'97年7月


「うなぎ」

 なんでこれでカンヌのパルムドール?という印象を受ける人が多いと思うけど、私も同じ。
 いい所は、今村昌平監督も俳優も実に力を抜いてのびのびしている所。それだけに、緊張感を感じないし、物足りなさもある。話としても面白いし、役所広司、清水美砂も悪くない。でも、やっぱりモノ足りない。


「ウェルカム・ドールハウス」

 1996年のサンダンス映画祭国際批評家連盟賞受賞作。トッド・ソロンズ監督。

 ブス、レズ、バカと、学校全体からいじめにあって、家族からも見放され、確かに容姿も性格も悪い主人公の中学生(^^;)。友達は近所の小学生だけ。監督の視点は、主人公に愛情を注ぐでもなく、客観的な位置から突き放して見つめる。いじめは陰湿だけど、そこに悲愴感は感じられない。何か、とても不思議な視点、不思議な映画。でも、面白い。

 しかし、あのファッションはなんなんだろう(^^;)。


「太陽に抱かれて」

 女性監督ミーラー・ナーイル、主人公は「いとこのビニー」のマリサ・トメイ。

 キューバーからフロリダへの難民、米国で暮らすために即席の家族を仕立てる。そこから生まれる愛憎とドラマ。
 ラテン系のノリで、ちょっと大雑把な感じ。もうちょっとドラマとしてきめ細かい所が欲しかった。単純ラテンのりの主人公マリサ・トメイは面白かったけど。


「学校の怪談3」

 学校の怪談は1,2と平山秀幸が監督やっていたけど、今度は「ガメラ」で注目度も高い金子俊介が担当。1はそれなりに好き、2はまるで子供騙しだったけど、3はまあまあ見られるかな。子供騙しという路線はあまり変わってないけど。

 先生役の西田尚美の演技は新鮮で面白い。どこかで見た様なと思っていたら、「ひみつの花園」の主人公だった。うーん、とぼけた感じはやはり素晴らしい。

 ちらっとだけ、野田秀樹が出てきたのには驚きました。


「もののけ姫」

 導入部から緊張感一杯の展開。最後まで実に面白かった。やはり、宮崎アニメはクオリティが異常に高い。他の追従を許さない感があります。特に今回の、霧、水、雲、霞といった自然描写のうまさと言ったら驚くばかり。ディズニーにも、このアニメでの自然描写の専門家がいて「ポカホンタス」などで腕をふるっていたけど、この「もののけ姫」の描写には舌をまくでしょう。

 自然と人間の共存関係という、「ナウシカ」から綿々と続くテーマとして見ると話は複雑。従来の様な単純な図式では見られなくなってます。より現実的な幕切れであるため、逆に「ナウシカ」などのような単純なハッピーエンドで終われずに、心にひっかかかるものがあります。どちらかというと、理想論、能天気なハッピーエンドの方が好きだった。

 舞台を中世期末の日本と解説しているけど、どちらかというと「ラピュタ」や「ナウシカ」の様な時代も場所も未知の世界観を持っています。藤原カムイの「雷火」の様な時代背景の方が感覚に近かったです。鉄文化との接点という意味で、より「雷火」との類似があるし。


「THE END OF EVANGELION」
新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に

 TV、前回の劇場版「シト新生」、今回の「THE END OF EVANGELION」と通して観ると、やはり庵野秀明、最後には逃げているなあという感想を持ちます。すべてを説明する必要も無いし、未知な部分は残っていいんだけど、個人的にはもうちょっとすっきりした謎を残して欲しかった。あまりに消化不良。多分、監督の内部でも同じじゃないかな。
 それはそれで、この監督の持ち味なんだけど(^^)。


「クローンズ」

 マイケル・キートン主演。自分の時間を有意義に過そうとクローン人間を作る。そこから生まれる騒動。

 これは映画としては失敗作だと思う。クローン人間が入り乱れるという一点の面白さだけで、他に設定の練りがまったくない。つまらない。

 ただし、個人的にはこの映画、楽しく観られた。それは、WOWOWのSFX番組でこの「クローンズ」の特集をやっていて、各場面の撮影の仕方などが確認出来たから。特にマイケル・キートンがマイケル・キートンにタバコを吹きかける所や、一人がビールを投げてもう一人がキャッチする所とか、撮影方法としては面白かった。

 ただし、やはり映画としては詰まらない(^^;)。


「鉄塔武蔵野線」

 長尾直樹監督、原作は銀林みのるの日本ファンタジーノベル大賞受賞作。長尾直樹の前作、「東京の休日」は実に詰まらなかった。

 鉄塔をたどって行くと何があるのか…、鉄塔武蔵野線の1号鉄塔を求めて小学生見晴と子分のアキラがチャリンコを駆る。○○の先には何があるのか、という素朴な疑問のネタとしては面白いし、興味なノリの展開も笑わせてくれて楽しい。

 しかし、終点へのたどり着く時とか、アキラのその後とか、父親の末路とか、なんかラストへ行けば行くほどギクシャクしてしまう。
 ちょっと面白かったけど、何か残念。

 終点を追い求めるというのでは、村上修監督、水原里絵(深津絵里)の「スティゴールド」を思い出させる所がありました。

「鉄塔」関連情報


「セイント」

 聖者の名前をかたる変装の名人、孤独な怪盗がヴァル・キルマー演ずるセイント。怪盗としては実に古典的な形。新しいのはPowerBookを駆使して、依頼人とメールのやり取りをする所ぐらいか(^^)。

 そこに核融合の発明、ヒロインの女性学者が絡む攻防。最初から最後まで古典的な人物像と展開で、ちょっと物足りないけど、まあ、お気楽に見られる映画ではあります。

 ロシア・ロケをかなりやってます。


「東京夜曲」

 市川準監督の新作。

 もう市川準は完全に自分のスタイルを確立してしまいました。第二の小津安二郎を目指しているのか、このかたくなスタイルへの固執は興味深いモノがあります。
 思えば、オムニバスの「ご挨拶」あたりではほとんどでき上がっていたスタイルでしょうか。「トキワ荘の青春」もそう。

 ストーリは語っても、ほとんど意味ないでしょう。大きな盛り上がりもない淡々とした展開とスタイルを楽しむ映画かもしれません。



「乱気流」- Thurbulence -

 予告編からの印象では、乱気流による航空パニックという単純な図式で見ていたけど、実はもっと複雑。殺人犯の護送、嵐への突入、スチュワーデスの活躍、なかなか面白いストーリでした。

 荒っぽい展開ではあるけど、航空機内の密室性をうまく使っていて新鮮。今までにない航空機の使い方をしています。思ったよりずっと面白かった。

 お願いだから、一度、この映画を機内上映で観てみたい(^^)。


「スター・ウォーズ/帝国の逆襲<特別篇>」
- The Empire Strikes Back:Special Edition -

 1の特別篇より、こっちの方が随分変更があった気がするけど、上映時間で見てみると5分しか伸びてないです。 雪原のシーンなんか、なかなか良くなってました。
 しかし、この続きもの風のラスト・シーン、これから次の「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐」まで3年も待たされたとは、今思い出しても気が長い話でした(^^;)。


「ロスト・ワールド - ジュラシック・パーク」
- The Lost World:Jurassic Park -

 試写会で観ました。

 原作は詰まらない印象があったのですが、映画は映画なりにまあいいんじゃないでしょうか。原作から、かなり荒っぽい変更の仕方ではありますが。
 と言うか、まるで違うと思った方がいいかも。

 登場人物を原作と比較してみると、マルカム博士、サラ・ハーディングは同じ。古生物学者のリチャード・レヴィンは出てこない(^^;)。レヴィンの助手の中学生ケリー・カーティスは、映画ではマルカムの娘になってます。その相棒は出てこない。 原作で一番好きだった、応用工学専門家ジャック・ソーンも出てきません。しかし、ソーンの助手である、エディ・カーは装備の専門家として出てきます。あと、重要な役として原作には出てこないハンター役のローランド・テンポがいます。

 登場人物でこれだけ違うし、内容も部分的に原作から拾ってるだけという感じ。ラストにいたってはまるで違います。恐竜映画から、怪獣映画になってしまってます。

 崖での車のシーンが、実に映画的な興奮を誘って気に入りました。特にあのガラスのきしみ方が最高。あのシーンがなかったら、この映画はまるで評価しなかったかも知れません。


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