2007年2月23、24の両日、ゆうばり応援映画祭で、計11作品を観た。23日は平日の昼間なのに、すごい人。24日は、さらに参加者が増えていました。夕張市民の温かなもてなしにも感激。14人の若手監督による応援映画の会場では、急きょパイプいすを増やして対応していた。それでも、立ち見が相次いだ。監督たちが、上映前にあいさつしたが、なかなか心のこもったスピーチだった。
文化スポーツセンター・会議室で行われた若手監督の上映では、各回ともゲストや監督たちも区別なく並んで、順次席に座った。私は、23日午後3時30分の回で、幸運にも漫画家の永井豪さんの隣の席に座ることができた。
★「4日間」(やなぎさわやすひこ監督) 敵から人類の希望である人物を必死に守ろうとするというストーリーは「ターミネーター」を連想させる。それを1部屋内だけの室内劇として展開している。演劇的だ。別に難解な実験映画ではない。
★「トレポネマ」(松梨智子監督) 松梨智子監督は、1996年に『惜しみなく愛は奪ふ』 でゆうばり映画祭審査員特別賞を受賞している。この作品は、劇団内のエゴに満ちた人間関係を描きつつ、最後はとんでもないところに着地させる。監督の力技には、驚く。
★「ヒミコさん」(藤原章監督) 映像温泉芸社の全面バックアップのようなキャスティングと、ストーリー展開。おばかでHで青春している。ヒミコ役の宮川ひろみさんの熱演に拍手。彼女はただ者ではない。
★「好夏zerφ1 アルタイルからの友だち」(近藤勇一監督) 百瀬絵里奈の愛らしさを全面的に引き出した美少女メルヘンの映像。最後までひねることなくメルヘンとして描ききった姿勢は、貴重だと思う。
★「夜へ…for night」(中田圭監督) 大半を物語ではなく映像の力だけで見せる。それは、才能だ。血の匂いがかすかに漂う大人のメルヘン。続編を期待したい。
★「ウール100%」(富永まい監督) 23日の応援映画祭の一番の収穫。新しい質感の映像の美しさに引き込まれた。手書きアニメや人形劇も盛り込んでいる。幻想的なのに、妙に生々しい。岸田今日子の遺作にふさわしい作品。富永まい監督は、夕張で上映できたことを喜んでいた。サンダンス/NHK国際映像作家賞2003日本部門最優秀賞、釜山国際映画祭2006出品作品。
★「人魚姫と王子」(桜井亜美監督) 小説家の桜井亜美が、自主映画として製作した。気合いが入っている。映画への愛が感じられる。主人公役・めぐみの魅力も、的確に引き出していた。白黒ではなく、豊かな色彩の世界の大切さというメッセージが、じんわりと伝わってくる。ぎこちなさも、好きだ。
★「立体東京」(安達寛高監督) 安達寛高監督は、小説家・乙一である。「立体東京」を、3D眼鏡をかけて観た。不思議な東京が、浮かび上がる。立体映像が、少女の孤独や焦燥を表現している。片手間の仕事ではない。映画への熱い思いが感じられる。けっこう眼は疲れたが、貴重な30分だった。
★「闇を駆け抜けろ!」(戸梶圭太監督) 「闇を駆け抜けろ!」も、小説家による監督作品。やりたい放題ふざけ放題。出だしはかなりのパワーだったが、小ネタに満ちた人権無視のおばか映画になっていくのが、やや残念。しかし、たまにクスリとさせられる。
★「MEAT BALL MACHINE-REJECT OF DEATH」(西村喜廣監督) 『MEATBALL MACHINE』(山口雄大監督)のスピンオフ作品。パンクスプラッターの王道をばく進する。スピード感がたまらない。すがすがしいまでの血みどろ。素晴らしい。
西村喜廣監督は、さまざまな作品の特殊造型、特殊メイクを担当してきた。今回のゆうばり応援映画祭のビデオフォーラム部門11作のうち、「トレポネマ」松梨智子監督、「闇を駆け抜けろ」戸梶圭太監督、「そんな無茶なー東京ゾンビ外伝ー」花くまゆうさく監督、そして「MEATBALL MACHINE-REJECT OF DEATH」の4作も担当しているのだ。
★「そんな無茶な!」(本田隆一、井口昇、花くまゆうさく、真利子哲也監督) 最後に佐藤佐吉プロデュースのとんでもないオムニバス作品が待っていた。チラシには「健全な映画を見たい人、映画館で泣きたいと思う人はこないで下さい!」と書いてある。世界平和を歌う全裸歌手を追ったドキュメント「彼女が歌う理由」(本田隆一)を観て、まずぶっ飛んだ。電波系だ。次に「おばあちゃんキス」(井口昇監督)で、腰を抜かした。おばあちゃん映画の歴史を変える傑作。たんなる際ものではない。この2作品が、あまりにも衝撃的だったので、「東京ゾンビ外伝」(花くまゆうさく監督)、「アブコヤワ」(真利子哲也監督)は、普通に見えてしまう。
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