ・ピカソという画家に読者を親しませてしまっているところが、実に心憎い仕業です。
 
本書は、ニューヨーク近代美術館勤務。キュレーターという経験をもつ原田マハさんが初めてその経験を活かした作品。
原田マハ・ファンなら、お薦めの一冊です!

             

18.

●「旅屋おかえり the long way home」● ★★


旅屋おかえり画像

2012年04月
集英社刊

(1400円+税)

2014年09月
集英社文庫化



2012/05/24



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「旅屋おかえり」、何と風変わりな題名でしょうか。それでも“旅”という言葉が付いている限り、常に心誘われます。
旅屋」とは仕事の内容。そして「おかえり」とは、芸名=丘えりか(本名=岡林恵理子)を縮めた主人公33歳の愛称。
北海道は礼文島育ち。島を出てあちこちへ行ってみたいという思い捨て難く、上京してアイドルデビューしたものの、所属事務所はジリ貧。所属タレントは今やおかえり唯一人、そして仕事も彼女がレギュラーを務めるTVの旅番組「
ちょびっ旅」唯一つ、という状況。
それなのにあぁ、ふとしたことがスポンサーの怒りを買い、番組は突然に打ち切り。所属事務所もおかえりも路頭に迷う寸前という状況に追い込まれます。
そこに持ち込まれたのが、難病の娘に代わって旅をしてきて欲しいという華道家元夫人からの依頼。そこからおかえりの“旅屋”稼業が始まる、という次第。

いつもながらに、そしていつも以上に、ストーリィが巧いなぁ、原田さん。“旅屋”という発想、何と心憎いことか。
旅、大好きです。おかえりのみならず、旅立つ前、計画を練る段階から、そして本ストーリィが始まる前から、心がワクワクします。
 
意外にも“旅屋”の仕事は幾件も持ち込まれますが、本書において詳しく語られるのは、上記の初仕事と、この仕事にかけるおかえりの覚悟の程を試すような重たい仕事の2つのみ。
その2つの仕事がまた、心を洗うような感動に満ちています。
旅好き、気持ちの好い感動的な話がお好きな方に、お薦め!

     

19.

●「生きるぼくら」● ★★


生きるぼくら画像

2012年08月
徳間書店刊

(1600円+税)

2015年09月
徳間文庫化



2012/10/11



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高校でひどいイジメにあって以来ヒキコモリ4年という麻生人生、24歳。ある日部屋から出ると、母親の置手紙と年賀状の束。その中から、かつて好きだった祖母の「余命数ヶ月」という言葉を見つけて人生は、慌ててとりあえず祖母の住む蓼科へ。
何とか祖母の家に辿り着いた人生でしたが、そこには人を警戒する目で見る若い女の子と、認知症になって人生のことも判らなくなってしまった祖母が。
ひとまず祖母の家に落ち着いた人生は、ここで認知症の
マーサばあちゃんこと中村真朝、自分も孫(?)と名乗り対人恐怖症だという中村つぼみと3人で暮らし始めます。

それぞれ居場所を失ってしまい祖母を頼って蓼科にやって来た2人=人生とつぼみが、逆に祖母を支える役割を担いつつ、祖母がずっと続けてきた“自然なままの田んぼ”を継いで初めての稲作仕事に奮闘するという、新生ストーリィ。
新鮮さ、清々しさ、面白さ、そして極めつけの気持ち良さ、こうしたストーリィ展開については原田マハさん、本当に上手い。
読み終えた時には、主人公たちと一緒に何かをやり遂げた達成感、そこから来る充足感、気持ち良さでいっぱいになることでしょう。
主要な登場人物3人、麻生人生、中村つぼみ、中村真朝のキャラクターがすこぶる魅力的なのは勿論、その3人を支えて活躍する
志乃さんをはじめとして、皆気持ちの良い人物ばかり。
気持ちの良いストーリィを楽しみたい方には、お薦めです。


1.母の失踪/2.梅干し戦争/3.蓼科へ/4.さよならケータイ/5.一粒の籾/6.ぼくらの田んぼ/7.緑響く/8.豊穣の時

             

20.

「ジヴェルニーの食卓 Une table de Giverny ★★☆


ジヴェルニーの食卓画像

2013年03月
集英社刊

(1400円+税)

2015年06月
集英社文庫化



2013/04/18



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山本周五郎賞を受賞した楽園のカンヴァス」に連なる、美術(絵画)もの。
絵画好き、特に印象派周辺が好きな方なら、引き込まれてしまうに違いない短篇集です。
登場するのは、
マティス、ピカソ、ドガ、ゴッホ、モネ等々、いずれも巨匠と言われる画家ばかり。
各々年老いた姿だったり若い無名の頃だったりと違いはありますが、それによってストーリィの魅力に違いが生じることはありません。老境に達した画家であれば老境なりに、若い頃であれば若い頃なりに彼らの魅力が描かれます。

本短篇集の秀逸なところは、語り手として画家の身近に仕えた等の女性たちを設定したところ。
画家として崇拝する一方で人間的に画家を支えた存在。主観的ではなく、かといって第三者的でもない。そうした語り手と画家の距離感が絶妙なのです。その結果としてそこに、極めて人間的な画家たちの姿が鮮やかに描きだされているのですから。
まるで絵画の裏側に隠されていた世界に足を踏み入れるような、ゾクゾクする気分になります。
各篇の印象はいずれも、品格があって優美でしかも芸術的。どれも美しい物語です。
特に
「うつくしい墓」「ジヴェルニーの食卓」が印象的。そして毛色の少し異なる「タンギー爺さん」には、新しい芸術が時にもたらす残酷さを感じさせられて忘れ難い。お薦め。

「うつくしい墓」に登場するのはマティスと親友ピカソ。語り手はマティス晩年の頃に僅かの間家政婦を務めた女性マリア。彼女が当時を回想するという形で2人の画家を描き上げた篇。
「エトワール」は、米国出身の女性画家メアリー・カサットを語り手として、若い頃のドガと踊り子との関係を語った篇。
「タンギー爺さん」は、若い頃無名だった画家たちを応援した画材商兼画商ジュリアン・フランソワ・タンギーを、その娘がセザンヌ宛てに出した数回に亘る手紙を通して描き出した篇。芸術とは、本人にとっては何とも幸せで、家族にとっては何とも残酷なものであることか。
「ジヴェルニーの食卓」は、「睡蓮」の連作画に晩年挑んだモネを、彼の二番目の妻アリスの連れ子であるブランシュの目から描いた篇。何とも敬愛に満ちた篇です。

うつくしい墓 La belle tombe/エトワール L'etoile/タンギー爺さん Le Pere Tanguy/ジヴェルニーの食卓 Une table de Giverny

                          

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原田マハ作品のページ No.4

   


   

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