'97年9月


「ボディ・バンク」- Extreme Measures -

 不可解な死をとげた男の謎を追う緊急医療室(ER)の医師が主人公ヒュー・グランド。謎を追ううちに、調査に横槍が入り、見に覚えの無い罪を着せられ、大きな陰謀の臭いを感じる。まあ、よくあるパターンで新鮮味が無い。ジーン・ハックマンが悪役というのも新鮮味が無いか。

 舞台となるER、TVの「ER」と違った汚れて荒れているERがちょっと面白い(^^;)。
 ヒュー・グラントが真面目な演技をしていと、不思議な感じ。やはり、彼は「ウェールズの山」みたいなほのぼのとした映画の方が似合うなあ。

 「ネル」の監督、マイケル・アプテッドだけに、社会派で、医学の進歩とそれに伴う犠牲など問題は深いのだけど、ラストは結構あっさりと流してしまっているように感じる。

 しかし、邦題は隠された秘密そのままじゃないか(^^;)。


「マルタイの女」

 監督の伊丹十三自身の経験から、マルタイ(身辺警護の対象者)の映画を作る気になったらしいけど…、どうも、いつもの綿密な調査による面白さが無い。映画としては詰まらなくても「スーパーの女」でも、内輪の知られざる情報的な面白さがあったのに今回はあまりなかった。
 どちらにしても、宮本信子の女優も、ストーリも、演技も醜悪。つまらない。まあ、TVドラマ程度の出来でしょう。

 西村雅彦の使い方があまりにつまらないので唖然としました。あんな普通のキャラクタやらせても、味がまるで無い。


「心の指紋」 - Sunchaser - ☆

 マイケル・チミノ監督、制作。
 チミノの前作というと、「The Fugtive」じゃない「Desperate Hours」の方の「逃亡者」ですかね。もう7年も前になるんですが、ずっと作ってなかったんでしょうか。「心の指紋」もそれほど話題にはなってないと思うし。

 私はこの映画、なかなか気に入りました。末期癌に侵された凶悪犯の少年と、兄の死にトラウマを持つエリートの医師。人質と犯人という組み合わせの二人だがやがて心を通わせて、インディアンの聖地へと向かう。いかにも感動的ストーリだけど、主演二人の雰囲気が凄くマッチしていて、感情移入させてくれます。ちょっとテンポが悪い面もあるし、ラストの方が甘いかなって気もするけど、ロードムービとしては結構好き。もっとよくなったかもしれないけど。


日陰のふたり

 原作の英国の文豪トマス・ハーディ、有名なのは知っているけど今だ読んだ事ないです。恥ずかしながら。
 19世紀の英国、愛し合いながらも結婚してないために迫害を受けるいとこ同志の二人

が主人公。この二人を巡る苦悩がメインストーリなんだけど、なんか悲劇的なだけで、ちょっと乗れなかったです。特に、当時の時代の道徳観と違和感があるのか、感情移入出来なかった。二人の不幸は二人のわがままだけな気がして。逆に、子供達の悲劇の方が悲しかった。

 主人公の男は、大学を目指して一人学問に励むのだけど、受け入れられない。あの辺の感情の扱いがちょっと弱かった。
 酔って酒場で学生にラテン語で詩編(?)を読み聞かせる所なんか、かなり感動的シーンだったのに。


「バウンド」 - Bound - ☆

 インディーズ出身の監督なのかな、なんかあまり情報が無くて判らないのだけど、アンディ・ウォシャウスキー。監督、制作、脚本を一人でやっている所をみると、ほとんどインディーズ系と言ってもいいでしょう。

 ギャングの情婦と女泥棒の二人がレスビアンの関係で結ばれて、2000万ドルの強奪を企てる。二つの部屋という狭い空間の中で人を動かして作るサスペンスが、効果的。なかなか面白かったです。期待出来る監督じゃないかな。
 タイトルは、二つの部屋を仕切る薄い壁を意味しているんでしょう、多分。

(訂正) 監督製作脚本は、アンディー・ウォシャウスキー&ラリー・ウォシャウスキー。「マトリックス」の人。


「OL忠臣蔵」

 「夜逃げ屋本舗」の原隆仁が監督脚本。

 米国のバリバリのエリート(南果歩)が、日本の通販会社に乗り込み乗っ取りを図る。それを阻止しようと結束するOL6人。坂井真紀、細川直美、吉野公佳、中島ひろ子、井手薫、奥山佳恵。まあ、それなりにそれなりなんだけど、乗っ取りというと株の買い占めという構図が単純過ぎてつまらない。まあ、そう深く考える映画じゃないけど(^^;)。

 女優勢揃いさせた割には花が無かったです。坂井真紀が意外に健闘してました。吉野公佳の疲れたバツイチ子持の雰囲気が妙に合ってる。あの天才中島ひろ子がこんな端役をと涙が出ました(;_;)。


「アナコンダ」 - Anaconda -

 「山猫は眠らない」のルイス・ロッサが監督。「山猫…」もそうだけど、設定が十分に活かされないところが残念。凄く面白くなる可能性もあったのに。伝説の使い方とか不十分だし、最後の盛り上げ方とか常套手段過ぎるし。
 まあ、それなりには楽しめますが。

 巨大なアナコンダは、CGとアニマトロニクスの努力の結晶。特にCGが無ければあれほどの迫力ある動きは出なかったでしょう。逆にアニマトロニクスのシーンになると、質感も動きもリアリティを失ってしまって残念。無理だったかもしれないけど、全部CGでやればよかったのに。


「素晴らしき日」- One Fine Day - ☆

 四月にローマへ行った時に機内上映で観たのですが、その時にかなり気にいりました。機内上映では英語か吹き替えかしか選べないので、日本での公開を楽しみにしてました。
 これで合計三回観た事になるんですが、やはり面白いです。ラブ・ストーリとしてはお気軽だけどよく出来てますね。

 ミシェル・ファイファーと「ER」のジョージ・クルーニー。お互いバツイチ子持ち同士が知り合ってから恋に落ちてドタバタな一日の話。二人の子役がまた、うまくていいんですよね。
 個人的には、お勧めの映画です。

 関係無いけど、ミシェル・ファイファーは「バットマン・リターンズ」でキャットウーマンをやっているし、ジョージ・クルーニーは「バットマン&ロビン」のバットマンだし…もしかしたら、「バットマン」シリーズでも共演したかもしれない(^^)。


「釣りバカ日誌9」

 「男はつらいよ」の無き後、年寄り向けの映画はこれぐらいしかなくなってしまったのだろうか。まあ、それなりに人が入っているのは、そのせいかな。
 安心して観られるし、出来はそれほど悪くないし、まあ、いいでしょう。

 ハマちゃんの奥さんは浅田美代子だし、今回のゲスト女優が風吹ジュンという事で、かつてのアイドルの二人を同時に銀幕で観るのは感慨深いものがありました(^^)。


「フィフス・エレメント」- The Fifth Element - ☆

 今や大監督になってしまった、リック・ベッソンの新作。大作ではあるけど、この映画は彼の中ではかなり特殊な位置になるんじゃないかな。非常に気楽に、遊び心を出して作っている。これを超大作のSF映画を望んで観に行ってしまうと悲しいかも(^^;)。
 ちょうど、ティム・バートンにおける「マーズ・アタック」みたいな位置かな(^^;)。

 地球に迫る謎の宇宙生命体、そして火風土水に第5の要素が加わり最終兵器と変わる時…ってな広告がされているけど、この辺はまったくどうでもいい話(^^;)。だって、謎の危機も、最終兵器も実際はどうでもいい内容だもの(そもそもMr.シャドーって何だったんだ(^^;))。それよりも、ブルース・ウィリスの能天気な活躍や、ミラ・ジョヴォヴィッチの肢体や、ゲイリー・オールドマンのキレた演技、ヨーロッパ的エッセンスの強い未来的デザインを純粋に楽しむのが正解でしょう。

 「007」「スター・ウォーズ」「ブレードランナー」などなど、様々なパロディもなかなかいいです。純粋に楽しみましょう(^^)。


「ザ・ターゲット」- Shadow Conspiracy -

 チャーリ・シーン、リンダ・ハミルトン主演。ハミルトンは「ターミネータ」ではいい感じだったのだけど、その後、あんまりいい役が無い。ま、本人自身、ちょっと花が無い気がするが残念。

 監督は、「カサンドラ・クロス」「ランボー・怒りの脱出」「コブラ」などなど。まあ、最近の作品を見ていると大雑把なアクション映画が多い監督。

 チャーリー・シーンは大統領補佐官。ホワイトハウスの上層部の陰謀の一端を知り、自身も命を狙われる。
 ホワイトハウスが、スパイ衛星や盗聴システム、データベースを駆使して追い詰めていく所なんか、なかなか面白いのだけど、展開が遅く、テンポが悪い。なんか、同じ所をグルグルと追いかけっこしている印象。
 特に最後の暗殺方法なんか、あまりにアイデア倒れでチンケという気がします。


「キャッツ・アイ」

 林海象が監督。「夢見るように眠りたい」が好きなので、この監督、諦めきれないんだけど、駄作も多い(^^;)。これは、その駄作の中でもワースト1かも(^^;)。

 まあ、とにかくダルい展開と、下手な演技を延々と見せつけられると、これは同時上映「シャ乱Qの演歌の花道」の為にわざと詰まらなくしているのでは疑いたくなる程。
 見どころと言えば、三姉妹の藤原紀香、稲森いずみ、内田有紀のキャット・スーツ姿かな(^^;)。ほんとにそれだけ。


「ジャングル大帝」

 「もののけ姫」とぶつからなければ、もうちょっと親子連れも入ったと思うけど、実際、ガラガラでした(^^;)。

 このアニメのメイキングについてはよく知らないのですが、CGとか、オリジナルの「ジャングル大帝」の映像を使っているんですよね?最初のシーンの躍動感あるレオの動きの背景は、すべてCGで作っているし、その後のシーンもジャギーが見えたりして、古い映像をデジタル的に合成している気がします。
 ま、そんな事はどうでもいいのだけど、ストーリとしては月光石をめぐる人間達の争いとレオがメイン。息子のルネは、人間世界へと旅に出る。

 環境破壊や自然と人間との共存がメイン・テーマになっているのが「もののけ姫」と一致しているのが、ちょっと皮肉だけど、「もののけ姫」ぐらいとは言わないけど、もうちょっと注目されてもよかったのに。残念。


「シャ乱Qの演歌の花道」

 監督が滝田洋二郎だけあって、無難にうまくまとまっている。ほとんど期待してなかった分、楽しめた(「キャッツ・アイ」があまりにつまらなかったせいもあるけど)

 ロック・シンガーだった、つんく演じる乱之介。芸能プロにスカウトされるがそこはド演歌の世界。このデフォルメされた演歌の世界がなかなか楽しめる。これはネタとしていい所に目を付けたとしか言い様が無い。

そこはかとない演歌への郷愁も感じるところが、やはり日本人っぽい。ラストまで、演出や演技はかなり粗いけど、ノリで楽しめます。
 つんく演ずる乱之介に対抗するベテラン演歌歌手が、陣内孝則。陣内が元もとはバリバリのロッカーと考えると、この配役はなかなか素晴らしいです(^^)。

 森高千里が友情出演。森高が映画に出たのって初めてかなあ?? あと、シャ乱Qのたいせーは役者をやらせるとなかなか味がある事を発見した。


「私たちが好きだったこと」

 松岡錠司監督、宮本輝原作。
 岸谷五朗、寺脇康文が住む公団住宅に、酒場で知り合った鷲尾いさ子、夏川結衣が押しかけ男女4人の共同生活が始まる。
 不倫や不安神経症の現代的な悩みと愛情が交錯しドラマが展開。その結末もあまりに現代的、現実的。それぞれの生き方に納得する部分、反発する部分、それぞれがあるが、ドラマとしてななかなかよく出来ていると思った。ここは宮本輝の功績かな。

 夏川結衣のセンシティブな表情が、妙に役にはまっていた。


「殺し屋&嘘つき娘」

 「SCORE」などの俳優、小沢仁志が脚本、監督、主演。ビビアン・スー演じる娘のボディー・ガードを引き受けた小沢仁志演ずる殺し屋が主人公。タクシードライバーも絡み、逃走劇が始まる。

 全体として、小沢仁志の目指すハードボイルドのスタイルというモノは理解出来るのだけど、どうもテンポも悪いし、成功していない。全体には退屈だった。アクション自体も、平凡だったし。

 どうも、小沢仁志という俳優のアクの強さが好きじゃないから、余計にそう感じたのかもしれません。


Movie Top


to Top Page