北アルプス 後立山連峰

白馬岳(しろうまだけ)・杓子岳・白馬鑓岳

Wakwak山歩会は、2005年梅雨明けのメーンイベントとして当初残雪・雪渓とお花畑が大雪山と並び称されるほど豊富な後立山連峰北部を白馬岳(2,932m)⇒雪倉岳(2,611m)⇒朝日岳(2,418m)へと縦走することを計画していた。 白馬岳は百名山である。以前は人影まばらだった雪倉岳以北にも、近年かなりの人が花を目当てに訪れているという。

しかし今年は降雪が多かったため、7月も後半に入ったというのに、朝日岳周辺の登山路はまだ雪に閉ざされているという。そこで急遽計画を変更し、白馬岳⇒杓子岳(2,812m)⇒白馬鑓岳(2,903m)と白馬三山を縦走して、白馬鑓温泉(2,100m)へ下り、標高日本一の雲上温泉と高山植物の群生をゆっくり楽しむことにした。 (下図青色ルート)白馬岳は日本百名山でもあり、北アルプス随一のお花畑を誇る。この花の山へ始めて連れて行ってもらい、それから登山が病みつきになったと言う人は多い。非常に多種類の植物やライチョウなどの動物に 会うことができる。また断層による線状凹地など珍しい地形を観察できるところである。

青ルートが今回の踏破ルート

2001年夏、グリーンウッド氏は家族とともに栂池ヒュッテ泊で栂池自然園を散策し、天狗平、乗鞍岳に登ったことがある。その時のルートは上図の赤色ルートであった。

グリーンウッド氏にとって今までに登った日本アルプスの主要な山は仙丈岳*北岳*奥穂高岳*槍ヶ岳*木曽駒ケ岳*空木岳*の6座であるが、今回の白馬三山はさすが人気の山と納得のゆくものであった。大雪渓を雨と強風の中登ったこと、尾根沿いの10-20m/secの強風、強風の中の杓子岳、鑓岳の征服、そして花の大出原、標高2,100mの露天風呂での日の出、礼文島でみた沢山の高山植物との再会は特筆に価する。

第1日、7月18日(月)

8:00小田急開成駅集合。マーの車で中央高速経由、白馬の猿倉(1,300m)に向かう。13:20猿倉駐車着。14:40白馬尻 (1,560m)着。5,712歩。(Hotel Serial No.316

白馬尻小屋で生ビールで前祝い。天候は下り坂のようで大雪渓より霧が流れ下る。

白馬尻小屋で生ビールで前祝い (クリさん撮影)

白馬尻小屋前でキヌガサソウの群落とニリンソウを見る。

キヌガサソウ

ニリンソウ

白馬尻小屋泊、冬季はこの小屋は解体するのだそうだ。カシオペア座が見える。

第2日、7月19日(火)

朝、団体で参加の中高年のオバサンが階段かた落ちて動けなくなった。小屋の中の事故は多いのだそうだ。5:45出発。6:20雨が降り出す。ゴアテックスのレインコートの下はアンダーウエアだけとしてシャツは脱ぐ。ザックカバーをして、軽アイゼンを装着し 、大雪渓の登坂開始。 雪渓の上には、ベンガラを播いて赤茶色にマーキングしてある。雪渓の下には川が流れていてアーチが薄くなってくる、新しいクレバスが生じるなどのイベント毎にマーキングをやり直してある。

大雪渓は6つ爪の軽アイゼンが最適。4つ爪だとロスが生じて疲れる。雪面には杓子尾根からの10cm-1m大の落石がゴロゴロしている。意外に多いものだ。 大雪渓から雪渓の間に残った尾根にとりつく。葱平(ねぶかっぴら) の始まりだ。約1ヶ月後の8月11日にこの葱平に向かい、杓子尾根の斜面が崩壊して雪渓上に多量の土砂崩れが生じ3名の登山者が巻き込まれた。

大雪渓登坂開始 (クリさん撮影)

大雪渓最上部

葱平には見るべき花はなかった。葱平の地名はシロウマアサツキが多いことに起因するという。も一度急斜面の小雪渓をトラバースしてお花畑避難小屋で小休止。 小雪渓はクレバスが生じ不気味である。お花畑でミヤマオダマキを見る。

ミヤマオダマキ

11:20村営頂上宿舎到着。ここで昼食。

昼 食後、主稜線に出ると風速10-20m/secの強風。マーが風に負けて転倒する。ゴアテックスのレインコートは風除けにも有効だ。 レインコートの下にアンダーウエアと薄いシャツだけだが寒くはない。12:30白馬山荘到着、チェックイン、14,652歩。白馬尻との高度差は1,272mである。(Hotel Serial No.317

白馬山荘は1,200人収容できる巨大な山小屋で個室も用意されている。間組建設という銘板がある。ここでしばらく昼寝をした後、依然やまない強風の中、白馬岳山頂に向かってお花畑を散策。

白馬山荘のすぐ裏にヤンガードライアス寒冷期の標識植物であるチョウノスケソウを発見したと思って撮影するが、 図鑑で調べると花弁が5枚でかつ葉も違うのでチングルマと判明した。チョウノスケソウがそう簡単に見つかるはずはないのだ。チングルマの群落のなかにイワカガミもちらほら。

山頂付近のお花畑には沢山の花が咲き乱れているが、10m/secを越える強風のためぶれるのと曇天のため、いい写真は撮れない。比較的よいものを以下に紹介する。ウルップソウの群落も沢山あったが、盛りを過ぎていた。

チングルマ

ミヤマダイコンソウ

ミヤマシオガマ

イワウメ

山頂で記念撮影。長野県側は霧で下界が見えないが急な崖になっている。西の岐阜側はなだらかな斜面にお花畑が広がっている。

白馬山頂で記念撮影

山頂往復後17,998歩。強風は一晩中小屋を揺るがす。

第3日、7月20日(水)

依然風は強いが、晴れ。塞外の蛮地を歌った6世紀の歌謡

・・・天は蒼蒼
野は茫茫
風吹き
草低れ・・・

の世界だ。

眼前に立山、剱岳を望む。剱岳の右の鞍部の向こうに白山が見える。立山の左の鞍部には黒四ダムが作った黒部湖が見える。 手前に丸山、そして丸山に抱かれるように第2日に昼食をとった村営頂上宿舎が見える。

白馬山荘から立山、剱岳を望む

6:30出発。丸山山頂より杓子岳と鑓岳を望む。線状凹地が見える。杓子岳の岩峰はナイフエッジで恐ろしげだ。

丸山山頂より杓子岳と鑓岳を望む

丸山から杓子岳へはお花畑が続く。

ミヤマクワガタ

ここで生きのよいウルップソウを見つける。昨夜の白馬館営業100年記念の行事として開催されたプロカメラマンの高山植物の撮影法を早速適用して撮影したのが下の写真である。 近景と遠景の両方にピントがあうように光学フィルムを使う場合はF22まで絞るのだという。デジカメはCCDの感度が高いので自動絞りが利いて簡単である。花だけ撮影するときは逆に絞り全開で花以外はボカスのがコツだそうだが、デジカメではそれができない。

ウルップソウ

時間に余裕があるので杓子岳は巻かず山頂を征服してゆくことにする。斜面は岩屑が崩れて登りにくい。岩峰を歩く時は強風に吹き飛ばされて長野県側の崖に転落しないよう、緊張の連続だ。

杓子岳山頂のイチ、コンとマー (クリさん撮影)

杓子岳を下り、白馬鑓岳に登り返す。結構きつい登りだ。10:00山頂着。

白馬鑓岳山頂からふりかえると杓子岳と白馬岳が凄さを持って迫る。 かって白馬大池を目指し、栂池から天狗原を経由乗鞍岳の中腹まで登って断念した小蓮華山に連なる稜線が見える。その右遠方に雨飾山、焼山、火打山、妙高山、 乙妻山、高妻山、戸隠山、一夜山が連なって見える。 更に遠方には志賀高原の山々、四阿山、浅間山、八ヶ岳、甲斐駒ケ岳が見える。

鑓岳山頂より杓子岳と白馬岳を望む

目を南に転ずれば、天狗の頭と唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳が見渡せる。その右手の谷間には黒四ダム本体すら見通せる。

鑓岳山頂より天狗の頭と唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳

10:40鑓温泉分岐点着。32,400歩。ここで風よけのレインコートを脱ぎ、シャツ姿になる。昼食。ザクザクの斜面を下って、小雪渓を渡って大出原(おいでっぱら)に出る。大出原は全部が巨大なお花畑である。

イワツメクサ

ミヤマキンバイ

ハクサンイチゲ

ハクサンコザクラ

お花畑と白馬鑓の斜面の対比が見事だ。猿倉の基地から天狗天狗山荘に荷揚げするヘリが飛んできて、荷を降ろし、廃棄物を運び去った。次第に気温が上がるので、シャツも脱ぎ、アンダーウエアだけになる。露出した二の腕、首筋に日焼け止めクリームを追加する。

大出原のツガザクラと白馬鑓岳

大出原の下部は崖となって、クサリ場となる。14:10鑓温泉着。38,349歩。(Hotel Serial No.318

露天風呂で汗を流し、カン・ビールで喉を潤す。露天風呂そのものが、温泉の湧出口となっていて多量の湯があふれでている。冬季はこの小屋は解体するのだそうだ。

第4日、7月21日(木)

昨夜とは打って変わった静かな夜で快眠。 4:45の初日の出を露天風呂で迎えようとマーとコンチャンが手ぬぐいを持ってでかける。意外やそこにはスイミングスーツに身を固めたご婦人3名の先客あり。 許可をもらって撮影。隣のマーの幸せそうな顔がいい。ただ完全武装の女性軍に対し無防備の男性軍は大分分が悪いと見えた。今日越えてゆかねばならぬ小日向のコルの上に日が昇る。

白馬鑓温泉の露天風呂

朝食時、隣の夫婦は熊本からはるばるやってきたと聞く。奥さんの方が山の先輩のようだ。停年退職になったばかりの山は未経験の夫に山の楽しみを知ってもらおうと白馬岳を選んで連れてきたとのこと。

6:25出発。下左の写真のように4つの雪渓を次々と横断する。安心のため愚直に軽アイゼンを着用。小雪渓の横断には4つ爪軽アイゼンが装脱着に便利。3つ目の雪渓を過ぎたところでストックの先を落とすが露天風呂の女性3人組の連れ合いが拾ってもって来てくれた。謝々。 最後の雪渓を渡ったところで気温も上昇したのでシャツを脱ぎ、日焼け止めクリームを塗りなおし、樹木が増えたので虫除けスプレーを施す。女性3人組の一人はしっかり虫除けネットをかぶっている 。

幾つもトラバースした小雪渓 (マーさん撮影)

小日向のコルから天狗尾根と白馬鑓温泉を望む

崖の中腹に付けられた細い道を注意しながら、かつ景観を満喫しつつ、10:15小日向のコル到着。 鑓温泉から小日向コルまでの道はほぼ等高線にそって付けられていて高度ロスは殆どない。ここから振り返る天狗尾根と白馬鑓温泉は絶景。白馬鑓温泉は下の写真の中央、上から40%の所にあるS字状雪渓の右側にある。 天狗ノ頭を越えて不帰嶮に至る天狗の大下りの稜線も上右の写真の左部に写っている。

小日向のコルから振り返る白馬鑓岳、杓子岳、白馬岳の最後の姿を目に焼き付ける。小日向のコルには小規模の池塘があった。

小日向のコルから白馬鑓岳を望む

小日向のコルからニッコウキスゲ、白馬岳と小蓮華山を望む

小日向のコルから少し下ると、ブナの大木の茂る気持ちの良い尾根道となる。メボソムシクイキビタキの鳴き声が聞こえる。 両者は高度1,100mを境にしてすみ分けているとマーが教えてくれる。

11:10猿倉着。鑓温泉との高度差800m。小日向の湯で汗を流し、白馬村で生ビールと焼き ねぎラーメンを食す。イオンで長野特産の丸ナスを仕入れ 、帰って炒めて、蒸して、おやきにして食す。うまい!

一日当たりの飲料水500ccボトル X 3本。撮影枚数250枚。

July 26, 2005

Rev. July 26, 2010


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