2001年1月


「アンブレイカブル」- Unbreakable - ☆

 M・ナイト・シャマラン監督、ブルース・ウィリス、サミュエル・L・ジャクソン、ロビン・ライト・ペン。

 デヴッド(ブルース・ウィリス)は131名死亡の大列車事故のただ一人の生存者、そしてかすり傷も負わなかった…とここまでは予告編では判っていたが、まったく予想外の展開に追いついていくのがやっと。最初の字幕のアメコミとの絡みを前提に頭はフル回転、シャラマンの魂胆の先を行こうと集中して観たのでかなり疲れた…。
 結果的には楽しませてもらって、なかなかよかった。「シックス・センス」の時はアっという間にオチが判ってしまった時とは大違い。

 ただ、ホントなの?、単にイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)の幻想では?っという疑問は今だに残る。

「アンブレイカブル」Official Website


「弟切草」

 下山天監督、長坂秀佳原作、奥菜恵、斉藤陽一郎、大倉孝ニ、松尾れい子、minoru。
 
 別にいた本当の父親の遺産を突然受ける事になった奈美(奥菜恵)は、元恋人のゲーム会社社長の公平(斉藤陽一郎)と亡父の屋敷へと向かう。そこは深い山の中の弟切草におおわれた洋館…いかにも何か起きそうな設定だけど、そもそも元はスーファミの同名ゲーム。謎の屋敷、隠された部屋、隠しカメラなんてゲーム的な小道具に、外の世界とパソコンと携帯で連携して謎を解いていくなんて新しさはちょっと面白い。ラストはあまりに平凡で残念。
 すべてデジタルビデオでの撮影らしいが、映像がチャチくて疲れるのが難。奥菜恵は随分と老けてしまって驚き。

 この映画はPG-12指定、同時上映「狗神」がPG-15というのは理解出来ない。窓口に並んでいた中学生が入れないで可哀想だった。


「狗神」

 原田眞人監督脚本、坂東眞砂子原作、天海祐希 、渡部篤郎、山路和弘、深浦加奈子、遊人、矢島健一、淡路恵子、藤村志保 。

 高知の山村、紙漉きをして暮らす美希(天海祐希)は村人達から忌み嫌われる狗神筋の家系。ある日、村に小学校教師として青年奴田原晃(渡部篤郎)が現れた頃から奇怪な事件が起きはじめる…。
 監督が「金融腐蝕列島・呪縛」の原田眞人というのが意外であり、また期待だった。山の中の村の暗く、湿った感じなどさすがに上手い描写だった。

 原作と変えてある部分、特にラストは上手いと思う。どっちかというと原作の方がラストがスペクタクルで映画的ではあるが、それが違和感あったので、押さえた映画のラストは上手いと思った。ただ原作の冒頭の善光寺戒壇巡りのシーンが好きなので、無いのが残念。

「狗神」原作感想
「狗神」 Official Website


「ふたりの男とひとりの女」- Me,Myself & Irene -

 ボビー・ファレリー&ピーター・ファレリー監督、ジム・キャリー、レニー・ゼルウィガー、アンソニー・アンダーソン、モンゴ・ブラウンリー、ジェロード・ミクソン、クリス・クーパー、マイケル・ボウマン。

 チャーリー(ジム・キャリー)はロードアイランド警察勤続18年の謹厳実直な白バイ警官。抑圧され生活についに二重人格となってしまう。そんな時、アイリーン(レニー・ゼルヴィガー)の護送を任されるが…。
 下らなさ満点だけど「メリーに首ったけ」が結構面白かったのでちょっと期待。下ネタ、差別ネタの連発は相変わらず。ノリとしては「メリーに首ったけ」の方が好きだけど、まあ、楽しめる。下らないネタが好きじゃない人には勧められない映画。

「ふたりの男とひとりの女」Official Website


「ハート・オブ・ウーマン」- What Woman Want -

 ナンシー・メイヤーズ監督脚本制作、メル・ギブソン、ヘレン・ハント、アシュレー・ジョンソン、マーク・フュアースタイン。

 シカゴの広告代理店のやり手ニック(メル・ギブソン)の新しい上司はスカウトされてきたダーシー(ヘレン・ハント)。ニックは事故をきっかけに、女性の心の声がすべて聞こえる体になってしまう、というファタジクなラブ・コメディ。設定も上手いし、展開も上手い、飛び抜けた所はないけど、すべてが上手く収まっているラブコメとして、まあ楽しめる。
 しかし、「ヘレン・ハント」は「キャスト・アウェイ」「ペイ・フォワード」と大人気。

「ハート・オブ・ウーマン」 Official Websit


「アヴァロン」

 押井守監督、マウゴジャータ・フォレムニャック、ヴァデスワフ・コヴァルスキ、イエジ・グデイコ。
 
 バーチャル・リアリティの戦闘ゲーム「アヴァロン」、その孤高の女戦士であるアッシュが主人公。 
 アニメはともかく、実写になると押井守はイマイチな感じがするんだけど…今回は、「赤い眼鏡」なんかよりは映像的にも内容的にもずっとよかった。それでも世界観は平凡だし、ラストも面白くない。映像へ細部へのこだわりはヒシヒシと感じられてよかった。これでストーリが面白くなれば、と思うと残念。

「アヴァロン」 Official Website


「初恋のきた道」- 我的父親母親 - (The Road Home) ☆

 チャン・イーモウ監督、チャン・ツィイー、チェン・ハオ。

 父の訃報を聞いて華北の小さな村の故郷に帰ったルオ・ユーシェン。母は伝統の葬儀をすると言って聞かない。昔、村にやって来た新任の若い教師であった父のルオ・チャンユー(チェン・ハオ)に一目惚れする母チャオ・ディ(チャン・ツィイー)の純愛物語があった…。

 「グリーン・ディスティニー」のチャン・ツィイーの人気か、チャン・イーモウの名前か、驚くほど混んでいるのでなかなか観られなかった。映画としてはチャン・ツィイーの可愛さ、チャン・イーモウのストーリ・テーリングと非常にうまく噛み合いいい映画になっている。ラストの泣かせ方なんか心憎い程上手い。
 文革などほとんど匂わせるだけで表に出てこないが上手い使い方をしている。村の人々の、何でも自分で作ってしまうそんな素朴な生活が今の日本よりずっと文化的に見えた。第50回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品。

「初恋のきた道」 Official Website


「キャラバン」- Caravan - ☆

 エリック・ヴァリ監督脚本、カルマ・ワンギャル、ツェリン・ロンドゥップ,グルゴン・キャップ、カルマ・テンジン・ニマ・ラマ。

 チベット自治区、長男が死んだだめに、年老いた長老(ツェリン・ロンドゥップ)と孫パサン(カルマ・ワンギャル)は、塩と引き換えに穀物を得るためのキャラバン隊を率いて南への苦しい旅に出ようとしていた。嵐の前に出発しようとする若きリーダーのカルマ(グルゴン・キャップ)に対し、長老は占い通りの吉日出発を主張する…。

 ネパールが海外旅行ニ度目に行った国なので、ネパールやチベットの文化には凄く思い入れがある。ヒマラヤの自然、それを描写するカメラが素晴らしい。素朴な生活は悠久の時を経ても変化しないように思われるが、そこに忍び寄る新旧交代というドラマを上手く描き出している。面白かった。鳥葬のシーンがショッキング。

 フランスのセザール賞で最優秀撮影賞と最優秀音楽賞を受賞、アカデミー賞で最優秀外国語映画賞ノミネート作品。

「キャラバン」 Official Website
「Himalaya - L'enfance D'un Chef」 Official Website (仏語)


「リトル・ダンサー」- Billy Elliot - ☆

 スティーヴン・ダルドリー監督、ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ 、ゲアリー・ルイス,ジェイミー・ドラヴェン。

 舞台は1984年、イングランド北東部ダラム州の炭坑町。主人公はビリー(ジェイミー・ベル)11歳、母親は昨年亡くし、父親(ゲアリー・ルイス)、兄トニー(ジェイミー・ドラヴェン)は炭坑労働者でストライキの真っ最中。
 ボクシングの練習の後、バレエ教室に飛び入り参加したビリーの踊りを見て、バレエ教師のウィルキンソン夫人(ジュリー・ウォルターズ )はダンスに対する情熱と才能を見抜く…。
 淡々とした表現の中に隠された、情熱が感じられる様で実に上手い。「遠い空のむこうに」も「ブラス」もそうだが炭坑の町という閉塞感、そこからの開放されるためのエネルギーがヒシヒシと感じられる。
 父親の存在感が非常にいい。今、邦画で存在感がある父親の映画があるだろうか。

「リトル・ダンサー」 Official Website


「流星」- 流星語 -

 ジェイコブ・チャン(張之亮)監督、レスリー・チャン(張國榮)、エリクソン・イッブ 、ティ・ロン、キャリー・ン、キーキー。

 株の大暴落で財産、仕事、恋人をすべて無くした元証券アナリストのウェイ(レスリー・チャン)は、ランが経営するオンボロの老人ホームの上で捨て子のミンとともに、バイトのその日暮らしをしていた。そして「こども未来基金」を設立しながら過去の心のキズのために子供たちに馴染めないリャン夫人と、ウェイ、ミンが出会う…。
 チャップリンの「キッド」がモデルらしい。まあ、人情物としてはありきたりなストーリではあるけど、レスリー・チャンの魅力と素直な作りで好感は持てるし、警官ルンの恋心など周辺の人々の小さなエピソードの作り方も上手い。
 
「流星」 Official Website


「追撃者」- Get Carter -

 スティーブン・ケイ監督、シルベスター・スタローン、ミランダ・リチャードソン、マイケル・ケイン、ミッキー・ローク。
 
 ラスベガスの取り立て屋をしているジャック・カーター(シルベスター・スタローン)は、弟のリチーが飲酒運転による事故死に疑問を持ち謎を追う…。
 主人公ジャックのキャラクタに魅力が無い上に、ストーリもドタバタしているだけで詰まらない。ネット上のポルノビジネスなんて新しさを入れているけど、ほとんど意味ないし、なんかどこにもいい所が無かった。そもそもシルベスター・スタローンはキレものには見えない、単なるチンピラ止まり。

「追撃者」 Official Website


「レッド・プラネット」 - Red Planet -

 アントニー・ホフマン監督、ヴァル・キルマー、キャリー=アン・モス、トム・サイズモア、ベンジャミン・ブラット、サイモン・ベイカー、テレンス・スタンプ。

 加速度的な地球の環境破棄により、人類が生き延びるために火星地球化計画が進められる。2050年有人探査艇「マーズ1号」は火星着陸寸前に太陽フレアによる事故に見舞われる…。
 謎の生物、狂ったロボットと、古典的ではあるけどSF要素が面白い。最近の火星モノ、デ・パルマの「ミッション・トゥ・マーズ」は「2001年宇宙の旅」的テーマで失敗していたけど、この映画はスタンダードに、硬派で勝負している所に好感が持てる。
 女性の船長ボーマン (キャリー=アン・モス)のタフさはしびれる、ロボットAMMEのデザインははかっこいい。

 ラストはこんなんでいいの、とちょっと納得出来ないけど、その他の硬派なSF部分でほぼ満足。

→ 「レッド・プラネット」Official Website


「バトル・ロワイアル」

 深作欣二監督、高見広春原作、深作健太脚本、藤原竜也、前田亜季、山本太郎、安藤政信、栗山千明、柴咲コウ、ビートたけし。

 基本的には原作と一緒の展開。原作より面白いと思ったのは、女子の制服のデザインぐらいか(^^;)。
 七原秋也の藤原竜也)は情けなく平凡、中川典子の前田亜紀はかわいいけど活躍どころ少ない、相馬光子の柴咲コウの恐さはいい感じ、千草貴子の栗山千明もちょっと活躍してない、川田章吾の山本太郎が中学というのは無理があるが頑張っている、桐山和雄の安藤政信は勢いだけ、ビートたけしのロリータ趣味はなんだかなあという感じ。
 話題性はあったけど、映画的には面白みが無かった。

「バトル・ロワイアル」原作感想
「バトル・ロワイアル」 Official Website
前田亜季オフィシャルページ


「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」

 手塚昌明監督、鈴木健二特殊技術、田中美里、谷原章介、伊武雅刀、星由里子。

 G対策本部の対ゴジラ戦闘部隊"Gグラスパー"の隊長辻森桐子(田中美里)、物理学者吉沢佳乃(星由里子)若き発明家工藤元(谷原章介)は、マイクロブラックホールによる兵器「ディメンション・タイド」によりゴジラを消し去る計画を立てる。しかし実験中の時空の歪みから生まれた巨大昆虫から超翔竜メガギラスが誕生、ゴジラとの対決が始まる…。
 「ゴジラ2000ミレニアム」から、ゴジラも多少見られるような映画になって来た気がする。今回は監督も代り、新ガメラ・シリーズのパクリっぽさも強いけど、随分と面白くなっている。
 しかしブラックホール砲というのが凄い。凄すぎる。ゴジラどころの驚異じゃない気がするが…。

 ラドンに登場した巨大トンボが、メガギラスまでの発展するとは…ゴジラ・シリーズ恐るべし。

「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」Official Website


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