豊作が続いたことと、米の在庫がだぶついていることで、お米の価格が急激に下落しつつありまあす。
不景気が続く中、毎日食べるお米の値段が安くなるのだから、消費者にとってはいい事のように思えますが、本当にそうなのでしょうか?
お米が安いとどうなるのでしょう。
まず日本の農業の主たる稲作農家は農業だけで生活していくことが出来ません。よって、他にもう一つ職業に就く必要が出来てきます。
当然、稲作りにかける時間が短くなります。しかし最近の稲作技術は進歩していて、いろいろな機能を持つ農薬や化学肥料によって、時間をかけなくともお金をかければある程度の生産量は維持できます。
あるいは田んぼを一定の人に貸して、大規模稲作を行うという方法もあります。ただその場合、おそらくさらに多量の農薬が必要になるでしょう。
安いお米が手に入れられる代わりに日本の水は汚染され、土は死に、食べ物には残留農薬の不安が付きまとうわけです。
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ここのところ農業をやっている仲間たちと酒を飲んだり、語り合ったりして感じることは、お米の生産はすでに職業として成り立たなくなっていると言うことです。
ことはお米だけにとどまりません。もちろん一部の産地、産物では十分農業生産が職業として成り立っているところもありますが、大部分は「生産」それ自体が職業として成り立たなくなっているのではないでしょうか。
だいぶ前から言われている農村の過疎化などは、仕事がきついからだの、町に遠くて不便だからだの言われていますが、結局は農業が家族を養っていくための職業とはなり得ないってことではないかと思います。
中にはお米で十分な収入を上げている人もいます。しかしそれは「お米の生産」で成功しているわけではなく、「生産+販売」で成功しているわけで、いわば「商売人」として収益を上げているわけです。
いくら安全な有機米を作ったとしても、自分で販売できる「商売人」としての力がなければ、お米を作り続けることが出来ないのです。
マスコミなどでこの状況をビジネス・チャンスと捉え、農民が商売人たらんことを煽る傾向がありますが、そういった農業で成功できる農家はごく一部、あとの大部分の農家は他に職業を持って、時間の代わりに農薬・化学肥料を多用して食べ物を作って行くわけです。
こういった状況では安全な農産物なんてものは本当にごく一部分、付加価値をつけて売るためだけのものになってしまうのではないでしょうか。
しかしなんですなあ。主食であるお米を生産することが職業として成り立たない社会って本当に大丈夫なんでしょうかねえ。
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