●今月の1枚 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997

December

鬼束千尋/the ultimate collection
タイトル通り鬼束ちひろのシングル・ヒット集。トーリ・エイモスに触発されて音楽をはじめたという彼女。その息づかいさえも聞こえてきそうな繊細なヴォーカルは、人の足を立ち止まらせるだけの吸引力を持っている。平井堅の「楽園」は名曲だと思うが、鬼束ちひろの「月光」もバラードとして異彩を放っている。この1枚で彼女のヒット曲を聴いていると、いろいろなアーテヒストのいる中で、独特の存在感を持っているアーティストだと思う。持っていてもいいアルバムだ。


Nobember

東京事変/教育
椎名林檎のニューバンド「東京事変」のファースト・アルバムだ。バンド・サウンドが気持ちいい。椎名林檎のヴォーカルが暴れまくる。彼女自身「好きなことをやっただけ・・」というように、彼女の音楽を聴いていると彼女の意思が伝わってくる。最近の音楽は一般的に、スケールが小さくなって、破壊力がなくなっているだけに、彼女の音楽の強さが特に感じられるし、これがロックの原点だと思う。

October

V.A./YOSUI TRIBUTE
井上陽水の作品を、多くのシンガーがそれそれぞれの個性でカヴァーしたアルバムだ。やはり、聞けば聞くほど、陽水の作品の素晴らしさが光る。以前、NHKの音楽番組で井上陽水とのセッションしたUAが、70年代の陽水の初期のヒット曲「傘がない」を歌っのを聞いて感銘を受けた。どちらかというと古臭い内容の作品であるが、彼女が現代に蘇らせすばらしいものとしたEvery Little Thingの持田香織の「いつのまにか少女」は、このアルバムの中でも素晴らしく、彼女が単なるヒット・シンガーではないのを再認識した。ミスチル櫻井(=BANK BAND)の歌う「限りない欲望」や、ユーミンの歌う「とまどうペリカン」 などヴァラエティに富んで楽しめるアルバムだ。


September

Elvis Costello/THE DELIVERY MAN
約2年前にリリースした『ホエン・アイ・ワズ・クルーエル』に続くバンド・アルバム。アメリカのミシシッピーでレコーディングし、アメリカのルーツ・ミュージックの匂いも感じられる。エミルー・ハリスも参加。エルヴィス・コステロほどシンプルで、ポップな音楽を演る人はいない。デビュー・アルバム『マイ・エイム・イズ・トゥルー』その姿勢は一貫している。美人、ジャズ・シンガー&ピアニスト、ダイアナ・クラールと結婚し、ますます充実の境地か!「This record is for my wife」歌詞カードの最後のページに記されているコメントがこのアルバムのすべてを物語るようである


August

Ray Charies/Genias Love 〜永遠の愛
レイ・チャールズが先日、この世を去った。フランク・シナトラ等と比肩するアメリカを代表するアーティストである。あまりにも大御所なので、そんなに意識して聞いたことはなかった。8月25日にトリビュート・アルバムが出たので購入した。ノラ・ジョーンズからB.B.キングまで錚々たるメンバーが参加したレイ・チャールズとの共演作を集めたアルバムである。収録されている曲も名曲ばかり。朗々と歌う彼のヴォーカルは時にはすすり泣いているようにも聞こえ、彼の素晴らしさを再認識した。特にダイアナ・クラールとのデュエットの「ユー・ドント・ノウ・ミー」 にうっとりさせられた。
July

Brian Wilson/Gettin' in Over my head
大ベテラン、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンの約6年ぶりのソロ・アルバムである。この手のアルバムは当たりかはずれどちらかであるが、じつは期待どおり、なかなか良かった。私がはじめて買ったレコードはじつはビーチ・ボーイズで「カリフォルニア・ガール/サーファーガール」等の入った4曲入りコンパクトLPで、吹いてくる風に“塩の香り”が感じられるいままでにはないサウンドにはドギモを抜かれた。いつ聞いても決して古くはないオリジナリティ溢れるサウンドである。
この新作を聴いてみると、そのビーチボーイズ・サウンドが35年たったりこうなろうであろうという姿そのものと感じられる。サーファーがボードをかかえて海から上がってくる様子を、白髪のまじったアロハシャツを着た一人の男がじっとたたずんでいるような光景に似ている。 ブライアン・ウィルソンとヴァン・ダイク・パークスの「オレンジ・クレイト・アート」も名盤であるが、このニューアルバムも素直に「あ、いいなあ」と言える内容で、言い換えれば“世界が見える”ということなのかもしれない。


June

DR.JHON/N'AWLINZ
メイヴィス・ステイプル、ネヴィル・ブラザーズ参加ということでこのアルバムを買った。彼の愛し、音楽のベースとなっている「ニューオリンズ」をテーマにしたアルバムである。そして。ロックとかソウルとかジャズとかを超えたまさにドクター・ジョンの音楽である。トラデショナルな「聖者の行進」や「セント・ジェームス病院」等を含め、彼のゴキゲンなピアノや、ヴォーカルがフューチャーされ、思わず彼の音楽に身をゆだねて眠ってしまいたい気持ちになってくる。(皮肉なことに国内盤はCCCDでこのアルバムを買うような人間は不用意なコピーをしたりするのだろうか?)


May

CANDY STATON/THE BEST OF
ブリジストンのCFで「サマータイム」が使われている。ホールディング・カンパニーのシンプルな演奏にジャニスのシャウトする声が響き渡る!!音楽は時代に関係なくソウルであり、スピリットであるとつくづく思う。キャンディ・ステイトンのFAME時代のベスト・アルバムが出た。まさに、シンプルな演奏とバックコーラスに彼女のシャウトするヴォーカルが心を突き刺すという感じだ。ソウルの真髄=リアル・ソウルと言える。特の私のの好きな曲M-12「スタンド・バイ・ユア・マン」は絶品でこれを聴くだけで充分だ。


April

DIANA KRALL/THE GIRL IN THE OTHER ROOM
今や、ジャズ界のスーパースター、ジャズ・シンガー&ピアニスト、才色兼備ダイアナ・クラールのニュー・アルバムだ。 なんと、なんと、エルヴィス・コステロと結婚し、まさに、このアルバムは彼とのコラボレーションの濃いアルバムとなっている。そして彼女を見出したというトミー・リピューマとの共同プロデュースでもある。コステロの曲の他に、ジョニ・ミッチェル、トム・ウェイツ等の作品も取り上げ、彼女の華やかさと、作品の良い意味でのシブさがブレンドした楽しめる作品だ。特にエルヴィス・コステロの作品「オールモスト・ブルー」は聴き応えがあり、作品の良さも光る。


March

ERIC CLAPTON/ME AND MR.JHONSON
「音楽とは継承である。」 とあるアーティストが言っていた。クラプトンのこのアルバムは、まさに、この言葉を体現したとも言えるアルバムだ。彼の敬愛するブルースの巨匠「ロバート・ジョンソン」の前で、同じ格好をして座っているクラプトンのジャケットが象徴している。今、この時代にブルースのアルバムを正面切って発売できるのもクラプトンくらいだ。我々がブルースの良さを知るようになったのも、こうしたロック・ミュージシャンのお陰であるし、新しい形でブルースのエネルギーを伝えてくれたのも、いわばホワイト・ブルースである。そういった意味で価値あるアルバムといえる。


Feburuary

Sarah McLachlan/afterglow
このアルバムに収録の作品「フォールン」でグラミー賞女性ポップヴォーカル賞に輝いたのが聴くきっかけになった。サラ・マクラクランは1968年カナダ生まれ、このアルバムがオリジナルで5作目、約3年ぶりの作品になる。この3年間で看病の甲斐なく最愛の母が亡くなり、そして結婚して母となり、人生の上での大きな変化を乗り越え生み出されたアルバムだ。例えば、ジョニ・ミッチェルをマイルドにしたような、しっかりとした包容力を持ったヴォーカルとメッセージがこころに伝わってくるという感じだ。
平原綾香も彼女のヴォーカル・スタイルを下敷きにしているのではないか??と思えてきたりもする。


January

加藤登紀子 ゴールデン☆ベスト/シングルス
メーカー各社より発売の「ゴールデン☆ベスト」シリーズを買った。最新デジタル・リマスターで代表曲をコンプリートしたといった内容だ。加藤登紀子、大橋純子、平山美紀、石川セリ、中原理恵、野口五郎、ザ・タイガース、桂銀淑、テレサ・テン、内藤やす子、桃井かおり・・・。どのアーティスト、作品も同時代においては気になっていたり、好きであった作品であるが時代をおいて聞いてもると冷静にそのポテンシャルとかを違った意味で感じ取ることが出来る。作品としては、やはり“筒美京平” で、彼のメロディーは好きであり、日本のポップスの中で果たした役割はスゴイと思う。ヴォーカリストでは、大橋純子。彼女のヴォーカルは今、聞いてもも古くないし、聴いていて気持ちいい。 アーティストでは加藤登紀子。歌手としてコンスタントに活動を続け、彼女の世界を築きあげてきた力は素晴らしい。加藤登紀子の「シングルス」は2枚組CDで、彼女のデビュー曲から「百万本のバラ」まで年代順に収録したものであるが、特に2枚目が素晴らしく彼女の充実度が感じられる。特にM-1の「時代おくれの酒場」は、特に引っかかった作品ではなかったが、今、聞くと、我々の年代の“男の気持ち”を代弁してくれているようで、特のサビの部分の「あー どこかに何かありそうなそんな気がして俺はこんな所にいつまでもいるんじゃないと」というフレーズにはシビれる。


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