'99年7月


「豚の報い」

 崔洋一監督、又吉栄喜原作('98年芥川賞受賞)、小澤征悦、あめくみちこ、上田真弓、早坂好恵。

 沖縄の大学生の正吉(小澤征悦)が、知り合いのホステス三人の厄払いに生まれ故郷の島へ帰る。しかし、彼には海で死んだ父の遺骨を埋葬するという目的があった…。

 崔洋一らしい、ちょっとぎこちない所もあるけど、最後の方はほのぼのしていていい終わり方。気分よかった。なんか、登場人物の愛憎関係が良く判らないけど、そんなのはどうでもいい事なのかもしれない。 のんびりした展開が南国の沖縄っぽいかも。また、沖縄弁がいい感じにそのテンポにあっている。


「八月のクリスマス」

 オ・スンウク監督、ハン・ソッキュ、シム・ウナ。
 写真館を営むジョンウォン(ハン・ソッキュ)、駐車違反取り締まりのタリム(シム・ウナ)。韓国のこの二人の不治の病+恋愛もの。不治の病らしい悲しさを微塵も出さない主人公が凄い。いつも、妙にニコニコしっぱなし。それだけに感情を一人、爆発させるところは迫力がある。
 恋愛ものとして成功しているのかは疑問があるけど、全体には面白かった。すれ違いにしても、もうちょっと凝った設定を考えてもいいと思うし、細かく気になる所は多いんだけど。でも、非常にすっきりした印象的な映画。
 おばあさんの写真や、細かいエピソードがなかなかいいと思う。


「ホーホケキョ となりの山田くん」

 高畑勲監督脚本、いしいひさいち原作。声優は朝丘雪路、益丘徹、荒木雅子、宇野なおみ。
 いしいひさいちのコミックのアニメ化であるが、「もののけ姫」のヒットに続くジブリの作品としての注目度が高い。劇場で構えてみる程の映画かというと疑問はあるけど、非常にほのぼのとしていて、面白い。矢野顕子のふわりとした伸びやかな歌声がまた、マッチしている。朝丘雪路も唄のシーンはかっこよい。

 技術的に観ると、随所でコンピュータが駆使されているのが判る。全編、デジタルで作られているらしい。柔らかな着彩はコンピュータによって可能になっているのが判るし、線もタブレットを使っている感じのモノがある。違うかもしれないけど。
 ただ、動きを実写からトレースしていると思われている部分は気になる。動きは綺麗ではあるが、アニメらしい美しさが無い。

「ホーホケキョ となりの山田くん」 Official Website
スタジオ・ジブリ Website


「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・オブ・メナス」☆
- Star Wars EPISODE I The Phantom Menace -

  ジョージ・ルーカス監督脚本、リーアーム・ニーソン、ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ジェイク・ロイド。

 わざと期待を押さえていたというか、落胆に備えて期待してなかったのでかなり面白かった。
 銀河共和国の通商連合は、惑星ナブーを武装艦隊で封鎖、ナブー女王アミダラ(ナタリー・ポートマン)と対立する。ジェダイの騎士のクワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン)と弟子オビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)はアミダラを助け、その途中、強いフォースを持つアナキン・スカイウォーカー(ジェイク・ロイド)に出会う…。
 ストーリ的に見れば、最初の「スター・ウォーズ」と似たような展開だけど、アクション、殺陣、CG、SFX、音響、美術、衣装、デザインなどなど、すべてが綿密に計算され、完全主義者のルーカスらしい素晴らしさだと思った。
 役者はそれほどいいとは思えなかったけど、非難されるほどひどいとは思えない。アナキンとアミダラが初めて会うシーン、二人の心が静かに触れあう感じなんか素晴らしい出来だと思う。

 しかし、このシリーズ特有であるが、謎をまき散らされて終わってしまうので困る。パルパティーン老院議員はホントにいいやつ? C-3POのその後は?血液のナントカコウトカ2万って何?(フォースの力はミトコンドリアか?、それじゃ「パラサイト・イブ」だぞ)、影の悪役は誰?などなど…。

「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」 Official Website
「STAR WARS」Official Website
「 スター・ウォーズ特別編」感想
「スター・ウォーズ/帝国の逆襲<特別篇>感想


「お受験」

 滝田洋二郎監督、一色伸幸脚本、矢沢永吉、田中祐子、西村雅彦。
 食品会社勤務で実業団のマラソン選手でもある富樫真澄(矢沢永吉)が主役。妻(田中祐子)が娘の私立小学校の受験に熱心な一方、富樫真澄は会社からリストラされてしまう。彼はマラソンへの夢を捨てて専業主夫になるが…。矢沢永吉の映画初主演作。

 お受験という、非日常的なものの情報を詰め込む事で面白く出来たと思うが、その点では成功していない。どちらかといと矢沢永吉の方に主眼が行っている。矢沢自体は、実に堂々としていて演技が上手いのには驚いた。
 マラソンとお受験をどういう風に、まとめるかが監督の手腕だと思ったけど、あまりに平凡だった。まあ、あっさり終わらせたのは好感が持てるけど。

 しかし、大杉漣演ずる監督の奥さんの出番はあれだけ(^^;)? ちゃんとクレジットにも出ているのに。カットされてしまったんだろうなあ。
 
「お受験」 Official Website


「学校の怪談4」

 平山秀幸監督、奥寺佐渡子脚本、豊田眞唯、広瀬斗史輝、笑福亭松之助、原田美枝子。
 
 夏休みで海辺の町の田舎へやってきた兄妹、恒と弥恵。その町では昔、大津波で学校にいた子供達が死んだという事件があった…。
 「学校の怪談」シリーズの監督は1、2は平山秀幸、は金子俊介に代わり、この4は元に戻ってまた平山秀幸。1、2よりは恐さと子供っぽい面白さのバランスはよくなっている。予告編で恐い部分はほとんど出てきてしまっていたので、その点はイマイチ。最後の方は、結構ヒューマン・ドラマになっていて、ほのぼのと終れる。

「学校の怪談4」」 Official Website


「交渉人」- The Negotiator -☆

 F・ゲイリー・グレイ監督、ジェイムズ・デ・モナコ/ケビン・フォックス脚本、サミュエル・L・ジャクソン、ケビン・スペイシー、デイビッド・モース、ロン・リフキン、ジョン・スペンサー。

 「ネゴシエーター」と同じ、立て篭った犯人との交渉役のプロ、ローマン(サミュエル・L・ジャクソン)が主人公。年金横領の汚名を着せられた彼は、自らが人質を取って立て籠り、もう一人の敏腕の交渉人セイビアン(ケビン・スペイシー)と駆け引きを行なう。
 面白かった。何しろ設定がいいし、二人のプロっぽい戦いぶりにしびれる。ラストも非常にうまいなあと思わせた。

「交渉人」Official Website


「メイド・イン・ホンコン」- 香港製造 -

 フルーツ・チャン監督脚本、サム・リー、ネイキー・イム、ウェンバース・リー。
 
 香港、借金取りを仕事にチンピラ同然の生活をする若者のチャウ(サム・リー)は相棒のロンと飛び下り自殺した娘の遺書を拾う。また、重病の少女ペンと知り合う事により、生活に大きな変化が起きてくる…。
 渋谷系のファッション、凝った映像にリアルな若者像をうまく重ねて、上手い仕上がりになっている。もともと低予算でスタートした映画だけに、繊細さがかける部分はあるが期待出来る監督である。
 ラストはイマイチ好みでは無いなあ。


「もういちど逢いたくて/星月童話」- 星月童話 Moonlight Express -

 ダニエル・リー監督、レスリー・チャン、常盤貴子。 
 恋人を失った瞳(常盤貴子)が、死んだ恋人とそっくりの潜入捜査の刑事ガーボウ(レスリー・チャン)と香港で出会う。
 瓜二つ、そして潜入捜査、香港映画お得意のシチュエーションに超人気俳優のレスリー・チャンを入れて、ラブ・ストーリに仕上げたという感じ。まあ、ストーリもどうでもいい感じだし、単なるアイドル映画かなあ。瓜二つなんて設定はあんまり活かされてなかったし。
 しかし、あれで42歳とは恐るべしレスリー・チャン。

→ 「もういちど逢いたくて/星月童話」 Official Website


「ゴールデンボーイ」 - Apt Pupil -

 ブライアン・シンガー監督、スティーブン・キング原作、イアン・マッケラン、ブラッド・レンフロ。

 16歳の優等生のトッドは(ブラッド・レンフロ)は密かにホロコーストに興味を持っている。偶然に、元ナチス将校クルド・ドゥサンダー(イアン・マッケラン)を発見したトッドは、彼に近付き、直接に残虐行為の話を聞く事を試みる…。
 キングの原作は面白かったけど、映像にしてみると結構地味。もっと映画的な冒険をしてもいいと思うのだけど、映画化としては成功しているとは思えない。
 登場人物は、ほぼ二人のみ。原作では、その残虐行為の心理を聞く、話すという描写が、誰しもの心の底にある悪意を露呈するようで恐かった。しかし、そういう微妙な心理描写が出来てはいない。
 さすがに、「ユージュアル・サスペクツ」みたいな秀作を作るブライアン・シンガーといえども、原作のパワーには勝てなかったという事か。

「ゴールデンボーイ」 Official Website


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