古地磁気学と岩石磁気学の基礎

イントロダクション:ハワイで観測された古地磁気

ハワイ島で観測された古地磁気の楕円状の分布.

過去5百万年間における古地磁気の統計的性質

この図はハワイ島の溶岩が記録した過去500万年間の地磁気方向の分布です.左図は仮想的地磁気極(VGP: Virtual Geomagnetic Pole)の分布で,赤丸と青丸はそれぞれS極とN極を表し,前者が現在と同じ正磁極期で後者が地磁気が逆転していた逆磁極期に相当します.右図は古地磁気方向の分布で赤丸が現在と同じ北向きで下向き,青丸が地磁気が逆転していた南向きで上向きです.緯度21°Nのハワイ島では地磁気の水平からの傾き角(伏角)は一般に浅いですが,この図では平均方向が真下または真上になるように投影してあります.

この図で気付くことは,古地磁気の極,VGP,は概して円状に分布するのに対して,古地磁気方向は上下に楕円状に分布することです.実際,前者は球面上のGauss分布であるFisher分布で,後者はBingham分布でよく近似されます.このことは古地磁気の変動が,地球中心に位置する仮想的棒磁石が自転軸の周りに確率的に揺れ動くときの磁場の変動によく似ていることを示します.

参考文献: