'98年4月


「フラバー」- Flubber -

 1961年の「うっかり博士の大発明 フラヴァ」(The Absent-Minded Professor)のリメイク。「フラヴァ」、続編「フラヴァ・デラックス」、「テニス靴をはいたコンピュータ」「赤ひげ大旋風」(?)など、ディズニーは実写でも面白いのを沢山作っていたけど、このオリジナルも大好きだった。

 で、今回のリメイク。結果的には満足。フラバーのダンスシーンのILM製CGなどは余計で、別になくてもいいかなと思う。全体に貫くディズニーの科学に対するペシミズムが現代では貴重に感じて、楽しい。
 ウィーボというキャラクタもいい味が出ている。そもそも、フラバーの発明よりもウィーボの方がずっと大発明みたいな気がするが(^^;)。

 ところで、何故かマッド・サイエンティストの映画は朝の場面で珍発明が朝の仕度をするシーンから始まる。これは伝統なんだろうか??この「フラバー」もそうだし、オリジナルもそうだったかもしれない、「チキチキ・バンバン」もそうだったし、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」もそう。不思議な事だ(^^)。


「大安に仏滅!?」

 和泉聖治監督、橋爪功、吉行和子、酒井美紀。「お日柄もよくご愁傷さま」に続いて この3人、和泉聖治、橋爪功、吉行和子のコンビ。シリーズと見ていいでしょうか。

 前作の「お日柄…」は、結婚、出産、葬式が同時に重なるドタバタな状況で家族というものを問い直すという、結構面白い設定。その設定が活かしきれているとは思えなかったけど、まあまあの出来だった。
 今回の「大安に仏滅!?」は、念願のマイホームが手抜きの欠陥住宅だった事から判ってくる、家族関係の問題が焦点。少なくとも、欠陥住宅という設定はかなり面白かったのだけど、ラストの方のまとめ方は、まるで収束しているようには思えなかった。なんか、脚本の練りが足りないのでしょうか?ちょっと残念。ま、和泉聖治ってこの程度なのか??


「四月物語」☆

 岩井俊二監督、松たか子主演。1時間7分と短い。

 岩井俊二は好きだけど、松たか子主演というだけでちょっと躊躇してしまう。しかし、これは面白かった。ちょっと勘弁してくれという様な、甘ったるさはあるけど、少女漫画的な設定を、言葉少なに展開していく様がなかなか見事。心のうちをラストまでひっぱる所もうまい。
 松たか子は、とにかくいい感じだった。セリフが少ないのが幸いだったのかな(^^;)。まあ、新学期のちょっとした不安感はうまく出ていたし。


「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」- Good Will Hunting - ☆

 ガス・ヴァン・サント監督、ロビン・ウィリアムス、マット・デイモン主演。ロビン・ウィリアムスのアカデミー助演男優賞受賞作。

 天才的な頭脳を持ちながら、人との間に壁を作り社会と折り合っていけない青年ウィル。彼のカウンセラーとなるはみ出し者のロビン・ウィリアムス演じるカウンセラー。二人の心の交流という、図式的にはそれほど珍しくはないのだけど、二人の心の触れ合い方は、有る種過激であり新鮮味がある。会話の時の交互アップなど、ワザと不安定な画面構成で緊張感があるいいシーンを作っている。「羊たちの沈黙」を連想させるような。

 幼児期の虐待による心理的なカセという、アダルト・チルドレンの特性を持つウィルはちょっと平凡な設定だけど、そこに天才的頭脳というひとつ面白い要素を取り入れる事により、話がバツグンに面白くなっている。

 ウィルとカウンセラー、ウィルと恋人、ウィルと友達、ウィルと大学教授の多くの関係を扱いながら、うまくまとまっている。面白かった。


「ポストマン」- The Postman -

ケビン・コスナー監督、制作、主演。

 カタストロフィ後の世界という、一つのSFのジャンルとしてこの原作が好きだった…そういえば、「ウォーター・ワールド」もそういう世界だったか。

 しかし、この映画は駄目。確かに米国建国の精神と郵便という、原作のいい部分は多少は残っているけど、もう、ケビン・コスナーの一人舞台という感じで、彼のファンじゃないと面白くないでしょう。

 予告にも出てくる走る馬に手紙を手渡す少年はコスナーの実の息子。あと、娘二人も出てくる。この内輪っぽさが許せない。でも、いい役で出てくる長女アンは、なかなか度胸も座っていて、いい役者かもしれない。

 最後のシーンは、これはもう爆笑もので、冗談としか思えない。何を考えると、ああいうシーンを作れるんだろうか。この映画は大コケになる方が、彼の為でしょう。


「F<エフ>」

 「ガメラ」から離れた、久しぶりの金子修介映画という事でちょっと期待はしていたのだけど…熊川哲也主演という事で腰が引ける(^^;)。おまけにヒロインが羽田美智子とくれば、普通は観ないよなあという事になってしまう。

 でも、結果的にはまあまあよい映画だった。熊川哲也の芸達者なのには驚いた。多分、誰しも驚くと思うし、その嫌味な所はDJでまとめていて、うまく押さえたいい演出をしている。あんまり深く考えないで観ていたら、ラストの方の展開は結構意外で、あれあれ、こーいう映画だったのかあ、とちょっとヤラれたという印象。

 羽田美智子がメカ好きという設定がヘンだけど、秋葉原が出てくるし、村上里佳子の胸は大きいし、プラスマイナスでまあ、満足。


「サブダウン」 - Sub Down -

 監督がアラン・スミシーになっているという事は、誰かの匿名監督なんだけど、実際誰なんだろう?会社との軋轢なのか、その実態は知らないのだけど…。
(9904補足:監督はグレッグ・チャンピオン「天国に行けないパパ」など)。

 マイナー公開だけど、こういうのに佳作が混ざっているものである。見逃すともったいない。

 海洋調査隊の三人が、潜水艦に同乗。追突事故により閉じ込められた潜水艦からいかに脱出するかのパニックもの。潜水艦版「ポセイドン・アドベンチャー」という感じ。
 何故か無意味に犠牲になってしまう人がいたり、ヘンな部分も多いのだけど、結構うまい映画だなと思った。ラストは思った通りだったけど、設定をうまくつかってそこそこに作られている。


「ブレイブ」- The Brave -

 ジョニー・デップの初監督作品、主演、脚本。

 Braveは、ネイティブ・アメリカンの戦士を指す言葉。貧しさに負け、愛する家族を救うために殺人ビデオの仕事を引き受ける主人公ラファエル。死までの一週間の彼を坦々と描く。ストーリ自体は感動的なはずなんだけど、どうも退屈だった。主人公の感情がうまく伝わってこない。

原作「ブレイブ」の感想


「ディアボロス-悪魔の扉」- Devil's Advocate -

 キアヌ・リーブス、アル・パチーノ。

 アル・パチーノ演ずる悪魔のミルトン法律事務所。この設定がなかなかいい。しかし、全体としてはそれが活かされているとは言えない。キアヌ・リーブス演ずる不戦の弁護士ケヴィンがミルトン法律事務所に入り、その怪しさに気づいて行く過程がまったく面白くなくて、退屈。ラストも予想以上に平凡、陳腐。

 アル・パチーノのハイテンションな悪魔の演技に対して、キアル・リーブスがそれを受けられるほど存在感が無い。よって、どうもパチーノが浮いてしまっている。

 悪魔モノとしては、「エンゼル・ハート」や「ローズ・マリーの赤ちゃん」などの先例をうまく越えていないと思う。


「SADA」

 大林宣彦監督、黒木瞳、片岡鶴太郎、ベンガル、嶋田久作、椎名桔平。

 ご存じ、阿部定の物語だけど、事件はその一部であり、幼少の頃から事件までの定の半生を描いている。

 出だしはまるで鈴木清順のタッチかと思う。清順の日本的な様式美、また覗きカラクリの様な不可思議な世界。そんなイメージを狙っていたのかもしれない。しかし、何かセンス悪くて、どうも頂けない。大林の「HOUSE」あたりを思い出すセンス。退屈だった。


「MIND GAME」

 俳優の田口浩正の初監督作品。柏原崇、田辺誠一、鈴木保奈美。

 多重人格、心理操作、トラウマ、箱庭療法を盛り込んだサイコ・サスペンス。なかなか面白かった。
 特に箱庭療法の使い方がバツグンに上手い。最初の方で、トラックのオモチャを箱庭に置くシーンなんかゾクゾクしてしまった。一方、多重人格はありきたりで、ストーリ的に幅を与えているとは思えない。箱庭療法にもっと焦点を絞ると凄く面白くなったかと思う。ちょっと地味かもしれないけど。

 ラストはちょっとヒッチコックを意識しているのか??

 ところで、主演二人、柏原崇、田辺誠一はキャラクタが似ているので、なんか面白みが無い。


「ドーベルマン」

 ヤン・クーネン監督、ヴァンサン・カッセル、モニカ・ベルッチ、チェッキー・カリョ。

 出だしのスピード感、ビートの効いた音楽とともに凄くノレる。ただし、中盤はかなりダレる。ラストはまたまたいいノリを出してくれるんだけど。最初のスピード感を持続してくれると、凄い映画になったと思うだけに残念。
 仕掛けが派手な割には、強盗のターゲットが大した事ないのがちょっと笑える(^^;)。

 ヴァンサン・カッセル、モニカ・ベルッチのキャラクタが凄くいい。それに対して、刑事側はイマイチ面白く無い。特にサディスティックな刑事、チェッキー・カリョの役柄がイマイチ、中途半端で面白みがなかった。

 しかし、しかし、ヤン・クーネンは期待出来る監督でしょう。


「女刑事RIKO 聖母の深き淵」

 井坂聡監督、滝沢涼子、風間トオル、永澤俊矢。

 初日、舞台挨拶付きで観る。場内のほとんどは風間トオルのファンばかりで、花束の嵐。肝心の主演、滝沢涼子には、御義理程度の花しかなくて可哀想だった(;_;)。

 で、内容は…、何かよく判らない。これは「女刑事RIKO」はシリーズであって、この「聖母の深き淵」は第二作。何故か第一は完成しているのに未公開。この映画の興行成績いかんによっては公開するらしい。

 連続射殺事件の被害者のつながり、近所の公園の主婦、息子の保育所…、微妙な所でつながっていく関係が面白いのだけど、結局ラストは、え、これで終わりって感じ(^^;)。なんか、振りまいた複線も無意味なのが多かった気がする。

 第一作が前提となっていて設定がよく判らない。風間トオルと滝沢涼子の関係とか、探偵との関係とか、その他もろもろ。まあ、それが判ったとしても、ストーリ的には大して面白くなかった。

原作「聖母<マドンナ>の深き淵」感想


「名探偵コナン 14番目の標的<ターゲット>

 基本的にはコミック、TVシリーズそのままの雰囲気。ただし、トランプのカードを使った連続殺人事件と、映画向けにストーリは大仕立てになっている。

 まあ、殺し方とか、動機とか、相変わらず無理はあるけど、結構面白かった。


「ジャッキー・ブラウン」- Jackie Brown -

 クエンティン・タランティーノ監督、脚本。パム・グリアー、サミュエル・L・ジャクソン、ロバート・デ・ニーロ。

 パム・グリアーのクールなかっこよさと70年台ソウルの音楽、それだけは良かったけど、他はイマイチ。

 まあ、俳優としてはサミュエル・L・ジャクソン、ロバート・デ・ニーロ、ブリジット・フォンダ、マイケル・キートン、ロバート・フォスターと豪華ではあるけど、それほどうまく使われているとは思えない。

 実際、ストーリ的にもうちょっと期待していたのだけど、あまりに平凡でがっかり。ラストの駆け引きはコン・ゲーム的な面白さがあるけど、あまりにヒネリが無い。計画も粗雑。最後の方の三者から観たおのおののストーリを展開させる手法なんか、「羅生門」とか連想させて、もうちょっと何かあるのかと思ったんだけど(^^;)。


「エイリアン4」- Alien Resurrection -

 ジャン=ピエール・ジュネ監督、シガーニー・ウィーバー・ウィノナ・ライダー。

 「デリカテッセン」「ロスト・チルドレン」のジャン=ピエール・ジュネ監督を使うというのが意外だったけど、結果的にはよかった。ジャン=ピエール・ジュネ的な世界の展開と、エイリアンがうまく解け合っていたけ。しかし、基本的には「エイリアン」の怖さは無い。

 暗い画面、ネバネバとドロドロ、マッドな科学者、ヴィーバーとエイリアンのアヤシイ関係、標本にされた奇形、巨人、車いすの男…、もう同具建てがジュネの好みそのまま。その辺はいいんだけど、ストーリ的には結構地味だし、ラストも平凡。

 ところで、画面があまりにチカチカしていて、なんか疲れる(^^;)。ポケモン騒動があったから余計にそう感じる。


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