本書を読んで、読者のみなさまは、どんなことを感じられたでしょうか?
「こんなことは、にわかには信じられない」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
正直に言って、
「う~ん、このままでは、自分はけっこうヤバいかも」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
あるいは、死後の様子が克明に分かったために安心された方もいらっしゃるでしょう。
さらには、
「この調子でいけば、死後は、かなりよい階層に行けそうだ」と希望に胸を膨らませた方もいらっしゃるかもしれません。
訳者としては、死後、苦しんでいる霊たちの様子に、
「この世で行った悪行が、これほど死後のあり方に影響するものなのか」と、思わずわが身を振り返らずにいられませんでした。
一方で、
「この世で行なった善行は、ことごとく神によって見届けられており、死後、過分とも思われる報いを受けている」
ということも、強く印象に残りました(芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思い出します)。
つまり、
「よいことも、悪いことも、死後の世界では、十倍、二十倍にも評価される」という法則があるようなのです。
これが事実なら、悪霊になるのは、ある意味で、とても”簡単”だし、天使になるのも、決して不可能ではないということになります。
つまり、天使も悪霊も、人間とは別世界の特殊な存在ではなく、ごく身近にいる人たちの死後の姿にほかならないのです。いや、むしろ、それは私たち自身の行く末であるのかもしれません。
本書に収録された数多くの霊人たちとの対話は、本当に貴重なものだと思います。
私たちの近くにいくらでもいるような、ごく普通の人たちが、死ぬときに、そして死んだあとに、どのような体験をすることになるのかということが、本人の言葉を通して詳細に語られているからです。
高級霊からのメッセージは、日本でも、さまざまなかたちで刊行されています。しかし、自分たちと同じレベルの、ごく普通の人たちからのメッセージ集というのは、本書以外にはほとんど存在していないのではないでしょうか?
さて、賢明な読者のみなさまは、すでにご存じかと思いますが、ここで、「霊との対話」に関する注意点を述べておきましょう。
本書に書かれているような「霊との対話」は、厳しい条件のもとで初めて可能となるものであり、それを安易に試みることには大きな危険が伴います。
アラン・カルデック自身は、「交霊会」について次のように述べています。
「交霊会の催される場所の持つ磁場が、どんな霊を呼び寄せるかを決め、その結果、霊が人間にどんな影響を与えるかを決定する。
そして、メンバーの一人ひとりが、この磁場を整えるために貢献し得るのである。磁場がよければ、善霊たちが感応し、悪霊たちは遠ざけられるために、よい通信が可能となる。磁場を決定するのは、出席者の心の持ち方である。
次のような条件が整えば、よき磁場が形成される。
①世界観、感情が、出席者全員で完全に共有されていること。
②メンバー同士がお互いに思いやりを持っていること。
③慈愛の精神に反するいかなる感情もそこに見られないこと。
④高級諸霊の教えを学んで向上しようとする強い意志があり、実際に彼らのアドヴァイスを実践していること。
⑤おもしろ半分というような気持がいっさいないこと。
⑥霊との対話のあいだ、敬意に満ちた沈黙と精神集中が支配していること。
⑦招霊するに当たっては、メンバー全員の心が一致していること。
⑧霊媒に、傲慢さやうぬぼれがまったくなく、ひたすら、よきことに奉仕しようとする気持ちだけがあること。
このような条件のもと、まず全員が瞑想することによって会場の磁場を整え、次に、アラン・カルデックが、祈りをし、それから、おもむろに霊を呼び降ろしたのです。そして、霊媒の自動書記や発声を通して霊との対話を行なったわけです。
その現象の観察にあたっては、第1部、第3部で説明されている「霊実在主義」の体系をつくり上げた、高度な知性、理性、合理性、そして実証主義的精神を駆使しました。
交霊会が、このような細心の注意をもって行われたのは、それを行なっている人間が、自分を見失い、悪霊に支配され、みずから悪霊になるという悲劇が起こらないようにするためでした。のみならず、現にいま生きている人間の人生の意味を知り、人生をより充実させるための教訓を得たいという、誠実で厳粛な探求心があったからだと言えるでしょう。
私たちは、安易な気持ちで交霊会めいたものに参加したり、おかしな宗教の奇妙キテレツな悪霊現象にはまったりすることを、巌に戒めておかねばなりません。
アラン・カルデックの「霊実在主義」が私たちの人生に与えるインパクトは、とても大きなものです。
いわゆる哲学や文学、また、論理学や道徳などをいくら学んだところで、死んだあとに自分がどうなるか分からなければ、人生の本当の意味、本当の目的は、決してつかみ取ることができません。
「物質世界」と「霊界」との関係がはっきり分かってこそ、私たち人間は、希望や生きがい、幸福感を持って生きることができるのです。
「この世」でどう生きれば「あの世」でどうなるかということが分かってこそ、つまり、「霊界の法則」が理解できてこそ、私たち人間は真の意味で安心して生きられるのです。
以上のような理由から、本書は、まさに得がたい「人生の指南書」であると言うことができるでしょう。
本書を読んで、一人でも多くの方が、希望と幸福に満ちた人生を、勇気を持って歩まれますことを、心より願ってやみません。