1 坊ちゃん気取り

 雨のしまなみ海道を、ノブはがんがん飛ばし、本日宿泊予定の愛媛県松山市「川吉別荘」を目指す。
 宿に着いたのは、19:00。着いてすぐに夕食。

 量より質、といったごはんで、ノブは腹8分目ぐらいだったらしい。
 手をかけた料理が多かった。メニューは、以下の通り。
☆先付け→サザエの壺焼き、杉の皮にまいた鯛とキノコを巻いた蒸し焼き、鯛の山椒味噌焼き等
☆鯛子と蕗の煮物
☆たこ酢(…と言っても、ポン酢で頂く)
☆刺身→鯛(味が濃くて美味しい)、マグロ、イカ、甘エビ
☆しんじょう(山芋に人参、小エビ、キクラゲが入っている)
☆伊予牛のステーキ
☆天ぷら→獅子唐、茄子、蓮根、カボチャ、蟹
☆茶碗蒸し
☆炊き込み飯(小エビ、小柱、山菜)
☆香の物
☆水菓子(メロン)


 食べ終えて、すぐに「道後温泉」に入りに行く。
 道後温泉は、別府・草津と並ぶ日本三大温泉の内の1つ。

 でも、由緒正しさから言えば、日本一だろう。何と言っても、日本に文字が伝わる以前から、ここの人たちは温泉に浸かっていたらしいから。

 うんちくを見ると、今からざっと3000年くらい前、傷を負った白鷺が湯浴みをしていることで見つかった温泉だということだ(…でも、泉質はアルカリ性単純泉。アルカリ性の暖かい水が湧いているだけなのだ。そんなのでどうして傷が癒えるんだ?!)。

 私たちの泊まった部屋(他は「芭蕉」とか、しゃれた名前だったのに、何でウチらは「三笑」な訳?!)の隣の部屋は「白鷺」の間だったし。

 と、まぁ、それはさておき、夏目漱石の「坊ちゃん」の舞台にもなった「道後温泉」である。

 今晩は遅いので、漱石を偲んで作られた「坊ちゃんの間」や皇族が来た時に使われる「又新殿(ゆうしんでん)」見学などは、明日する事にして、とりあえず入浴だけする(300円)。

 今日入ったのは「神の湯」という大浴場。

 連休中だからか、ものすごい混雑。地元の人(銭湯のように使用している人が多いのだとか)と観光客でごった返している。

 イメージでいうと、世界史の教科書に載っているローマの「カラカラ浴場」に似ていると思う。「おごそか」というよりは単なる「公衆浴場」。

 これだけ有名な温泉なので、どんなにすごいものかと期待していただけに、気が抜けた。

 湯温が高かったし(43度。しかし換気が悪く、ミストサウナ状態になっていたので、体感温度的にはもっと熱く感じる)、すごい混雑だったので、10分くらいで退散。


 さぁ!風呂上がりのビールである。

 道後温泉脇にある「道後麦酒館」へ。
 ここは水口酒造直営のお店なので、期待が持てる。店構えも綺麗だし。

 頼んだのは、坊ちゃんビール(ケルシュビール。日本で一般的に飲まれているビールに近い味)・マドンナビール(アルトタイプ。少し甘味のあるタイプ)・漱石ビール(スタウトタイプ。いわゆる黒ビール)の、地ビール3種。

 …結論から言って、てんで駄目。

 バイトの人が注いでいるから美味しくないんだ、とか、それ以前の問題。旨味が全くない。
 ただ単に、苦みの程度が3段階に分かれている、しゅわしゅわした液体だった。マズイっ。


 宿に帰って、宿のお風呂に入りに行く(23:00)。

 この「川吉別荘」は、昭和40年代に建てられた個人別荘のような雰囲気の宿である。

 調度品なんかもその頃に流行っていたであろうアンティークな感じのもの(ランプや木彫りの人形、古びた地球儀とか…)が多いし、中庭から降り注ぐ光の加減や、部屋の造りなんかも、すべて古き良き昭和を彷彿とさせる。

 ノブが予約したにしては、珍しく当たりの宿(笑)。

 …しかし夜になると、真夜中の学校の理科室の様な体裁を帯びてくる。
 廊下のあちこちに鏡があって、もし、後ろに知らない人の姿が映っていたらどうしよう…とか、いらん事が次々に頭に浮かんでくる。

 早足で廊下を通り過ぎ、女湯へ。

 「個人別荘のような」この宿にふさわしい大きさ。4畳半程の石造りの湯船。
 隣り合わせた大三島出身のおばさまと仲良くなって(「広島 旅日記 その3」参照)、お風呂タイム自体は楽しかった。

 また、早足で部屋に戻ってそそくさと寝た。おやすみなさぁい。


 7:30に起きて、8:00の朝食までの間にお風呂に入りに行く。
 男湯と女湯が入れ替わっているので、昨日ノブが入った「鬼の湯」へ。
 鬼瓦から湯が流れ落ちている。広さはやはり変わらず4畳半くらい。ささっと入る。

 朝食は結構量が多かった。ノブですら残したくらいだ。

 食べ終えてチェックアウトしてから、車を置かせてもらって再び「道後温泉」へ。

 今日は3階の個室休憩所(2階の宴会場のような大きい休憩室だと980円)・2階にある「霊の湯」に入浴する権利・浴衣・タオル・坊ちゃん団子・お茶が付いた1,240円のセットにした。

 さて。「霊の湯」に入る前に、又新殿(ゆうしんでん)という皇族だけしか入ることの出来ない部屋・風呂・トイレを見学させてもらった。…ちなみに、見学料は210円である(撮影禁止!)。

 専用の出入り口に始まり、極上の御影石で出来たお風呂(しかも、天皇が来たときは石が直接肌に当たって冷たくないように、と、御影石の浴槽の上に檜を渡して簡易檜風呂としたそうだ)、輪島塗で出来た便器等々、口を開けたままガイドさんの説明を聞き入ってしまう。

 しかも、警備しやすいように色んな仕掛け(例えば、天井に賊が潜んでいても刀を差し込まれないように、天井板は桐を3枚重ねにしていたりする)がされていて、そんなびっくり屋敷の様な造りにもひたすら感心していたのでした。


 さてさて「霊の湯」。

 こちらは貸し切りの家族風呂のような雰囲気。湯船の大きさは4畳半くらい。シャワーも4人分しかない。
 …あろうことか、本当にお客さんがいなくて、貸し切り!こんな有名な温泉を貸し切れるなんて、何だか夢みたいだっ。

 でも、湯温が高いので、長く入っていられない。そそくさと退散して、3階へ上がる。

 3階には個室の他に「坊ちゃんの間」という、夏目漱石を偲んで作られた6畳間がある。漱石にまつわる人の写真やら、そこで正岡子規とどういう事をしたか等の説明テープが流れている。
 眺めがいい。縁側が非常に風情がある。

 何枚か写真を撮った後で、所定の個室に戻る。
 身支度を整えて、道後温泉を後にする。

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