2006年の航海日誌

2006年1月3日、 北北西の風、7/sec。低気圧が北海道にあり、寒冷前線の通過のような空模様で君津の溶鉱炉がくっきりとみえた。昨年の11月20日以降は強い北風を敬遠して船には近寄らなかったがもやいの点検に訪れる。異常はないがロープの弛みを直し、切れそうなロープは交換した。フェンダーの高さも調節。ジブをキャビンに取り込んでしまうと安心して船は放置してしまうのでファーリングしたままにする。第一、風が強すぎて取り込めない。マストトップのゆるんだ風見はプロに頼んで固定してもらわねば。かえりにピア・ワンで生ビールをジョッキ一杯おごってもらう。

2006年3月18日、 南の風、4.2/sec。春をもたらした低気圧の30m/secの強風が去った後に久しぶりにエバーフィールド氏とともに点検に出向く。異常なし。プラグを濡らしてエンジンの始動には少し手間取ったが、45分間充電し、コーヒーでチャットを楽しんだ。その後、赤坂ツインタワーに移動し、独立行政法人国際交流基金主催の英語字幕付き日本映画上演会の出かけ、1973年の永井荷風原作、神代辰己監督「四畳半襖の裏張り」を鑑賞。 予想外に内外の若い女性が多いのに驚いた。新橋の「お多幸」でおでんと酒をたしなむ。(Restaurant Serial No.274)

2006年4月1日、南東ないし南西の風、風速2-7m/sec。花曇り。穏やかな風のなかエバーフィールド氏とロカ号の初乗りをする。12:00出港、13:30帰港。進行方向右側の内側のステイが 弛んでブラブラしている。風見の修理とともの深井氏に調整をお願いしよう。

帰港後、買ってきた崎陽軒のしゅうまい弁当を食し、コーヒーを沸かして団欒す。エバーフィールド氏と分かれて、徳山氏の戦勝祝賀パーティー会場に向かう。

三菱重工が試作した大型風車発電機をバックに

2006年4月17日、南西の風、2.5m/sec、快晴。深井氏に依頼していたリギン調整とはずれそうになっているウィンデックスの修理ができたというので検収にでかけた。過去1週間雨ばかりだったので今日の好天は素晴らしく感ずる。折角の天気だが、昨夜、西国霊場松談会のページ作りに夜中の3時までかかってしまったので、セーリングはせず読書するつもりででかけた。

マリーナのビジターバースに巨大なセーリングボートがモヤって整備に余念がない。2005-2006年の世界一周クリッパーレースに参加しているJersey Clipper号だ。

出港準備中のJersey Clipper号

昨年9月18日リバプールを出て今年7月21日にリバプールに帰る予定となっている。第5レッグはオリンピックのヨットレース会場となる予定の中国の青島を出発し、横浜に寄港したのちカナダのビクトリアに向かう予定だったのだが、スービック湾で修理に手間取ったため、寄港は中止となったという 。しかし、Jersey Clipper号だけがトラブルに見舞われてか横浜に寄港したらしい。現時点で参加艇10艇のうち9位である。2003年のクリッパーレースでは8艇がこのマリーナに寄港していた。今回は東回りに変えたようである。そのコースは下記のとおりである。

第1レグ: リバプール18th September 2005→ブラジル サルバドール 

第2レグ: ブラジルのサルバドール25th October 2005→南アフリカ ダーバン

第3レグ: 南アフリカ ダーバン27th November 2005→西オーストラリア フリーマントル 

第4レグ: 西オーストラリア フリーマントル1st January 2006→シンガポール→フィリピン スービック湾→中国 青島

第5レグ: 中国 青島8th April 2006→カナダ ヴィクトリア 

第6レグ: カナダ ヴィクトリア14th May 2006→パナマ運河→ジャマイカ

第7レグ: ジャマイカ20th June 2006→ニューヨーク→チャネル諸島 ジャーシー島→リバプール ETA 21th July 2006

ROCAのリギン調整とウィンデックスの修理はできていた。リギンのターンバックルの回り止めのビスは少し戻せばよいそうだ。

新しいウィンデックス

エンジンは一発でかかった。30分充電する。モアリングロープを締めなおし、ほつれたロープの末端処理をギャレーのストーブを使って行う。 ヘッドとエンジンを真水でフラッシシングする。キールボルト点検。

新に購入した2リッター入りの飲料水ボトルで水を汲み湯を沸かし昼食をとる。持ってきた白洲正子の「西国巡礼」を キャビンで読む。ハッチから入った風がキャビン内をふきぬけて心地よい。はじめてキャビン内でくつろぎ、あたらしい発見をする。

鳥浜駅から並木北駅まで金沢緑地を散策して帰る。

2006年5月15日、北東の風のち東の風、4.5m-2.5/sec、晴のち曇り。5月になったというのに、風が強く海には出られなかった。ようやく風の穏やかな日がきたので出かける。舵、および 船底をブラッシングして海草を取り除いてから12:30シングルハンドで出港。金沢八景島沖(北緯35o22' 05' 東経139o41' 04' )より金沢八景島(ピラミッド、ジェットコースター)と野島公園(手前のこんもりした小山)方向を望むとその向こうの山頂の2本の鉄塔の左に鷹取山、2本の鉄塔の右に長柄桜山古墳群のある桜山が見える。写真左端に二子山の片割れと阿部倉山が見える。

金沢八景島沖より金沢八景島、野鳥公園を望む 背後に鷹取山、桜山、左端に二子山と阿部倉山

ゴールデンウィーク後の 月曜日は漁船が少なく快適である。エンジンの冷却水の出が悪い。少しゴミがつまっているのだろうか。 金沢八景沖で反転し、15:00帰港。コーヒーを沸かし、ゆっくりくつろいでから帰宅。シングルハンドで海にでているヨット3隻。いずれも熟年の引退組みである。

新しく完成した桟橋ゲートの表示

バイクで通えば、交通費がほぼゼロになることに気が付く。モノレール西鎌倉より歩き食材を購入して帰る。

2006年7月14日(金)、東の風のち南の風、2.5-3.5m/sec、晴。梅雨前線は東北地方に上がってしまっているので梅雨の中休みである。いろいろあってほぼ2ヶ月ご無沙汰していた。もやいの擦れ止めがずれていたくらいで異常なし。エンジンもかかる。約1時間かけて船底の藻と貝をブラシで除去する。強烈な暑さで休み休みである。水タンクも1年ブリでフラッシングした。 暑さで汗をかき、水を飲むが疲れてしまった。後2日間は雨が戻ってこないのでセーリングは明日にして、コーヒーを沸かして昼食にする。

作業中、ソーラーセル駆動のラジオを聴いている。日銀がゼロ金利政策をやめると決定する日だとのこと。

潜水して船底の藻と貝を掻き落としていた紳士も居た。マリーナ隣接地で温泉施設を建設しようとしたところ、埋め立て土壌から汚染物質がみつかり、土壌入れ替えのために掘ったところに梅雨の雨が溜まって池になった。ここにカモメが降りて盛んに水浴びをしている。カモメといえども塩水より真水がいいのだろう。

シャワーを浴びて帰る。

ビジターズバースにチャター船の簡易バースが完成した。

2006年7月15日(土)、南東の風、1.5m/sec、晴。梅雨前線は東北地方に上がったままそちらで雨を降らせているらしい。房総方面で午後雷雨。10:30出航。シングルハンドだ。フルセール、オートパイロットで風上に向かってタッキングする。三菱重工の風力発電機が回りだしたが、直ぐ止まる。風力が弱いので機帆走する。12:30反転するも風がなく、帆を完全に降ろして機走で帰る。

水に入ってスクリューの藻をとる人

港では船内機のヨットオーナーが水に入ってスクリューの藻をとっている。この点船外機は常時スクリューは空中にあるので藻がつかず便利だ。

シャワーを浴びて帰る。

2006年8月20日(日)、南東の風、3m/sec、晴。台風10号が九州縦断して日本海に抜け、安定した夏空がやってきた。久しぶりに船を訪れたが異常なし。積乱雲が観音崎にスコールをもたらし、マリーナにも霧雨が降るが、積乱雲は風に乗って鎌倉の方面に流されて後、晴れとなった。思ったより牡蠣が付着していて除去に1.5時間を費やす。脱水症状防止に水を盛んに飲む。セーリングは明日にして船体にモップがけし、コーヒーを沸かして昼食後、キャビンの床に座り込んで、ベンチレータから入る風を浴びながらジャネット・ウォラックの「砂漠の女王 イラク建国の母ガートルート・ベルの生涯」の読み残しを読む。

2006年8月21日(月)、南東の風、3m/sec、晴。ノリ弁当を買って、味噌汁をカップにいれて、シングルハンドで11:50出港。ベタ凪。自動層操縦で機帆走する。操船はロボットにまかせ船上でゆっくり昼食。12:30ころから微風が吹き始める。いつものパターンだ。セーリングをしているヨット1隻もなし。帰路ケーブル敷設船とすれ違う。空気の透明度が高く、 若き頃設計した根岸のLNG基地がくっきりとみえる。14:00帰港。着桟時、千葉の人がモヤイを取ってくれる。

ブイを回航

油をしいたような穏やかな海とブイ

ケーブル敷設船

根岸のLNG基地

レイジージャックのジッパーがほつれてきた。購入して6年目。そろそろ交換時かもしれぬが、ほつれを修復してみよう。

2006年10月26日(木)、南東の風、3.5m/sec、曇り。2ヶ月ぶりに船底塗装準備のために訪れる。異常なし。バッテリーが弱っているためかエンジンはすぐかからない。50分間充電する。その間、船体上部構造に雑巾がけをする。スズフリーの船底塗料と、シンナー、ローラーを購入。 ヤードで上下架と船台の申し込みをする。

2006年10月27日(金)、北の風、3m/sec、曇り。クレーンまで自走したが、海草などのため重く、舵もにぶい。11:00上架。14ヶ月ぶりなので汚れが激しく、スクレーパーによる掻き落とし、30分の高圧水洗浄、スクレーパーによる2回目の掻き落とし、15分の高圧水洗浄、昼食、乾燥、目地テーピング、第3回目の仕上げ掻き落としをしても不満足。 来年からはサンダーとマスク、防塵眼鏡を用意してタップリ1日のサンドがけが必要であろう。キールが鉛製なのでサビ落としせずに助かる。

キールとハルの接合部のシリコン・シールがハルより剥離し、隙間ができて海水が滲みこんでいる。ヤードに1日かけてシーラーを更新してもらうことにして、下架を1日伸ばす。シーラーを除去して点検したが異常なし。

シーラーを除去したキールとハルの接合部

2006年10月28日(土)、 南西の風、3m/sec、晴れ。11:00にヤードに着くとすでにキールとハルの接合部のシーラが打ってあった。手ぬぐいでマスクして1時間ワイヤーブラシで磨く。シーラは1日の養生が必要とのこと。2時間かけてシーラ以外にシャーク・ホワイトの船底塗装をする。プラスチック袋をバケツの中に敷いて塗料を入れて使っているのを見て、よいアイディアといただく。これだと余った塗料と使い捨てのローラー と使い捨てのプラスチック手袋をプラスチック袋に入れて一緒に捨てられるのでアセトンの消費が減って好都合。

2年間陸にあげなかったヨットが上架されたが、ムール貝が数百キログラム付着していた。

下架準備完了

2006年10月30日(土)、 東の風、4m/sec、晴れ。昨日は雨のため、下架を更に1日伸ばした。塗料缶を1個買い増し、11:00にキールとハルの接合部のシーラ部に塗る。12:00に2重塗り。余ったペンキでバラストに2重塗りする。

昼食後、13:30にクレーンで吊って、クレードルのパッドに当たり面をスクレーパーとワイヤーブラシで磨き塗装する。14:00下架。自分のバースに戻る。

うまく着桟したが東風である。無理しなくとも船は風下に2m流されて隣の船にフェンダーを挟んで寄り添うだけなのだが、そうさせじと風下に流される船を確保しようと気軽に手を伸ばしたのが不運のはじまり。手を伸ばしたのが少し遅すぎたためと思ったより風が強かったため、船に引かれて 体の重心が水面上にでてしまう。どうしようもなくなりボチャン。まるでギャク映画のような様となった。もう冬が近いというのに思いがけず、海水浴をしてしまったのだ。しかし水はまだ温かった。海水温は2ヶ月遅れで変化するのでまだ夏の海が残っているのだ。これが3-4月であったら心臓麻痺かもしれない。幸い浮桟橋は垂直の壁ではなく、上部が60度の勾配を持って末広がりであったので助かった。ここに膝を挟み込み、ボラードを掴み、日頃、岩登り?で鍛えた腕力でよじ登ることができた。ここで登れなく力尽きる人もいると聞いていたのでわれながら天晴れと満足。落ちた時はペンキで汚れても良い古着だったので濡れた服は脱ぎ捨てただけ。替え下着はいつも船に積んであるので全く問題なし。よじ登る時、バカ力を出したので腕の皮膚がモヤイのビットにこすれてミミズ腫れになったのが唯一の痕跡であった。

ポケットにいれていたソニーのデジカメは丁重に サクリファイスとしてネプチューンに進呈。チップに残っていた上の写真が最後のショットとなった。最近、カメラ躯体のビスがなぜかほとんど抜け落ちてしまい、修理に出せば高額の修理代を請求されそうだった。そろそろ新しいのを買おうと思っていたのでちょうど好都合。ソニーは色に深みがなく不満であったのでちょうど良い。それにしても落としても壊れず、頑丈なカメラだった。この4年間に通算13,199枚撮影してくれた。最近、交換用バッテリーを大枚はたいて2個買ったのが惜しいだけだ。

今度は防水のカメラにしよう。アウトドア用のPentax Optio W10はどうだろうか?画素数の無益な競争があると思っているので600万画素で充分だ。ウェブサイト目的なのでどうせ画面は縮小して圧縮するのだから。ソニーの300万画素でも充分すぎた。むしろパソコンのHDの記憶容量を無駄にしないですむ。色の深みに関しては友人のRonが2004年に買った400万画素のOptio S-40の色が良かったのも理由の一つだ。

落水事故の反省点は今回は必要なかったとはいえ、ライフジャケットを着用していなかったこと、バースに用意されている落水者用のステップの位置がどこであったか覚えていなかったことである。たまたま上架時使っていたステップを下げたまま機走していたのでこれも水から上がることに使えたはずであるが動転していて気がつかなかった。むしろステップを下げたまま機走すればステップにつけたロープがスクリュー絡むので避けねばならない。本来はステップは上げておいて落水者がロープを引いてステップを下げるように用意しておくべきだったと反省している。

ライフジャケットを着用していなかったのは下架した直後で係員を待たせてはと気を使いそのまま出発したためである。落水を何回か経験しているエバーフィールド氏によれば、水中に長居すると衣服から空気が抜けて浮力がなくなり、ライフジャケットがなければ水中移動も不可能になり、水から上がるのが一層困難になるとのこと。クワバラクワバラ。

今回の費用は上下架良14,400円、船台利用料1,500円/日、洗浄器利用料1,800円/30分、ペンキ代10,000円であった。 12-2月までの冬季間はクレーン代金など半額になるので来年からは冬季に船底塗装しよう。

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