新保屋の夜

 まぁ、しかしあれだね。

 金沢の人は誰にしても、かなりもてなし好きである。「金沢に来たからには、心ゆくまで楽しんで、金沢の町を大好きになって帰ってね」って感じがひしひしと伝わってくる。

 そういうのは金沢市経済部観光課が無料で配布している、金沢城下町見て歩きMAPからも見て取れる。(以下抜粋)
 『観光ボランティア 「まいどさん」(無料) 名所から穴場まですみずみまで紹介します。金沢人のやさしさにふれてみませんか。』
 …こんなサービス、他の都市ではなかなか無料でやっていないと思うんだけど…。

 とにかく、金沢はそんなところです。


 さて、新保屋。

 夕食前にお風呂にはいる。お世辞にも綺麗とは言い難い、こぢんまりとしたお風呂。でも、水は地下水を汲み上げて沸かしている。

 金沢は雪が多いので、道路という道路には消雪パイプが埋設されている。地下水を汲み上げて消雪パイプを使って道路に撒き、雪を溶かしているのだ。…しかし、最近は地下水を汲み上げすぎてあちこちで枯渇、地盤沈下などがおきているらしい。

 地域一帯が枯渇してしまったのにも関わらず、新保屋の下からは今でもこんこんと地下水が沸いているというのが、この宿の自慢らしい。 


 よくよく暖まってから、18:00にお夕食。

 これまでご存じの通り、ノブとの旅は野宿ばっかりだったから、旅館のごはんってどんなものが出てくるのか、あまり知らなかった。

 今回は割烹旅館だから、普通の旅館に泊まるよりも料理に期待がもてる。
 小松さんも「あそこは、金沢の人もよく食べに行くからねぇ。結納とかにも使われるし、由緒正しいよぉ。」と、言っていたことだし、いやが上にも期待は高まるじゃないっ。

 わくわく。

☆先付け→のれそれ、ホタルイカとネギの酢味噌合え、山芋とワサビの茎を和えたもの
☆つまみ3品→イカの塩辛、甘エビを煮付けたもの、アスパラ、玉子焼き、穴子のゴボウ巻
☆刺身→甘エビ、マグロ、イカ、ぶり
☆ズワイガニのボイルしたもの(半身)
☆焼き物→ブリカマ焼き
☆治部煮→スタンダードな鴨の。味が異常に濃いぃ。しょっぱすぎる。
☆ウナギのかぶら蒸し→泡雪のような大根下ろしが実にウマイ!
☆天ぷら盛り合わせ→キス、エビ、茄子、獅子唐、イカ
☆水菓子→オレンジと苺

 品数的には、一般的な旅館よりやや少ないかな…。
 味の方は期待が大きかっただけに、やや拍子抜けした。まずくはないけど、とびきり美味しくもない。加賀料理を食べたかったのに、出てきたのは単なる和食で「何だよ、こんなのどこの料亭でも食べれるじゃん!」的なものばかりであった…。

 治部煮は、やはり鴨の方が美味しい。蠣だと、あっさりしすぎるみたい。
 天ぷら盛り合わせの中に入っているキス天の衣が湯葉で出来ていて、それの食感が良く、美味しかった。後は特筆すべき事なし。

 水本からのお遣いの品を渡したのが良かったのか、冷酒2合をサービスしてくれた(笑)。


 宴会があるらしく、階下はやたらと盛り上がっている。仲居さんは「町内の婦人会の集まりなんですよぉ。う゛ふふ(この人はよく含み笑いをする人である)」なんて言っているが、時折聞こえてくるカラオケは男の人の声ばかり。しかも、原曲が分からない演歌。…これだけ外して唄うのって、難しいと思うんだけどなぁ。すごいワザである。

 金沢の夜はかくもパワフルに過ぎていく…。

 あたしたちは飲み過ぎて(サービスの他にも散々お酒を飲んでいたので)、宴会がいつ引けたのか知ることもなく、気を失うようにして寝ちゃったけどね…。

←back  next→ 

☆ 00年2月 金沢旅日記目次
1 大丈夫か?ほくほく線  2 ごりや     3 難読の風情
4 まいどさん活躍     5 新保屋の夜   6 お持ち帰りとお詫びと猫
7 小京都を考える     
EXIT!