JBL4344
調整と現状での特性


2018年2月以後、COAX 711が100Hz以上で使うマルチアンプシステムになり、
JBL4344は100Hz以下を受け持っていますが、調整の記録はそのまま残します。

2020年12月12日
JBL4344 ウーハー (2235H)のエッジ修理(24年で2回目)

2017年10月
C1100プリアンプ導入後の特性に更新
PEQの調整方法を追記

 意外に思われることが多いのですが、JBL4344がクラシック向きでない
なんてことはないです。最低限度、アッテネータだけでも調整すれば、
ジャズでもポップスでもクラシックでも、それなりに調整できます。もっとも、
周辺の目盛もあまりあてにならない左右で合計6個もあるアッテネータ
の調整は、実はかなり難しいです。

JBL4344と、その比較調整用に一時帰宅したELAC-310CE
 

特性調整状況

 以下には、JBL4344の様々な調整を経たDEQ2496の設定状態と、その結果としてJBL4344 から出ている音の測定結果を記録しておきます。

 なお、2008年11月、12年半にわたって使ってきたJBL4344のエッジの寿命がついに尽きて、ハーマンインターナショナルにて貼り替えました。エッジ交換時には、ダンパー、コーン紙も交換しています。 さらに、2013年4月に、中高域のホーンのダイヤフラムを交換ました。以下の特性はその後のものです.。

ダイヤフラム交換の記録へ
  もちろんこれが最終ではなく、日付時点での現状とご理解ください。当面、かなり収束したと思っていますが、これからもなにかに気がついて、また進化するかもしれません。

 なお、私のシステムでは、デジタルイコライザDEQ2496に加え、JBL4344のアッテネータも合わせて使いながら調整しています。

4344のアッテネーターポジションが左右で異なりますが、充分なヒヤリングと測定の結果決めたもので、これでバランスが(アッテネータで可能な範囲では)取れています。
  DEQ2496の設定とアッテネータを調整を繰り返し、DEQ2496の調整の左右差が最小になるアッテネータの位置を探した結果となっています。

 

現在の周波数特性

アッテネータ調整だけによるJBL4344の素特性(以下、PAA3による測定)。

DEQ2496で補正していないJBL4344の素特性


DEQ2496で125Hz以上をほぼフラットにした状態(2017年3月)。

 まずはDEQ2496のGEQを使い、JBL4344から出る音の周波数特性が左右ともフラットになるように各帯域をGEQパラメータを左右別に調整して、左右差をキャンセルします。(GEQのパラメータはこの後に記載)
 このフラット特性はクラシックを聴くには適しませんが、フラットを経由して調整することが、左右バランスの調整には近道です。棒グラフの1ステップが0.5dBになっています。RTA(リアルタイムアナライザ)の周波数特性は、0.5dB前後はふらつきますので、上図の状態は、31バンドで見る限り、ほぼフラットと思ってよい状態。
なお、125Hz以下はすでにブースト補正してあります。フラットにできないわけではありません。


上記の特性から、右下がりの私の常用特性に補正した結果(2017年10月)



周波数特性について
 常用としている特性は、上図のように、かなり左右がそろった、クラシック向きとされる右下がりの特性です。なお、ポップスなどを聞くときは、低域は多少落とした特性に変更します。

 完全に対称の部屋で聞いているのでない限り、ここまで左右がそろうことは、まず考えられません。調整は必須だと思います。

私の常用特性の特徴
8kHz付近が少し下がっています。これはJBL4344の中高域ホーンと高域ホーンの干渉で発生しており、GEQでは直せません。

JBL4344の素特性にある1.6kHzから2.5kHzにかけてのf特の急上昇は、かなり徹底して補正をかけています。
 これにより、JBLのホーンらしさが失われることはない気がします。


DEQ2496の設定状態(2017年10月の状態)


DEQ2496については、DEQ2496のページをご覧ください。

 上記のような特性を得るために、どのような補正を加えているか、以下に補正パラメータを示します。

 グラフィック・イコライザー(GEQ)だけで調整するだけでなく、パラメトリック・イコライザー(PEQ)という、中心周波数が1/60oct間隔(ほとんど連続可変)で変えられ、調整バンド幅も自由に設定してその増減の微調整が可能な機能も併用します。
 PEQでは、部屋の共振点をカットしています。同時に、マッキントッシュC46のイコライザーでやっていた変更も、すべてPEQに調整を移しました。

以下、順に、PEQの設定、ならびに常用特性でのGEQの設定(右、左)を示します。

PEQの特性(共振点カットとマッキントッシュC46での補正の模擬)


GEQの設定



PEQの設定
 PEQの設定は左右で同じです。部屋の共鳴などは左右共通のはず、と考えるからです。

 大きなうねりは、マッキントッシュC46での補正の名残です。C1100に変わったいまも踏襲してます。
 シャープなバンドパスによるカットは、共鳴点のピークカットです。
 発信機を使って、部屋の共鳴のうち、特に悪影響があるものを探し出し、PEQの周波数をそれに合わせ、1/10octの急峻なバンドパスでカットします。カット深さは、その周波数前後の音をスキャンして、さらっと通過できるまで切ります。

 特に悪影響があるピークとは:
 @複数の共鳴が重なっていて、やたらと大きい
 A左右で位相が逆でしかも音が大きい
 Bなぜか、その周波数だけ右後ろとかから音が聞こえる

みたいなものです。おおよそ1kHzまでの範囲で調べます。
 すごくたくさん見つかりますが、いろいろと聞いていくうちに、だんだん、これはとくにひどい、というのがわかってきます。私の場合は、そのうちの4つを補正しています。
 ピークとしては目立つのに、音楽を聴くとあまり影響ないものもありますので、ひとつづつ、試しながらつぶしていきます。
 部屋ごとに違うので、ここはポイントを教えてさしあげにくいです。私だって見落としているものがあるかもしれませんし。とにかく、時間をかけて探します。

 駄目そうな共鳴を見つけたら、その付近をPEQの1/10octのバンドパスでカットし、PEQの周波数を1/60octづつ変えて、ピーク音が急落するところを探します。共鳴は非常にシャープで、大抵は1/60oct周波数がずれただけで、共鳴状況は全く異なり、最適な周波数はすぐわかります。
 逆に言えば、
DEQ2496が1/60octで周波数可変、1/10oct幅でシャープにカットできるのが、ここではきわめて重要なのです。

 ちなみに、アキュフェーズのDG58は、1/6octおきにしか周波数が選べず、バンドパスの最短幅も1/6octです。これではピークだけを正確にたたくことができそうにないんです。これが、私がDG58に行けない最大の理由です。(価格が高いという問題は別にして、ですが)。


約71Hzのカットは、部屋の上下方向の定在波の1次定在波と前後方向の2次定在波が同時に発生する大変困った周波数です。これを残しておくと、低域全体に十分なブーストをかけたとき、73Hzだけが異様に大きな音となり、聞き苦しいばかりか、天井やドアなどがびりびり振動して十分な補正が不可能。これをシャープカットすることで、50Hz以下の超低域までフラットに音を出すことができるような補正が可能となるのです。
だから、ブーストの前にまずピークカットです。

 ●
300Hz台の2つカットは、この音域の定位に非常に悪影響を与えている左右の定在波の周波数です。1/10octの狭いバンドでカットしますが、2周波が近いので、300Hz周辺が若干下がってしまので、1/3oct幅のGEQのほうで300Hzを少しブーストして補正しています。定位感が画期的に改善しますが、これは左右非対称な大きな棚がある我が家独特の問題かもしれませんので、みなさんの参考にはならない可能性があります。

 ●
800Hz台の共鳴の補正で、キンキンうるさい音が見事に消えます。これは私の部屋特有の非常に強い3次元共鳴です。上記のJBL4344の補正前の特性でも800Hzが大きいことがわかります。発信機の音でスキャンすると、814Hz近傍だけ、とんでもなく大きな音で共鳴していました。これをバンド幅1/3octのDEQで修正したのでは、周辺の音も削ってしまいますので、やはり1/10oct幅のPEQを設定して、-15dBと大きく削ります。
 以前は、部屋のせいと知らずに、スピーカーのせいにしてました。JBLはやはり弦がちょっとうるさい、とか・・・。ごめんなさい、4344。


DEQの設定
 DEQの補正特性は、当然ながら、左右で差が結構あります。
 低域は、150Hz付近を境に左右の設定が逆転していますが、これは部屋の非対称性のためです。800Hz以上での若干の左右差は、部屋の反射の差とユニットそのものの差異が反映されていると思われますが、意外と差は微小です。20kHzで大きな差があるのは、UHFホーンの特性差でしょう。DEQで補正はしていますが、その効果も実害もほとんどないと思います。どうせ聴こえないので。


補足:グリルの有無での音の差の補正
 以下は、JBL4344のグリルがあるときと外した時、それぞれで特性をフラットにした場合のGEQの変化を一つの画像に示したものです。
 グリルを付けると、1kHz以上で0.5〜1.0dB程度のロスがあるのがわかります(つまり補正量が増えている)。
 実際、音を聞いてみると、グリルがないと、「高域の鮮明感がぜんぜ違う!」と感じます。しかし、このような変化も、DEQ2496のGEQでは、簡単に補正可能です。単に周波数特性が変わっただけなのです。補正後は、グリルを付けても音の変化はわかりません。
 
グリルなしは危険ですよね。DEQ2496があれば、グリルを外しておく必要は、音の点からは、ないです。まあ、JBLのブルーのバッフルがかっこいいんじゃないか、というのはあるんですが。



調整して気がついたこと

 私のように右下がりの特性(クラシック向きとされます)にするかどうか、などは好む音で変わってよいものですが、左右を精密に調整することは音の趣向に寄らず重要ではないでしょうか。むちゃくちゃ定位がよくなり、楽器がうまく分離します。これは実際に体験しますと、イコライザ補正なしで聴くことは考えられません。右と左とで音が異なるほうがよい音だ、という理屈は思いつかないし。

小声のつぶやき・・・スピーカーケーブルの左右の長さの差は、み〜んな気にするのに、なぜ部屋の非対称性は気にならない人が多いのかなあ。ちなみに、私のケーブルは左右で長さが少し違います。(^^;    

2017年10月改定

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