これからどうなるのか?

社会というのは行為のやりとりによって成り立ちます。現在の我々の社会においては、感謝や尊敬のような抑制的態度ではなくお金との交換で社会的行為がやりとりされます。社会的行為を媒介するものが「抑制的態度」から「お金」に置き代わっていくことが経済の拡大です。経済成長が続くと社会全体から抑制が失われていき、その結果として様々な社会問題が発生すると考えられます。社会問題の解決には抑制が必要なので、問題を解決していこうとすると経済は縮小します。そういうわけで、今は経済システムは混乱しつつあります。では、今後はどうなるのでしょうか。

社会問題というのは社会の持つ矛盾の現れです。矛盾の解決には論理的な正解がないので大変ですが、正解がないからこそ自由であるとも言えます。自由というのは試行錯誤することで、試行錯誤には時間がかかります。要するに、社会問題の解決には時間がかかるわけです。また、社会問題というのは社会から抑制が失われることが原因だと考えられますが、抑制というのは身体で覚えるものなので、抑制を取り戻すのにも時間がかかります。つまり、社会問題の解決に最も重要なのは時間です。

現在の経済システムにおいては「時間をかけないこと」が重要ですが、今後は「時間をかけること」が重要になるでしょう。当面は何かに時間をかけることはあまりお金につながらないので、重要なのは「お金にならないことに時間をかける」意志です。なぜそんなことに時間をかける意志が生まれるのかというと、それが我々のやりたいことだからです。

経済の拡大が社会問題の発生につながるとしても、我々は大きな社会に暮らす以上、お金を廃止するわけにもいきません。問題は抑制の欠如ですから、問題解決のためにはお金を「抑制の代わりに」ではなく「抑制とともに」使用すれば良いことになります。従来はお金を払う側が威張っていたわけですが、今後はお金を払う側も自己抑制するわけです。自己抑制というのは相手から学ぼうとする態度とも言えます。それには当然、お金を受け取る側も何かを伝えようとする必要があります。 。

何かを伝えるためには「時間をかけて身に付けた」ものが重要です。身体で覚えるというのは失敗して覚えることなので、時間をかけて身に付けた行為は必然的に挫折を乗り越えたことも示しています。そこからは多くの暗黙的情報を学ぶことができます。つまり、これからは暗黙的情報が経済システムを流通するようになると思われます。しかし、そうなるためには我々が「お金にならないことに時間をかける」必要があります。なぜなら、今は暗黙的情報はあまりお金にならないからです。