DECEMBER |
Rod Taylor/Rod Taylor
現在、1枚だけ残して自分の持っているアルバムをすべて売り払はなければいけないという状況を仮定したら最後に残るのはこのアルバム
であると言っても過言でははい。今回、ワーナーの「名盤探検隊」のシリーズの一作品として再発された。ロッド・テイラーは1971年にデビット・ゲフィンとエリオット・ロバーツによって創立された
アサイラム・レコードより1973年にデビューした。デビューのいきさつは「イッツ・ア・ビューティフル・デイ」のアルバムに数曲提供したのが
キッカケということである。詳しくは伊藤秀世さんの解説に熱く語られている。
1973年に発売されたアルバムであるが、ロックの持つ力強さ、多様性、ダイナミズム、味わい、すばらしさ等々すべて凝縮されたアルバムだ。 参加ミュージシャンも素晴らしくジェシ・デイヴィス、ジョニ・ミッチェル、ボニー・ブラムレット、ライ・クーダー、アンドリュー・ゴールド、 ビル・ペイン等に支えられ、飽きのこないロックの神髄を聞かしてくれる。
SEPTEMBER |
Elvis Costello with Burt Bacharach
/Painted From Memory
エルビス・コステロとバート・バカラックの出会い、意外なようでもあり必然的なようでもある。そんな魅力に取り憑かれて購入した。
しかも、バ−ト・バカラックのカバー曲をコステロが唄うのではなく、すべて書き下ろしの新曲だという。
たまたま同じタイミングで買ったATLANTIC SOUL/R&B VINTAGEシリーズの「R.B.グリーブス/RB.グリーブス」、
「パティー・ラベル&ブルーベルズ/ドリーマー」にも「ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME」が入っていて1960年代から
現役で活躍し、幅広く多くに人に親しまれているバカラックの偉大さを知ることができる。一方、エルビス・コステロの音楽性というものは
「THIS YEAR’S MODEL」のちょっと内股にカメラを抱えた前向きにつんのめったジャケット写真があるが、すべてそれに集約されているような
気がする。常に音楽に対して前のめりの関係性を保ち走り続けている危なっかしさが魅力的である。パンキシュな部分と裏腹のポップさと微妙な
バランスがコステロの音楽性である。
そんな2人のアーチストが向かいあうとどうなるのであろう?音楽的には壮大なるストリングスを背景に朗々とコステロがバラードを唄うという
な音作りであり、身を委ねてしまいそうなちょっと危険な安堵感を感じさせるものである。スノッブでない大人の音楽の方向性のようなものを
示しているアルバムだと思う。
OCTOBER |
Lauryn Hill/Miseducation
ローリン・ヒル。聞き慣れない名前だった。輸入盤店でも評判になっており、また、ソニー・ミュージックでもプッシュしているので
気になって買ってみた。久々に スピリットを感じるソウル・アーチストの出現だと感動した。60年代のソウルの持っているテイストを
1990年代の音楽シーンの中で表現している。それでいて、ブラック・ミュージックの辿ってきた歴史、ヒップ・ホップ、ラップ
等の流れも充分に感じさせてくれる。サウンド作りもアナログ・レコードのちょっとチープな雰囲気をうまく演出し、また、クラブのアンダー
・グラウンドな感じもある。最近の懐古的な若者文化もよく象徴している。やはり、コンクリート打ちだしの建造物がもはや新鮮なイメージ
が無くなってきて、何十年も経った古い朽ちかけた建物に新しさを感じるように人間が背伸びして作り上げててきた作り物がニセ物に
見えてくるのに似ている。彼女の所属していたフージーズのアルバム等も改めて聞いてみたくなる。
SEPTEMBER |
SHERYL CROW/THE GLOBE SESSIONS
この秋を飾るにふさわしいシェリル・クロウのニュー・アルバムだ。通算第3作目になる。グローブ・セッションズというタイトルが示すとおり
ライブ仕立てのアルバムだ。いつ聞いてもなびのびとした彼女のヴォーカルは魅力的だし、サウンド作りの凝らないワイルドな感じ、
そしてギターのカッテング一つとってみてもカッコいい気取りのないサウンドである。都内の輸入店のセールス・チャートも1位であり、こうした
アーチストが売れるのは嬉しいことである。最近の矢沢もカッコいいと思うが、やはり、音楽に向かう真摯な姿勢であると思う。
AUGUST |
THE MARVELETTES/THE ULTIMATE COLLECTION
モータウン創立40周年記念として発売されたベスト・コレクションだ。1960年代はガールズ・グループ全盛の時代、ダイアナ・ロスと
シュープリムスを代表格として、マーベレッツ、マーサ&ヴァンデラス、シュレルズ、等々のアーチストを輩出した。ベリー・ゴーディーにより、
自動車の町、デトロイトで産声をあげた「モータウン」であるが、黒人音楽をよりソフィティスケイトし、ポップスのフィーリングを持ち込んだ。やはり
何といっても優秀な作家陣を抱えていたから、これほど素晴らしい楽曲を世に輩出できたのだろう。アトランティック・レコードも
同じく今年で50周年、オーティス・レディング、アレサ・フランクリン等の本格派のアーチストを世に送った。黒人のレーベルもいろいろあったが
いまだに基盤がしっかりしているのは、アトランティック、モータウンぐらいなものだろう。その後、黒人音楽もさらにソフィティスケート
されてフィラデルフィア・サウンドになったり、ポップすなったり、片方では、ラップ、ヒップ・ホップになったりしたが、いちばん
輝きを持っていたのは1960年代のソウル・ミュージックだ。そうて、当時のガール・グループは現代で言えばHIROMIXの写真に通じるような
ザラついた声質でゆるかに腰を揺らして歌う様子は、まだ精神的に豊かだった時代を思わせる。
レコード会社も生き物である。アーチストとともに育ち、また、それを支えるスタッフとともに生きる。そして、それらが失われた時に
衰退していく。40年やってこれたということは、多くの幸運に恵まれていたのであろう。
最近気になるシングル盤。以前のようにチャートを駆け上ることはなくなったが「槇原敬之/HAPPY DANCE」は曲である。
しばらく、活動を停止していたり、作品的にもいいものが少なかったが、そうしたトンネルを抜けて出来上がった作品だ。
聞いていて心地よいしなんとなく体が揺れるという感じだ。
JULY |
EDDI READER/ANGELS&ELECTRICITY
元「フェアグラウンド・アトラクション」の女性ヴォーカル、エディ・リーダーのニュー・アルバムだ。
記憶によるとソロになってから第3作目で、過去のアルバムも非常に完成度の高い内容であった。
女性ヴォーカルも色々なスタイルがあるが、彼女は知性的であり、隅々まで神経が行き渡っており、淡々とした陰影のある独特の
ニュアンスが際だっている。このアルバムはギターを中心としたアコースティックなサウンドをバックに、ナチュラルなヴォーカルの
心地よさがある。エンヤなどの、多重録音で作り上げられたサウンドとは対称的であり、イギリスの匂いを感じさせながらも独特の彼女
の世界を感じさせる。彼女の音楽は夏の暑い中、ビルの中でクーラーをギンギンに効かせて聞くのにはピッタリの音楽とも言える。
JUNE |
SIMPLY RED/BLUE
「フォーキー」という言葉を最近よく聞く。また「ブルー・アイド・ソウル」という言葉も最近聞くようになった。
シンプリー・レッドの音楽はイギリスのブルー・アイド・ソウルと呼ぶにふさわしいサウンドだ。
ミック・ハックネルのヴォーカルは洗練されつつも黒人の持つグルーブを感じさせ心地良く伝わってくる。
1985年「ピクチャー・ブック」が発売され、1986年には「ホールディング・バック・イヤーズ」が全米チャートで
1位となり脚光を浴びた。このアルバムは「ベスト・アルバム」をはさんで通産6作目、全作のオリジナル・アルバム「ライフ」
から、約3年振りのアルバムになるがデビュー以来一貫したクオリティーの高いサウンドを聞かせてくれる。
「ブルー」というタイトルのアルバムはジョニ・ミッチェルのアルバムにもあったが、時代とサウンドの違いはあるにせよ
ジャケットや音の持つテイストが根っこの部分ではつながっているのではないかと思わせるような何かを感じさせてくれる。
MAY |
SOUL ASYLUM/CANDY FROM A STRANGER
「ソウル・アサイラム」のコロンビア・レコードからの第3弾のアルバムだ。
1992年発売の「GraveDancersUnion」は子供が裸の後ろ姿で歩いているジャケットが印象的であった。
このアルバムはまた全米チャートのベスト10以内に長い間、チャート・インしていたと記憶している。
彼らの音楽性は基本的に変わらない。古くて新しく、また、イギリス的であり、アメリカ的でもある。
ギターの音も小気味よく、ヴォーカルも屈折していて批判的であり、大人のロックという味を出している。
*SOUL ASYLUM HOMEPAGE:URL=http://www.soulasylum.com/
APRIL |
UA /AMETRA
UAの「11」に続くオリジナル・アルバムということで自然と期待がかかる。
彼女はこの「11」で外資系のレコード屋さんから話題となり、一躍脚光を浴びるが、すぐに出産のために休養に入り、その間にライブ・アルバムを一枚発売する。したがって この「アメトラ」は2年振りぐらいの
アルバムとなる。
彼女も母となり随分とイメージが変わり、女性らしさを増して最近の映像を見たりしていると自信のようなものさえ感じる。
余談だが「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」を見ていたら、彼女は昔大阪で「ダウン・タウン」の追っかけをやって時期があって松本人志との会話はけっこう笑わせ
られた。このアルバムはシングル曲「悲しみジョニー」、「ミルクティー」、マイケル・フランクスのカヴァー曲「アントニオの歌」等が
彼女らしい個性溢れたナンバーが収められている。「悲しみジョニー」は大ヒットこそしなかったが名曲だと思うし、憂歌団プロデュースの
日本語による「アントニオの歌」もなかなか面白い出来である。しかし、全体を聞いてみるとジャズぽいナンバーはまだまだカッコだけで
歌っているようで、力量不足かなと感じてしまう部分が見られる。
子供を生むということは女性にとって自然な形であるが、それをまったく自然な形として歌い続けていられるというのは保守的は日本の音楽
界の中では新しいスタイルであると思う。
このアルバムは 彼女にとってのこれからの力が試されるアルバムであり、是非本格的シンガーとして頑張って欲しいと思う。
*UA Information:URL=http://www.aloha.co.jp
MARCH |
PETER CASE /full sevice no waiting
カリフォルニアをベースに活動しているシンガー・ソング・ライター、ピーター・ケースの
通算6作目になるニュー・アルバムだ。
今年のグラミー賞でボブ・ディランがアルバム・オブ・ザ・イヤーを獲得して話題になったが
彼は ボブ・ディランの再来かと言われてゲフィン・レコードよりデビューした。
ゲフィンから ヴァンガ−ド・レコードに移って 今回が3作目になるが、音楽的には一貫して
おり、シンプルなアコースティック・ギターを中心としたサウンドでアルバム全体を通して
聞いていると、素直に伝わってくるものを感じる。
今時、こんな飾り気のない音楽が通用するのかと思えるが、アメリカはこうしたアーチストが
音楽をやっていける奥深さがある。
詳しくは こちら
エリック・クラプトンの「フロム・ザ・クレイドル」以来の久々のニュー・アルバムが 発売になり期待していたが、余りもの軽さにちょっとガッカリ。
FEBLUARY |
PEARL JAM /YIELD
パール・ジャムの96年「NO CODE」から約2年振りの5作目のニュー・アルバム。
3作目の「VITALOGY」は 日本でもかなり話題になった。グランジなどと呼ばれた
時期もあったが「R.E.M」「R.H.C.P.」などと共に、アメリカのロック・
シーンを牽引している代表ともいえるバンドだ。時代に左右されないロックの神髄をきっちり押さえ、
またロック特有の攻撃性も兼ね備えている。ノイジーでもあり、時には、異様な輝きを放つ
ギター・フレーズ、時には重苦しくうねるリズムこれが90年代最後のロックの姿なのか。
JANUARY |
NICK LOWE/DIG MY MOOD
ニック・ロウの「インポッシブル・バード」以来の約4年振りのニューアルバムだ。 このCDは メジャー・レコード会社からではなく イベンタ−の「スマッシュ」の サウンド・サーカスレーベルからの発売だ。原盤は DEMON RECORDS。 特殊仕様(ボックス仕様)で、ステッカーの別付特典もつき¥2,300というのも 驚きだ。2月の末から来日コンサートもある。 新譜のレコードもこうした形の発売ができるようになったということは 画期的ともいえる。
とにかくやさしく聞けるアルバムだ。アコースティックでじっくりと歌われる彼のメロディー には 無条件で心を許してしまいそうな気分にさせられる。 カバー曲の一曲「フェイルド・クリスチャン」はヘンリー・マックロウの曲であるとのこと 何かルーツのようなものをを感じさせられる。
70年代活躍していたアーチストの訃報をこのところ聞かされてさみしい。 ロバート・パーマー、ニコレット・ラーソンご冥福をお祈りします。