'99年9月


「オースティン・パワーズ・デラックス」 - Austin Powers The Spy Who Shagged Me -

 ジェイ・ローチ監督、マイク・マイヤーズ制作脚本主演、ヘザー・グラハム。

 宿敵ドクター・イーブルがタイムマシンを使って冬眠中のオースティンの体から"モジョ"を盗み出す。弱体化したオースティンは、イーブルを倒すために1960年代に向かう…。前作の「オースティン・パワーズ」と雰囲気は変わらず、おバカ映画。下らないギャグと雰囲気を楽しめれば、まあ、それでいいんじゃないかなあ。個人的には前作の方が面白かった。
 ただ日本人にはギャグの理解に無理があるかも。映画ネタは判るけど、MTVネタなんかはまるで判らなかった。

 しかし、これが「スター・ウォーズ エピソード1」を抜いたというのは、情けないというか…。

「オースティン・パワーズ・デラックス」 Official Website
「オースティン・パワーズ」感想


「エリザベス」 - Elizabeth -

 シェカール・カプール監督、ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、ジョセフ・ファインズ、ジェフリー・ラッシュ。

 16世紀、ヘンリー八世と愛人アン・ブーリンの間に生まれたエリザベス(ケイト・ブランシェット)は、一度は反逆罪に問われながら25歳でイングランド女王に即位する。レスター伯(ジョセフ・ファインズ)との恋愛、各国との駆け引き、陰謀、裏切りの交錯する歴史劇。時代背景的が難しいという前評判を聞いたが、フランス、スペイン、英国の関係やプロテスタントとカソリックの対立ぐらいで、単純にそれらとエリザベスの力関係で、判りやすく面白かった。

 豪華な衣装、装飾がいい。薄暗さと埃っぽい映像が、重厚さと残虐さを上手く表現している。監督にインドのシェカール・カプールを抜擢したというのも、驚き。

「エリザベス」 Official Website


「ハリケーン・クラブ」 - Hurricane Streets - ☆

 モーガン・フリーマン監督脚本、ブレンダン・セクストン・サード、イザドラ・ヴェガ主演。
 NYダウンタウンに住む14歳のマーカスは、仲間と盗みなどの悪事に明け暮れる。やがて、メレーナという少女と出会い恋に落ちるがメレーナの父にその仲を引き裂かれる…。
 どこにも属せない、マイノリティとしての子供たちの表現が上手く出来ている。終わり方にも、これから続く物語が感じられて印象的。面白かった。

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「オープン・ユア・アイズ」 - Abre Los Ojos -

 アレハンドロ・アメナーバル監督脚本音楽、エドゥアルド・ノリエガ、ペネロペ・クルス。

 遺産で遊び暮らしていたサルサは交通事故で、顔に怪我を負う。整形手術で再び美貌を取り戻すが、次々に不思議な出来事が続いていく…。
 ドンデン返しとは、こーいうのだったか、とちょっと唖然。ちょっとトリッキー過ぎてついていけない。これじゃネタが途中で判る訳ないって(^^;)。現実、非現実の境の曖昧さというテーマはディック的で面白いのだけど、この設定をもうちょっと上手く出来なかったかなと思うと残念。面白かったんだけど。
 '98年東京国際映画祭グランプリ受賞作
 
→ リメイク「バニラ・スカイ」感想
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「アルナーチャラム 踊るスーパースター」- Arunachalam -

 スンダルC監督脚本、ラジニカーント、サウンダリヤー、ランバー。
 
  田舎から出て来たアルナーチャラム(ラジニカーント)は、偶然から大財閥の御曹司だった事が判明する。300億ルピーの遺産を狙う悪人の隠謀を阻止するために、一月で30億ルピーを使い切る試練を始める…。
 「ムトゥ 踊るマハラジャ」は面白かったけど、今回はストーリ的にインド映画的ワンパターンを心配していた。しかし、意外な設定、展開で面白かった。インドでの30憶ルピーってのが、まるで実感わかないけど、面白かった(^^;)。
 
「ラジニカーント ファンクラブ アルナーチャラムの会」
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「ノッティングヒルの恋人」 - Notting Hill -

 ロジャー・ミッチャム監督、ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グランド、リス・エヴァンス、G・マッキー。
 
 世界的な女優のアナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)がロンドンのノッティングヒルの小さな旅行専門本屋の気のいい男ウィリアム・タッカー(ヒュー・グランド)に引かれて恋に落ちる。この最初の出会いの部分、どうして引かれるのかはまるで理解出来ない。多分、理解出来た人は一人もいないと思う(^^;)。
 でも、後半は面白かった。ラストは「ローマの休日」を意識しているのは確実。ハッピーエンドな「ローマの休日」を作りたかったのだろうか?
 同居人のスパイクが一番魅力的なキャラクタで、主人公を食っている。ジュリア・ロバーツは相変わらず巨大な口だけは魅力的。

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「サイコ」 - Pshycho -

 ガス・ヴァン・サント監督、クリストファー・ドイル撮影、ヴィンス・ヴォーン、アン・ヘッシュ。

 ヒッチコックの「サイコ」のリメイク。執拗なまでに同じカット、さらにオリジナルと同じ日数で撮影するという異常さ。「サイコ」は偏執狂的な監督の事を意味しているに違いない。功績があるとすれば、まるで同じカットを作っても、無意味な上に、つまならい映画にしかならないという事を証明した事。今後、こういう馬鹿な事をする監督は出ない事を祈ります。
 この監督、「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」は面白かったんだけどなあ。
 撮影にわざわざクリストファー・ドイルを起用しているのも、意図が判らない。

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「金融腐蝕列島・呪縛」☆

 原田眞人監督、高村良原作、役所広司、風吹ジュン、仲代達也、椎名桔平、根津甚八、遠藤憲一、若村麻由美、佐藤慶。
 
 300億円にも及ぶ総会屋への不正融資の容疑で、朝日中央銀行本店に東京地検の強制捜査が入る。危機感が欠如した上層部に苛立ちを感じる企画本部副部長の佐々木(役所広司)を中心とする中堅クラス4人が決起する…。
 面白かった。主張が強い硬派で有りながら、軽妙なエンターテイメントとして成功している映画。ネタ的にも新鮮で面白い。
 日比谷公園を中心とする、ホテル、東京地検、朝日中央銀行の空間的な関係を巧みに使った構成も面白いし、速いカット、セット、映像も巧み。
 わき役である、取締相談役の久山(佐藤慶)、東京地検特捜部大野木(遠藤憲一)など絶妙なはまり役。

→ 「金融腐蝕列島 呪縛」 Official Website


「グロリア」- Gloria -

 シドニー・ルメット監督、シャロン・ストーン、ジェレミー・ノーザム。

 つまらなかった。
 出所したばかりのギャングの情婦グロリア(シャロン・ストーン)は、犯罪の証拠を握る少年を連れて逃亡する…。オリジナルの「グロリア」とは大筋ではストーリは同じだけど、印象はまるで違う。
 「サイコ」のリメイクとは対極に、「オリジナル」から大胆にアレンジしているけど…詰まらない。オリジナルのグロリアの図太いたくましさがまるで感じられず、母性本能だけで動いている主人公にイライラさせられる。ラストには何の感動も感じられない。
 宣伝では「レオン」の原点と言っていたけど、このリメイクが「レオン」に影響受けて引っ張られている感じがする。シドニー・ルメットの作品としては汚点。

 「パットン大戦車軍団」などのジョージ・C・スコットの遺作となる様だが、これが最後とは可哀想。

→ 「グロリア」 Official Website


「マトリックス」 - The Matrix -

 アンディー&ラリー・ウォシャウスキー監督製作脚本、キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン。

 面白かった。斬新な映像もいいし、軽快なストーリ展開、物語の背景も意外性があって面白い。人間電池という発想がSF的にも突飛でいい。アラは山の様にあるけど、そういうトコは気にしないで突っ走って楽しめれば良い。細かい矛盾は無視出来るだけのパワーがある。
 ウォシャウスキー兄弟は「バウンド」を作っているけど、前回の超低予算に比べて、これだけ金をかけても萎縮しないでのびのびと作っているのに関心した。今後に期待が持てる。
 斬新な映像も、ほとんど予告やメイキングで観ているけど、スロー、ストップモーション、マシンガンショットの巧みな混ぜ方は確かに見事。

 …ただ、最後に空を飛ばないで欲しかった(^^;)。
 
→ 「マトリックス」 Official Website


「シンプル・プラン」 - A Simple Plan -

 サム・ライミ監督、スコット・スミス原作、ビル・パクストン、ビリー・ボブ・ソーントン、ブリジット・フォンダ。

 雪深い森の中、墜落した飛行機の中に大金を発見したハンク、兄のジェイコブ、兄の悪友のルー。そこから生まれる、疑惑、仲間割れ、殺人…。
 ベストセラーの原作は地味な感じがしたけど、映画にしてみると意外にテンポもよくて面白い。映画全体の雰囲気は、いままでのサム・ライミ作品と全く異質。
 ラストの方がちょっと原作と違うが、それは微妙でありながら印象を随分と変えている。特に兄のジェイコブの描き方が非常に切なくてよいです。原作は金が人間を変える狂気の部分が中心だと思うが、映画は、そういう狂気に走る人間の弱さを上手く描いている。個人的には映画の方が面白かった。

「シンプル・プラン」 Official Website


「双生児」

 塚本晋也監督脚本撮影、江戸川乱歩原作、本木雅弘、りょう、筒井康隆、石橋蓮司、浅野忠信。
 いつもの塚本っぽいスピード感は無いけど、ビジュアル的に鈴木清順とか寺山修司みたいなカルトっぽさが出ていていいです。そういう部分だけに捕われずに、不可思議な恋愛物語として成立しているのが映画として深みを与えている。

→ 「双生児」 Official Website


「秘密」

 滝田洋二郎監督、東野圭吾原作、斎藤ひろし脚本、広末涼子、小林薫、石田ゆり子、金子賢、岸本加世子。

 原作読んでないんですが、映画的にはイマイチかな。父親の視点、母の視点、娘の視点、どこに立つかで随分と印象は違うと思うけど、どこでも納得出来ないと思う。特に母親の視点に立ってしまうと、混乱が多すぎるのではないかなあ。最初から父親の視点で観るべき映画なんだろうけど、そうは出来てない。
 小林薫はいいんですが、広末の下手さ加減にはまいりました。いつも一本調子な演技で(^^;)。
 ネタ的には「スキップ」「リターン」の北村薫が好きそうな内容で、オチもすぐに予測出来る範囲だったので、ストーリ的に引きつけられるものが無かった。もうちょっとうまくやって欲しかった。
 灯台のシーンの色彩や消え行く夕日の使い方は、「異人たちとの夏」のすき焼き屋の色づかいに凄く似ている。

「秘密」 Official Website
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原作「秘密」感想


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