一枚の地図から

 一枚の手書き地図が出てきた。関東地方「道の駅」ルート図だ。
なにが切っ掛けとなったかはもう忘れたが、「道の駅」を訪問してスタンプを押すと言う単純な行為に夢中になった時期があった。それに拍車が掛かったのが「スタンプラリー」と言うイベントに参加したことだろう。公式のスタンプブックを購入し指定された期間中に各駅のスタンプを押して回るというなんとも生産性の低い催しである。でもそれにハマった。
当時住んでいた関東地方の「道の駅」をせっせと回りスタンプブックにスタンプが埋まることが自己満足を満たした。関東が終わると北陸にまで触手を伸ばした。だがそこで気づいたことは、「道の駅」そのものに何か興味がある訳ではなく、そこへ行く行程が楽しみとなっていたことである。目的と手段が逆転した訳だ。
  翌年また「スタンプラリー」が開催された。普通に考えるといかに効率よく早く終わらせるかと言うことになろうが、それでは行程の楽しみも半減する。何かもっと楽しいことは出来ないものかとしばし思案しているときに、ふと目にした物があった。鉄道旅行で「最長片道切符の旅」という事をやっている方々がいらっしゃる。簡単に言えば日本全土のJR線をなるべく長く一筆書きで乗って行く旅である。同じ路線、同じ駅は2度通らないで行ける最長ルートで切符の有効期限内に北海道から九州まで行くというこれまた悠長な旅である。これを応用できないものか。
  一筆書きで車を走らせると言うと某TV番組のソーラーカーが思い浮かぶが、私はやはり「道の駅」をからませたい。同じ道路は走らずに「道の駅」を一筆書きで巡る。おお、それは面白そうではないか。思い立つと早速やってみたくなる性分なのでとりあえずその年のスタンプ帳を入手してルートの検証に入った。スタンプ帳の裏表紙に関東全体の「道の駅」配置地図が載っているので、まず自宅を基点に各駅を一筆書きで結んでみた。次に実際の道路地図に照らし合わせて現実的な一筆書きルートを探った。これが結構時間のかかる作業であったがまた楽しくもあった。だがどうしてもきれいな一筆書きにはならない。行き止まりの道に駅があったり、気力と体力を激しく消耗するような非現実的な遠回りルートは遠慮したりした。結局そのルートで実際に走り回り完走した。意外に達成感はあまりなかったが、楽しさと馬鹿馬鹿しさが入り混じった妙な感覚で終えたことを記憶している。
 それから早5年、住居も鳥取県に移りもうそんなこともすっかり忘れ去っていたのであるが、当時のルート図が何かの拍子に目の前に現れたのである。悪い虫がムクムクと目を覚ましたようである。

関東道の駅ルート図

自作関東地方「道の駅」ルート図。このルートで関東を一回りした。

スタート・ゴール

スタート地点とゴール地点は同じ道の駅だが、車は違ったと言うオチ付き。