ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2000
参加報告


ヤング・ファンタスティック・クランプリは「金髪の草原」、納得!

 ヤング・ファンタスティック・クランプリは「金髪の草原」(犬童一心監督)に決定した。心温まるファンタジックなアイデアで、登場人物もみなユニーク。納得のグランプリだった。審査員特別賞は「パップス」(ASH監督)。最後まで「ボーダーライン」(アラン・ベジェル監督)と競った。南俊子賞は「人狼 JIN-ROH」(沖浦啓之監督)。この映画祭で初めてのアニメの受賞となった。こちらも異存はない。

 ファンタスティク・オフシアター・コンペディション部門のグランプリは「どんてん生活」(山下敦弘監督)。審査員特別賞は「レッツ・ゴー!!イチゴガール」(栗山忍監督)で、監督の苺の着ぐるみがかわいい。ファンタスティク・ビデオ・フェスティバル部門では、グランプリに「HARSH REALM」、 審査員特別賞と夕張市民賞はともに「コールド・クロス」が選ばれた。


クロージングの「どら平太」は小気味の良い痛快時代劇

 クロージング上映の「どら平太」(市川崑監督)は、黒澤明、木下恵介、市川崑、小林正樹の4人による「4騎の会」の30年前の脚本が日の目を見たもの。最近ではお目にかかれない豪快な主人公が大活躍する勧善懲悪もの。わくわくしながら、小気味の良い展開、編集に酔いしれた。役所広司はどんな役も見事に演じてしまう。

 招待作品「現実の続き夢の終わり」(チェン・イー・ウェン監督)は、はっきり言って期待外れ。最初は新しい表現手法を感じたが、あとは失速。混沌とした台湾ヤクザ社会を描いているのは分かるが、話にリアリティが乏しい。 水野美紀が短期間でニキータみたいに銃を使いこなすのはあまりにも不自然だろう。

 ヤング・ファンタスティック・クランプリ部門では、全6作品を観た。
 「金髪の草原」の画像です「金髪の草原」(犬童一心監督)は、80歳の老人がある日目覚めると20歳の青年になっているというファンタジー。本人は20歳のつもりだが、周りは80歳と思っている。そしてマドンナとして憧れていた女性に似ていたお手伝いさんに恋をする。夢のあるボケを描いているのかと思って見ていると、そうでもないようにも思えてくるような仕掛けが用意されている。ラストシーンは不要に感じられたが、あのシーンによって明るいまとまりになったと思う。

 「ミステリー・オブ・ザ・キューブ」(ジョナサン・ユー監督)は、冒頭からコンピューター・グラフィックによるエフェクトの連発。タイトルには、カイル・クーパーの影響も感じられる。日本と韓国の歴史や有名な詩人の難解な詩を織りまぜながら、ミステリー、ホラー、アドベンチャーを横断していく。 ただ、仕掛けばかりが目立って意外に引き込まれない。

 「ホーク」(ブルース・ロー監督)は、テロリスト宗教集団の毒ガス計画を阻止しようとする香港と日本の刑事の悪戦苦闘を描く。もう見え見えの企画。爆破シーンの迫力は度胆を抜くほどだが、テロリスト集団をたんにパロディ化、漫画化しているだけで、結局はアクションだけなので見終って何も残らない。「パップス」の画像ですそういう作品があってもいいが、私は物足りない。

 「パップス」(ASH監督)は、13歳の銀行強盗の物語。良くあるアイデアだが、細部のアイデアのオリジナリティが高く引き込まれる。パート・レイノルズがいい味を出していた。そして「キャメロット・ガーデンの少女」(ジョン・ダイガン監督)のキャメロン・ヴァン・ホイがとてもキュートだった。監督も俳優として高く評価していた。

 「ボーダーライン」(アラン・ベジェル監督)は、友人の「ベニスで火葬にしてほしい」と言う遺言をかなえるために、病院から遺体を盗み出すストーリー。展開にやや無理はあるものの、なかなか考えさせられる。広田レオナがミステリアスなアキコ役を好演。「人狼 JIN-ROH」の画像です監督は天使をイメージしたと言っていたが、さすが人間離れした美しさだった。

 「人狼 JIN-ROH」は、日本アニメ界の多くに原画作家として参加してきた沖浦啓之の監督デビュー作。押井守 の原作・脚本。ありえたかも知れない架空の昭和30年代を舞台に市街戦の血なまぐさい世界を描いている。人間の弱さ、デリケートさが政治に利用されていく残酷さ。救いがない暗さが立ちこめているが、それが重たい感動につながっていく。赤頭巾をさらに残忍にした童話が実に巧みに生かされている。


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Visitorssince2000.02.21