2001年10月


「トレーニングデイ」- Training Day - ☆

 アントワーン・フークア監督、デヴィッド・エアー脚本、デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、スコット・グレン、トム・ベレンジャー、クリフ・カーティス。

 麻薬捜査課へ転属を希望した新人警官ジェイク・ホイト(イーサン・ホーク)は、ロサンゼルス市警の伝説的刑事アロンゾ・ハリス(デンゼル・ワシントン)ともに最初の24時間(トレイニング・デイ)を始める…。

 二大スター競演、新米刑事のバディものという平凡な展開を想像していたけど…これが硬派で緊張感のある展開、予想を裏切り素晴らしく面白かった。この映画が話題にならなくて一体どうする。
 デンゼル・ワシントンの悪人なのか、ヤリ手なのか、観客はどっちなのかよく判らないままにジェイクと共にストーリに引っ張られていく、この手腕が見事。俳優二人とも素晴らしい存在感。ラストも上手くまとまっている。

「トレーニングデイ」 Official Website


「GO」

 行定勲監督、宮藤官九郎脚本、金城一紀原作、窪塚洋介、柴咲コウ、山崎努、大竹しのぶ、山本太郎。
 在日韓国人の杉原(窪塚洋介)、あだ名はクルパー。元ボクサー父の秀吉(山崎努)はの教えで、喧嘩は24連勝中。本当の親友は映画、音楽、落語、小説に詳しい民族学校開校以来の秀才・正一(ジョンイル)だけ。ある日、杉原はヤクザの息子の加藤の誕生日パーティで桜井(柴咲コウ)に出会い、恋に落ちる…。

 金城一紀の直木賞受賞作「GO」の映画化。ストーリ的にはほとんど同じだけど、原作の俗っぽさと衒学趣味が上手く押さえられていて、影像もなかなかよくてテンポもあって楽しめた。後半は素直なカットだったけど、前半のカットの細かい繋ぎの方が勢いがあって面白い。
 ところで山本太郎は、「バトル・ロワイアル」に続いて、また高校生役なのは何故?。
 「ロミオとジュリエット」の"薔薇の名前"の台詞を使ったシーンなんか、かなり泣かせて上手い。

原作「GO」感想
「GO」 Official Website


「夜になるまえに」- Before Night Falls -

 ジュリアン・シュナーベル監督、ハビエル・バルデム、オリヴィエ・マルティネス、アンドレア・ディ・ステファノ、ジョニー・デップ、ショーン・ペン、マイケル・ウィンコット 。

 レイナルド・アレナス、1943年7月16日キューバにて生誕、幼年時代は極貧、カストロに熱狂したキューバ革命、20歳で作家デビュー、独裁政権下では、作家やホモセクシュアルは迫害され投獄、80年にNYへ亡命、エイズ発症、自殺…。自伝「夜になるまえに」を基にしている。

 主演のハビエル・バルデム、出てきた途端にホモセクシャルの香100%、ギラギラした目の光が凄い。 
 カメラワークがイマイチ、好きになれなかった。(リリイ・シュシュと連続して観たらかなり疲れた)


「リリイ・シュシュのすべて」

 岩井俊二監督、市原隼人、忍成修吾、伊藤歩、蒼井優、大沢たかお、稲森いずみ、市川実和子。
 ある地方都市、中学二年の蓮見雄一。学校ではいじめを受ける雄一にとって、彼の愛するリリイ・シュシュだけがリアルであり、自ら主宰するファンサイト「リリフィリア」だけが生きている事を実感させる場所だった…。

 この評価は困った。観たあとは凄くいいと思う部分と生理的に好きになれない部分が半々という感じだったのだけど、一週間ほど、いい感じの部分が繰り返し思い出される。結果的にかなりいい映画と評価せざるおえない。掲示板の書き込み表現など上手く使われている。でも、全体には岩井俊二、ちょっとヤリすぎって感じもする。映画にはもうちょっと希望が欲しい、かも。

「リリイ・シュシュのすべて」Official Website


「トゥームレイダー」- Tomb Raider -

 サイモン・ウエスト監督、アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・ボイト、イアン・グレン、ノア・テイラー、ダニエル・クレイグ。

 トレジャー・ハンターのララ・クロフト(アンジェリーナ・ジョリー)は、20年前に失踪した父のクロフト卿(ジョン・ボイト)の隠し部屋から不思議な時計を見つける。それが秘密結社イルミナーティーが追い求める、時空の扉を開ける鍵となるHolly Triangleの手がかりだった。5000年に一度のチャンス、グランドクロスが迫り、舞台はロンドンからベニス、アンコールワット、アイスランドへと移っていく…。

 ともかくはアンジェリーナ・ジョリーの魅力大爆発。あの唇と胸がこの映画の魅力の90%。ストーリ的には単純でかなり雑だけど、それを気にさせない女版レイダース的な魅力が十分にある。「ハムナプトラ」と並んで、能天気アクションものとしてシリーズ化して欲しいところ。

「トゥームレイダー」Official Website


「YAMAKASI ヤマカシ」- Yamakashi -

 アリエル・ゼトゥン監督、リュック・ベッソン原案脚本製作。
 「YAMAKASI」、メンバーは音楽好きのジクミュ(ヤン・ノウトゥラ)、踊り好きのタンゴ(ロラン・ピエモンテージ)、俊足のロケット(ギレイン・ヌグバ・ボイェケ)、ロープの名人スパイダー(ウィリアムス・ベル)、投てきの名手のエース(チョウ・ベル・ディン)、器械体操のイタチ(マリク・ディウフ)、リーダー格のブル(シャルル・ぺリエール)の7人。低所得者住宅に住む彼らは、子供たちのヒーローでもあったが、YAMAKASIの真似をした子供が危篤、彼の命を救うためにYAMAKASIが立ち上がる…。

 内容は単純、まあその点はいいとしてもYAMAKASIの肉体的な魅力が十分に出ていたかどうかというと、ちょっと疑問。ジャッキー・チェンと比べるのはナンだけど、極限ギリギリという感じがしない。動きはクールなんだけど、ホットさにやや欠けるかな。本人ではなく演出的な問題だけど。
 なかでもドーベルマンとの追いかけっこなんか、新鮮で面白かった。

「YAMAKASI ヤマカシ」Official Website


「千と千尋の神隠し」☆

 宮崎駿監督、声は柊瑠美、入野自由、内藤剛志、沢口靖子、夏木マリ、菅原文太。

 10歳の女の子、千尋が不思議な町に迷い込む。湯婆婆という強欲な魔女の支配する神様や妖怪が集まる湯屋で、名前を奪われ千という名前で働く事になる。千はハクや釜爺、先輩のリンに助けられ、懸命に働く…。

 7月公開なのに、あまりの混雑にこんなに観るのが遅れてしまったが…面白かった。予想を越えた想像の世界がどんどんと展開するパワーに脱帽。素晴らしいイメージ喚起力。昔で言えば、「不思議の国のアリス」みたい想像を超えた想像力が凄いの一言。アニメとしての映像も、色彩、光の使い方、動きなど、「もののけ姫」よりさらに一歩進んでいる。
 テーマ的には余りに単純だけど、元気が無い日本にはこんな単純さの方が明快でいいのかも。

「千と千尋の神隠し」 Official Website


「ドラキュリア」- Draculea -

 パトリック・ルシエ監督、ジャスティン・ワデル、ジョニー・リー・ミラー、ジェラード・バトラー、クリストファー・プラマー、オマー・エプス。

 ロンドン、ヴァン・ヘルシング(クリストファー・プラマー)が運営するカーファックス遺物館にマーカス(オーマ・エプス)率いる窃盗団が侵入、ドラキュリア(ジェラード・バトラー)が眠る銀の棺を盗み出す。それを追いニューオリンズへ向かうヴァン・ヘルシング(クリストファー・プラマー)、そして甥のサイモン(ジョニー・リー・ミラー)。一方、ニューオリンズのレコード店で働くマリー(ジャスティン・ワデル)は幻覚に悩んでいた…。

 現代モノのドラキュラものとして何も新鮮さは無かった。ドラキュリアの本当の正体ってトコは多分、一番の見せ場なんだろうけど、キリスト教に縁の薄い日本人には、ああそうって感じか。
 一番ヒドイと思うのはカーファックス遺物館の金庫。ドアは分厚い鋼鉄に暗号に指紋に網膜に、それだけセキュリティやっていながら、奥の壁が爆薬で簡単に吹っ飛ぶ(それもちょー薄い)てのは、どーいうこっちゃ。

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「陰陽師」

 滝田洋二郎監督、夢枕獏原作、野村萬斎、伊藤英明、今井絵理子、小泉今日子、真田広之。

 平安京、右近衛府中将・源博雅(伊藤英明)、当代切っての陰陽師・安倍晴明(野村萬斎)が陰陽頭・道尊(真田広之)の野望を阻止する…。
 基本的には滝田洋二郎の演出はまずくないと思うが、予算不足によるごまかしのチャチさが目立って全体の質を出せてないのが残念。伊藤英明は思ったより悪くなかったが、安倍晴明役の野村萬斎の顔はひょうひょうとした部分はいいが、細かい感情描写ではやはり映画向きでは無いなあ。特に泣きのシーン。何か凄く違和感がある。
  原作は読んでないが岡野玲子のコミックは読んでいるので、そっちの印象が強いかも。

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「コレリ大尉のマンドリン」- Captain Corelli's Mandolin -

 ジョン・マッデン監督、ルイ・ド・ベルニエール原作、ニコラス・ケイジ、ペネロペ・クルス、ジョン・ハート、デビット・モリシー、クリスチャン・ベール、イレーネ・パパス。

 ギリシャ・ケファロニア島、第二次世界大戦の占領軍としてやってきたイタリア軍アントニオ・コレリ大尉(ニコラス・ケイジ)たち。島の人々のイタリア兵への憎しみも薄れ、バカンスの様に島での生活を楽しみ、音楽を愛すコレリ大尉は、島の医者の一人娘ペラギア(ペネロペ・クルス)との恋に落ちる…。

 「恋におちたチェイクスピア」のジョン・マッデン監督の次作。確かにストーリもいいし、本質的には面白い。ただ、主演がニコライス・ケイジなのがとにかく残念。志村けん顔が恋を語ってもなあ…。
 「ハモンハモン」以来印象がなかったペネロペ・クルスは、「ブロウ」に続いていい役柄。ケファロニア島の自然や素朴な生活もいい…やはり問題は志村けん顔か…。

「コレリ大尉のマンドリン」 Official Website


「スコア」 - The Score -

 フランク・オズ監督、ロバート・デ・ニーロ、エドワード・ノートン、アンジェラ・バセット、マーロン・ブランド。

 プロの泥棒ニック・ウェルズ(ロバート・デ・ニーロ)は、恋人のダイアン(アンジェラ・バゼット)と表の家業のジャズ・クラブの経営に専念し、足を洗おうとしていた。ニックの盗品ブローカーで友人のマックス(マーロン・ブランド)は、ジャック・テラー(エドワード・ノートン)が計画したモントリオール税関の最後の大きなヤマをもちかける…。

 ロバート・デ・ニーロ、エドワード・ノートンとベテランと若手の性格俳優の対決が見所。しっかりしたヤマの描き方は緊張感や重厚さがあっていいのだけど、全体の古くささが二人を上手く活かしていない。おそらくはフランク・オズの仕事のせいか。花を添えるマーロン・ブランドはでしゃばりもせず、上手い存在感(体重もかなりの存在感)。どんでん返しの仕方は今ではあっさり気味で物足りない感じもするけど、スパっとして気持ちいい。

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「ブリジット・ジョーンズの日記」- Bridget Jones's Diary -

 シャロン・マグワイア監督、レニー・ゼルウィガー、ヒュー・グラント、コリン・ファース。

 ブリジット・ジョーンズ(レニー・ゼルウィガー)は32歳、出版社勤務、ロンドンのアパートで独り暮らし…独身貴族の実体はダイエットや禁煙もすぐに挫折、恋人もなく寂しい日々。実家の新年ターキー・カレー・パーティ(ってなんだ??)ではサエない弁護士マーク・ダーシー(コリン・ファース)を親に押しつけられ、仕事場では上司ダニエル(ヒュー・グラント)に気を引かれる…。

 微妙な年齢は万国共通か、共感しやすく非常に面白い線を狙い、そのブリジットを演じるレニー・ゼルウィガーは見事に成功させている。太り気味の体がいい。6Kg体重増やしての演技らしいが、酷な事ではあると反面、その成果は十分に感じる
 ラストはややロマンティックすぎるか…。同じトホホなOLだと、「ジャニスのOL日記」みたいな方が突き放していて好きだけど。
 世界中で500万人が読んだと言われる同名タイトルの原作は未読。ちょっと読んでみたいかも。

「ブリジット・ジョーンズの日記」Official Websie


「ブロウ」 - Blow -

 テッド・デミ監督、ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、フランカ・ポテンテ、レイ・リオッタ、ポール・ルーベンス。

 マサチューセッツ生まれのジョージ(ジョニー・デップ)は移り住んだカリフォルニアで、幼なじみのティナ(イーサン・ラブリー)、恋人のバーバラ(フランカ・ポテンテ)と共に、麻薬のビジネスを始める。マリファナの元締めゲイのデレック・フォーリール(ポール・ルーベンス)を紹介され、東海岸への流通、メキシコから小型飛行機での密輸などとその手を広げていく…。

 ヒッピー、フラワー・チルドレンなど時代的な背景のドキュメンタリーとしても面白いのが、「フォレスト・ガンプ」に似ている。70年代後半から80年代、コカインの実に80%以上がジョージのコカインルートを通じて持ちこまれていたというのが凄い。ジョニー・デップを始め、なかなかいい演技。マーサ(ペネロペ・クルス)の登場シーンの美しさと、その後の変貌なんかもかなりの見物。面白かった。

「ブロウ」 Official Website


「ウォーターボーイズ」

 矢口史靖監督脚本、妻夫木聡、玉木宏、三浦哲郁、近藤公園、金子貴俊、竹中直人
、杉本哲太、谷啓、柄本明。

 廃部寸前の唯野男子高校水泳部に残った鈴木(妻夫木聡)たちは文化祭でシンクロナイズド・スイミングをやるはめに。何故かイルカの調教師(竹中直人)の元に特訓に励む…。
 面白いという噂を聞いていたが、全体には余りの雑さに唖然。色々なポイントでの心理的な動きがまるで納得出来ない。矢口史靖は「アドレナリンドライブ」のギャグや、テンポの良さは味があったが、まっとうなドラマはダメじゃないかな。
 シンクロのシーンも個人的にはそれほど面白くも無かった。映像的には上手いんだけど。

「ウォーターボーイズ」Official Website


「ラッシュアワー2」- Rush Hour 2 -

 ブレット・ラトナー監督、ジャッキー・チェン、クリス・タッカー、チャン・ツィイー。

 「ラッシュアワー」の続編、監督と主演二人も同じ。休暇中のカーター(クリス・タッカー)とリー警部(ジャッキー・チェン)の香港から始まり、ロサンゼルス、ラスベガスへの舞台が移る。悪役は偽札スーパービル、米国大使館爆破の黒幕と思われていた香港マフィア「トライアッド」のリッキー・タン(ジョン・ローン)と、その殺し屋フー・リ(チャン・ツィイー)。最近、「初恋のきた道」「グリーン・ディスティニー」と乗っているツィイーが悪役で頑張っている。ジョン・ローンは、まったく平凡になってしまった。
 前作よりも、テンポもノリもずっとよくなっていて楽しめる。

「ラッシュアワー2」Official Website


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