2002年1月


「ヴィドック」- Vidocq -☆

 ピトフ監督、ジェラール・ドパルデュー、ギヨーム・カネ、イネス・サストレ、アンドレ・デュソリエ、ムサ・マースクリ、エディット・スコブ、ジャン=ピエール・ゴズ、 イザベル・ルノー、ジル・アルボナ。
 
 1830年7月、泥棒から英雄となった探偵ヴィドック(ジェラール・ドパルデュー)が、"鏡の顔を持つ男"とのガラス工場での戦いで命を落とす。失意の相棒ニミエ(ムサ・マースクリ)、ヴィドックの伝記を依頼されていたエチエンヌ・ボワッセ(エチエンヌ・ボワッセ)は死の真相を求めて、捜査を開始する…。
 
 全編ハイビジョン・カメラHD24pによるデジタル撮影、それを活かした凝った影像が素晴らしい。部分的にはDVカメラ(TRV900?)を使っているらしく、監督に言わせれば気づかないだろうという事だけどやっぱり質が悪くて気になる。19世紀始めのフランスという時代の、細かい美術や道具立てが影像と共に印象的。
 物語はややこしいながら、上手くテンポよく作っていて楽しめる。出だしからドパルデューの思いがけないアクションには驚かされた(ほとんどスタントだけど)。楽しめた。
 
「ヴィドック」Official Website


「耳に残るは君の歌声」- The Man Who Cried

 サリー・ポッター監督脚本、クローディア・ランダー=デューク、ジョニー・デップ、ケイト・ブランシェット、ジョン・タトゥーロ、ハリー・ディーン・スタントン。

 1927年、ロシアの寒村からフィゲレ(クローディア・ランダー=デューク,リスティーナ・リッチ)の父(オレグ・ヤンコフスキー)は米国へ出稼ぎに出る。ユダヤ人迫害が始まりフィゲレは一人英国へ。大人となったフィゲレはパリでコーラスガールとなり、野心家のローラ(ケイト・ブランシェット)と同居を始める…。

 サリー・ポッターらしい静かな展開ではあるが、その奥底に歴史のうねりや心理の葛藤が感じられる演出は上手い。
 クリスティーナ・リッチの「アダムス・ファミリー」、「バッフォロー'66」「Dear フレンズ」と子供時代から通じて、クールでありながら奥底での炎が感じられる演技がいい。
 そういえば、リッチとディプのコンビは「スリーピー・ホロウ」とニ度目。
 
 成長後のクリスティーナ・リッチと子役のクローディア・ランダー=デュークの目の力強さと悲しさが似ていて印象的。

「耳に残るは君の歌声」Official Website


「シャンプー台の向こうに」- Blow Dry -

 パディ・ブレスナック監督、サイモン・ボーフォイ脚本、ジョシュ・ハートネット、レイチェル・リー・クック、アラン・リックマン、レイチェル・グリフィス、ナターシャ・リチャードソン。

 全英ヘアードレッサー選手権が開かれる事になったヨークシャーの小さな町キースリー。この地の美容院で働くブライアン(ジョシュ・ハートネット)、その父フィル(アラン・リックマン)は選手権二連覇した事がある名人だが、母シェリー(ナターシャ・リチャードソン)がヘアモデルのサンドラ(レイチェル・グリフィス)と家を出てからは自暴自棄の生活を送っていた…。
 
 見方によってはスポ根的美容院の単純なドラマだけど、まとめ方がなんとも上手い。ヘアードレッサーというモノを派手に上手く演出している手腕があるのは当然としても、その背景にある人間ドラマと、それを見つめる視線の暖かさが物語全体を格調高くしている。
 「パール・ハーバー」より前のジョシュ・ハートネットは「パラサイト」の繊細な不良少年風の木訥とした味があるし、俳優みんながいい味を出し、それがうまく組合わさっている。


「仄暗い水の底から」

 中田秀夫監督、鈴木光司原作、黒木瞳、菅野莉央、小口美澪、水川あさみ、小木茂光、徳井優、谷津勲、小日向文世。

 離婚訴訟中の淑美(黒木瞳)は、娘の郁子だけは渡したくないと自活のために古いマンションで新生活を始める。しかし、天井のシミからの水滴、いないはずの子供の足音と奇怪な現象に悩まされる…。

 「リング」の中田&鈴木コンビで期待。原作の短編の印象はちょっと弱く不安だったが、それをふくらませてちゃんとしたストーリにしているのは立派。親子愛を基本テーマにする鈴木光司の意図を上手く活かして、子供と引き離されそうになる親の心理と不安定感がいい。
 ホラーとしての技術は、「リング」から進歩が感じられないが、今回は絡みつく様なしつこい水の使い方が怖い。この辺は瀬々敬久「KOKKURI/こっくりさん」、「雷魚」を連想させた。

→「仄暗い水の底から」Official Website
原作「「仄暗い水の底から」感想


「ハリー・ポッターと賢者の石」- Harry Potter and the Philosopher's Stone -

 クリス・コロンバス監督、J.K.ローリング原作、ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ジョン・クリーズ、ロビー・コルトレーン、リチャード・ハリス、アラン・リックマン、 マギー・スミス、ジョン・ハート。

 両親が事故で亡くなり、叔母の家の階段下物置で育つハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)。11歳の誕生日に魔法学校ホグワーツからの入学許可書が届き、寄宿舎で魔法の修行を始める…。

 同名原作の映画化。予告編では、かなり原作のイメージをうまく再現していたので期待度満点。確かにテンポも影像も面白かった。現代的なスピード感ある小説を、またうまく映画化していると思う。子供だましになっていないのは原作と同じ。
 ただ、原作の方がもうちょっとホノボノ感が漂っていた気がするけど。次回作も期待。

「ハリー・ポッターと賢者の石」 Official Website
原作「ハリー・ポッターと賢者の石」感想


「バニラ・スカイ」 - Vanilla Sky -

 キャメロン・クロウ監督製作脚本、トム・クルーズ、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、カート・ラッセル。

 ニューヨーク出版界の成功者デビッド(トム・クルーズ)。体だけのつきあいのジュリー(キャメロン・ディアス)がいたが、あるパーティで知り合ったソフィア(ペネロペ・クルス)にひかれる…。
 
 「オープン・ユア・アイズ」のリメイク。オリジナルよりはずっと判りやすくなっていながら、オリジナルの面白さを残しているのには好感が持てる。題名になっている空の色の使い方など上手いし。
 それでも、安易なリメイクには疑問がちょっとあるけど。

→ 「バニラ・スカイ」 Official Websie


「スパイ・ゲーム」 -Spy Game -

 トニー・スコット監督、ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット、キャサリン・マコーマック

 1990年中国、厳重な警備の刑務所、CIAエージェントのトム・ビショップ(ブラッド・ピット)が捕らえられる。CIAの作戦担当官として数々の伝説を築き上げ引退しようという日、ネイサン・ミュアー(ロバート・レッドフォード)は48時間以内にビショップを救出しようと奔走する…。

 「トップ・ガン」などのトニー・スコットじゃ、あまり期待はしていなかったからいいけど、やっぱりイマイチ。奪還作戦自体はたいして面白くもなく、CIA内の政治的駆け引き、騙し合いが中心。アクションでは無く知的サスペンスで組み立てるなら、もうちょっと工夫が欲しかった。
 
「スパイ・ゲーム」 Official Websie


「光の雨」

 高橋伴明監督、立松和平原作、萩原聖人、裕木奈江、山本太郎、塩見三雀、大杉蓮

 全共闘世代の樽見省吾(大杉蓮)により映画化される事になった連合赤軍事件を描いた「光の雨」。33歳の若手監督阿南満也(萩原聖人)はそのメイキングの監督をすることになる。役者は事件を知らない20代ばかり。極寒の知床でのロケが始まる…。

 映画中の役者が事件を、人物の心理を理解しようとしながら、同時に反発する部分が面白い。映画製作というクッションを一回置く事により、事件をより主観的に見られるという技法が効果的。山本太郎、裕木奈江の自己批判による恐怖政治なんか恐ろしかった。面白い映画だった。
 観客はいかにも一癖ありそうな全共闘世代に占められていたのが印象的。
 
「光の雨」 Official Website


「青い夢の女」- Nortal Transfer -

 ジャン=ジャック・ベネックス監督、ジャン=ユーグ・アングラード、エレーヌ・ド・フジュロール、ミキ・マノイロヴィッチ、ヴァレンティナ・ソーカ、ロベール・イルシュ、イヴ・レニエ。

 精神分析医のミッシェル・デュラン(ジャン=ユーグ・アングラード)、患者の窃盗癖があり夫の暴力に快感を感じるオルガ(エレーヌ・ド・フジュロール)。彼女の話を聞くうちに眠りに落ちたミッシェルは、夢の中でオルガの首を締め上げる…。
 
 前作のベネックスは映画祭で見た「IP5」。8年も撮ってなかったのか。期待半分、不安半分であった。予告編でもどういう映画か正体がつかめないし。
 ヒッチの「ハリーの災難」的か、ミステリーであり、サスペンスであり、コメディでありどれでもない不思議な味わい。でも、「IP5」や「ベティ・ブルー」のような切れ味は感じられなかった。 色彩感覚は相変わらず凄いけど。

「青い夢の女」 Official Website


「劇場版とっとこハム太郎〜ハムハムランド大冒険」

 河井リツ子原作、樋口真嗣CG監督。
 ロコちゃんの誕生日に一緒にいられなくて落ち込んだハム太郎。突然現れたふしぎな妖精ハム・ティンクルに、人間と話す事が出来るようになるという「魔法のヒマワリのタネ」があるというハムハムランドに連れて行ってもらう…。
 ほとんど評価不能。子供だましだってもうちょっとマシに作れるだろうに。ミニミニなど、モー娘を使っているのがちょっと新鮮なくらい。
 樋口真嗣CG監督というのには驚いたが、特に面白い場面では無かった。「ゴジラ」目当ての客には辛い時間だった。


「ゴジラ・モスラ・キングギドラ〜大怪獣総攻撃」

 金子修介監督、新山千春、宇崎竜童、小林正寛、仁科貴、南果歩、大和田伸也、村井国夫、渡辺裕之、天本英世

 ガメラを見事に復活させた金子監督が今度はゴジラというので、これは観ない訳にはいかない。どうゴジラを料理するのか興味津々。
 基本設定に驚いた。何しろ、1954年のゴジラの以外を全面的に否定。歴史を作り直そうという意気込みが感じられる。そして悪役ゴジラの復活に拍手。でもゴジラに対する護国三聖獣、キングギドラ、モスラ、バラゴンは弱すぎ…。今後の展開はちょっと興味が持てる。

「ゴジラ」Official Websie


「修羅雪姫」

 佐藤信介監督、樋口真嗣特技監督、ドニー・イェン=アクション監督、釈由美子、伊藤英明、佐野史郎、沼田曜一、嶋田久作。

 歴史の異なる別の世界、元は隣国の近衛兵でありながら、反政府組織鎮圧のための暗殺集団と化した建御雷家。その末裔、冷徹な刺客に育てられた雪(釈由美子)は、組織を追われる身となり、反政府組織の青年隆(伊藤英明)と出会う…。

 監督はともかく、特技監督が樋口真嗣、アクション監督のドニー・イェンなら見ない訳には行かない。予告編でも、釈由美子はかなりいい感じ。
 感想としては、アクションはちょっと力不足か。香港映画でドニー・イェンが見せる生のパワーが感じられない。それでも演出、短いカット、スタントマンに助けられて上手く仕上がってはいる。ちょうど「ゼイラム」の時の森山祐子みたいな感じ。
 ストーリや世界観は深みがありそうで、実は上っ面だけで気に入らない。もっと主義主張を入れこんでしまった方が面白かったのに。

→ 「修羅雪姫」 Official Website


「アトランティス/失われた帝国<日本語吹き替え版>」

 ゲイリー・トゥルースデイル+カーク・ワイズ監督、声優はマイケル・J・フォックス、ジェームズ・ガーナー、クリー・サマー。日本語吹き替え版は長野博、木村佳乃、高島礼子、内藤剛志、吉田美和、柴田理恵。
 1914年、地図製作者で言語学者のマイロは、亡き祖父の友人、大富豪ウィットモアが計画する探検隊に誘われる。ローク隊長ら各分野のエキスパート9人たちと潜水艦ユリシーズ号で伝説の古代都市アトランティスに向かう…。

 普通の映画でいえばストーリ的にはそれほど文句が無いのだけど、ディズニーとするとちょっと違和感を感じる。悪人は多く、無駄死が多く、裏切りもあるし、なんかディズニーらしい夢ってものが無い。物語としてはちゃんと整っているんだけど。
 日本語吹き替え版を見たけど、なんか長野博のファンばかりだった気がする。
 CGIの使い方は美しさスピード感も上手い。

「アトランティス」 Official Website


「シュレック<字幕スーパー版>」- Shrek -

 アンドリュー・アダムソン+ヴィッキー・ジェンソン監督、声優はマイク・マイヤーズ、キャメロン・ディアス、エディ・マーフィ、ジョン・リスゴー。日本語吹き替え版は濱田雅功、藤原紀香、山寺宏一、伊武雅刀。

 人里離れた沼に暮らすシュレックは、その怪物の姿で村人にも恐れられていたが、内面は繊細な心の持ち主。静かに一人暮らす沼の生活が突然、支配者ファークアードから逃げてきたおとぎ話の登場人物たちに邪魔される。シュレックは沼を取り戻すためドンキーと共に、ドラゴンの城に囚われているフィオナ姫を助け出しに向かう…。

 パロディの味が効いていて、かなり笑える。特にフィオナ姫と小鳥のシーンが最高。最後にうまくまとまると思いきや、毒が効いているラストもいい。
 全体にはディズニーを意識したパロディになっているけど、批判的ではなく上手く茶化した作りで、上手いバランスになっている。CGアニメーションとしては、自然な作りで上手い。
 観たのは字幕版だけど、エディ・マーフィの強烈なしゃべりに山寺宏一は対抗出来たのかな。

「シュレック」 Official Website


「メメント」- Memento - ☆

 クリストファー・ノーラン監督、ガイ・ピアース、キャリー・アン・モス。
 主人公、元保険調査員のレナードは、妻を殺害された後遺症で10分間の記憶しか持たない。ポラロイドとメモ、重要な事項は体に入れ墨をし、妻を殺した犯人ジョン・Gを追っていく。

 映画自体が、少しずつ時間をさかのぼり全容が見えてくるという異色の手法。ブリエ監督の「美しすぎて」でも全体をバラバラにして再構成していたりして、この技法についてはそれほどの新鮮さは感じなかった。でも10分間の記憶と時間の逆行とストーリに対するミステリー性というものを上手く組み合わせている。集中力を要するけど、その分かなり面白い。
 同じ監リストファー・ノーランが監督・脚本・製作・撮影・編集の1人5役をこなしたという「フォロウィング」も似た様な手法らしいが、見逃してしまったので残念。次の作品で、どういう手を見せるかちょっと楽しみ。

「メメント」Official Website


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